結局のところ“なるようにしかならない”
──そのモットーの通り、近年のBALZACはヨーロッパ・ツアーも果敢に行なっていますね。
HIROSUKE:まぁ、海外はいつもなるようにしかならないという気持ちで行ってますね。
ガラ:送って頂いた会報に海外ツアーのレポートがあったんですけど、それを読むとホントに大変そうですよね。またその大変さを口にしないところが格好いいんですよ。そういう精神的にタフな部分を、自分も含めて他のメンバーにも見習って欲しいと思ってるんです。前回のBALZACとのツアーで学んだのは、どの会場で聴いてもちゃんとBALZACの音になっていることだったんですよ。バンドの世界観が完成しているし、しっかりと地に足が着いているし、BALZACが求められているものを充分理解されているんだなと思って。そんなバンドの在り方みたいなものを勉強させてもらったし、僕らは今までいろんな人たちや与えられた環境に甘えていたんだなと思いましたね。ステージに乗っけてもらうだけで、あとはそこでライヴをやればいいだけって言うか。その点、BALZACは結成当初から何から何まで全部自分たちの手でバンドを動かしていて、ジャケットやTシャツのデザインまでバンドの世界観が隅々まで反映されているじゃないですか。その姿勢を昔から貫き通していることがとても勉強になりましたね。
──でも、MERRYも独自の美学を頑なに貫いているじゃないですか。
ガラ:いや、BALZACに比べたらまだまだです。ヴィジュアル系は些細なことを気にするんですよ。たとえば、ステージに幕があるかないかとか。そういうヘンにこだわったところのある土壌だから、自分たちがもう一歩抜け出せないのかな? とも思うんですよね。
HIROSUKE:僕らが何から何まで自分たちの手で作り上げてるのは、単純に他の誰もやってくれないからですよ(笑)。そのスタンスのままずっとやってきて出会ったのがディスクユニオンのDIWPHALANX RECORDSで、「ずっと続けることにこのバンドの価値があるから、このままやり続けていこう」と意気投合したんです。自分たちのやりたいことが現実的に形になった時に至上の歓びがあるので、途中経過は別に苦でも何でもないんですよね。ゴールに辿り着くまでいろいろあるのは当たり前の話だし、自分たちとしてはごく自然体でやってますね。
ガラ:僕らも以前自分たちでレーベルを立ち上げたので少しは判るんですけど、誰かの手を借りずに自分たちだけでやっていくのは凄く大変ですよね。DIYの姿勢を貫き通して、何処にも属さないBALZACの在り方は純粋に格好いいですよ。僕らも最終的にはそのレヴェルまで行きたいですね。
──MERRYは今年結成10周年ですが、BALZACは気がつけば来年結成20周年を迎えることになりますね。
HIROSUKE:そうなんですよ。ちょっとやり過ぎましたかね?(笑)
ガラ:いやいや、まだまだやり続けて頂かないと(笑)。
HIROSUKE:振り返ってみると、この10年くらいが異常に早かったですね。もう何だったんだろう!? っていうくらいにいろんなことがあり過ぎたし、やりたいことが急に実現できるようになったんですよ。僕らは1999年に初めてLOFTでワンマンをやったんですけど、BALZACを結成した時にLOFTでワンマンがやれたら解散しようって話してたんです。それくらいLOFTは僕らの憧れでした。僕はWILLARDが大好きで、宝島のカセットブック『The Punks』のWILLARDの写真にLOFTの白と黒のタイルが写り込んでいて、いつかあのタイルのステージでワンマンがやれたら本望だねと話していたんですよ。それが結成から10年弱で実現して、徐々に状況が良くなってLOFTでワンマンも実現でき、その辺りからやりたいことをやれるチャンスがどんどん増えてきたんですよね。海外でツアーをやったりリリースできるなんて思ってもみなかったですし。
ガラ:僕もフィギュアを作ってみたいとかいろいろとHIROSUKEさんに無理なお願いをしたりするんですけど、「それはできない」とは一度も言われたことがないんですよ。いつも「面白いね、やってみようか」と頼もしく対応してくれますし、HIROSUKEさんにはいろんな夢を叶えてもらってますね。
HIROSUKE:為せば成るっていうのもちょっと違って、結局のところなるようにしかならないんですよ(笑)。結果的にダメなことももちろんいっぱいあるんですけど、ダメっていう結果も体験できたと思っておけばいいかなって言うか。
ガラ:そこが凄いですよね。海外のツアーも「ホントにここはライヴハウスなのか!?」みたいな場所でやっていたり、本来あるはずの機材や寝床がなかったり、僕らにしてみれば到底考えられないことをBALZACは経験しているじゃないですか。自分たちに置き換えて考えると、そんな状況で果たしてライヴができるんだろうか? と思いますね。
HIROSUKE:もうね、海外は笑うしかない状況なんですよ。今年の6月に行ったドイツのフランクフルトでライヴをやった時は、機材会社のトラブルで自分たちが持っていった楽器が一切届いてなかったりね(笑)。リハーサルをやろうにも、ギターもベースもドラムセットもない。海外のライヴハウスってドラムセットが置いてないから、それも持ち込まないとダメなんです。何も手の施しようのない状況で、「どうしようか?」って途方に暮れました(笑)。
ガラ:日本じゃあり得ない話ですよね(笑)。
HIROSUKE:結局、街にあるレンタル楽器屋が楽器を貸してくれるというので、そうすることにしたんです。もうオープン間際でお客さんの行列ができちゃっていて、そんなところへ機材が運ばれてきたんですよ。知らない楽器を渡させて、「まぁ、これでやってみるか」と。でも間に合わせだからエフェクターがなかったりして、「こんなにクリーンな音だけど、まぁいいか」みたいな感じでやりましたけどね(笑)。
ガラ:確か、スタッフが何百キロも離れたところまで車で機材を取りに行ったんですよね? 日本で言えば東京と名古屋くらい離れた距離を(笑)。
HIROSUKE:そのスタッフがわざわざ要らん所へ運んでしまったんですよ。僕らの機材を乗せてドラムセットを取りに行ったんですけど、フランクフルトから何百キロも離れた街まで行っちゃって。チケットも売れてるからライヴをやらないわけにもいかないし、やるしかなかったんですよ。それに、その時は間が悪いことにオープニング・アクトがいなかったんですよね。他にバンドがいれば楽器を借りられたんですけど、完全にワンマンだったんで。