ドラムのメンバーチェンジで弱冠二十歳の深谷陽一郎をメンバーに迎えたsoulkids。このメンバーでの初レコーディングとなる今作『ALOHA!!!』は、タイトルが示す通り、開放感があり、今の彼らのテーマでもある"攻め"が全面に出た作品となっている。新しくメンバーが入り、バンドを結成した当初のテンションでやれたとボーカル・ギターの柴山 慧が言っていたように、初期衝動を詰め込んだロックでポジティブで、元気いっぱいの楽しい雰囲気がそのまま詰め込まれている。
自信を持ってやっているとは、少しでも迷いがあったら言えない言葉だが、それが言えると言うことは、本当にバンドが良い状態になっていることが伝わってきた。ライブにもCDにも全力投球の彼らを感じてもらいたい!(interview:やまだともこ)
2008年のsoulkidsは"攻め"
──深谷さんがsoulkidsに加入したのは最近なんですよね?
柴山 慧(G.Vo):メンバーになったのは今年の3月末ぐらいですが、1月からレコーディングのリハには陽一郎に入ってもらってました。
──深谷さんは、このバンドで初めてレコーディングをしてみてどうでした?
深谷陽一郎(Dr.Cho):環境のいいレコーディングスタジオに入るようになったし、最初は緊張しかなかったです。慧君とはちょくちょく会っていたけど、他のメンバーとはあまりしゃべったことがなかったからどうやって打ち解けようかなって。
柴山 :年が5つぐらい離れているから、そういう意味でも気は使うわな(笑)。
──どうやってお兄さん方の心の中に入っていったんですか?
柴山 :アニメが突破口でしたね(笑)。
──そしたら心を開いてくれて...。
深谷:どうなんですかね(笑)。
──今の4人になって初めてできたアルバムが『ALOHA!!!』ですが、タイトルからして開けた感じがすごくしますね。
柴山 :今までの僕らって周りからは真面目に見えていたみたいなんです。そこから抜け出したい気持ちもあって、メンバーも替わるし今度のアルバムはもっとリラックスしてやりたいよねってレコーディングをしたんです。アルバムタイトルは一番最後に決めたんですけど、2008年のsoulkidsは"攻める"っていうテーマがあって、もっと自分たちからアウトプットする作業をしっかりやりたいと思ったんです。そういう意識でレコーディングをして、今まで付けたことがないタイトルを付けようって、メンバーやスタッフの方と飯を食いながら考えていたんですよ。いつものごとくマイペースなギターのともくん(淺野友邦 / Ba.Cho)を見たら"ALOHA"って書いてあるトレーナーを着ていて、それにしようって(笑)。「こんにちは」以外に「さようなら」という意味も含んでいて、しかも「愛」っていう意味もあって今回の全曲に繋がるんですよ。マジックです。
深谷:ともくんのトレーナーから、まさかこんな奇跡が起きるとはね(笑)。
柴山 :かわいいトレーナーなんですけど、自分が古着屋さんに行っていいなと思っても"ALOHA"ってプリントしてあったら一瞬悩みますよね(笑)。たぶん彼は「これええなぁ」って買ったと思うんです。そんな感じがピースだなって、余計に好きなタイトルになりました。
──なるほど。では今みなさんが向かっている"攻める"となると、自分が心を開いていかないと相手も開いてくれないと思うんですが、そこは意識的に変えていこうっていうのはあります?
柴山 :僕ら名古屋に住んでいて、音楽環境とか音楽文化は地方都市の割には整っていますけど、東京に比べたら設備も数も人口も違うんですよね。名古屋から東京の人たちに対して何ができるのかって考えたら、自分たちで発信するしかないんです。何を具体的に発信するかと言ったらいっぱいあると思いますけど、意識から変えていかないといけない。メンバーが替わってどうしようじゃなくて、メンバーが替わって何をするっていう軸は定まってきています。結成当時のメンバーは僕だけなんですけど、バンド名も変えずに8年ぐらいやっていて、自分が作ってきた曲とか聴いてきた音楽がちょうど1周するぐらいのタイミングに来ているんです。そういう時にメンバーが替わって新しい風がバンド内に吹いて、自分たちはこうしたいって提示できるのがバンドを続けていくっていうことなんじゃないかなと思ってます。
──今も名古屋に住んで活動をされていますが、東京でやるのと名古屋を拠点にするのとは違います?
柴山 :東京に住もうかと考えたこともありますけど、発信していくという点では名古屋だろうが東京だろうが同じだと思うんです。今自分が置かれている環境とか、状況を変えていくっていう作業ができないならどこに住んでいても一緒かな。最近はフロム名古屋のバンドがいろんなところで受け入れられいてますけど、もっと盛り上げるには僕らからなんとかやらないとねって、24-twofour-とか竹内電気とかと一緒にがんばろうかってやっているんですよ。
無駄を削ぎ落とした結果...
──『ALOHA!!!』は曲が全体的にストーリー性が強い作品だと感じましたが、そこは意識されました?
柴山 :今までの僕らの曲って風景描写とか情景描写とか客観的に見た歌詞が多くて、だから真面目だとかやわらかいとかやさしいというイメージがバンドにあったと思うんです。でも、そういう歌詞を書くことにマンネリを感じてきたのと、愛だの恋だのをテーマにした曲はあまりなかったから新しく挑戦したいな、ちゃんと主人公がいるような歌詞を書けるようになりたいなって思ったんです。そういう部分ではストーリーが汲み取りやすくなっていると思います。ラブソングって男女間の愛だの恋だのもありますけど、人間としての愛も大事だなと思うんです。自分が恋愛をしている時だったら自然とそういうモードに入ると思うんですけど、今まで自分でそういうシチュエーションに立ってなかったっていうのもあって...(苦笑)。
──それが3曲目の『サンライズ』とか『Answer song』みたいな歌詞になるのかもしれないですね。2曲目『スプートニク』の最後の、壊れた感じのサウンドも良い雰囲気ですね。
柴山 :『スプートニク』ってロケットの名前なんですけど、愛ってすごくでかいから宇宙みたいだねって話をしていて、じゃあ曲も宇宙みたいにして最終的にロケットが飛んでいってぶっ壊れるっていう感じにしたらおもしろいよねってこういう形になったんです。拍子がコロコロ変わったりする感じとか、90年代のメロディックパンク的なアプローチもありつつ楽しくやれました。
──みなさん、メロディックパンクは通っているんですよね?
柴山 :僕は高校当時、バンドをやるきっかけだったのがエアジャムなので、ハイスタとかめちゃくちゃ聴いてました。だから自分で作った曲とかはマネでしたけど、武器を装備すれば装備するほど重たくなるから途中で捨てて、今は1周して布の服だけを着ている気分です。直球でやってるときって何が無駄かわからなくてとりあえず詰め込みますよね。それで無駄を取ってみたら妙にこざっぱりしちゃうこともありますけど、それも経過すると無駄を楽しめるようになるんです。これからどうなっていくんだろうっていう想像するのも楽しいですけど、具体的には決めずにやりたいです。僕らのバンドの軸にあるのがメロディーとか歌だから、それさえあればどうアレンジしても大丈夫でしょうって。
──4曲目の『Answer song』は唯一の英詞曲ですが、英詞で作られていた時期もあったんですよね。
柴山 :結成当時は英語の曲をいっぱい作っていたんです。当時のレーベルの人にスタジオで録った新曲をMDで送ってたんですけど、それだけ送るのもさみしいので手紙を添えていたら、「文章書くのうまいから、日本語で曲を書いてみなよ」って。でも、英語でしか書いてなかったから「日本語で曲を書くなんてダセーですよ」って思ってたんですけど書いてみたら違和感がなくて、こっちでもいいかなってやっていたらいつのまにか日本語のほうが多くなったんです。この曲はメロディーが固定でバックの演奏でどうやって遊ぶかって思ったら、英語だと発想しやすかったんです。
──でも、他とずれることなくストーリーのある詞になってますね。全体的に曲作りには時間はかかりました?
柴山 :『アナログタウン』を昨年の8月に出して、9月から12月までツアーが30〜40本あったので曲を作りつつ、12月にドラムが抜けて陽一郎が入って、めちゃくちゃ急いで作りました。本当は20曲作って6曲とか選びたかったんですけど、6曲できてその6曲。絞り出しました(笑)。
──その割には完璧な曲が揃いましたね。ライブをやることによって曲も成長しますからね。
柴山 :それが一番やりたいんです。みんなが演奏する温度が上がっていくといいですよね。自分たちのやりたいことをお客さんに伝えるにはライブが一番いいんだけど、ライブを見てない人に伝えるにはパッケージするものは最初から高い温度にしておきたいんです。
ライブに来てもらうためのCD
──6曲目の『yawn』ですが、これは何て読めばいいんですか?
柴山 :ヨーンって読みます。あくびっていう意味。自分たちの中でパワーポップっていうと、サビのメロディーをギターソロでそのまま弾くみたいなことってありますけど、そういう遊びの感じを入れたかったんです。
──余裕が出てきたんですね。詞に朝焼けとか夜明けという言葉が出てきているので、バンドの活動に対しても明るい未来を想像させますね。ライブって自分も参加したいって見ている側にもあると思うんですけど、それが『yawn』のようなハッピーなライブ感のある曲があったらライブに行ってみたいって思うんじゃないですかね。
柴山 :周りが手拍子してなかったら恥ずかしくてできないかもしれないけれど、その壁を取るのはステージかなって思います。
──それがまさに"ALOHA"ですね。それにしてもトータルで見て、今のsoulkidsを表現している1枚になりましたね。
柴山 :バンドが楽しいから続けられてるし、仕事をやりながらもライブもいっぱいやれているし、もっといっぱいの人に聴いてほしいからいろんな所にも行くし、今ってCDからバンドを知るっていうサイクルになりつつあるじゃないですか。でも、バンドだからライブを見てもらいたいし、ライブでいい演奏をするためにスタジオでいっぱい練習をしてくるわけだし、ライブを見て家に帰って余韻に浸りながらCDを聴いてもらって、またライブに行きたいと思ってもらえるように。CDは買うけどライブは行かないっていう人もけっこういると思うけど、そういう人にもライブに来てもらえるようなCDを作らないとなって思うんです。バンドを続けてきて、そういう気持ちでやれるようになりました。
──ツアーも合わせて9月のライブまで決まっているんですね。ツアーはどんな感じになりそうですか。
柴山 :アルバムをインディー合わせて4枚出していて、4回ツアーをやっているのでノウハウはわかってますけど、初めて行く場所でお客さんが少なくても自分たちを見に来てくれた人が1人でもいたら、来て良かったと思って貰えないとダメだと思う。初めましての人に自分をどうやって印象づけるかは音楽に限らず、道を歩いていたら偶然ほしのあきに会ったらどうやって自分をプレゼンできるかと同じですね。
──え?
深谷:絶対舞い上がるね。
柴山 :そういうことの繰り返しがステージに出てくると思うんです。好きをどう伝えるか。
──これだけボキャブラリーがある柴山さんなら大丈夫ですよ。
柴山 :(笑)試行錯誤して頑張りますよ。なんとかしてほしのあきと仲良くなれるように(笑)。
──は、はい。とにかく、ドラムのメンバーチェンジを経て心機一転し、新生soulkidsも良い雰囲気で活動していますという感じですね。
柴山 :陽一郎が入ってから、初めてのCDだし初めてのレコ発ツアーだし、今まで自分たちのことを知ってくれてる人はギャップもあると思うけど、それも楽しんで貰えるように僕らもやっていきます。バンド結成したてのテンションになって、元気が良くなりました。今の形もいいと思うし、僕ら自信を持ってやってるから、ライブに来て下さいって。
──ジャケからもカラフルでポップで開けた感じが伝わりますね。
柴山 :今まではアー写も横並びで真面目だなと思ってましたけど、どうやって写真撮るかってみんなで話し合って楽しんでやれたので、それも"ALOHA"な感じですね。