インタビューに馴れ合いは御法度
──僕はビヨンズのトリビュート・アルバム座談会(2002年6月号)やファウルの“砂上の楼閣”30回記念インタビュー(2004年3月号)、ブッチャーズとザ・バンド・アパートの料理対決(2005年11月号)、それと怒髪天を初めて表紙にできた号(2004年12月号)などがとりわけ印象深いですね。
増子:俺達を表紙にしてくれた時は凄く嬉しかったよ。裏表紙がブルー・ハーブで、偶然にも札幌繋がりでさ。裏のオシャレさと比べて俺達のベタベタさが凄まじかったよね(笑)。クールな佇まいと俺達の思いっきり肩に力の入った感じの対比がたまらないよ(笑)。まァ、ブッチャーズが新譜を出す時のインタビューはルーフトップが一番面白いと俺は思うよ。やっぱり、ヨーちゃんと椎名君の関係性があるからね。
──『banging the drum』をリリースした時のインタビュー記事は、吉村さんが「楽しく読めた」とわざわざメールをくれて、凄く嬉しかったですね。
吉村:そうそう、あの時はコロムビアで一対一でやったんだよね。持って来てくれた缶ビールを呑みながら(笑)。まァでも、椎名は友達っちゅうのもあるけど、そこを一回取り払ったところで喋りやすくさせようとするっていうかさ。それが結果として面白い記事になればイイよね。面白くなかったら単なる内輪ノリで終わって最悪だけど。
増子:そうだね。あと、ヨーちゃんにしても健ちゃんにしても、他の雑誌なら答えてないだろうなっていう2人の言葉がルーフトップの記事にはあるからね。俺も、他の音楽誌だと余り真面目なことは喋れないからさ(笑)。
──増子さんは気配りの人だから、インタビュー初心者には凄く話しやすい対象だと思いますよ。
増子:うん、やりやすいと思うよ。“これは言っとかなきゃ”っていうのを3つくらい考えて話して、あとは世間話ばっかりだから(笑)。でも、初心者はそれ以上突っ込んでこないからね。やっぱり、話が広がるか否かはそのインタビューア次第だよ。
──有り難いことに皆さんとは公私共に親しくさせて頂いてますけど、インタビューで向き合う場面ではそういう関係性を一切排除して臨んでいるつもりなんですよ。お友達内閣ならぬお友達インタビューになると、結果的に記事が凄く生温くなってしまうので、僕は絶対に避けたいんです。
吉村:そうあるべきでしょ。読んでるほうも不快に感じることもあるだろうしね。まァ、他のバンドのインタビューに比べて楽しくやってると思うけど(笑)、抜き出すところも馴れ合いじゃなく巧くやってくれてると思うよ。
増子:ちゃんとシビアにやってくれるよね。あと、どの雑誌もそうだけど、活字になると凄く冷たく受け取られる場合があるし、誤解が生じることも往々にしてあるからちゃんと校正はさせてもらわないとね。そうじゃないと、自分でその発言に対して責任が持てないからね。
吉村:ギャグのつもりで言ったことが、そう取られないケースもあるからね。ストラングラーズの座談会の時(2007年3月号)もさ、ジャン・ジャック・バーネル自身が読んでるわけはないと思うんだけど、かなり細かくチェックしたんだよ。その場ではノリで話したことも、活字になると悪意が感じられることもあるからね。
増子:そうそう。最後に「(笑)」を付けないと、過剰に深刻に取られることもあるからさ。まァ、俺の場合は「(笑)」を付けすぎだって話があるけどね(笑)。
吉村:まァその前に、俺達の見開きページを見て“フン!”って思ってる人もいるかもしれないよね。“毎月毎月、なんでこんなコラムが続いてるんだろう?”って思ってる若い世代もいるだろうね(笑)。
増子:いるかもね。でも、俺達以上に面白いことができるんだったら名乗りを上げて出てこいや! って感じかな(笑)。若かろうが若くなかろうが一切関係ないよ。面白いか面白くないか、凄いか凄くないかだけだから。若くても凄いヤツは凄いんだよ。
いつかロフトでラーメン屋をやろう!
──皆さんの近況を伺いたいのですが、まずビヨンズはニュー・アルバムの制作を無事終えられて。
谷口:ええ。ヨーちゃんが紹介してくれたスタジオ(新大久保のフリーダム・スタジオ)でレコーディングしまして、今回はかなり激しめの曲が図らずも多くなりましたね。本当はビリー・ブラッグとウィルコが一緒にやった時の音楽とか、自分の年齢を考えればもっと落ち着いた感じの音楽を体現しなくちゃいけないと思ってたんですよ。歌も演奏も、ナイーヴさと優しい感じのソウルを感じさせるものというか。でもバンド編成だからなのか、ついつい激しくエモーショナルに唄ってしまうわけです(笑)。自分はそれで良いんだろうか? っていうのをここ2、3年ずっと考え続けているんですよね。
増子:いや、それでイイんだと思うよ。だって、全部正解なんだから。“ノリでやっちゃったかな?”って思うものまでもが全部正解だから。最近それは凄く思う。“これどうかなァ…?”なんて最早思わない。失敗なんかない! レコーディングしたデータが消えちゃったら失敗かもしれないけど、消えない限り失敗はない! 思ったことをそのまま言えばイイんだよ。ビヨンズはファウルに比べて大人になってると俺は思うしね。
谷口:ホントですか?
増子:うん。一度フラットな状態に戻ってから“それでもこれをやろう!”っていう意志があるから。それは大人じゃないとできないよ。若気の至りっていうのは若い頃にしかできないけど、大人になってからの至りは熟考した上で至るわけだから、余計にタチが悪いんだよね(笑)。
──怒髪天はここ数年、良い意味で軽くなってきていますよね。
増子:意識してなるべく軽くしてるんだよ。辛気くさいのは普段の生活だけでイイんだわ。俺達もアルバムのレコーディングを終えたばかりなんだけど、今回はその作業の合間にツアーをガンガンに入れてたから死ぬかと思ったよ(笑)。今まではレコーディング作業に集中したくて、絶対にライヴを入れなかったからね。でも、今回はそれを敢えてやろうと。何か新しいものが見えてくるかもしれないから。確かに見えたよ、“地獄”がね(笑)。歌詞をまとめる時間がなかなかなかったからさ。まァ、毎回言ってることかもしれないけど、今回も凄くイイ作品ができたと思ってるよ。一言で言えば、軽くて深い。隠れてる意味は深いかもしれないけど、スタンスは凄く軽い。大人になったからと言って深みを感じさせないものがイイっていうのがモチーフだったからね。
──ブッチャーズは結成20周年イヤーが絶賛続行中ですね。
吉村:うん。来年もそれを続行していくけどね(笑)。
増子:もう20年も経つのかァ…。来年は俺達もシミ(清水泰而、怒髪天)が入って20周年なんだよ。なんでシミが入ってからの記念をしなくちゃいけないんだ!? っていうさ(笑)。
吉村:まァ、シミも俺達がいなかったら今頃はこの世界にいなかっただろうね(笑)。
増子:そうだよ。アル中で入院してるか、千歳でニヤニヤしてるかどっちかだっただろうね(笑)。
──まァとにかく、10月1日はルーフトップ主催でこの3組によるライヴをブッキングしたので、ひとつよろしくお願い致します。
増子:俺の中では椎名ナイト…略して“シーナイト”だからね(笑)。この3組が揃うのは貴重な機会だし、来ないと絶対に損すると思うよ!
吉村:この見開きコラムを読んでる人がどれだけいるかが当日判るんじゃないの? 次の号のこの見開きは、その日来てくれたお客さんの落書きにしよう!(笑)
──前向きに検討します(笑)。では最後に、オープン31周年を迎える新宿ロフトに向けて一言お願いできますか。
増子:ロフトでオリジナルのラーメン屋をやろうよ!(笑) ロフトには全国からいろんなバンドが集まって来るから、札幌の味噌味もあれば博多の豚骨味でも何でもあるっていう。そのメニューにそれぞれバンドの名前を付けるんだよ。
吉村:ああ、それイイね。俺もカレーライスとか料理を作りたいな。俺、コックやるよ(笑)。
谷口:じゃあ、僕はウェイターを(笑)。ウェイターっていうか、お客さんを迎える入口にいる人がイイですね。
増子:健ちゃんは『ビストロ・スマップ』で言うところの中居君だね。「オーダー!」って言う係(笑)。…まァ、そりゃどんなライヴハウスだよ!? って話だけどね(笑)。