コーパスは意外と王道だったのかもしれない
──今回の復活に合わせて、キングから発売されて長らく廃盤状態が続いていた『Kr/A/sH!』と『rock'n'roll』がそれぞれ<音圧鬼盤>としてリマスター再発されるのも大きなトピックのひとつですね。
ZERO:一応、名越君と俺が監修という形でリマスタリングに立ち会ったんだけど、ほとんど名越君にお任せだった。俺は所々で「ヨシ!」って言うだけ(笑)。『kocorono』のアナログ盤が出るって知って、デザインを手がけた俺は何も聞かされてなかったのよ。それで「これはどういうことよ!?」ってツイートしたことでキングの担当の人と知り合ったんだけど、それもようちゃんが「コーパスも再発まで持っていけや!」ってつなげてくれたのかな? と思ってね。
──それにしても、リマスター盤はどちらもlowがグッと際立って、轟音の立体感が見違えるほど増しましたね。音圧も凄まじく凶暴になっているし。
名越:ちょっとlowを出しすぎたかな?(笑) スタジオのラージ・スピーカーで聴くと、エンドもしっかり聴こえていいなと思ったんだけど、家に帰って小さいスピーカーで聴くと、低音域がちゃんと再生できないかな? と思ってね。でも、プレスしたらギュッとなってちょうど良くなるだろうから、まぁいいかなと。
──リマスタリングで重きを置いたのはどんなところだったんですか。
名越:『Kr/A/sH!』と『rock'n'roll』では、もともとの音質が全然違ったんだよね。『Kr/A/sH!』はどういうわけか下の音がなかったし、スネアの音も軽く録れてた。でも演奏した時の感覚は覚えていたので、それに近づけようとしたね。
──『kocorono 完全盤』のリマスター同様、今回も積み木(振動を抑えるための制振材)は大活躍だったんですか。
名越:『rock'n'roll』のほうで使ったね。マスターがアナログだったから。
──2枚とも貴重なボーナス・トラックが追加されて、合計トラック数も収録尺もほぼ倍になっているのが凄いですけど(笑)。
ZERO:『rock'n'roll』にはハックフィンのライブを丸々1本入れたんだよね。
名越:あのライブ音源の元はビデオ?
ZERO:うん。あと、9曲目の「SILVER」は7インチで出した『COBRA』のカップリング。
大地:音がポンポコ言ってるよね。「こんな練習用のカセットみたいな音だったんだ!?」と思ってさ(笑)。
名越:あれは『rock'n'roll』を録る前で、アレンジもちょっと違うんだよね。
──『rock'n'roll』は元の収録時間が短かったから、これだけボーナストラックを入れられたっていう話もありますよね。
名越:確かに、30分台で終わるもんね(笑)。
ZERO:しかも、「INVADER」なんて即興だったしね。「もっと他にないのか?」ってエンジニアに言われてさ。
大地:そうそう、尺を埋めるためにその場で作ったんだった(笑)。
──とてもそんなふうには思えませんけどね。今改めてこの2枚を聴き直してみて如何ですか。
名越:「こんなことやってたんだなぁ」って言うか、意外と細かいことをやってたんだなと思った。あと、「ここ間違えてたんだ」って気がついたところもあったね。違うコードのままレコーディングしてたっていう(笑)。
ZERO:大地が入って直後くらいだったか、「コーパスってライブで見るとデタラメみたいだけど、実はキメとか凄くちゃんとしてるんだね」って言われたのをよく覚えてるんだよ。
大地:ああ、それは言ったかもしれない。自分が入る前のコーパスは、もの凄くダークな印象があったんですよ。如何にも悪そうで怖い感じって言うか。それがいざ入ってみたら温和な雰囲気で、プレイも自由で、割と何でもやっていいんだなっていうのが意外でしたね。初めてアメリカへ行った時も伸び伸びとしてホントに楽しかったし。まぁ、名越君は「こいつ、何を勝手にやってんだよ?」ってピリピリしてたかもしれないけど(笑)。
──リマスター盤は音像が恐ろしくクリアになったせいか、音だけ聴いたら今のバンドのようにも思えますよね。
大地:確かに。古くさい感じはないですよね。コーパスって意外と王道だったのかもしれない。『rock'n'roll』は特にそういうアルバムじゃないですかね。昔、あるインタビューで「『J』ってエバーグリーンな曲ですよね」って言われたことがあるんですよ。
名越:あったね。「エバーグリーン? 何ですかそれ?」って聞き返してね(笑)。
大地:そうそう。で、「『時を経ても色褪せないスタンダード』ですよ」って言われて。確かにコーパスの曲っていつ聴いても「ウォーッ!」って気持ちが凄い盛り上がるんですよ。
名越:「J」は、俺はスライ&ザ・ファミリー・ストーンのつもりで弾いてただけなんだけどね(笑)。
ZERO:俺は最初のリフをハードコアのつもりで弾いてたの。でも、その後のドラムが俺の意図してないノリになったから「J」はあんな感じになったんだよ。
大地:レスザンTVの『TVVA』に入ってる「J」がすっげぇ格好いいんだよね。
名越:熊ちゃんが叩いたテイクね。ラジカセで録ったやつだ。
大地:あれを聴いて、コーパス格好いいな! と思ったんだよ。
ZERO:でもあれ、名越君がベースを差し替えてるから。だから格好いいんだよ(笑)。