——レコーディングで知る真実とは・・・——
根崎:俺がaieくんの音楽に初めて触れた瞬間があるんですけど。当時のラヴィアンローズのエンジニアとaieくんのバンド(deadman)のエンジニアが一緒だったんですよ。バズーカスタジオの栃木さんって言うんですけど。
青:あっ、栃木さんだったの!? ラヴィアンも栃木さんだったんだ。みんな栃木さんを通ってるんだね。
根崎:DANGER CRUEの時ですけどね。ムックも栃木さんだったじゃないですか? それで矢口に紹介してもらったんですけど。「栃木さん、昨日仕事何だったんですか?」って話になるじゃないですか? そこで「昨日はcali≠gariだったよ」とか「deadmanだったよ」とかってなって、いろんなバンドのレコーディング話を聞くのが、俺すっげー好きなんですよ。そこで聞いたcali≠gariの時のおもしろい話があるんですよ。
青:何かあったっけ?
根崎:ベースの研次郎さんのレコーディングの話なんですけど、研次郎さんって卓の前で弾くんですか?
青:弾く。
根崎:だからあの人のレコーディングが一番楽だって言ってました。自分はずっと後ろで雑誌を読んでるだけだって(笑)。
一同:(笑)
青:研次郎くんは早いうちに栃木さんにPro Toolsの使い方を教わって、「ちょっとすみません。卓借ります」って言って卓の前に座って自分で操作してたんだよね。
根崎:教えてくれってうるせーから教えたって言ってました(笑)。それである時、栃木さんが研次郎さんと深い話をした時に「もう1回お願いしまーすって何度も言うのが申し訳ないんで、僕自分でやります」って話したらしくって「あっ、この人いー人なんだな」って思ったって言ってました。
青:いや〜、懐かしいね。
根崎:で、deadmanのレコーディング風景も聞いたんですよ。aieくんはNG出さないらしいんですよ。「あー、OKです! OKです!」ってオールOKらしいんですよ。「今のやつは今しか出せないんで」って(笑)。
青:マ〜ジで〜。かっけー!!
aie:大体OKですね。
青:ロッカーじゃん!
aie:メンバーに気分良くなってもらおうと思って(笑)。「さいっこー!! 」って。
青:それ完全に矢沢イズムだよね。きた〜!
根崎:栃木さん的に「ここは無理だろう」って所は、aieくんにばれないように差し替えてたって言ってました(笑)。
一同:(笑)
根崎:栃木さんからそういう話を聞いて、すげーな、バンド的に確立されてるんだなって思ってたんですね。で、aieくんの音楽に触れた瞬間がdeadmanの『follow the night light』のPVを見たんですよ。ヴィジュアル系って聞いてたんですけど、あの音楽性なくねーかって、いー意味で思ったんですよね。それを見た時に、deadmanのギターの人はグランジとかそっち系が好きなのかなって思ったんですよね。この前aieくんのバンド(the god and death stars)とニューロティカと3マンをやって、その時のライブを見て、やっぱりそっち系(グランジ)が好きなのかなって思って、俺、今日カート・コバーンっぽい格好をしてきたんです。
aie:あっ、そうですね〜(笑)。
根崎:どうっすか、このオチ。昨日からちゃんと考えてきたんですよ(笑)。
青:いーね、いーね。・・・これ以上何を言っていーのか分からない。
一同:(笑)
——マスタリングはレコーディング!?——
根崎:そういえば青さん、今日の対談忘れてたんですか? Twitterでそう呟いてましたよね。
青:そう、忘れてた。
根崎:俺がツイートして思い出したんですか? ツイートした後に「あっ、仕事忘れてた。LOFTへゴーゴー」って呟きましたよね。
青:いや、うちのスタッフから連絡がきて「やっべー、忘れてた。僕、今日デートする予定だった!」って思ったけど、デートを断って。
根崎:(笑)デートの予定を断って! そう言えば、今は亡き加瀬さんから聞いた話があって、cali≠gariのマスタリングはレコーディングだからって言ってました(笑)。
青:(爆笑)
根崎:えっ、どういう事っすか? って聞いたら、機会があったら青ちゃんに聞いてみなって言われたんですよね。
青:あっ、聞いちゃった!? そうなの、マスタリングで急遽「加瀬さん、ここでコーラス入れたいんですけど」って言った事があって(笑)。
根崎:それが1回あってから、青ちゃんのマスタリングの時は、俺はマイクを立ててるって言ってました(笑)。
青:多分ね、長いバズーカスタジオの歴史の中で、マスタリングの時にレコーディングしてるのはうちだけだと思う。
根崎:事実なんですね!
青:事実なの(笑)。まさかの、マスタリングで普通に僕、ハモリを入れ始めるからね。
根崎:(笑)今はないですよね?
青:さすがにね。28〜29歳の時って本当に僕バカだったんだなって思って。レコーディングとマスタリングの明確な違いって分かってなくて、マスタリングでレコーディングしちゃいけないの! ってとんがってたからさ。そーいうの分かんないって。
根崎:なるほど〜。俺はそういう次元にまでいかなかったです。レコーディングはレコーディング、マスタリングはマスタリングって。・・・っていうかマスタリングって何なんだろう? って。
一同:(笑)
青:多分僕もね、それが最初にあったから、マスタリングでレコーディングみたいな事をやってもいいんだろうって思って、それが加瀬さんだから許されちゃったのよ。その後にマスタリングとレコーディングがどんなのかちゃんと理解した上で、でもマスタリングでレコーディングしちゃいけないの? ってなっちゃったわけ。自分の中に最後の締め切りの日がマスタリングだって、一番やっちゃいけない逃げ道を作ってしまったんだよね。でも若い子は絶対に真似しないように! 普通マスタリングでレコーディングみたいな事をやられたらぶっ飛ばされます!
根崎:まあね〜。加瀬さんはイー人ですからね。
青:イー人でした。もう亡くなってしまったけど、格好いい死に方だったよね。最後は卓で死んでたんだもんね。最後の作品マスタリングして。かっこいーわ。
根崎:俺たちのミニアルバム(真実の螺旋階段)の最後の曲が『生きて…』っていう曲が入ってて、加瀬さんマスタリングなんですけど、この曲は死んだ同業者に向けて書いた曲なんですよ。UMEMURAさん(TOKYO YANKEES)だったり、comの近藤さんだったり、ラヴィアンローズ時代に亡くなったローディーだったり、そいつらに向けた賛美歌っていうんじゃないですけど、そういう曲を書かなきゃなって思って書いた曲なんです。で加瀬さんに「この曲はグッとくるなぁ、根崎くん。俺さ、めちゃくちゃ癌なんだよね」って言われて。「でも、アメリカから取り寄せてる抗ガン剤が効き始めてるんだよ。だから俺は頑張る。この曲聞いたらそういう気になったよ。絶対誰にも言っちゃダメだからな」って言われたのにミックスルーム出た瞬間にうちのベースの代々城に「おい、どうする〜。加瀬さん、癌だって言ってんぞ」って、俺テンパっちゃって言っちゃったんですよ。
青:ダメじゃん!
一同:(笑)
根崎:そっから1年ちょっとぐらいで亡くなっちゃったんですよね。