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トップコラム山脇唯「2SEE MORE」「2SEE MORE #28 」 ゲスト:西村ヒロチョ

SEE MORE #28 」 ゲスト:西村ヒロチョ

「2SEE MORE #28 」 ゲスト:西村ヒロチョ

2019.08.23

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演劇とコントを行き来する俳優・山脇唯が、今、ゆっくり話したいゲストと対談する企画「2SEE MORE」。撮影は新進気鋭の写真家PANORAMA FAMILY。

 8月22日に始まる舞台『No.2』に出演する西村ヒロチョさんをお迎えしてミッドサマーナイトトーク。さぞかしロマンティックなお話を……と思いきや、その素顔はめちゃくちゃストイックな好青年。ひとたびカメラをむけるとクールな表情にさらりと変化して、「撮りやすい~!」とPANORAMA FAMILYを歓喜させる、そんなオールマイティ・エンターテイナー、ヒロチョさんをとくとご覧あれ。(撮影/PANORAMA FAMILY 文・構成/山脇唯)

芸人は、決められたことをやりたくないから芸人になるんですよ。

山脇:ざっくばらんにお話しいただければ。

ヒロチョ:よろしくお願いします。

山脇:2人で喋ったことないから……緊張しますね。

ヒロチョ:そうですね。

山脇:どうですか? 稽古は。

ヒロチョ:今まで、神保町花月のお芝居にも出てはいたんですが、それはあくまでも芸人さんたちのお芝居だったので、役者さんたちと一緒に、役者さんたちがいつもやるような稽古をする、っていうのは、全然今までと違うというか。ちゃんと基礎からやるし……そういう違いはひしひしと感じています。

山脇:「基礎練習だと……? なめんなよ」とか思わなかったですか?  

ヒロチョ:いやいや。「あいうえおいうえおあ」とかの発声練習、自分でもちょこちょこやるようになりましたもん。僕やっぱり、滑舌がもともとそんなに良くないので。NSC(養成所)で滑舌の授業もありましたけど。あとは、体力ですね。2時間近く舞台に立ち続ける、っていう体力が必要だな、と。

山脇:でも芸人さんは1日に何個もステージがあるから、体力的には余裕なんじゃないですか?

ヒロチョ:今日も幕張の劇場で出番があったんですけど、持ち時間は10分なんですよ。10分出番×3回だから、言ってみれば短距離走で。

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ヒロチョ:自分のネタ中って、おりるっていうか、普通に話したりもできるじゃないですか。でも、お芝居って長時間その役になり続けなければいけないから、持久力というか、集中力というかがすごく必要なんだろうな、って。

山脇:素に戻る、みたいなことを「おりる」っていうんですか?

ヒロチョ:そうです。そうです。普通にお客さんと話すみたいな。まあコントはお芝居なので、おりたりはあんまりできないですけど、漫才だと「どこからきたの?」とか、途中で何かハプニングが起きても、素に戻ってフォローしたりとかできるけど、お芝居はそういうことしないじゃないですか。だから集中力が要るなって。僕、10分でもあんまり持たないので。

山脇:でも、逆に言うとお芝居は、言い方あれですけど、決められたことをやりゃあいいから……

ヒロチョ:芸人は、決められたことをやりたくないから芸人になるんですよ。

山脇:決められたことをやるほうが安心する人たちが俳優をやってるのかもしれないです。稽古して稽古して、間違えないようにして、って。芸人さんとお仕事すると、いくら稽古して合わせてても、本番になると「すごいな、まだまだ力を隠し持ってたのか?」って驚かされることが多いです。

ヒロチョ:芸人は、全力でやるのちょっと恥ずかしいって思っちゃうんですよね。僕もリハでよく怒られるのが、やっぱり少し恥ずかしいので「こんな感じね」みたいに声をおさえたりすると、音響さんは全力で声を出した感じとか音量をチェックしたいので「もうちょっとちゃんとやってください」って。そうですね、芸人さんはリハーサルで本気出すのは恥ずかしいのかな、って、ちょっとわかるんですよ。

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ライブ中に、ウケすぎて、音が聴こえなくなって。

山脇:ヒロチョさんってネタ中の音楽って自分で作ってるんですか?

ヒロチョ:自分で作ってます。

山脇:あれは、何曲か作って、ネタの中で乗り換えてるんですか?

ヒロチョ:1本です。若手の頃は音響さんで音を流すってことができなかったので。自分でCDとCDデッキを用意して、袖のマイクで音を流すみたいな感じでやってたんですね。そうすると細かいことはできないじゃないですか。

山脇:オペレーターがいないってことですもんね。

ヒロチョ:だから、曲1本で、スイッチ押して出る、みたいなことやんないと、できなかったんですよね。ずっとそれでやってたんで、そっちのほうが楽なんですよね。

山脇:じゃあ、ネタの中で曲調の変化に間に合わせる……っていうか、この音の尺のなかでこれ言って、何小節フリーいれて、音に合わせてポーズして、ってやってるってことですか。

ヒロチョ:そうです。そんな感じでやってます。

山脇:すごい。

ヒロチョ:もし、ちょっと間違えたりした時に音響さんのせいにしたくないんですよね。

山脇:り、立派な人~! 立派な人だ!

ヒロチョ:あるんですよ。結構大事なライブで、今まで1本でやってたのを「この台詞でこの音楽を流してもらって」みたいなきっかけがあるやつをやったときに、ミスがあって。そういうときに「いや音響さんが間違えたんですよ」っていうのは絶対あれなので。そういう事故があるんだったら、全部自己責任でやろうって思って。

山脇:ずっとまるまるかけきりで。

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ヒロチョ:でもやっぱり、言ってもラジカセの音量なので、昔、ネタ中に聴こえなくなったことがあって。ライブ中に、ウケすぎて、音が聴こえなくなって。

山脇:かっこいいじゃないですか。

ヒロチョ:お客さんに、こう(おさえて、おさえて)ってやったことあります。「ちょっと聴こえないから」って。今はもう、音響さんにやってもらって、っていう感じが基本なので、大丈夫なんですけど。

山脇:いや、あの音にきっちりはめてるのがすごいなあと思って。

ヒロチョ:そうですか? でもカラオケやってるみたいなもんですよ? 「このタイミングで手拍子が来る」みたいな感じでやって。

山脇:すごく音と動きがきっちり合ってるから「あれ、どうしてんだろう~」って観ながら思ってました。ネタのタイミングで曲を乗りかえてんのかな~? って。

ヒロチョ:いやもう全然、1本でやらせてもらってます。営業とかいくと、そっちのほうが事故が少ないんですよ。「スタートして、あとはもう何もやらなくていいです」って。それでも、勝手にだんだん音が絞られていったりとか、そういうことは起きるんですけど(笑)。

僕はそうじゃないので、声が出なかった分、動きでカバーして。

山脇:音楽は小ちゃい頃からやられてたんですか?

ヒロチョ:サックスを大学でやってたんですけど、始めたのは中3の4月です。

山脇:なんでサックスをやろうと思ったんですか?

ヒロチョ:楽器は小さい頃からずっとやりたかったんですよ。それこそギターをやって、ベタにFのコードで挫折して、とか。で、管楽器かっこいいな、って思ったんですよ。でも、通ってた中学校が吹奏楽部がなかったんで、合唱部に口車に乗せられて入って。それがまあまあレベルの高い合唱部だったんですけど。それで、音楽が好きで、ずっと「なんか楽器やりたいな~」と思ってて。で、中学三年生の4月1日に、近所の楽器屋さんのショーウィンドウに、サックスがあって、「わあ……」って。

山脇:そこだけピカピカと光ってて。

ヒロチョ:まあ、安いやつだったんですけど「うわーっ」て思って、親に「俺、楽器やりたいんだ」っていって、貯めてたお小遣いで買って、って感じです。1年間は独学で、楽器についてきたVHSを見ながら1人で。それで高校で吹奏楽部入って、って感じですね。

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山脇:大学は、音楽系の……?

ヒロチョ:日本大学芸術学部音楽学科です。弦管打楽器コースっていうピアノ以外の楽器のコースがあって、僕はそこのサクソフォーン専攻。

山脇:ほー。そんなのあるんですね。

ヒロチョ:同級生2人しかいなかったです。すごく少ないんですよ。そこでやってたんですが、まわりは小さい頃から音楽やってるとか、親が音楽の先生とかで……まあ落ちこぼれでしたね。しんどかったです。

山脇:どんな授業があるんですか?

ヒロチョ:基本はサックスを、師匠とマンツーマンでレッスンして。サックス4人でアンサンブルやったり、サックス以外だと、ピアノもやって、あと作曲とか。で、僕、ミュージカルが好きだったので、大学4年生の時の1年間はミュージカルを専攻して。あとは理論とか座学もやりましたね。

山脇:ミュージカルを専攻すると何が学べるんですか?

ヒロチョ:僕がやったのは、ミュージカルの抜粋ですね。一本まるまるじゃなくて、このミュージカルのこの曲をやってみる。定期演奏会があって、ミス・サイゴンの『アメリカンドリーム』とか、オペラ座の怪人『All I Ask Of You』をやらせてもらいました。周りはやっぱり歌専攻なので、めっちゃ声が出るんですよ。僕はそうじゃないので、声が出なかった分、動きでカバーして。

山脇:踊ったり? それって、衣装もつけるんですか?

ヒロチョ:はい。用意してもらって。ミス・サイゴンの『アメリカンドリーム』が結構、踊る、というか、踊りたくなる曲だったので、勝手に踊って。

山脇:市村正親さんがやられてたやつですよね?

ヒロチョ:そうです。やらせてもらって、すごく楽しかったです。普通の歌とまた違うなーって。

山脇:ミュージカルは、喋る歌ですもんね。

ヒロチョ:そうです、よく「もっと喋って」って言われて「え?歌でしょ?」って。面白かったなあ。

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「俺、吉本に行こうと思う」って言ったら「まあ、あんただったらおかしくないわよね」って。

山脇:そこから、どうして吉本に入ろうと思ったんですか?

ヒロチョ:それがね、大学院に落ちたんですよ。大学院って、教授に師事して、好きな分野を研究するって感じなんですけど、僕がやりたかったのは、舞台の演出とか……クラシックコンサートってお堅いじゃないですか、なので、それをもっとみんなが楽しめるようなコンサートにしたいなー、そういうステージの演出がしたいなーって。大学でビッグバンドやってて、それがすごく楽しかったんですよ。でも、教授にハマってなくて。「うちじゃあないよ」って。「だったら映像学科とか、よその専門学校のほうがいいんじゃない?」って言われて。「それもっと早く言ってくれよ」って思ったんですけど。で、落ちて。大学4年生の冬、2月。どうしよっかな~って思っている時期が、お笑いブームだったんですよ。

山脇:ヒロチョさんって、今おいくつでしたっけ?

ヒロチョ:いま、32歳で、ちょうど10年前がお笑いブーム、ネタ番組ブームだったんです。レッドカーペットとかエンタの神様とか。はんにゃさん、しずるさんフルポンさんがネタでどんどん出てきて。面白くて。で、芸人になりたいわけじゃないけど、そういう世界に飛び込んでみようかな、と思って。まあ吉本の養成所が安かったってこともあるんですけど。

山脇:え、そうなんですか?

ヒロチョ:年間40万とかで。

山脇:そうか、音楽の世界の人からすると安いのかな。

ヒロチョ:他の養成所は80、90万円とか、けっこうしてたんですよ。吉本は、月額、入学金とか込みで40万なので、それだったら行ってみようかな、と。音楽の専門学校とかいくと、もっとかかっちゃうので。それで、飛び込んで。意外と親も許してくれたんですよ。

山脇:あら、理解がある。

ヒロチョ:それまでの就職活動とか、楽器の講師になりたい、とかは結構反対されてたんですよ。「ほんとうにやりたいことなの?」って言われて。

山脇:すごくいい親御さんですね……!

ヒロチョ:で、「俺、吉本に行こうと思う」って言ったら「まあ、あんただったらおかしくないわよね」って。拍子抜けしたっていうか。

山脇:(PANORAMA FAMILYに)息子が芸人になりたいって言ったら……?

PANORAMA FAMILY:絶対「やめとけよ〜無理だよ〜」って言っちゃう。

ヒロチョ:僕も絶対止めますよ自分の息子だったら。

山脇:あら。

ヒロチョ:僕は、芸人になりたいっていうよりかは、そういう世界をみてみたい、って。

山脇:エンターテイメントの世界を。

ヒロチョ:はい。だから「将来の夢はエンターテイナーです、尊敬する人はマイケル・ジャクソン」って願書に書いて。面接官の人は「……?」って顔してましたけど。で、受かって、って感じです。

楽器って、練習すればできるんです。

山脇:今、YAMAHAのお仕事もされてますよね?

ヒロチョ:そうなんです。ありがたいことに。きっかけは、SALTY'S(ソルティーズ)というユニットをやってて。ピスタチオの小澤さんもいるんですけど。年末のライブでピアノの弾き語りをするって決めた時に、YAMAHAさんの協力で、弾き語りの練習をさせてもらって、ピアノの編曲とかも教えてもらって。

山脇:ほー。

ヒロチョ:それきっかけで、YAMAHAさんの『タッチ&トライ』っていう、楽器に触れたことのない人や、昔やっていたけど最近やってないって人に楽器に触れてもらうイベントで、ネタをやりつつサックスを教える仕事をやらせてもらいました。この前も、北海道でイベントがあったので、いってきて。楽しかったですねえ~!休憩なしでずっと、やっちゃいました。教えるのが楽しいんですよ。子どもに教えて、音が出て喜んでるのをみると「天職~!」って……芸人なんですけど(笑)。ついでに他の楽器も触らせてもらって。楽器が好きなので、幸せでした。

山脇:どうしてそんなに楽器がお好きなんですか?

ヒロチョ:楽器って、練習すればできるんです。

山脇:それはできる人の言い分ですよー。

ヒロチョ:いえ、あの本当に、自分にめっちゃ自信があるとかじゃなくて。やればできます。

山脇:やれば……

ヒロチョ:最初の教え方が大事です。最初に教える人が雑だと、その人の責任なんですけど、楽器が嫌いになっちゃうってあると思うんですよ。親がピアノ教室に通わせて子どもが「いやだ」っていうのも、本当はやりたくない、興味がないのに無理やり、ってやっぱり嫌じゃないですか。でも、「やってみたいな、けど自信ないな」っていう人に大丈夫だよ、って言ってあげれば、できるんですよ。

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自分のことがあんま好きじゃないんです。でも、成長した自分のことは好きになれるんです。

山脇:小さい頃ピアノ習ってたんですけど、タン、タタ、ターで躓いちゃって。

ヒロチョ:リズム?

山脇:その、音符の区別がつかないのと、虚弱体質で、一定のリズムで叩き続ける元気がなかったのか、苦手意識が……自分は音楽むいてないな、って。

ヒロチョ:それでできないってなったときにどうフォローするかが大事で。僕は、楽器って練習したらうまくなる、っていうのが好きで。……お笑いって、練習したからって面白くなるとは限らないじゃないですか。

山脇:あー。練習すれば、っていうところじゃない部分が。

ヒロチョ:これは、言い訳に聞こえちゃうかもしれないですけど、どんなに、自分が100%のパフォーマンスをしても、面白い面白くないは好きずきで。その時の環境によっても変わるから。でも楽器は、練習すればうまくなるんです。僕、筋トレも好きなんです。

山脇:はい。

ヒロチョ:筋トレもやったぶんだけ成果が出るのが好きなので……なんだろうな、自分のことがあんま好きじゃないんですよ。

山脇:ほお!

ヒロチョ:でも、楽器やったり、筋トレやったりして、成長した自分のことは好きになれるんです。だから、自信がないから色々やってるって感じです。

山脇:以前、ピスタチオの伊地知さんと話してて、ヒロチョさんは心がナルシストだ、って聞いてたので、今の「自分が好きじゃない」っていうのは意外な感じがしました。

ヒロチョ:なにかをやってるときの自分は好きかもしれないです。極端な話、舞台に立ってる時の自分は自信があるけど、舞台を降りたら嫌いです。エリック・クラプトンが言ってたんですよ、「ステージに上がっているときは自分を世界一上手いと思って、ステージを降りたら世界一下手だと思え」って。そうすれば練習するから、って。そういう感じです。

山脇:ピン芸人の方ってそういう人が多いみたい……

ヒロチョ:そうですね。そういう人がピン芸人になるのかもしれないですね。

山脇:R藤本さんのことを思い出して。藤本さんも、自分が嫌いだからベジータやってる、ってこのインタビューで聞いた時に仰ってました。

ヒロチョ:へえ。面白いなあ。Rさん、面白いですよね。普通に大喜利強いですもんね。

山脇:めちゃくちゃ面白い。だから自分のことも好きになればいいのに~って思っちゃう。あんなに面白いのにいつも。

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山脇:ヒロチョさんも、目の上を青く塗られたりとか、それも。

ヒロチョ:あれも多分……多分というか、もともとコンビ組んでて、解散しちゃってピンになったときに宝塚コントみたいなのやってて。

山脇:え、めっちゃいいじゃないですか。

ヒロチョ:1人で曲作ってネタ作り始めた時に、1人ミュージカルコントみたいなのをやってたんですよ。で、僕も自分の目があんまり好きじゃないのと、ミュージカルって結構化粧するので、ああいう風にしてて。やってくうちにあれがスイッチになって。

山脇:ほー。

ヒロチョ:化粧をやったら、自分じゃないキャラになりきれるから、っていうのがあります。キャラになりきるのが好きで。自分じゃない役ってなったら堂々とできるというか。実際はすごいビビリで、緊張しいで。本当は良くないんですけど、ネタ中に緊張してるときはずっと目を閉じちゃう。お客さんが見られなくて。本当は西村ヒロチョになりきらなきゃいけないんですけど、それがなかなかなりきれなくて……

山脇:塗ってると目をつぶっててもバレないですもんね。ちゃんと描いてると。

ヒロチョ:そうですね。

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山脇:でも今度は、演劇だとまた、役があるから違うんですかね。

ヒロチョ:今までの神保町は、けっこう濃いキャラが多かったんです。でも今回のお芝居の役は、言ってしまえば普通の人、演劇をやってる普通の大学生なので。あんまり、やりすぎができない。作・演出の竜史さんにも「ナチュラルに」って言われたので。そこの塩梅が勉強になりそうだな、と思っています。やっぱり芸人さんって基本的に大袈裟にやるじゃないですか。コントでもキャラを強く演じるというか。それを、自分でもない、キャラでもない、芝居上の人になることが……できますかね? どうやればいいんですか?(笑)

山脇:どうかなぁ……?

ヒロチョ:あと、昨日の稽古で、竜史さんに「ヒロチョさんに歌ってもらうシーン増やそうと思います」って。その歌が、僕もめっちゃ大好きなアーティストさんで。でも、だからキャラ難しいな、せっかくおさえようとしてるのに、って(笑)。

山脇:ヒロチョさんとそのアーティストさんって芸風……あの方は芸風って言わないかもですけど、感じとか方向性は、似てますよね?

ヒロチョ:それ、先輩にも芸人になってから言われて。「好きでしょ?」って、でもその時は知らなくて、そこから聴いたら好きになっちゃって。いいな、これやりたいな、って思っちゃって。恥ずかしくなっちゃう歌詞を書ける、あれ羨ましいんですよね。僕はまだ恥ずかしいって思っちゃう瞬間があるので……あそこまで突き抜けられたら。いいですよね。

山脇:ネタだけみていると、ヒロチョさんってこういう方なのかな、って思うんですけど、わりと……純朴な方でよかったです。

ヒロチョ:そうですね。オンとオフっていうのはあるかもしれないですね。

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僕、ゲームの登場人物みたいな服が好きで。

山脇:お洋服はどちらで買います? 私服へのこだわりとかを聞きたくて。

ヒロチョ:もう……なんですかね、こんなこというの恥ずかしいんですけど、服を買ってないんです。お客さんからもらってばっかで。

山脇:わあ、いいなあ!

ヒロチョ:今、着てる、これも貰い物で。芸人になりたての頃は、もちろん自分で買ってて、好きなブランドもあったんですけど。昔『マンスリーよしもと』って雑誌があって。

山脇:はい。

ヒロチョ:それの、おしゃれランキングっていうのがあったんですよ。それで僕、ダサいランキングで5位に入っちゃって。

山脇:トップ5に!

ヒロチョ:初登場、5位、みたいな感じで。自分ではかっこいいと思ってたのに、ダサい、って言われて……。そこから、何かあったのか、お客さんから服をもらうようになって……。おしゃれな芸人さんに洋服なんて渡さないじゃないですか、プレゼントとして。

山脇:ちょっとハードルが高いですもんね。

ヒロチョ:好みじゃなかったらどうしよう、って。でも僕、しょっちゅうもらうんで、「あ、そういう風に思われてるんだな」って。できるなら、服も買いたいんですけど、難しいですよね……。

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山脇:でも、いいですねえ、もらえるの。いいなあ。

ヒロチョ:でも、僕、ゲームの登場人物みたいな服が好きで。ちょっと身体のラインが出るみたいな……

山脇:えっ!?どのゲームですか、どういうゲームを想定してます?

ヒロチョ:なんだろうなあ、なんかスタイリッシュな……結構ラインが出るような……こう……

山脇:ファイナルファンタジー的な?

ヒロチョ:あ、でもそういう感じって言われましたね。「スタイルが良くないのに、あんま、そういうの合わないよ」って。

山脇:ラインがぴっちりしたのが、お好きなんですね。

ヒロチョ:前は、好きなブランドの、仲良かった店員さんに勧められた服とかをよく着てて……芸人やってるとか関係なく、好きで通い続けて展示会に呼んでもらったりもしてたんです。

山脇:なんていうブランドですか?

ヒロチョ:キャサリンハムネットロンドンです。

山脇:ちゃんとしたところじゃないですか。

ヒロチョ:物はとても良いんですけど、僕には合わないらしくて……なんか、その、ブリティッシュカジュアルみたいな。カジュアルだけどピシッとしてる、みたいのが好きなんですけど、僕に合わなくて。最近あんまり買えなくて、さみしいなーって。何がダサいのか僕、自分でもわかんないんですよ。

山脇:ゲームっぽいのが、あれなのかなぁ。

ヒロチョ:なんでかわかんないんですよ。自分ではかっこいいと思って着てたんで。

山脇:あ、でも、ミュージカルも好きだし、サックスもやるから、ちょっとこう、シュッとした、紳士みたいのが、好きなんですよね。

ヒロチョ:そういう、憧れの像があるんですけど「お前じゃないよ」っていう感じが。

山脇:年齢をもう少し重ねたら、あるんじゃないですか。

ヒロチョ:そうですね……決して、安い服ではなかったので……もう少し有名になったら、おしゃれしたいです(笑)

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山脇:そのブランドを好きになったきっかけはなんだったんですか?

ヒロチョ:大学生になって……それまでは本当に無頓着だったんですよ。で、大学生になって、おしゃれな服を買いに地元のマルイにいったら、そのお店があって。かっこいいなと思って入ったら店員さんが話しかけてくれて、そこで服を買った、っていうのがきっかけですね。本当にデビュー当時は、そのブランドのシャツとネクタイとパンツと靴履いて出たりしてました。

山脇:へー!

ヒロチョ:で、そこから私服も買うようになって。「そろそろ夏のシーズンだから行ってみようかな」ってセットアップ買ったり……冬は冬でジャケットを買って……とか。楽しかったなあ……。

山脇:それだけ好きだったら、第5位ってちょっと……

ヒロチョ:マジで不本意でしたよ。だって、5位の写真を撮るときに、そのジャケットとパンツで、「え、これでいいんですか」って聞いたんですけど「問題ないです、大丈夫です、ダサいです、ダサいです」って撮られて。これ絶対お店の人に見せられないなって思いました。

山脇:ははは。

ヒロチョ:自分の人生なんだから、着たい服着たいじゃないですか。

山脇:そうですよねえ。

ヒロチョ:最近はあんまりダサいとは言われてないですねぇ。もらったのを着てるのもあって。

山脇:それはやっぱりファンの方が「こういうのを着てほしい」とおもってるってことですよね。イメージが。

ヒロチョ:まあ腑に落ちないですね……着たい服、着たい……難しいですね、おしゃれって。

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斜めにチャックがついてるほうが「面白いじゃん、おしゃれじゃん、この遊び心すごいじゃん」って思っちゃうんですよ。

ヒロチョ:役者さんっておしゃれな人多いんですか?

山脇:どうかなぁ。

ヒロチョ:まあ確かに稽古とか多いと、稽古着で。稽古にそんなおしゃれしていかないですもんねえ。

山脇:役者ばっかりやってると、社会的な立場に基づいた服を着る機会があんまりないっていうか……何を着ても別にいいので……。お勤めしてればスーツ、とかありますけど、そういうのがなく好きに着ていいってなると……

ヒロチョ:やっぱ、お芝居関係の方、何名かお会いしましたけど、男性で金田一耕助みたいな格好してる人、多いですよね。ダボっとしてチューリップハット、みたいな。でも、役者さんがそういう格好してると「おしゃれなのかな」って思っちゃいます。

山脇:浮世離れしてるだけだと思いますよ。

ヒロチョ:芸人さんは「おしゃれ芸人」みたいな人とかもいますけど、まあ芸人さんは数も多いから……一口におしゃれっていっても……。

山脇:母数が多いですもんね。でも、平場に私服で出る機会が多いから、見られることで、洗練されていく、変わっていくんじゃないですか?

ヒロチョ:それこそ僕、ダサいって言われてた時期は、衣装でネタやってたんですけど、平場には「お前、衣装じゃなく私服で出ろ」って言われて。私服で出て、いじられてました。

山脇:それは……不服ですよね?

ヒロチョ:不服でした。ちょっと会場がザワつくのが。

山脇:そんなに変だったんですか?服自体はだって、いいものでしょう?

ヒロチョ:なんでですかねえ、言いやすかったんですかねえ。その頃は、リバーシブルのベルトとか付けてて。

山脇:いいじゃないですか、ねえ。

ヒロチョ:着物の帯でできたウォレットチェーンとか。

山脇:ああ……(笑)

ヒロチョ:僕はそれがすごいおしゃれだと思ってて。素材が紙でできた靴とか。

山脇:ええ!?

ヒロチョ:おしゃれだな、と思って。「雨が降ったら履かないでくださいね」とか言われたんですけど……。

山脇:なんかこう、一言、言いたくなるおしゃれですね(笑)

ヒロチョ:遊び心がある服が好きなんですよ。普通に、前にまっすぐチャックがついてるジャケットよりも、斜めにチャックがついてるほうが「面白いじゃん、おしゃれじゃん、この遊び心すごいじゃん」って思っちゃうんですよ。

山脇:わかりますけど、そういう感覚ってだいたい高校生くらいで終わるんじゃ……

ヒロチョ:そうです。だから僕は、それがずっと続いちゃってるんです。肩の上に変なベルトがあるとか「これ可愛いじゃん」ってなるんですよ。

山脇:その部分、まだ稽古場で見てないなあ。

ヒロチョ:そうですね、僕はジャージで稽古場行っちゃいますからねー。

山脇:アスリートな感じで。

ヒロチョ:じゃあいつか、おしゃれして行きます。

山脇:うわあ、是非! おしゃれしてきてください。

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 僕は、好きな音楽を聴いたら身体が動いちゃうし、歌っちゃうんで。

山脇:好きな音楽は?って聞かれたらなんて答えますか?

ヒロチョ:最近は、また岡村靖幸さんを聴き直したり……その日の気分で色々あるんですけど、バンド系だと打首獄門同好会さん、四星球さんとか……。あとは……結構ね、その時によって波があるんです。なんだろう、いろいろ聴きますね。クラシックをめっちゃ聴く時期もありますし、ギターもやってたので、ヘビメタ、ハードロック系、洋楽も。映画『ボヘミアン・ラプソディ』やってた時期はQueenばっかり聴いたりとか、マイケル・ジャクソンをめっちゃ聴いたり。

山脇:わりとその時に好きなものを、めっちゃ聴くんですね。

ヒロチョ:いいな、と思ったら何回も聴きます。何回もその曲ばっかりを。

山脇:この曲がいい、と思うのは、どういうところにポイントにがありますか?

ヒロチョ:共通してるのは、身体が動く曲、ってことです。芸人になるまで「好きな曲のジャンルは?」って言われると結構困ってたんですよ。なんだろう?と思って共通点を探したら「思わず身体が動いちゃう曲」だったんです。

山脇:なるほど。

ヒロチョ:母親がいうには、やっぱり小さい頃から音楽を流したら踊ってたらしいんですよ。

山脇:あら!

ヒロチョ:でも、普通、動くでしょ?って思っちゃう。じっと聴いてて楽しい? って。昔、つきあう前の段階の女の子とディズニーシーに行って、ビッグバンビートっていう、あのミッキーがドラム叩く、あれをノリノリで聴いてたら、こう……

山脇:ジェスチャーで「静かにして」って?

ヒロチョ:はい。それ以来会ってないです。

山脇:えー!

ヒロチョ:女の子とシーに行って、つきあえないことってあるんですね。ははは。

山脇:それって、どっちの心が離れたんですか?

ヒロチョ:多分むこうでしょうね。ちょっと変な人だなって思われたというか。でも僕は、好きな音楽を聴いたら身体が動いちゃうし、歌っちゃうんで。共通するのは、そういう曲ですね。ファンクとか、リズムアンドブルースとか……岡村靖幸さん、マイケル・ジャクソンもそうですし。バンド系とかも、なんでもいいってわけじゃなくて。キメがある、とか、あとは語感が気持ちいい、とかがすごく好きですね。クラシックを聴くときはもう、こう(指揮の真似)しちゃって。

山脇:へえ。

ヒロチョ:自分が指揮者になったつもりで。

山脇:指揮も学んだんですか?

ヒロチョ:指揮法って授業がありました。ピアノとかも、こう(弾く形になって)……弾けないけど、弾いた気分になるというか。

山脇:ほう。

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ヒロチョ:楽器が好きなので。

山脇:じゃあ、ディズニーシーのドラムとかも自分が叩いてるみたいな気持ちになって、ノリノリに。

ヒロチョ:かっこいいじゃないですか。大人になってからの方が、ディズニーすごいなって思いますね。すっごいエンターテイメントで。ダンスもあって、バンドの演奏もかっこいいし。それは身体で感じないと。

山脇:私、恥ずかしいな……と思ってじっと聴いちゃいます。

ヒロチョ:僕もそれはちょっとわかります。だから最初は腕組む感じで聴いちゃってたんですけど、僕も舞台に立つ側の人間なので、やっぱりお客さんに、ジッと立たれるよりは、ノってくれた方が嬉しい、っていうので。自分も楽しむときは楽しもう、って。前に、四星球さんのライブに招待していただいて。関係者席って皆さんわりとジッと聴いてるんですけど、僕は関係なしに結構ノってたんで、ベースの方が僕を見て、会釈するっていう……

山脇:「どうも」って。目立ったんですね。

ヒロチョ:ベースの方が気を遣ってくださって。だから本当は1階席で観る方がいいんだろうなって。

山脇:本当にお好きな方は皆さんそう言いますよね。

もう、楽器で……楽器貧乏です。

ヒロチョ:もっと言うと、西村ヒロチョって芸名も、ベーシストの方からとったんです。鳴瀬喜博さんっていう方がいて、その方のニックネームがナルチョで。その方が好きで。

山脇:そこからヒロチョに。

ヒロチョ:大学時代に「ナルチョが好きならヒロチョだな」みたいな感じで言われてて、で、ピンになった時に、普通の名前だと面白くないからヒロチョにしたら、こんな感じになりました。

山脇:でも、すごいヒロチョ感ありますよね。

ヒロチョ:ははは。その鳴瀬さんがめっちゃ楽しそうにベースやるんですね。カシオペアってフュージョンのインストのバンドなんですけど。F-1のテーマわかります? ティーティティーティー♪って。

山脇:ああ、はい。

ヒロチョ:あれがもともとT-SQUAREってバンドの曲で。そのT-SQUAREとカシオペアのバトルライブの映像を、高校の時に顧問の先生に観せてもらって、「わっ、なんて楽しそうに楽器を演奏するおじさんたちだ」って感動して。そのバンドは、「間違えたらどうしよう」とかそんな次元じゃなくて、とにかく楽器を楽しそうにやってるのが、かっこよくって。僕がいた吹奏楽部は、コンクールとか出ない、年に2回の定期演奏会やるだけの、わりとぬるい部活だったんですよ。でも僕は楽器が好きだったので「もっとやろうぜ!」て言ったら、女子の方が多かったんで、すごく煙たがられて。めっちゃ嫌われました。

山脇:失礼かもしれないですけど、すごく目に浮かびます。

ヒロチョ:思春期の女子に一番嫌われるタイプの男子だったんですよ。熱い男子。

山脇:わかります。

ヒロチョ:で、大学受験はサックスで受けたんですけど、鳴瀬さんが好きすぎて、受験が終わってすぐベースを買って、合格発表の前、合否出る前にずっとベースを弾いてた、っていう。

山脇:すぐ楽器買っちゃうんですねえ。

ヒロチョ:楽器、買っちゃいますねえ。ギャンブルとかお酒、煙草はやらないんですけど、もう、楽器で……楽器貧乏です。先月も新しい楽器を買っちゃったんで、頑張らないとなって。

山脇:何を買ったんですか?

ヒロチョ:ソプラノサックスっていう、まっすぐなサックスがあって。ずっと欲しくて、まあ買うきっかけがあったので、買って……っていう感じで。ちょっと、しばらくは頑張んなくちゃいけないな、と。

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タンクトップを着て一言も喋らずにサックスを吹くっていう仕事をしてきたんです。

山脇:でも、ギャンブルとかじゃなくて、芸に還元される散財だから……それは散財じゃない。投資ですよ。

ヒロチョ:そうなんですよ、ソプラノサックスも7月1日に買って。先日、椿鬼奴さんの20周年ライブがあったんですけど、その結構前に椿鬼奴さんと会う機会があって「今度こういうライブがあるんだ~」って聞いて。椿鬼奴さんのCDのなかにソプラノサックスのソロがある曲があるんで、ちょっとリップサービスじゃないんですけど「もし鬼奴さんがそのライブに呼んでくれるんなら、僕ソプラノサックス買いますよ」って言ったら、本当に呼ばれちゃって。買うしかねえ、と。それで買ったら、『ネタパレ』っていうネタ番組に出演が決まって。僕オーデイション受けた覚えもなかったので「どういう内容ですか?」って聞いたら、レイザーラモンRGさんとこがけんさんと一緒に武田真治さんのモノマネをしてソプラノサックスを吹くっていう仕事だったんですよ。「ソプラノサックス買いました」って報告もまだしてないのに決まって。「あ、こういうことってあるんだな、風呂敷広げてみるもんだな」って。僕、モノマネなんかやったことないのに。しかも武田真治さんって、失礼な話、名台詞とかも特にないじゃないですか。

山脇:そうですね、なんだろうな……

ヒロチョ:だから、タンクトップを着て一言も喋らずにサックスを吹くっていう仕事をしてきたんです。

山脇:いいですねえ。

ヒロチョ:楽器を買ったことによって仕事につながる、という経験ができたので、これからもこうやって続けていこう、と思って。

山脇:鬼奴さんのライブ、いいですねー。いいなー。

ヒロチョ:楽しかったです。生バンドのなかでサックス吹かせてもらって。生バンドいいですねー。

山脇:生楽器があるといいもんですよね。

ヒロチョ:そうですねー。エアバンドやってるんでなんとも言えないんですけど……

山脇:エアバンド、SALTY’Sはどうしてやることになったんですか?

ヒロチョ:ボーカルのリーダーが塩顔の芸人を集めてそういうバンドやってみたいな、ってことで声をかけられたんですけど、ピスタチオの小澤さんと僕は塩顔じゃないんですよ……

山脇:そうですね、ジャンルでいうと。

ヒロチョ:だから僕、最初の1年くらいは白塗りして、狐のお面みたいなメイクしてずっとやってました。で、まあ、1人だけ生の楽器やってるっていうのも面白いかな、っていうので続けてます。

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ヒロチョ:そういうきっかけもあって……鬼奴さんとか、他のアーティストさんの後ろで演奏させてもらう機会とかがあるので、学生の頃よりも練習してますね。目的がはっきりしてるんで。吉本の本社で夜な夜な練習しています。

山脇:ザ・ギースの高佐さんも、ピアノ弾くんですよ。

ヒロチョ:高佐さんて、なんだかすごい天才肌のひとですよね。

山脇:こないだのギースの単独ライブでとうとうハープを弾きだしてました。

ヒロチョ:僕も、30歳過ぎて、1人でバイオリン弾けるかな?って思って練習して、自分の単独ライブでバイオリン弾きました。

山脇:すご!

ヒロチョ:弾けるもんだな、て。でもハープはすごいですね……レンタルですか?

山脇:尾関さんがTwitterで「どなたかハープをお持ちの方はいらっしゃいませんか?」って呼びかけてました。

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だから大げさな話、愛をテーマに作ろうって思って。

ヒロチョ:僕、YouTubeの「タカサ大喜利倶楽部」チャンネル登録してます。

山脇:え! 高佐さんに伝えますね。

ヒロチョ:普通に、ご飯食べながら観たりして「面白いな」って。

山脇:大喜利は、やられるんですか?

ヒロチョ:僕、大喜利をやる機会が本当になくて。しかもロマンティックキャラをやってるので、ちょっと難しいというか、何重にも枷があるので、大変ですね。前に「芸人は、あるあるか、大喜利だ」って言われたんです。漫才とかは大喜利で。でも、あるあるも知ってないと。その、日常と非日常の振り幅というか。ロマンティックってどっちだ?って考えた時に、あるあるではないし、大喜利なのかな?とか……ロマンティックな日常、ロマンティックあるあるは大喜利……なんか難しいんですよ。それを芸歴10年で改めて見つめ直してみようかな、と最近、考えています。まず大喜利はやる機会がないので、単独イベントなんかでやってみようかなって思ってるところです。

山脇:なんでロマンティックにしよう、って思ったんですか?

ヒロチョ:芸人になって、コンビでネタをやってるときに、自分は、毒を吐いたり、悪口、下ネタは向いてないな、って思ったんです。だから大げさな話、愛をテーマに作ろうって思って。で、1人でミュージカルとかやり始めた時に、やっぱり渋谷の∞ホールは、若い中高生のお客さんが多いので、恋愛にちなんだネタの方が反応が大きいなと思ったんです。で、そうなった時に、何か括りがほしいなと思って、ロマンティックなになに、ってやり始めたのがきっかけです。

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ヒロチョ:最初にやったロマンティックネタが「ロマンティック大相撲」っていって、大相撲をロマンティックにする、っていうネタでした。だからあの、意味わかんないですけど、言っちゃえばこっちのものというか。

山脇:言ったら、お相撲って肌色が多いし、触れ合うし、ロマンティックっちゃロマンティックですもんね。

ヒロチョ:そうですね、それで無理やりねじ込んで、リズムにのせて。だから、最初はざわつきました。ウケたというよりざわついて、お前の後やりにくいって言われました。「どうもありがとうございました~」ってハケたあとにお客さんがずっとザワザワしてて。その後の芸人さん「どうも~」がすごく言いにくい、って。でもそれがきっかけで、テレビも出させてもらって。それもオーデイションじゃなくて、たまたまテレビのスタッフさんがライブに来てて「正直わからなかった、意味がわかんなかった」って。でも「お客さんが笑ってるから、ウケてるから、使ってみようと思った」って言われました。

山脇:それをでも、はっきり言ってくださるんですね。「わかんなかった」っていうことを。

ヒロチョ:僕も、あ、そうなんですか? って。僕も正直「どういうこと?」っていわれたら「こういうことです」って説明はできないんですけど、自分がやってて楽しいこと、面白いって思うことを大事にした方がいいよ、ってのを先輩に言われたので、それをやってます。

山脇:確かに、悪口とかじゃなくて愛をテーマに、っていうのはミュージシャンっぽいですよね。やっぱり悪口より愛を歌いたい……みたいなのは。

ヒロチョ:そうですね、僕みたいな歯が浮くようなキザな台詞とかを、普通に男の人が日常生活で言えるような世界って絶対に平和じゃないですか。心にゆとりがないとそんな台詞出てこないから。だから、そんなふうになったらいいなって想いも込めて、やっています。

応用力には自信があるんです。

山脇:最後に、今後の抱負などがあったら、教えてください。

ヒロチョ:ちょっと前まで、しんどい時期が続いてたんです。なんか思うようにいかないな、っていうか、芸人に向いてないのかな、って思うこともあったんですけど。今年に入って、お芝居とか、YAMAHAさんの楽器のお仕事とか、ミュージカルとかも決まってて。10年目にして、新しいことができ始めてるな、って感じてて。好きなことが仕事につながってるっていうのを。

山脇:はい。

ヒロチョ:新しいことを考えられるのは芸歴5年まで、って聞いたことがあって。そこからは積み上げてきたものの応用しかできない、みたいなことを。勿論、皆さんが皆さん当てはまることじゃないと思うんですけど。でも、僕はその、応用力には自信があるんです。お笑い偏差値はそんなに高くないけど、ダンスとか歌とか楽器とか、色んなのをひっくるめて、総合力だったら勝負できるって思ってるので、今まで経験してきたものを糧に、新しいことに挑戦して、舞台に立ち続けられたら、って。やっぱりライブが好きなので。

山脇:はい。

ヒロチョ:勿論テレビも、出たら「テレビ観たよ」って言っていただくの嬉しいんですけど。やっぱり、生のエンターテイメントをやっていきたいな、って思います。

山脇:すごいいいことを聞いてしまった。舞台もよろしくお願いします。

ヒロチョ:楽しみです。

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【後記】

2SEE MORE の撮影が終わった数日後、夫と渋谷を歩いていたら偶然キャサリンハムネットロンドンの路面店を見つけ、思わず「ここ、ヒロチョさんが好きなお店だよ!」と声に出してしまいました。外から覗いただけですが、確かにカッコいいけど、ヒロチョさんっぽいかと言われると……。とはいえまだ30代前半のヒロチョさんですから、きっとこれからもどんどん色々なものを吸収して、どんなお洋服も着こなせるようになるのでしょう。その日が楽しみです。稽古場では現在、ダンスリーダーとして我々キャストを引っ張ってくださっているヒロチョさん。なんと、ダンスを教えるのもとても上手です。引き続きよろしくお願いします。(山脇)

 

西村ヒロチョ

1987年2月9日生まれ。東京都国分寺市出身。身長169cm、59kg。A型。吉本興業所属。東京NSC15期生。趣味、特技ともにサックス。その他、ピアノやダンスを嗜み、作曲に1人ミュージカル、モンスターストライクなど、多彩な趣味・特技からもその華やかな芸風がうかがえるエンターテイメントピン芸人。世界初の塩顔男子エアバンド「SALTY’S」のメンバー・塩チョとしても活動している。メンバーカラーはグレー、担当楽器はサックス。2019年8月22日~9月1日に舞台『No.2』(神保町花月)が控えている。公演情報はこちら

山脇唯

1981年8月3日生まれ。俳優。ヨーロッパ企画退団後はフリーとして舞台を中心に活動。2013年より「すいているのに相席」に参加、“ユーモア女優“の称号をバッファロー吾郎A、せきしろ両氏より賜る。NHK Eテレ「デザインあ」、NTTdocomo、Tokyo FM、東京ガス、他、ラジオCMを中心に声の出演も多数。2018年11月に単独公演『放課後なんかいらん』(座・高円寺2)を敢行。2019年8月12日(月・祝)に行われた『すいているのに相席傑作選』(座・高円寺2)を振り返るトークライブ『すいているのに相席反省会』は8月26日(月)@新宿ロフトプラスワンにて。

PANORAMA FAMILY

2006年頃結成。2009年1月、3MCから1MCへ。以降はゴメス1人のユニットとなる。 渋谷Organ.b第1火曜日mixx beautyを中心に、年間60本ペースで精力的にライブを行う。remix、客演、ビールケースの上から幕張メッセ(countdown japan fes 3年連続出演)まで、大中小規模なイベントに参戦する他、トラック、楽曲提供など活動は多岐に渡る。レぺゼン宮城県女川町スタイル。2014年から写真家として活動。SLIDELUCK TOKYOの第一回ファイナリストに選出される。雑誌STUDIO VOICEでとりあげられる。2016年3月写真集「fastplant」発売するも即SOLD。2017年12/4~12/17に個展『PARANOIA SLAPPYS』を行い、同タイトルを冠した写真集を発売。新作photo zine『Don’t mind others, your dance is awesome/周りばっかり気にすんな、お前のやり方で大丈夫だから』発売中。TOMMY HONDA名義でも活動しており、最新リリースは『Make yourself at home』。

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