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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】MARS EURYTHMICS(2007年5月号)-磯部正文、本格始動!! "価値ある形"を追い続ける珠玉の作品『Range over hill and dale』

磯部正文、本格始動!!“価値ある形”を追い続ける珠玉の作品『Range over hill and dale』

2007.05.01

万人共通の“いい感じ”が、MARSの中にあれば

──磯部さんが詞を書く場合、メロディに歌詞を乗せてるんですか? 歌詞が先に出来てるときも?

磯部:歌詞がまるまる先にあることはないですね。たまたま歌ったらそうなったっていう部分は、響きがいいのでそのまま使ったりはしてますけど。結構後乗せサクサク(笑)。サクサクは後乗せで、苦労しないって意味ですよ!(笑)

──デモ録ったり、セッションしてるときに歌うデタラメな歌詞に似た言葉を探してくるんですか? それとも意味づけが先?

磯部:曲によって違いますね。『価値ある形』なんかは言葉を大事にというか、意味をわかりすぎず、浅すぎず、深すぎず、とかいろんなこと考えながら作りましたけど。逆にノリのいい曲は難しいので、そのまま歌ったやつを聴いて、「ここは声のハリがいいなー」ってときは、「やっぱ母音は“い”だなー」とか。なので最近は、意味求めないなら求めない。どうせ言葉を繋げると絶対おもしろいはずですから。だから楽チンになってきましたね。僕は意味なくていいやと思ってたのに、意味あるように見えるなーとか。

──聴くほうが「隠された意味が!?」って勘ぐりますよね。

磯部:その作戦が見事に当たったんですね(笑)。全然意味がないのに! まぁハスキンのときからその作業は、ある意味始めてましたけど。こうやって言葉を駆使してというか、丹念にやっておけば、ちょっと年取ったときに楽になるかなーって。なんか意味ないようなこと歌ってても、お客さん側が意味をはめてくれるというか。どうせわからないじゃないですか。人の人生というか、悩みって。それについて、ひとまとめするような、「僕がいるから君は大丈夫だよ」みたいな歌詞は作れないんで。なんじゃそれー! みたいな(笑)。

──最近多い系統ですね。

磯部:その主流から完全にはずれてしまっているので。ま、どーせひねくれるんだったら、変な言葉使って、いろいろやったほうがよろしいかなーと思ったりしてる延長ですね。でも歌ってみたい! ああいうこともね。「君が流してくれた涙が」……「涙を飲んだよ」とか。

── 飲んじゃうんだ!(笑)

磯部:ははは(笑)。もっと素直なことを歌いたいです。「風呂に入って、溺れかけた」とか「冬に風呂入るの寒い」とか(笑)。それをすごく歌い上げたいです!! 別にそういうのを批判してるわけじゃないですよ。ただ、あまりにも多いので(笑)。まぁ自分は自分のできることをやろうって。

──マーズとして、音楽シーンでこういう役割を果たしたいって野望はあるんですか?

磯部:うーん……。まぁ“いい感じ”っていうのが、万人に共通してるものかっていうと、そうでもなくて。かといって、万人共通の何か“いい感じ”っていうのはなんぞやと思うときに、少なからずそういうものもトータルしたものが、MARS EURYTHMICSの中にあれば、ちょっとすごいかなーって。

──誰が聴いても“いい感じ”というか?

磯部:「なんかいいですね~」って。すごく好きになってくれる方もいれば、飽きる方もいる。でも、作品作って何かそういう現象が起きているのであれば、作って何が起きるかを見たい。できるならお客さんがいてくれたほうがいいですけど(笑)。それによって曲も変化しますし。来てくれるお客さんが持ってるものがなんぞや、みたいなものをステージでじっくり見てますから。僕は。そういうときに、ライブハウスでたまたま目と目が合うのってすごいことじゃないですか? 僕はそこまで知らないですけど、知ってるもん同士というか。僕らの音をたまたま聴いて好きになってきてくれた人っていうのは、僕らが知ってることと、ある意味何か同じことを知ってると思うんです。そこに共感してくれてるはずだし。そういうのが多くなったらいいなって。だからマーズは、自分たちが何かを知る、調べてみる作業。そういうのが大事なのかなーと思ったりしますけどね。でもまぁ、最近所ジョージさんにハマってて。

──いきなりですね(笑)。

磯部:仙台かどこかにライブに行ったとき、ホテルでBSフジの『所さんの世田谷ベース』って番組をたまたま見たんです。普通に家の中にある小物をあーでもない、こーでもないって言ってて。所さんおもしろいなーって。結構えらそうなこと言ってるのにキザに見えない。でも頑固で、実はいろんなことと戦ってる人。この人すごいなーと思って。

──偉大さを再確認したと。

磯部:言ってたのが、「何作るにしても、遊び心がないとダメ」って。何か物買ったら、そこに手を加える。高いもの持ってて、そのままを見せて、「高いねー」って言われるのはつまらないし、男のロマンがないと。カッチョええーこの人と思って。自分も同じような感じになるには、どうしたらいいのかなって悩んで、一週間くらい経ってるんですけど(笑)。

──何か見出せましたか?

磯部:まだ答えはわからないです。あんな風になれるのかなって。それがバンドにどう影響するのか?(笑)でも“いい感じ”に人を惹きつけるじゃないですか? そういうのって、自分も表舞台に上がる以上はどこか必要でしょうし。ああいう雰囲気というかオーラを身につけられたら最高なんじゃないかなーって。

── ぱっと見好きなことだけやってそうだけど、ちゃんと見る人のこと考えてますよね。

磯部:そうですそうです。見る人がおもしろいと思わないと。自分も同じようなことやってると考えますね。歌詞書くにも。おもしろいことやってるぞって思っていただけたらなーって苦心してます。

作詞では、最初の言葉を紡ぎ出すまでいつも悶絶!!

──磯部さんは楽しんで歌詞書いてます? それとも「うわぁー」ってなります?

磯部:「うわぁー」ですよ(笑)。最近は悩んでも忘れるって感じですけど、何年か前までは吐きそうでした。

──書くたびに!?

磯部:メロディはバンバン出てくるから書かなきゃいけないなーって。歌詞って、曲ができる最初のお化粧みたいなものじゃないですか。「あー、書かなきゃいけない! 言葉を! でも、またこんな風に思ってると思われるわー。でも、それを出したいんだよなー」って思ったり、常にやじろべえですよ。でも、最近は別に。

──悟りが開けた?

磯部:もう。ほわーっと。「今日もやっちゃおっかな~?」って。「どうせ吐きそうになるに違いない!」って(笑)。

──そこは変わらないんですね(笑)

磯部:最近はwordで、カタカタやってるんで。メモ帳にはちょろちょろっと書いてるんですけど。思いついた言葉とか。そういうのを見ながら「これどこにはまるかなー。物語でいったらどこだ?」って、やりながら、ずっとパソコンの前でにらめっこしてますけど。吐きそうになるのは、最初だけですからね。

──そこさえ乗り越えれば?

磯部:いっぺん書き始めたら早いですから。最初の「何を書きたいんだ? 何を歌うんだ?」みたいのが決まってるのに、最初の言葉、手紙の書き始めみたいのが出てこない。言葉がぶわーって出始めると、ものごっつ早いんですけど。でも、例えば、『閃きのbrandy』の「軽やかな~」からの3行とか。ほかはすっと出てきたのに、ここだけ全然出てこないってことはありますね。まぁ自分の中で、曲の肝なんですけど。できあがってみたら簡単な言葉なのに、そこで5日間くらいかかったりしますね。決めるのいやだなと思ってみたり。ここは肝だからもうちょっとじっくりいかないととか。そうすると練習のときもそこだけ歌わなかったりする。なんかぐっとこないかなーと思ったり。

──音づくりとか曲づくりは4人で一緒に?

磯部:基本的には、最初ギターを僕が弾いて、リズム隊録って、ってバラバラですね。一発でもいいんですけど、デジタルだと、一発でやった感があまり出ないので。昔ながらのアナログテープで録るとるときは、一発録りもやってみたいですけどね。若い土佐は、結構一発録りやりたかがってましたけどね。まわりの人に、「ライブ感のあるCDを聴きたい」って言われてて、土佐がやたらBPMを上げるんですよ。「この曲はこのぐらいにしましょう」って、やるとめっちゃめちゃ速い!「これ、ライブだから! ライブ感じゃなくて、ライブになっちゃうから!」って(笑)。

Range over hill and dale

ASCM-6001 / 2,890yen(tax in)

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