間口は広く、フットワークは軽く
──そんなアルバムのアートワーク然り、BALZACもMERRYも所有欲を掻き立てられるCDのパッケージやグッズ作りに腐心しているという共通項がありますよね。
ガラ:未だにキッズのままだからなのかもしれないですね。自分でこんなCDを持っていたら嬉しいだろうなとか、もの作りの着想はいつもそういうところですから。BALZACのアートワークにも作り手のこだわりを凄く感じますよね。今でも僕の家にはBALZACのアルバムのポスターが飾ってありますからね、畳半畳分くらいの大きさのを(笑)。
──ガラさんがBALZACから影響を受けたのは、徹頭徹尾コンセプチュアルな世界観を構築している部分ですか。
ガラ:そうですね。音楽以外のカルチャーの部分も引っくるめてバンドの個性を表出していると言うか。Tシャツ一枚にしてもそうですし、欲しくなるものが多いですよね。あと、音楽性もそうだし、バンドのスタンスもそうなんですが、何ものにも縛られていないところに憧れます。
──HIROSUKEさんは、MERRYにBALZACと同じ匂いを感じる部分がありますか。
HIROSUKE:僕はいわゆるヴィジュアル系を通ってこなかったんですよ。知ってるバンドもほとんどなかったんですけど、MERRYを聴いた時は僕が抱いていたヴィジュアル系のイメージと全く違って刺激を受けたんです。ヴィジュアルという枠だけじゃなくて、たとえば自分たちみたいなバンドと一緒にライヴもやれるだろうし、自分たちも彼らから影響を受けるだろうし、リスペクトできる部分が多いなと思いました。僕だけじゃなく、他のメンバーもMERRYの音楽を格好いいねと話してたんですよ。
──最初に惹かれたのは“レトロック”のイメージですか。
HIROSUKE:それもあるし、何とも言えない哀愁がありますよね。僕は昔から哀愁のある音楽が大好きなんで。MERRYの哀愁って、ちょっと他にないなと思うんですよ。それがいいツボを突いてくれると言うか。
ガラ:哀愁のある歌謡曲が自分の基本にあるんですけど、そういうところだけじゃなく、BALZACの音楽との出会いが自分にとっては刺激的で衝撃的だったんですよね。BALZACからの影響をそのままバンドに反映させてしまっているところもあるんです。ちょっと激しい感じの曲だと、サビはBALZAC風に“ウォウ、ウォウ”にしようってつい考えてしまうんですよ。そうやってサビに綺麗なハーモニーを持ってくるバンドが当時のヴィジュアル系には僕ら以外にいなかったんですよね。未だに僕らはアルバムの中にコーラス・ワークの凝った曲を必ず入れているんですけど。
──異ジャンルへと果敢に飛び込んでいく姿勢もまた両者の共通点と言えるのでは?
ガラ:僕らはヴィジュアル系の中でも孤立した場所にいたと思うんですけど、こうしてBALZACと一緒にイヴェントをやらせてもらえるわけですから、HIROSUKEさんの心の広さがあってこそですよね。BALZACみたいな確固たる地位を築いたバンドがヘンな先入観にとらわれないのはとても嬉しいです。僕らはいろんなジャンルのバンドとライヴをやりたんですけど、最初から毛嫌いされて、なかなか引き受けてもらえないんですよ。
──確かにBALZACはフラットな立ち位置で異ジャンルとのコラボレーションを自由に行なっていますけど、誰彼構わずというわけではないですよね。
HIROSUKE:もちろん。MERRYやムックとライヴで共演することもあって、ヴィジュアル系の人たちからオファーを頂くこともあるんですけど、自分たちがいいと思わない限りは丁重にお断りさせて頂きますからね。誘ってもらえることはとても嬉しいんですけど、やっぱり曲ありき、バンドのコンセプトありきだと思うし、このバンドが一体何をやりたいのかをちゃんと理解した上でコラボレートしたいんですよ。こちらが疑問符を抱いたまま何か一緒にやっても何も残らないだろうし、自分たちにとってもいい結果をもたらすことにチャレンジしたいですから。とは言え、間口は広く、フットワークは軽く行きたいんですけどね。