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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】MARS EURYTHMICS(2007年5月号)-磯部正文、本格始動!! "価値ある形"を追い続ける珠玉の作品『Range over hill and dale』

磯部正文、本格始動!!“価値ある形”を追い続ける珠玉の作品『Range over hill and dale』

2007.05.01

HUSKING BEE解散から2年、磯部正文がまた爆音を鳴らし始めた。2006年に結成されたMARS EURYTHMICS(マーズ リトミック)は磯部(ヴォーカル、ギター)、元smorgasでCORNERでも磯部と共に活動する河辺真(ベース)、同じくCORNERにも参加している伊藤悦士(ギター)、そして土佐優貴(ドラム)というメンバー。この1年ライブ活動を続けてきたが、ようやく満を持しての1stアルバム『Range over hill and dale』が発売される。心地よいほどに体を突き抜ける音は、ハスキンのファンだった人たちはもちろん、それ以外の新たなファンも虜にするだろう。ハスキンで間違いなく日本のロックシーンに大きな功績を残した磯部が、MARS EURYTHMICSで目指す形、そしてメンバーとともに山を越えて、谷を越えて、辿り着こうとする場所はどこなのか。早くその全貌を知りたいと、期待を高める人たちに少しでも彼の言葉が届けばと思う。(interview:古川はる香)

バンドはお客さんと共にやっていくというのが、僕の信念

──河辺さん、伊藤さんとはCORNERでも一緒にやってらっしゃいますが、この4人でバンドをやることになったのは?

磯部:宿命ですね(笑)。まぁバンドをやろうとは思っていたので、ゆっくり進めてはいましたけど、僕から「やりますかー」ちゅうのがありましたね。

──それに対して3人は「よし!」と。

磯部:かなり嫌がってました(笑)。なんで、手紙を出したり、ストーカーみたいになったりして。……嘘ですけど(笑)。ドラムの土佐は人の紹介で。いろんな人に「誰かいないかなー」って話はしてたんです。若い子がいいんじゃないかって。僕がいた音楽シーンにどっぷり浸かっているわけでもなく、ある意味概念もない。そういう子がいたほうがいいじゃないかと思って。巧いは巧いからって話を聞いて、土佐に会って、即効一緒にやるようになりましたけど。

──土佐さんに決まる前に、何人か候補が?

磯部:なにげに何人かには。

──その中では、土佐さんが一番しっくりきた?

磯部:しっくりきてなかったです(笑)。

──えっ? そうなんですか!?

磯部:正直、最初は(笑)。自分がやりたい音楽とか、リズムをあまり知らなかったんで。まぁ知らないだけで、知ってもらうまでに何ヶ月かかかるだろうなというのを感じて、いろいろCD渡して聴いてもらって。あと、家に呼んでiTunesでオススメを聴かせたり。土佐専用のオススメを。

──土佐さん専用のプレイリストが?

磯部:“ゴキゲン”っていうプレイリストを(笑)。まぁ河辺くんも同い年とは言え、やる以上は僕が触れてきた音楽を聴いてもらったほうがいいかなと。その点ギターの(伊藤)悦士は(聴いてきた音楽が)近いですから。問題なく。

──聴いてきた音楽が近いことより、重要なポイントがあったんですか?

磯部:別にないです(笑)。メンバーにも結構言ってますけど。

──運命的なものがあったわけでなく?

磯部:ないですね(笑)。メンバーに言うとびっくりされますけど、ある意味誰でもいいと。土佐にも「なんで僕だったんですか?」って聴かれて「別に誰でもいい」って答えましたし(笑)。僕とやる以上は、誰とでもうまくいくって自信があります。でも10年くらいやらないと、うまくいったかもわからないでしょうし、1日で見せられるものでもない。その難しさがある。青春ドラマみたいな感じでもないし、内面では結構毒々しくやっていきます。罵ったりとか、持ち上げたりとか!(笑)アメとムチが激しいので。HUSKING BEEも、バンドの周期的には長くできたと思うので。そういう経験上、僕が知る限りの、向こうが知らないことをまず教えないとバンドが機能しないというか。

──4人で知恵を絞り合うというよりは、磯部さんが提案していく?

磯部:そういう感じになってますね。

──磯部さんの提案に、他のメンバーから意見が出たりは?

磯部:それもあります。そういう話も聞きつつ、しかしそれじゃあバンドが動いていかないぞって予感もしますし。結構お客さんのことを考えてくれてない意見だったりするんで。お客さんともどもやっていくんだっていうのが僕の信念ですから。バンドがどーのこーのよりも、お客さんにどう聴こえる? どういう風に見えるの? っちゅうのが大事ですから。そういう意味ではもっと幅広い言葉と幅広い心が必要じゃないですか?

──4人の仲がすごくうまくいってても、それが外に向かってないと、バンドとしては意味がない?

磯部:ある程度個人個人の考えの相違っていうのがありつつも、「ここまでも考えんのか?」っていうのは絶対必要だと思いますし。まぁ(結成から)1年経ちましたが、この1年は結構とっちらかった感じを見せたというか。こういう人だぞと。

──メンバーのキャラを?

磯部:そう。キャラを。バンドって、技術も大事ですが、キャラも必要じゃないですか? そういうの人前に出すのは違うなーと思って、留めていたら、内にしか向かってないわけで。まぁその辺は葛藤しますけど。内に向かってる強さっちゅうか、ひたむきさが人を惹きつけるのかもしれないなーと。でも、お客さんあってなんぼの世界ですからね。それは頭の片隅に常にあってほしいなーと。意外と少ないですよ。そういうこと考えながら音楽やってる人って。缶コーヒー飲みながらとか、本当にフランクに話をしてるときに、「この曲やってるときは、俺には何人のお客さんが見えてる!」って言っても「俺も!」って言う人がいない。でも言って当たり前だと思う。バンドのみんながそういう緊張感持たないとダメだったりするんじゃないのーって思ったり。それをいろいろ伝える作業をね(笑)。

──そのために1年が必要だった?

磯部:はい。これからもその作業は続きますけど。ハスキンのときは自分も若かったし、あのときみたいにいっぱいバンドがいて、みんなで上がっていくんだみたいな。みんなのリリースが決まっていって「負けちゃいられねー」って、ああいう切羽つまった感じは今あんまりないですね。なんかぽかーんとした空間があるっちゅうか。

──自分たちのペースで進んでる感じ?

磯部:というよりも、「やっちゃいるけど、どうしていいかわかんねー」みたいな感じがあると思うんで、「やりゃあいいんだよ」っちゅうのを教える作業。そういうときに、「僕は今までこういう風にやってきたから、向いてない」って言うから、じゃあ向けばいいじゃないかっちゅう作業。今まで向いてなかったなら、今から向けばいいじゃないかと。そういう延々とした作業を、あーでもない、こーでもないと言いながらやってます(笑)。

Range over hill and dale

ASCM-6001 / 2,890yen(tax in)

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