『COSMIC HERO』から1年ぶりとなるニューアルバム『ENDLESS SUMMER』をリリースしたsoulkids。今作ではピアノやシンセ、グロッケンなどの楽器を多用したことによって、アレンジの幅が広がり、バンドが向かう先を示した作品になっていることは一目瞭然だろう。また歌詞も抽象的な言葉ではなく、ストレートな言葉を使えるようになり、伝えたいものや言葉の芯がはっきりと見え、今の彼らにブレがないことを実感した。
結成されて以降、幾度かのメンバーチェンジを繰り返し、精神的にも肉体的にもタフさが増した彼ら。『ENDLESS SUMMER』は彼らが歩んできた道のりが、これまでとは違う形で新しく提示されたような1枚。ここから強い武器と、大きな野望を胸に掲げセカンドステージへと向かう!!
今回は、soulkidsを引っぱる役でもあり作詞を手がけるボーカル&ギターの柴山 慧にお話を伺った。(interview:やまだともこ)
4人全員が絡み合ってる感じのアルバムができた
──Rooftopへの登場は2年ぶりぐらいになりますが、どんな2年を過ごされていたんですか?
柴山:この2年間でメンバーチェンジがあり、音楽に対する向き合い方や、作る音楽や、気持ちの変化もあって出す音がちょっとずつ変わって来たんです。バンドとして、どうしたら今よりもっとおもしろくなるかとか、良い状況になるか。それに伴ってこういう曲があったら良いよねとか、こういうフレーズを入れたいとか、こういう楽器を入れたいみたいと、音楽やバンドに対しての向き合い方が変わってきたような気がしています。バンドをもっと良くするにはアイディアをどんどん出していくしかないんです。それがやれてないとモチベーションだってブレますけど、やれていれば毎日がワクワクするというか、良い循環でバンドも生活もサイクルしていくと思いますから。
──では、今メンバー全員が同じ方向を向けているんですか?
柴山:はい。同じ方向に向いている分、演奏面でも意識面でも音楽に対する部分で足りていないところはガンガン突っ込むし、コミニュケーションをすごく取るようになりました。言葉のコミニュケーションが増えた分、音のコミニュケーションも増えたし、曲やライブやバンド活動していくということに反映できていると思います。
──その結果なのか『ENDLESS SUMMER』は、前作の『COSMIC HERO』(2009年5月リリース)から比べると、だいぶ音も変わったような気がしますね。soulkidsと言えば、『アネモネ』とか『Jellyfish』に代表されるように、ギターのメロを聴かせる感じがありましたが、今回はアレンジに幅が出てきたんじゃないかと。
柴山:『ALOHA!!!』(2008年6月リリース)の時にドラムの(深谷)陽一郎が入ってきて、ベースの(角谷)翔平が戻ってきて、『COSMIC HERO』は今の4人になって初めて出したフルアルバムなんです。この布陣になって何を出そうというところで、4人で出せるエネルギーを追究して曲を作ったので、エネルギーが高い曲がいっぱい入っているんですが、その後ツアーに回った時に、もっとやれるという思いが沸いてきたんです。そこからアイディアがどんどん出てきて、アルバムのツアー後から半年の間にもライブをけっこうやって、曲も同時進行で作りながら『ENDLESS SUMMER』のレコーディングをしました。どうすれば自分たちの空気をもっと作れるかと追究したり、奥行きや4人全員が絡み合ってる感じのアルバムが作りたくて、ライブの空気感とか今のムードは曲に反映出来たと思います。
──アレンジで言えば、シンセやピアノを使うという新しい試みもありましたし。
柴山:今まではシンセで弾くようなフレーズも敢えてギターで表現していたんですけど、楽器が変われば新しいインスピレーションが生まれるかもしれないし、やって納得がいかなければ止めれば良いし、固くなった頭を一度壊すという意味もあってシンセを入れてみたら良かったのでこれで行こうと。
──シンセを入れるというのは、皆さんで話をしている時に出たアイディアなんですか?
柴山:前々から入れたいと思っていたんだけど、具体的にどう入れるというのは漠然としていたので、とりあえずシンセを買うところから始めました(笑)。ギターの(西田)浩二が弾いているんですけど、元から弾けたわけではないので1からですね。でも、自分が考えたフレーズや弾きたいメロディーを、ギターで弾くかシンセで弾くかの違いだから、自分のイメージを表現するという意味では同じことだと思うんです。あとは周りの楽器とどれだけ解け合っていけるか。それに慣れていかに気持ちを乗せられるかという問題だと思うので、今必死になって練習していると思います。
──『マジックマジック』もかなり弾いてますよね?
柴山:『マジックマジック』では、浩二はギターを一切弾かずにシンセだけなんです。"この曲はギターなしで良いんじゃない?"って。でも、シンセを入れるんだったら、ライブでもやれるようにしようっていう話はしたんです。『DIAMOND』はライブでやったんですが、ギター弾いてすぐにシンセ弾いてわりと忙しい感じなので、『マジックマジック』はアレンジもライブでやれるようにしようって。
──曲自体が不思議な雰囲気を持っていますが、歌詞の中に"コーラス"とあって、これは何ですか? 確かにコーラスはしていましたけど...。
柴山:コーラスがあるよっていうことなんです。この曲は、魔法のマジックと油性ペンのマジックとかけていて、アレンジでは不思議なイメージを持たせたくて、どうしたらそれっぽくなるんだろうというところで変なコーラスを入れているんですけど、曲の中でのフックになっているから強調したいというのがあって"コーラス"って書いたんです。
──あと、歌詞が韻を踏む事を重要視されているような気がしましたが。
柴山:言葉遊びをするのが好きなんです。でも、言葉遊びにウエイトを置きすぎると文章としての意味が薄くなっちゃうから、そこのバランスは自分の中のせめぎ合いなんです。今回のアルバムの歌詞は自分でもよく書けてるかなと思っています。
──歌詞はどう書いているんですか?
柴山:友達と喋ってる時とか、チャリンコに乗ったり、ボーッとしている時とかに、耳からに入ってきた言葉を広げて行きます。それと、街の看板とか目に入った言葉をメモっておいて、後日それを見てイメージを広げたりとかという作業です。友達と話をしている時も下ネタを挟みながら喋っているんですけど、そういう日常会話のやりとりの中でもできるだけ言葉遊びをしようと思っていて、僕の中では下ネタも韻を踏むのも作詞というか言葉の語彙を広げるための作業なんです(笑)。
ギャップを作る事がポップ感でありロック感である
──今作に入っている『アネモネ』と『Jellyfish』はタワーレコード限定でリリースされていたシングル曲ですが、他の曲はアルバムならではの遊びもあり、シングルがきっかけで聴いた人がこういう一面もあるんだと楽しめる作品ですよね。
柴山:僕たちはあくまでバンドだし、ライブハウスをメインに活動しているバンドだから、CDを買って聴いてくれるのも嬉しいですけど、そういう人をどうすればライブに呼べるか、ナマで聴きたいと思わせられるか。そのためにライブをイメージできるような演奏をCDにパッケージすることは出来たと思っています。歌詞にしてもこだわって言葉を選んでいるし、CDを手にとって歌詞カードを読んで、曲の味わい方を照らし合わせながら聴いて欲しいし、そのイメージを持った上でライブに来て欲しいし、そしたらきっともっと楽しめることがたくさんあるはずなんです。今ライブハウスに来る人が減っていると言われていますけど、音楽を嫌いになった人が増えたというわけではなくて情報が増えていることだと思うので、僕たちは熱量を上げていくしかないと思うんですよ。
──熱量を上げていくと言えば、『DIAMOND』や『ラブソング〜For Happy Wedding〜』『Hurricane Grace』など、テンション高めの曲が多いですよね。
柴山:お客さんも参加できるようにしたいなというのがあって、ライブの空気感を想定できるんじゃないかと。真面目にやるところは全力で真面目に、全力でふざけるところは全力でふざければいいだけだと思います。それは音楽に限ったことじゃなくて、音楽も日常生活も自分の心構えも全部同じことだと思うんです。自分が発信したり表現するとか、あるいはそれを受けるという上では、その人のフィルターを通して出したり受けたりするだけだから限界があると思いますが、中途半端なものでなければ伝わると思うんです。メリハリをつける事が大事ですから。
──先ほど、歌詞はこだわって言葉を選んでいるとおっしゃっていましたが、伝わりやすい言葉が増えましたよね。
柴山:昔はストレートに表現するのが恥ずかしかったし、抽象的な表現をすることがかっこいいと思っていましたが、それってストレートに表現することから逃げていた気がするんです。抽象的に表現する良さももちろんあるんだけど、今はストレートなことをストレートに表現する中にどれだけ行間や奥行き、色気を含ませられるかということに面白さを感じています。そういう状態だから敢えて抽象的に表現する部分も作れるし、自分としては表現の幅も広がっているし、今はそういう風に変わって来ていますね。
──『レムスイミング』の"いっそ蝶になってみよう"とか、『DIAMOND』の"動き出したフューチャー"とか、今のsoulkidsが一番言いたい事はこれなんだということがわかりやすい作品でしたね。それは聴く側に何かを感じて欲しいとか、できたら少しでも気持ちが変わってもらいたいという願望はあるんですか?
柴山:歌詞って僕が思っていることとか感じてることだから、聴く側に100%は当てはまらないと思うんです。僕が何にドキドキしてて、何にワクワクしてて、何にムカついているのかなんて。でも、聴く側と少しでも気持ちに共通点が見えたらきっと同じ感覚で会話ができるようになると思うんです。そういう人たちが増えれば増えるほど、ライブの空間って素晴らしいものになると思うから、それを共有したいんです。
──ところで、『ラブソング〜For Happy Wedding〜』はどなたかのために作った曲になるんですか?
柴山:僕今27歳なんですけど、結婚する同級生がけっこういて、仲が良いヤツの結婚式があるというので間に合うように作っていたんですけど、実際は間に合わなかったんです(笑)。でも、きっかけとして人のために最大限に祝おうというパーティームードの曲を作りたくて、このアルバムではピアノボーカルに挑戦してベースはアップライトベースで、アコースティック感がよりパーティーっぽくなりましたね。
──アレンジがかなり緻密ですよね。『結婚行進曲』が途中挟まれていたり。
柴山:『結婚行進曲』は4拍子なんですけど、そのまま入れるのはひねりがないなと思って拍子を変えて入れました。パーティーな雰囲気がプラスできたらなって。
──ただ、アレンジはパーティーっぽいんですけど、ウエディングソングのわりには歌詞でマイナスなことを言ってません?
柴山:この曲は、結婚する2人に向けて歌っていたらダメなんです。お前の奥さん奪ってやるみたいに聴こえると後々気付いて、新郎に歌わせないとダメなんだなって。だから、結果歌わなくて良かったなって思いますけど(苦笑)。明るいラブソングでなんだけど、コード進行がそんなに明るくないとか、差があった方が曲に広がりもできるかなと。
──そういうギャップの部分を作って、しめしめみたいな気持ちってあります?
柴山:あります。それが僕の中のポップ感だったり、ロック感だったりするんで。
──『Hurricane Grace』で、まさか女性のコーラスが入ってくるとは思ってもいませんでしたよ。
柴山:あれ、メンバーでやってるんですよ。
──え!? てっきり女性だと思ってました。
柴山:僕と翔平でやってます。盛り上がるところは盛り上げて、その次は静かになって、メリハリをちゃんとつけようと思って。
──『White House』は鈴やグロッケンが使われて、すごく聴かせる曲でアルバムのフックとなってますよね。
柴山:テンションが高いだけじゃなくて、隙間が多いと他の歌以外の音も聴こえるし、歌というよりは声の響きとか声の力みたいなものを届けられるといいなと。