5月20日にニューアルバム『COSMIC HERO』をリリースした名古屋在住のオルタナボーイズことsoulkids。昨年は2度のメンバーチェンジを経験した彼ら。2008年3月には若干20歳のドラマー深谷陽一郎が加入し、バンドに若く新しい風を注入した。10月には元オリジナルメンバーであるベースの角谷翔平が再び加入し、分厚い安定した攻めるグルーヴを獲得した。2度もメンバーチェンジをするというのは、とても体力を使うことだろう。しかし、どんな荒波が何度押し寄せて来ようとも、今の彼らは逆境を力に変え、確実にタフさを増しているように思う。作詞を手がける柴山慧の詞的センスは磨きがかかっているし、西田浩二のギターサウンドは格段に気持ちが良い。また、4月8日にタワーレコード限定でリリースしたシングル『blue spring』だが、『blue spring』を直訳すれば"青春"である。"青春"という甘酸っぱくもあり、恥ずかしい思い出もカップリングされるあの季節。しかし、夢も希望もエネルギーも100%超で備わっていたあの季節。それをタイトルにしたということは、やはり彼らは1999年にバンドを結成して10年目に突入しながらも、バンドに対する熱量もひたすらに向かう姿もあの頃と変わっていないということではないだろうか。『blue spring』の歌詞に出てくる"桜通り"や"赤い地下鉄"と言った地元名古屋を想像させる歌詞は、青春を謳歌している時のままの彼らの姿を感じ取ることができる。
そして、すぐにリリースされた『COSMIC HERO』。「花が咲いた。種をまいた。赤い実がなった。」というフレーズで始まる『ワールズエンド・ガールフレンド』。結成当初はメロディックパンクをやっていたというsoulkidsならではの超ハイテンションな疾走感のあるナンバー。スロウテンポで始まる曲だが、曲が進むにつれてベースがうなりを上げ、途中に挟まれる宇宙空間をイメージさせるサウンドで、彼らの言葉を借りるなら"宇宙のワルツ"とも言える『満天星(ドウダンツツジ)』。ギターのカッティングが心地良い『メロウイエロウ』。そして、次の曲はなんとシンディ・ローパーのカバー。カバー自体初めての彼らが、まさか『Time After Time』をカバーするとは! と誰もが予想していなかった選曲。ちゃんとsoulkidsのメロディーになっているところが素晴らしい。3拍子で小気味よいリズムで無条件に体を反応させる『サイダー』はsoulkidsにとっても今までにない試みの曲。ライブで盛り上がること間違いなし。カラッとしたドラムの『聖者の行進』は、未来に向かって真っ直ぐに進もうとする4人の姿が重なる。『magnolia(again 2009 version)』は、BEAT CRUSADERS / kuhのクボタ氏プロデュースでコーラスにも参加しているとのこと。テンポの良いギターを基調に鍵盤の音が加わりキラキラとしたロックサウンド。そして、ボーナストラックが入った全12曲。宇宙的規模のヒーローとなるべく、準備の段階に入っていることを想像させる。
しかし、ジャケットのイラストになっている男性。COSMIC HEROとは掲げているものの、髪をきっちりと分け、ヒーローらしからぬ風貌を見せているのだが、ジャケットを1ページめくるとそこには、異常なまでに鍛え上げられた体を披露している彼が佇んでいた。ハッキリ言って、顔と体型のバランスが全く取れてなくて気持ちが悪い(笑)。もし、ヒーローを呼んでこの人が助けに来てくれたら、うつむき加減に「やっぱり大丈夫です」と言いたくなるほどのナゾの人物。一体何者なのだろうか。そんなことを考えさせるのも彼らの遊び心なのだろう。
近年ジワジワと盛り上がりを見せる名古屋バンドシーンの先頭に立つsoulkidsの、現時点での最高傑作が誕生した。常に前を向いて進んでいる彼らだからこそ、これからどんな形に進化し、飛び立っていくのかを楽しみにして頂きたい。(text:やまだともこ)