胸をグッと締め付けてしまうメロディを常に模索してる
──イントロのギターフレーズからかなりの哀愁を漂わせていますが。
ヒダカ:はいはい。中年の哀愁が出てますね…『おふくろさん』、もう唄えないみたいなね(笑)。 (一同爆笑!!)
──はい(笑)。あのフレーズはサビでも出てくるし、この曲のキーポイントになっていますよね?
ヒダカ:ウチはわりと裏メロ思考なんで、主旋律の裏で別のモノが何か鳴ってるのが好きですね。
──キーボードもいいメロディ奏でてますものね。
ヒダカ:そうですね、鍵盤もまた全然違うことやってるんですけど、全員が合致した時に1個の塊になるってのが理想ですね。それは、昔コーネリアスが8cmCDを2枚出して、同時にかけてくれってのがあったじゃないですか? 『スターフルーツ』と『サーフライダー』ってやつ。あれかっこいいじゃないですか…単独でかけてもかっこいいし、同時にかけてもかっこいいし。そういう、何かを抜いて聴いても成立するのって凄いかっこいいなって思ってて。ウチでもその精度は高くなってきたと思います。今まではなんとなくそういうのをやってたんですけど、より狙ってできるようになったんじゃないかニャ、と。
──聴いてるこっちも飽きないですしね。聴く度にいろんな発見があるので。
ヒダカ:よく考えればビートルズの頃からあることなんでしょうけど、俺らなりの裏メロ感みたいなものはだいぶ掴めてきマシータ。
──その裏メロも手伝ってか、サビの歌メロが凄くいいですよね。こう胸の奥から込み上げてくるような感覚があって。
カトウ:それ、気持ち悪いってことですか!?(笑) 胸のムカつきがあってオロロロ~ってもどしちゃうみたいな!?(笑)
──違いますよ!(笑) 気持ちが込み上げてくるってことですよ。
ヒダカ:そうですよね(笑)。よく考えるとそもそもそれがエモの定義だったと思うんですよね…結局今ってスタイルの部分でエモって言われがちじゃないですか? だから、実際元祖的にエモをやってる人たちってどんどんそこから離れちゃってるし。ウチもそこは失いたくないですよね。自分の中でも込み上げてくる感じのメロディ、コード感を常に模索してます。YOUR SONG IS GOODもライヴはエモいじゃないですか? CDでもたまにエモい瞬間ありますけど、やっぱりライヴを観てるとみんなね、グッと胸を締め付けられるようなエモい瞬間があるんですよ。もはやジャンルのエモではなく、そういうことでいいんじゃないかなと思いますね…新しいエモの提唱! で、それをエモと呼ぶのがはばかられるなら、名前は“エコ”とかね。
──意味が違っちゃうじゃないですか!(笑)
ヒダカ:ははは。“エコロック”みたいなね…ap bankか? みたいな(笑)。まぁ、今はたぶんそれに対する呼び名がないからみんな上手く表現できないでしょうけど。
マシータ: ちなみに、ASPARAGUSのシノッピーはそういうのを“グリップ系”って言ってますよ(笑)。
──“グリップ系”?
マシータ:胸を手でグッと掴んでしまうじゃないですか? そういうメロディって、グッと掴むってことで“グリップ系”(笑)。
──はいはい。なるほど。いい表現すね、それ。
ヒダカ:じゃあ“グリップ系”でいきますか。でも、俺らのは親指を人差し指の下にくぐらせたグリップですけどね(笑)。
──(笑)ビーグリップってことですね?
ヒダカ:上手いですね!(笑) そうしましょう!
裏側の悲しみが見えない底抜け感は俺たちにはいらない
──他のメンバーさんは『GHOST』で苦労したところってありますか?
ヒダカ:マシータは今だに怒られてるもんね、ライヴで(笑)。
──そうなんですか?
マシータ:そうなんすよ…この曲は。最後の繰り返しでかなり“グリップ”して終わる予定なんですけど、特に何回やって終わるって決めてないんですよ。だから、自分はこのタイミングで“グリップ”しきったって思って終わらすんですけど、他のメンバーはまだ“グリップ”しきってないみたいでズレちゃう(笑)。
ケイタイモ:そうなんですよ! 同じタイミングでエクスタシーを感じたことはないです…一緒にイッタことないみたいな(笑)。
──でも、それって難しいですよね。同じタイミングで終われるってのは。
ヒダカ:そうそう。でもそこに無限の可能性があるから面白いっていうか…意外なところで一致したりしますからね。スペースシャワーTVのイベントで、俺たちのステージにYOUR SONG IS GOODを迎えて、一緒に共作曲をやったんですけど、それが思いのほか“グリップ”になったんですよね。武道館にBEAT CRUSADERSとYOUR SONG IS GOODが立ってるっていう構図も面白かったから、それはそれで“グリップ系”だったと思いますね(笑)。
──(笑)“グリップ系”、これはかなり重要なキーワードですね。
ヒダカ:みんな普段は照れちゃうからあんまり表だってそういこと言わない人たちだけど、ライヴでは絶対どこかの瞬間で“グリップ”してるから、対バンであれ共演であれ、そういう瞬間があるって面白いですよね。それがお客さんに波及したって伝わる瞬間もあるし、逆に今ハズしたねって判る瞬間もあるし…ライヴはそのやりとりが面白いです。
──また日本人が作るメロディほど“グリップ”するものはないですものね。
ヒダカ:ホントそう。俺個人的にはアイリッシュに近い気がするんですけどね…アイルランドの“グリップ”感はね、やっぱりグッと来るじゃないですか。イギリスじゃなくてアイルランド! みたいなね。
──そうですよね。唄い上げてる感じですよね?
ヒダカ:そうそう。何かアイルランドの音楽って能天気に聴こえないじゃないですか。The Poguesだって相当能天気にやってるハズなのに、何故か哀愁が漂っちゃうみたいなね。あの感じに近いんじゃないかなって思います。やっぱNOFXみたいな底抜け感ってなかなか出せないんですよね…NOFXなりの哀愁もあったりするんですけど…だからたぶん、裏側の悲しみが見えない底抜け感は俺たちにはいらないってことですよね。ニール・ヤングはいいけどブライアン・アダムスはダメみたいな?(笑) たぶん基準ってそこなんですよね…背景にあるエモさが見えてくるっていうか。だから、そういうバンドでありたいし、そういう音楽をこれからも聴きたいなと思います。まぁ、今のブライアン・アダムスはある意味エモいのかもしれないです…なんて言うんですか、長渕剛さん的なね(笑)。