ARBの曲をこれからも唄い継いでいきたい
──活動停止から7年が経っても未だに今回のようなイベントが大々的に催されたり、ARBの音楽が愛され続けているのはなぜだと思いますか。
一郎:ARBを慕ってくれる俺たちより下の世代のミュージシャンが言うには、「ARBを見て、自分にもバンドがやれそうな気がした」って言うわけ。矢沢(永吉)さんや桑田(佳祐)君、世良(公則)君みたいなスター然としたミュージシャンがいた中で、俺たちはやっぱりちょっと違ったんだろうね。
KEITH:音楽だけじゃなくて、バンドのトータルなイメージも入り込みやすかったんじゃないかな。
アツシ:僕はARBを見て「これなら自分にもやれる」っていう感じはなかったですね。それまで歌謡曲しか聴いてなかったからARBのすべてが衝撃的だったし、中3の時に初めて聴いて「何だこの音楽は!?」ってブッ飛びましたからね。ARBを聴くようになってから海外のバンドも聴くようになったし。一郎さんが雑誌でこんなことを言ってる、あんなことを言ってるってチェックしたりもして。
一郎:そういうことを若いミュージシャンに言って欲しいよね。自分の好きなミュージシャンがインタビューで話してるルーツ・ミュージックを聴いてみてくれよっていうさ。
アツシ:『平凡パンチ』か何かで、一郎さんが「こんなロック界じゃ天国のシドも泣いてるぜ!」って話してるのを読んで、「シドって何だ!?」って思いましたからね(笑)。それからセックス・ピストルズを聴きましたから。
──今回のイベントにはある種そういうルーツを辿る側面がありますよね。たとえばZIGZOのファンは高野哲さんを通してルーツにあるARBの音楽を知るわけで。
アツシ:高野君は「AFTER '45」から入ったって言ってましたね。
藤井:彼がそんなに熱心なARBのファンだとは知らなかったな。
──同じ出演者の梶原幸嗣さんと一緒にARCBというカバー・バンドをやっていたくらいですからね。あと、『輪るピングドラム』でARBの曲がカバーされたのをKEITHさんと一郎さんがどう聴いたのかを聞いてみたいんですが。
KEITH:ああいう解釈もあるんだなと思ったね。どんな形にせよ、ARBの歌が唄い継がれるのは嬉しいよ。
一郎:トリプルHのレコ発みたいなイベントをYouTubeで見たんだけど、フリフリの衣装を着た女の子3人が「イカれちまったぜ!!」を唄ってるのがインパクトあったね。あの甲高い声で「夜を塗り替えろ!」って言われたら、無条件に「ハイ!」って言うしかないよ(笑)。
アツシ:僕も去年、AIB(アツシ・イノウエ・バンド)としてニューロティカの楽曲半分、ARBの楽曲半分でツアーをやらせてもらったんですよ。ARB OFFICE公認のARBカバー・バンドとして(笑)。今回のイベントもそうなんですけど、ARBの曲を何らかの形で唄い継いでいきたい気持ちがいつもあるんです。
一郎:俺がソロを始めた頃に(甲本)ヒロトや(宮田)和弥がライブに来て、「ラ・ラの女」を唄ってくれたことがあってね。久しぶりに弾く曲だったけど、純粋にいいなぁと思ってさ。曲の良し悪しは自分も関係してるからよく分からないけど、そうやってARBの曲が唄い継がれていくことは非常に嬉しい。俺自身、自分の曲だから唄うっていう使命感じゃなくて、今も感情にフィットする当時の曲は唄い続けていきたいしね。俺がいた最後の2、3年で、ライブでやらなくなったそれ以前の曲もいっぱいあるじゃない? 「パントマイム」とかは初期にしかやってないし、今やると凄く楽しいんだよ。そういう発見が今もけっこうあるからね。
──KEITHさんと30年ぶりに演奏することで、また新たな発見があるかもしれませんね。
一郎:KEITHと生んだARBの曲を30年ぶりに一緒にやることによって、どんな化学変化が生まれるのかが今から楽しみだよ。それを現場で見てもらえたら嬉しいよね。でも、20代の頃はまさかこんな歳になるまでロフトでライブをやるなんて思ってもみなかったけど(笑)。
KEITH:だいたい還暦まで生きてるなんて思ってなかったしね(笑)。
一郎:ただ、ストーンズとか、自分より年上のミュージシャンがまだまだ現役でやってるのは励みになるよね。日本で言えば鮎川(誠)さんとか柴山(俊之)さんとかさ。めげてないなって思うもん。
──今回のイベントの出演者も、KEITHさんや一郎さんの背中を見て同じことを感じるんじゃないですかね。
KEITH:叩けるうちはまだ叩きたいっていう目標があるからね。俺のドラムが求められているうちはまだまだ叩き続けたいんだよ。
アツシ:KEITHさんにはこれからもずっと叩き続けて欲しいですし、一郎さんにはずっと弾き続けて欲しいですよ。ARBは日本のロックのパイオニアなんですから。楽曲もそうだし、ファッションもそうだし、すべての土台を作ったバンドって言うか。今度のイベントはそんなARBの曲をARBが大好きなバンドマンがセッションをする楽しい夜だし、みんなで楽しくKEITHさんの誕生日をお祝いしたいですね。