カバーするなら「7月/july」以外に考えられなかった
──そんなマイペースな活動のさなか、今年の1月にはブッチャーズのトリビュート・アルバム(『Yes, We Love butchers 〜Tribute to bloodthirsty butchers〜「Night Walking」』)のレコーディングもありましたよね。
名越:海部さん(当時、Co/SS/gZやブッチャーズのディレクターだった海部幹男。今回のブッチャーズのトリビュート・アルバムの総指揮を務めている)によると、この3人でのレコーディングは16年半ぶりって言ってたね。
ZERO:シアトルで『rock'n'roll』を録って以来だもんね。
──当日のレコーディングは僕も立ち会わせてもらいましたが、作業がとてもスムーズに進行していましたよね。
ZERO:名越君が事前にベーシック・トラックを作ってきてくれたからね。海部さんから企画の意図を聞いた時、最初は追悼、追悼…って言うもんだから、「追悼ならやらない。コーパスなりの答えっていう形ならやってもいい」って答えたの。で、カバーするなら俺は「7月/july」以外に考えられなかった。彼らが『kocorono』を作っていた頃は、みんないろいろと大変だったしね。
大地:大変だった時のようちゃんも思いきり知ってるし、その辺は名越君が一番知ってるんじゃないかな。
名越:まぁ、あの頃は始終一緒にいたからね。
大地:ようちゃんと付き合ってるんじゃないか? くらいの仲だったしね(笑)。
ZERO:実際、そういう噂もあったよね。「2人はデキてるんじゃないか!?」って(笑)。
名越:全然関係のないレコーディングにも一緒に行ってたしね。
ZERO:ちょうどあの頃、鳩ノ巣の渓谷へみんなでよく遊びに行ってたんだよね。「7月」の歌詞に出てくるのはあそこの川でさ。
──オリジナルの「7月」は射守矢さんの特異なベースが肝なのに、ベースレス編成でも充分に「7月」の世界観をコーパスなりに体現しているのが素晴らしかったですね。15年のブランクを全く感じさせないアンサンブルも見事だったし。
ZERO:でも、俺が最後に名越君にお願いしてることがあって、まだ完成には漕ぎ着けてないんだよね。全部の音をかき消すくらいのドーン! としたギターを入れてよって発注したんだけど。
名越:今日、1回録ってみたんだけどイマイチだったから、夜中にまた録ろうかなと思ってる。こんな予定じゃなかったんだけどね(笑)。「7月」は射守矢君のベースが肝だから、普通にリズムがある形で前半部分をやってもダメだし、それならギターをベーンと弾いてるだけでいいやと思って。最初はギター1本とか、もっとシンプルな感じでやろうと思ってたんだけど、やっぱりそれだけじゃ寂しいなと思い直したんだよね。
ZERO:レコーディングするにあたって改めて「7月」を聴いてみたんだけど、曲の構成がないに等しいなと思ってさ。名越君が作ってきてくれたトラックを聴いて「こういう流れなんだな」ってやっと分かったけど、原曲はふわふわして掴めなくて。
名越:元は変則チューニングだからね。
ZERO:お陰で歌入れもメチャメチャ苦労したよ。
名越:でも、本番はけっこういい感じだったじゃない?
ZERO:そうかな? リハの段階でかなり手こずってたから、いっそのこと英語に直して唄おうかなとか思ったんだよね(笑)。
大地:仮歌の一発目は確かに凄かったね。どうしちゃったんだよ!? って感じで(笑)。
ZERO:あれはきっと、ようちゃんが降りてきたんだよ。「ハズせや!」ってさ(笑)。
大地:しかもレコーディング前のリハが20日前で、けっこう空いてたんですよ。名越君のなかではイメージが固まってたと思うんだけど、俺は「あの練習の感じでいいんだよな?」みたいな感じで、どうなるんだろう? と思ってたんです。でも、いざフタを開けてみたら出来上がりが凄く良くて、びっくりしましたね。まぁ、ZERO君と名越君と久しぶりにスタジオに入って、普通に会話ができたのもびっくりましたけど(笑)。その意味でも全然ブランクを感じなかったんですよ。
──コーパスの持ち味がよく出た「7月」を聴いて、きっと吉村さんも喜んでいるんじゃないですかね。
ZERO:と言うかね、今のこの状況を喜んでいると思う。
──ああ、こうして3人がまた揃っていることを?
ZERO:いや、世の中のブッチャーズに対するチヤホヤ具合を(笑)。
大地:ちょっと悔しがってるかもしれないよね。「なんで俺の生きてる時にチヤホヤしねぇんだよ!」って(笑)。
ZERO:ツイッターで追悼、追悼…って騒いでたヤツらに俺は言いたいんだよ。「お前ら、ブッチャーズのライブに友達を1人でも連れて行ったのかよ? そうやって輪を広げようとしたのかよ!?」って。ようちゃんはそういうことを願いながらステージに立ってたんじゃないかと俺は思うし、「惜しい人を亡くした」なんて言うヒマがあったら、1人でCDを100枚買ってやれよ! って思うよね(笑)。そんな思いもあって、復活ライブのタイトルを“WHO KILLED...?”と命名したんだよ。