Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューcinema staff(Rooftop2012年9月号)

今を生きる全ての人に捧げる『SALVAGE YOU』と名付けられた救いのうた

2012.09.01

 6月に1st E.P.『into the green』をリリースしたばかりのcinema staffが、早くも新作となる4th mini album『SALVAGE YOU』を9月5日にリリースする。
 今作は、彼らの最大の持ち味であるメロディーは表情豊かに、そして飯田瑞規の歌声は艶やかさを増し、全7曲がそれぞれの輝きを放っていた。また、彼らがガムシャラになって生きてきた時間をそのまま切り取ったように赤裸々に綴られた歌詞は、"救い"がテーマとなり、聴く者の心にストレートに響くはず。今を生きる全ての人に聴いてもらいたい作品。
 「自信作が出来た」と彼らが口を揃えて言っていたが、この作品をリリースして10月から行なわれるツアーでは、さらに進化を遂げて行くだろうと想像が出来る。それほどまでにcinema staffの魅力が充分に詰まった作品だ。今回もメンバー4人にお話を訊いた。「今音楽をやることが楽しくてしょうがない」と言う彼らの今後
にも期待が出来る。(interview:やまだともこ)

自分たちの意志を全面に出すことが出来た

── まず6月に1st E.P.『into the green』をリリースされましたが、自分たちの音楽がより多くの人に届いている実感ってありましたか?

辻 友貴(Guitars):ありました。出す前はそんな感じてなかったんですけど、ライブでも『into the green』の伝わりがすごく早いなと感じています。

── なるほど。そして今回リリースされる4th mini album『SALVAGE YOU』は一聴してメロディーが残る曲が多く、特に1曲目の『奇跡』は以前ライブで聴いた時から頭に残っていたぐらい印象的な曲だったんです。展開も面白いですし。ようやくCDになるんだという感じですよ。

三島想平(Bass):ちょうど今年の2月ぐらいに録っていたんですけど、録音から発売までが半年以上あいたのが初めてなので、僕らとしては不思議な感じがしていて…。

飯田瑞規(Vocals & Guitars):まだ出てなかったのかというぐらい間があいてます(笑)。

三島:制作がバタバタしていて、ミックスまで時間もあいてしまいましたし。ツアー(cinema staff TOUR 2012“SALVAGE YOUR VINYL”)と並行しながらだったので、「出来た!」という手応えは今までより薄かったですね(苦笑)。

久野洋平(Drums):レコーディングの後半は、3日で13曲録りましたし。

── とは言っても、全曲個性が際立っていて、皆さんの持ち味である攻撃的なサウンドと飯田さんの歌声は魅力を増し、cinema staffを象徴する作品になったんじゃないかと思います。ディープな歌詞が多いですが、その反面サウンドが明くてそのバランスが絶妙ですね。

飯田:歌詞は暗いけど、サウンド的には明るく抜けてる音作りだったりするので、そのギャップが面白くなってると思います。

── 『her method』とかも。

飯田:『さよなら、メルツ』や『warszawa』もそうですね。

三島:『さよなら、メルツ』『her method』『warszawa』の歌詞はホント救いがないですね。今読み返してみると、なんちゅう歌詞を書いとるんやって思いますよ。もちろん推敲は重ねてますけど、赤裸々であるべきだなと思いながら書いていたので、そのままにした部分も多いです。その時はそれしか出来なかったし、それがベストだったんだろうなと思うものはそのままにするんです。

── 『さよなら、メルツ』は救いがないと言ってましたが、“海”が象徴的な言葉だと思っていて、海という言葉も場所の雰囲気も、バンドが救いを求めている延長にある開けた場所だと考えたのですが。

三島:『さよなら、メルツ』の時は一番藻掻いていた時期ですね。今回入っている曲は時系列で言うと『into the green』より前に作っていた曲が多いんですが、『into the green』に行きつくまでの過程を提示出来たかなと思ってます。当時は、どうしたら良いかわからない、曲もこういうふうにしか書けないという頃だったんですけど、“海”という単語が付いたのは『into the green』が出来て以降なんです。僕のイメージとしては、今は海から陸地に戻って来てる途中。自由とか解放とか、そういった開けたものを自分の力で手に入れられるような感じというか、そういう意味では、海を求めてるわけではないんです。

── 地に足を付けたい、と?

飯田:地に足付けたいという感じは、『奇跡』とか『WARP』からも聴き取れるところだと思いますけど、1st E.P.『into the green』を経て出す4th mini album『SALVAGE YOU』は、自分たちの意志が全面に出ている曲が多く、その気持ちはすごく強いです。これまでも地に足を付けてやって来ましたし、これからもやっていきますという思いがあって、もっと自分たちの意志を強くして、先導してやっていくということですね。メジャーになって環境が変わって、関わってくれる人の数も増えていますが、自分たちの進みたい道は4人で決めていく気持ちの表れだと思っています。

── ということは、バンドとしても方向性はメジャーというフィールドになりましたが、今も4人で決めているということですか?

三島:最終決定は全部僕らになっていると思います。もちろんレーベルやマネージメント側の提案はありますけど、勝手には決められたくないし、もちろんそれで全然良いですって乗っかるところもありますけど、コントロールは出来る限り全部したい。それを放棄したらこの4人でやらなくても良いですから。

── 前のインタビューでも、メジャーに放り出された感じはないって言ってましたもんね。

三島:全然ないです。

辻:今まで通りこっちからも提案は出来る環境なので。関わってくれる人も増えたし、音楽が広がってるという感じもあって、このままもっと物事を大きくしていって、うちらも質を良くしていったらもっと面白いことが出来るんじゃないかなとは思いますね。

伝えることに対する意識が高まった

── その歌詞は皆さんの意志が入りながらも、表現の方法としては物語性が強くなってきているような印象を受けました。

三島:どんどん強くなっていってます。今回に関しては、あらかじめ物語のプロットがあって、その話に沿って書くというのが多かった。そういうやり方は初めてで、フルアルバム(『cinema staff』/2011年6月リリース)の時も物語性は強かったんですけど、あの時は書いてるうちに物語が決まっていって、その言葉に付随して世界観を広げて行ったんです。今回は物語のイメージがあってそこに言葉を付けていくという作業が多かったです。

── それにしてもロマンティックな歌詞ですね。

三島:そうですね…。

── ロマンティックな方なんですか?

三島:…ロマンティックな方です。別のインタビューでも散々言われました(笑)。全然否定は出来ないです。隠しきれないロマンティストです。図体に似合わず。

── 私はそこまで言ってないですけど(笑)。

三島:歌詞を書くことに関しては、大きいことを言いたいというか…ロマンティストなんです(笑)。現実に起きたことをつらつら書くことが出来ないんです、僕は。

── 本を読んでイメージを膨らませるということもあります?

三島:人並みには読んでますけど。昔読んでいた寺山修司のせいかな。文章はファンシーなほうが好きなんですよ。でも、要所要所の言葉の使い方はずいぶんストレートにはなってきましたね。

── 今少し納得出来たのは、歌詞にあるエグイ部分って寺山修司の影響なのかな、と。

三島:あるかもしれません。大学の時は相当読みあさっていたので。寺山修司は鋭い感じとロマンティックというかファンシーな感じが同居していて、すごく美しいんです。モロに影響を受けましたね。

── 三島さんは前作のインタビューで、この2作(『into the green』と『SALVAGE YOU』)を作っている時は一番しんどい時期だったと言ってましたけど、その時に比べると今はどうですか?

三島:けろっとしてます。

── ということは、今後書かれていく歌詞はずいぶん変わりそうですね。

三島:この制作の過程で書きたいと思う歌詞も変わってきました。なので、すごく必要な時期だったと思っています。

── 歌詞を書くことで昇華されてくんですか?

三島:それもありますね。自分の記録という意味もあるし、伝えることに対する意識が高まったというか、強くなった気がします。その分、曲を完成させるのに時間がかかるようにはなってしまいましたが。ハードルがあがってるというか、ここまではやりたいという気持ちが強くなってきて。だけど、今すごく楽しいです。一番楽しいかもしれません。今も変わらずお金があるほうではないですけど、音楽をやってる瞬間はすごく楽しい。もちろん曲が浮かばない時もあるし、スタジオに行っても何をしようという日もあるんですけど、それを含めてもすごくポジティブに捉えられてる。昨年があったからこそ今ポジティブに捉えられています。

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cinema staff
4th mini album『SALVAGE YOU』

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1.奇跡
2.WARP
3.さよなら、メルツ
4.her method
5.warszawa
6.小説家
7.salvage me

LIVE INFOライブ情報

cinema staff 4th mini album「SALVAGE YOU」release tour “夜は短し歩けよ辻”

2012/10/05(金)札幌COLONY
2012/10/07(日)仙台MA.CA.NA
2012/10/08(月・祝)盛岡CLUB CHANGE
2012/10/12(金)新潟CLUB RIVERST
2012/10/17(水)福岡DRUM SON
2012/10/19(金)高松DIME
2012/10/20 (土) 広島NAMIKI JUNCTION
2012/11/06 (火) 心斎橋Music Club JANUS
2012/11/07 (水) 名古屋CLUB QUATTRO
2012/11/09 (金) 恵比寿LIQUIDROOM

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