演劇とコントを行き来する俳優・山脇唯が、今、ゆっくり話したいゲストと 対談する企画「2SEE MORE」。撮影は新進気鋭の写真家PANORAMA FAMILY。
唯一無二のタイツアートで芸術界隈からも注目を集める、孤高のピン芸人・ハブサービスさんを迎えた写真×対談企画、第26回。タイの思い出、ネタやイベントの話、そしてお洋服に対する姿勢など、普段のトークでは意外と聞けない、とてもパーソナルな部分をたくさんお話ししていただきました。PANORAMA FAMILYのカメラが切り取った、ハブさんの柔らかな表情もお見逃しなく。(撮影/PANORAMA FAMILY 文・構成/山脇唯)
「犬がいるんで、犬と絶対目を合わせちゃダメですよ」って言われて。
ハブ:山脇さん、タイに行ってたんですね。マッサージ行きました?
山脇:いきました!
ハブ:いいですよねえ。ぼったくられませんでした?
山脇:1人だったので、ぼったくられるような場所に絶対に近づかないようにしました。
ハブ:1人でいったんですか!
山脇:飛行機がすごく安かったんですよ。片道1万3000円いかないくらい。
ハブ:やす! 僕、ちょうど2年前くらいの2月にいって。全部こみこみでホテル代もいれて3泊4日で12万円くらいでした。それでも「むちゃ安い!」ってみんなで言ってて。「タイまで行って12万って安いな!」って。でも、そんな安いのあるんですね。ちきしょう!
山脇:自分でバス乗って街中まで行かなきゃいけなかったり、ちょっとややこしいんですけど。伊丹みたいなほうの空港に着くので。
ハブ:スワンナプームじゃないほうですね。
山脇:そうです。ドンムアンです。
ハブ:タイいきてえなあ。ほんと楽しかったもん。
山脇:何人くらいで行かれたんですか?
ハブ:僕は4人で行って、向こうに住んでる吉本の後輩が1人いたので全部で5人でずっと行動してたんですけど。タイに住んでる芸人って給料を日本円でもらってるから、今タイの中では金持ちなんですよ。プールとジム付きのマンションに住んでるんです。
山脇:住みます芸人、いいですねえ。
ハブ:でも最初のうちは金もなかったから、そいつがいうには「葛西みたいな感じです」ってとこに住んでて。「そこでタイスキ食いましょう」ってタクシーにみんなで乗って。俺、いま葛西の近くなんですけど、そこまでひどくねえよって感じなんですけど、その葛西みたいなところに連れてってもらって。お寺とか家とかがあって、木がいっぱい生えてる住宅街なんですよ。「犬がいるんで、犬と絶対目を合わせちゃダメですよ」って言われて。
山脇:犬!
ハブ:本当に犬がいっぱいいるんですよ。超こええんですよ。「絶対、触っちゃダメですよ」って。街灯もなくて、まっくらな住宅街を歩いて、先にぽつんとコンビニみたいな明かりがあって「あそこでやってます」って、屋台なんですよ。
山脇:はい。
ハブ:座ってたら、犬がこういうとこ(足の間)通ってくるんですけど「絶対触っちゃダメですよ」って。触らなければ何もしないんで。
山脇:スリリングですね。
ハブ:夜中11時くらいに、僕らが飲んで騒いでるのをどっかから聞きつけた人たちが、花とかを売りにくるんですよ。「いらない、いらない」とか言ってるんですけど、結局買わされちゃうんですよ。500円くらいで。
山脇:あら。
ハブ:でっかいおせんべいとか、ピカチュウのにせものとか売りつけてくるんですよ、それがもう楽しくて楽しくて。僕、ピカチュウの脳みそがスケルトンになってて、電源入れるとピカーって光るやつ買っちゃいました。
山脇:ええ!
ハブ:「いつ使うんだよ」つって。それがまだ家にあるんですけど。
山脇:ハブさんなら、いつかネタで使えそう。
ハブ:あれ使えるときがきたらいいなって思うんですけど。ここ何年間で一番笑ったんですよ。帰りたくなかったなあ。山脇さんがインスタグラムで「タイ行ってます」っていうから「いいなあ」って。
A先生が「結局、勝つのはずっとやってる奴だ。それが出る」って仰ってて。それはすごい嬉しかったです。
山脇:普通のことをわりと聞いていこう、って企画です。答えたくないよ、っていうのも言ってもらって大丈夫なので。フランクに、お願いします!
ハブ:はい、お願いします(上着を脱ぎだす)。
山脇:上着も脱いで。
ハブ:脱ぎます。
山脇:この前、ハブ1-GPのゲストに呼んでいただいて、ありがとうございました。
ハブ:とんでもない、とんでもない。ありがとうございます。
山脇:ハブさんとハブさんが戦うトーナメントを観させていただいて。すごい数のギャグとタイツアートを観て、そこで僭越ながら、ハブさんの芸の真髄に触れたんじゃないかな、って感じがあったんですけれど。
ハブ:そんな、真髄もなにもないんじゃないですか。
山脇:もともと、ハブさんがルミネTHEよしもとのイベント「ギャグラリー20~即興ギャグしりとり決戦~ミドル級王座決定トーナメント」で勝ち進んで優勝する姿がすごく印象に残っていたんですよ。
ハブ:あのときは、いいときでした。調子というか、いける日だったんです。運が良かったんです。
山脇:ハブさん、すごい強いですよね、ギャグラリー。
ハブ:いやいや……結構、失敗してるんですよ。日によって全然調子がわかんなくって。全然ウケない日は本当に全然ダメなんですよ。何も出てこないんですよ。
山脇:トーナメントをぐんぐん勝ち上がってくの、鮮やかでしたよ。
ハブ:前に、バッファロー吾郎A先生と話して。A先生はギャグラリーを立ち上げて、ずっと見てきて、そのA先生が「最初はどうなるかわからなかったけど、結局、勝つのはずっとやってる奴だ。それが出るなあ」って仰ってて。それはすごい嬉しかったです。
目指してた所です。坂東玉三郎が動きのプロだって何かの本で読んだんで。
山脇:ハブさんの強さの秘密はなんだろう、って思ってて。ハブ1GP……ギャグ部門とタイツ部門、2つの勝ち上がりトーナメントをハブさん1人でやる、全部のカードがハブさんのトーナメント、っていう配信に出させてもらって、すごい数のハブさんを見て、それで気づいたんですけど……、ハブさんは、ノイズが少ないんですよ。
ハブ:ははは! 本当ですか?
山脇:最短距離で、ストン……って伝えたいところにいく感じです。ノイズが入らないんです。だから、ギャグラリーで初めて観ても、見所がすぐわかるから笑っちゃう。
ハブ:ようはトーナメントに強いのかもしれないですね。毎月トーナメントやってるもんですから。
山脇:そうか! 戦い方を知ってるんですね。
ハブ:負け方の方が知ってるんですけどね。負ける方が多いんですよ、16個のネタがあって、1個しか勝ち上がらないんで。
山脇:そうか、トーナメントだと、そうですね。
ハブ:負け慣れてるんで。たまには勝ちますよ、っていう。
山脇:かっこいい。
山脇:ハブさんはとにかく体幹がしっかりされてるから、身体にノイズがまったくないんですよ。
ハブ:体幹?
山脇:ふりむいて何か言う、っていうときに、ちょっとグラッとかヨロッとかしちゃうと、ぶれちゃうじゃないですか。そういうのがハブさんは全くなくて。
ハブ:えー……? 本当ですか? 「ノイズ」ってかっこいいですね。
山脇:演劇の現場でそういうの「ノイズ」っていうんです。「それ、ノイズになるからやめて」とか言われちゃう。ハブさんは身体にノイズがないです。
ハブ:僕、自分では動きのキレとかって全然ないと思ってて。やっぱり原西さんとか脇田さん、宮迫さん達って、動き1つ、ギャグひとつとってもキレがすごいじゃないですか。
山脇:ドーン!という。
ハブ:俺、真逆にいると思ってて、ぶれまくってると思ってて、自分の動きがすごい嫌なんです。ヘタだな、もっと面白い人いるな、って。
山脇:『柔よく剛を制す』でいうと、ハブさんは”柔”のほうなんですよ。
ハブ:ほんとうですか? 嬉しいけど……坂東玉三郎ってことですか?
山脇:そうです! 女形的なキレ。刀でザシュザシュ! っていうキレじゃなくて、柳のキレです。
ハブ:一番嬉しいやつですよ。目指してた所です。坂東玉三郎が動きのプロだって何かの本で読んだんで。
山脇:お顔もノーブルだから、歌舞伎役者でいったら女形っぽいですよ。
ハブ:でも、僕は歌舞伎だったらやっぱり男形やりたいですよ。2回、国立演芸劇場に歌舞伎を観にいったことがあるんですけど、女形のひとは……キレイとかっていうより……ちょっと失礼な言い方ですけど、観てると笑っちゃうんですよね。
山脇:「あ~れ、まあ~~」みたいな感じがですか?
ハブ:笑っちゃうんですよ。男の人のが格好いいなって思っちゃいます。だから女形はやりたくねえなと思ってたんですけど。
山脇:でも、絶対にそっちですよ。
ハブ:ニヤニヤしながらやっちゃいますね。
今は横笛オンリーでやってます。
山脇:こないだの単独ライブでやってた、平安時代のターミネーターのネタ、ありましたよね。
ハブ:ああ、『ターミネーター平安』。
山脇:あれ、女形っぽくなかったんですか?
ハブ:ターミネーターはシュワちゃんですから、めちゃくちゃ男ですけど……女形に見えました?
山脇:そっか。でも「アレレ、アレレ~」とか言ってませんでしたっけ(笑)? あのネタ、大好きだったので、もう一度観たいなと思ってます。
ハブ:『ターミネーター平安』は、あれ以来、出て来てないんですよ。またやろうかな。
山脇:毎週5分ずつ、定期的にあの人を観たいです。
ハブ:本当ですか? がっちりスベる絵がもう、浮かんじゃって。ネタライブでがっちりスベって「2度とやりたくねえよ」って言ってる絵が浮かぶんですよ。
山脇:そうですかね? 平安時代だし、ターミネーターだし、キャッチーじゃないですか?
ハブ:「『ターミネーター平安』やろう」って思った時に「いいの思いついた」って思ったんですけどね~。
山脇:どうやって思いついたんですか?
ハブ:あれは、僕、いま横笛を練習してるんですよ。
山脇:横笛?! なんで横笛を習ってるんですか?
ハブ:いや、習ってないんですよ。
山脇:独学?
ハブ:独学というか。最初、縦笛を買ったんですよね。「縦笛でなんかできないかな」って。3000円くらいしたんですけど。でも縦笛って……僕の勝手なイメージですけど、ちょっとだけ、汚らしいって思っちゃうんですよね。
山脇:ああ……ええと。
ハブ:一生懸命吹いてると、先の方からポトって落ちたりするイメージあるし。舐められたりするかもしれないですし。
山脇:確かに、いろんなイメージが既についてるかも。
ハブ:なんか雑にエッチな感じもするし、舐めるネタも多いし。それで横笛やりたいなって思ってた時に、ヤマハ楽器に入ったら横笛が売ってて。横笛、千円なんですよ。
山脇:お安い!
ハブ:すぐ買って。ある程度練習したら吹けるようになったんで、今は横笛オンリーでやってます。
山脇:じゃあ、曲は、楽譜なしで吹いてらっしゃるんですか。耳コピで?
ハブ:もちろん楽譜も買ったんですけど、横笛専用の楽譜はなくて、ソプラノリコーダー用のを。
山脇:はい。
ハブ:買ったはいいけど、僕、楽譜は読めないんです。
山脇:え! じゃあ、あのターミネーターのあの曲は……
ハブ:(口ずさんで)てれて~て~て~て~♫ です。
山脇:吹いてましたね! ピピピ~って。
ハブ:耳でいけるんだ、俺すげえなと思って。もちろん笛の音域、音の限界があるんで、出ない音もあるんですけど、ある程度いけるんです。
山脇:で、そこから、ターミネーターのネタを。
ハブ:はい。横笛といえば、ターミネーターだと。
山脇:ははは。
ハブ:ターミネーターといえば平安。『ターミネーター平安』ってタイトルがおもしろいな、って。で、「横笛でなんかいけないかな」と思って。ネタの最後まではすぐできたんですけど、そうですね、なんかね……
山脇:あのひとが、平安のいろんな歴史のきっかけになった、っていう話ですよね。
ハブ:そうですね、バックトゥザフューチャー的な。あれによって清少納言も生まれて、空海も随に行って。
山脇:いい話。勉強にもなるし。歴史の素養を試されるっていう高尚な部分もあって。
ハブ:全然そんなことは意図せず。知ってる単語をただ並べただけですから。あとはグーグルで調べながら。
山脇:平安時代の。
ハブ:平安京とか平城京とか調べて。その頃は随なのか唐なのか、とか。
山脇:行くべき外国は。
ハブ:唐って言って「間違ってるわ~」って思われれたら恥ずかしいんで、随、って。
山脇:歴史好きな人がみたら「あれ? 平安なのに?」ってなるから。
ハブ:そうなんですよ。でも、清少納言と空海が同時期にいたかどうかはわからないです。そこまでは調べてないので。意外とゆるゆるです。
山脇:すごい好きでした。
ハブ:嬉しいっす。
ハブ:単独ライブも、ハブ1GPもそうなんですけど。いっぱいやりたい、とか、出たい、とかはすごいあるんですよ。出たがりなので、舞台出たい、テレビ出たい、って。テレビはまああれなんですけど、これだけいっぱい劇場があって、芸人がいて。本当に出る機会が少ないんですよ。それがストレスになっちゃって。
山脇:はい。
ハブ:単独ライブとか、いっぱいライブやりたいって吉本に言って劇場おさえてもらってやってるんですけど、軒並みマイナスなんですよ。
山脇:あら。収支が。
ハブ:それで、あんまりやらせてもらえなくなっちゃって。すごいんですよ、ストレスが。それでもうハゲちゃって(帽子を取る)。
山脇:あ、でも髪伸びましたね。
ハブ:伸びました。もう、伸ばして。
やってられないですよ。「やりたくてやってるんだよね?」って自分に言い聞かせないと。
ハブ:もう、本当に、ただやりたいだけになっちゃってるんですよね。いや、いいんですけど、別にそれはそれでいいんでしょうけど、なんかこう「自分で金払ってるんだからいいだろ!」と思っちゃうんですよなんか最近。
山脇:ははは。
ハブ:いいだろ別に、そんなの知らねえよって。お客さんのためとかってよく言うじゃないですか。そのつもりでありたいんですけど、「どうせ来ねえんだろ」とか思ってるし「どうせ告知したって来ないんでしょ」って思ってたから。そんなお前らなんかに合わせてたまるか、って思っちゃうんですよ、勝手にですけど。
山脇:海外のスターが言ってましたよ。「他人のためにやるもんじゃない、自分のためにやってんだろ」って。
ハブ:ツイッターで映像見ました。それを今、僕も言っちゃいましたね。でも、あの人とかはお客さん入ってるでしょ。だからいいんですよ。
山脇:ははは。
ハブ:お客さん入ってないくせにそれ言ってるから……20何年ももう。
山脇:私、昨年末のハブさんの単独ライブの後説で、ハブさんが「ただやりたくてやってるんですよね」って仰ったときに感動して泣きそうになったんですよ。
ハブ:ええ?
山脇:自分も集客のこととかで狭量な気持ちになってたので「やりたくてやってる」っていう、シンプルな人を見て、ぐっときてしまって。
ハブ:いや、そうでも言っておかないと折れちゃいますよ。やってられないですよ。「やりたくてやってるんだよね?」って自分に言い聞かせないと。だって、軒並み皆入ってますよ、今。
山脇:え? どういうことですか?
ハブ:昨日ガリットチュウの単独がルミネであって、満員でしたよ。あのガリットチュウがですよ?
山脇:同期なんですよね?
ハブ:ずーっと一緒にやってて、僕らは解散しましたけど、ガリットチュウはずっとやってて。「本当に客入んねえな~」みたいなこと言ってたのに、それが満員なんですから。やってらんねえですよ。
山脇:でも、きっと、会社にいるってことは、そういうことも含めてだから……いつか何かでドカンと返ってくるだろうからって、今、赤字を出させてくれてる、という考え方で。
ハブ:そうなんですかね。
山脇:企業でも、色々と研究をやってる部署があって、みたいなことがあるから……堂々となさってください。
ハブ:堂々とね。
山脇:はい。
ハブ:吉本の中で、ほとぼり冷め待ちみたいなのがあるんですよ。僕、もう何十個もライブつぶしてるんですよ。勝手に立ち上げて、お客さん入んないんで。で、何年かに一回「ハブさん、ちょっといいですか。担当ライブ多いんで、やめてもらっていいですか?」って言われるんですよ。
山脇:その、整理みたいな感じで?
ハブ:「ちょっとライブ整理しましょ」ってすげえ削られるんですよ。真っ先に削られてなくなるんですけど、「わかりました」って言って……半年もすると、忘れるんですよ、会社が。
山脇:削ったことを。
ハブ:担当も変わるんで。そしたらまた徐々にいれてって……ちょうどこないだ言われたばっかりなんで、忘れるまで待とうって思って。∞ドームって新しい劇場が2個できて「何かライブやる時いってくださいね」って言われたからいっぱい言ったんですよ。とりあえず一回やってみましょうか、って全部小出しで試したんですけど、全部入らないですもん。で、単独ライブもやったでしょ。だから「どう思ってますか?」ってこないだ言われて「すみません」って。
山脇:はい。
ハブ:「ちょっと考えます」って言って、やりたかったやつを一個「ちょっと止めておきましょう」って作家の人に言って。だから、ほとぼり待ちなんですよ、今。
ロフトさんにはね、いつかでっかい恩返ししたいなとは思ってます。
ハブ:お客さんは入ったほうがいいですけど、入らなくて嫌な思いばっかりして、それが当たり前なんで、なんとも思わないんですよ、入ってなくても。超まずいんですけど。
山脇:わあ。
ハブ:ロフトさんにも迷惑かけてるんです。ネイキッドも、ロフトプラスワンもそうですし、LOFT9とかも、めっちゃ迷惑かけてます。去年ハブ1GPのグランドチャンピオン大会をLOFT9の石崎さんに言って、やらせてもらって。結構いいキャストで、又吉とか呼んだんですけど、客が半分も入らなくて。
山脇:なぜ。日が悪かったのかな……?
ハブ:いや、日が悪かったんですよね、多分ね。で、後輩も審査員で結構出てもらって。後でギャラが入ってなかったんで「未払いです」って言いにいったら「あれは入らないです」って。「入らない仕事ってなんですか」って言ったら「客入り考えてください」「あ……すみません」って。でも他の演者にも入ってなかったんで「それだけは勘弁してください、500円でも入れてあげてください」って言って。だから又吉に500円入ってるんですよ。
山脇:ははは。
ハブ:ロフトさんにはすごくお世話になってるんですよ。ロフトプラスワンの鈴木さんも優しいんで、最初の頃は「ハブさん何かライブないですか」って言ってくれたんですけど、今、本当に言われなくなりました。
山脇:ええ……
ハブ:鈴木さんと石崎さんは最後の最後まで、優しかった……って言い方もできますし馬鹿だったって言い方もできますけど(笑)、最後の最後まで「ハブさん何かないですか」って言ってくれてたんですよ。もう言われなくなっちゃって。
山脇:ああ。
ハブ:ロフトでやるときは「申し訳ないな」って思うんですけど。吉本のイベントに対してはもう何も思わなくなっちゃって。「『どうせ入らないでしょ』って思ってるんだろうな~」って思ってるから「ほら入らないでしょ」って。ロフトさんにはね、いつかでっかい恩返ししたいなとは思ってます。
「死んでもやらない」って言ったんです。「死んでも」って言ったんで、やらなかったです、やっぱ。
山脇:ハブさんは、ずっとそういう穏やかな性格でしたか?
ハブ:そんなことないです。穏やかじゃないですよ、僕。
山脇:本当ですか? 家では暴れたりしますか?
ハブ:家では嫁に「キチガイ」って言われてますから。すぐ病院行きなさいって言われます。本当に怖いみたいで。
山脇:怖い?
ハブ:「精神科に行け」って本当に去年言われて。そんなの「行くか!」って。「行ったらすぐ入院させられて、それで発症して病気になるんだよ、お前だっていったらなるよ、だから死んでも行かない」って言って、行かなかったんですよ。そしたらハゲたんですよ。
山脇:あら。
ハブ:急に機嫌が悪くなったりするから、嫁は怖いと思いますね。自分ではなんとも思ってないんですけど。だから、そうですね。穏やかではないです。
山脇:穏やかじゃない。怖いときもある?
ハブ:怖いときの方が多いと思いますよ。
山脇:一緒に暮らしたら、そういう面が。
ハブ:ずっと黙ってる、とかあるんで。旅行とか短い期間だったら「楽しい奴」ですむかもしれないけど、5日超えてきたら「こいつやべえかもしんない」って思うかもしれない。
山脇:え!
ハブ:友達とも結構すぐ仲良くなるし……あ、でも人見知りな部分もあるんで最初のうちはなかなか仲良くなれないですけど、途中うちとけて、すぐ離れるんですよ、俺。だからずっと1人でいるんですよ。
山脇:その、離れる、タイミングというか、きっかけって?
ハブ:めんどくさくなっちゃうんです、僕。
山脇:グループっぽくなるのが苦手?
ハブ:毎回誘われるのとかがめんどくさくなっちゃんですよ、だんだん……。いやじゃないですか?
山脇:ああ、またこのメンバーで集まっても、もう新しい話ないかな、って思うことはあるかも。
ハブ:みんな誘ってて、なんであいつ来なかったんだろうって思うと、さみしくなったりとかもあるし。
ハブ:俺、LINEグループとかすげえ入ってるんですよ。退会するわけにもいかないし、誘いがくるし。「また行こうぜ」とか言われたらどうしようと思って。
山脇:そんな。
ハブ:新年会と忘年会を毎年やってる大学の同級生のグループとか、中学の同級生のグループとかもあるし……一個も行かないですけど。
山脇:ハブさん、地元どちらでしたっけ?
ハブ:練馬です。
山脇:だからですね。近いから、余計に。
ハブ:でも、親にももう会ってないです。めんどくさくて。僕、本当にひどいですよ。父ちゃんも母ちゃんも2年くらい会ってないんですもん。
山脇:それは、会わずにすむんですか……?
ハブ:全然大丈夫です。僕は、奥さんの家族には会ってますし、僕の家には来てるんです。でも、両家で会ったことは一回もないです。結婚式もしてないし。めんどくさいって言ったんです、俺。
山脇:結婚式を?
ハブ:「結婚式は死んでもやらない」って言ったんです。
山脇:奥様はなんて?
ハブ:やりたいって言いましたけど……
山脇:言いますよねそりゃ。
ハブ:俺、「死んでもやらない」って言ったんです。
山脇:あら……
ハブ:「死んでも」って言ったんで、やらなかったです、やっぱ。
山脇:「死ね」とは言えないですもんね……。「死んでもやらない」って言われたらどうしたかな、私。
ハブ:せめて親同士の食事会はしよう、って言われて「最悪それな」って言って、やってないです。だから、僕は向こうの家族は全員知ってますけど、奥さんは、俺の兄妹には会ってないです。兄ちゃんと妹がいるんですけど。
善治さんが「いつも従弟がお世話になってます」今田さんは「……誰のこと言ってるんだ?」って。
山脇:あの将棋の、羽生善治さんとは従兄弟同士で。会ったりされますか。
ハブ:会ってないです。むこうが忙しいんですけど。あ、この前、北参道で……将棋会館が北参道にあるんですけど、北参道のスターバックスに僕けっこう行ってたんですよ、今あんま行かないですけど。そしたら僕が座ってる、この斜め前くらいに善治さんが座って。
山脇:善治さん。
ハブ:善治さんのこと、なんて呼んでたかわかんなくなっちゃって。
山脇:羽生さん同士ですものね。
ハブ:むこうも、周りの人がいるし今挨拶したら嫌だろうなあ、でも挨拶しないのはおかしいなあ、と思って、とりあえず善治さんの用事が終わるのを待ってたんですよ。で、向こうが立ち上がって出てった時に、うしろから追っかけてって、俺、「羽生さん!」って声かけて。
山脇:結局お名字で。
ハブ:なんて呼んだらいいかわかんないんで。そしたら2、3歩無視されて。もう一回「羽生さん!」って呼んだら振り向いて、顔見て「おお! 元気?」って。
でも向こうも俺のことなんて呼んでいいかわかんないんですよ。下の名前覚えてないんじゃないかな……なんか2人で変な感じでした。
山脇:ええ。
ハブ:ただ、僕がこの仕事してるっていうのは知ってるんで、善治さんが今田耕司さんの番組に出たときに「いつも従弟がお世話になってます」今田さんは「……誰のこと言ってるんだ?」って。
山脇:結びつかなくて?
ハブ:今田さんは俺の『ハブ』っていうのは芸名だと思ってて、全然関係ないと思ってたんですよ。後で「従弟なん?」って言われて「はい」「知らんかったわあ」「こんなんですみません」「似ても似つかんなあ! 同じ血、流れてんのか!」って。……一番気を遣いますね、だから。家族が。
買ったらもう、そのシーズン内に売っちゃうんですよ。いらなくなって。
山脇:お洋服についてお聞きしてもいいですか?
ハブ:お洋服。うわあ、恥ずかしいですね……。
山脇:皆さんにお聞きしてて。どちらで買われてるのか、とか。
ハブ:服ですね。服はねえ、僕、でも本当に……もう、ユニクロになっちゃうんですよね、結局……。そう思わないですか?
山脇:シンプルでいいですよね。
ハブ:もともと衣装をずっと着てて、私服で舞台に出ることがなかったんで、古着ばっかり着てたんですよ。そこらへんの兄ちゃんみたいな格好。あんまり人前に出る格好じゃないというか。で、ピンになって「私服ちゃんとしなきゃな」って思ってても、買っても飽きちゃうんですよね。買ったらすぐ売りにいっちゃって。
山脇:へえ!
ハブ:服いっぱい持ってるのがいやなんですよ。
山脇:シンプルな……そういうの、なんていうんでしたっけ……
ハブ:ああ、そういう、ライフスタイルです。
山脇:ミニマリスト!
ハブ:僕、国民服があったらいいな、と思ってたんですよ、本当に。
山脇:それを着ていればいい、っていう服が。
ハブ:いや、でも服に興味なくはないんですよ、ただ、いらなくなっちゃうから、すぐに。
山脇::はい……。
ハブ:BEAMSとか、服屋にも行って見たりしますけど、買ったらもう、そのシーズン内に売っちゃうんですよ。いらなくなって。
山脇:いらなくなる?
ハブ:いらなくなるんですよ。
山脇:「もういいや。絶対着ることないな」って?
ハブ:着ることあっても、あるといやなんで、売っちゃうんですよ。
山脇:あるといや?
ハブ:あるといやじゃないですか? いっぱい服かかってるの見るの、いやでしょ。
山脇:え、楽しいな、とかじゃなくて、いや?
装備いっぱい持ってるのがいやなんですよ。
ハブ:たとえばリュック。同じサイズのリュックが2個あったら、もういやなんですよ。
山脇:使い分けたらいいじゃないですか。これは何用、こっちは何用、って。
ハブ:サイズが違ったら、いいんですよ。今持ってるこのリュックは普段用で、もう一個、普段用があったんですけど、それは、これを買う前に売りました。だからリュックは、これと、あと、まるめられるリュックが一個。
山脇:えー……
ハブ:俺、リュックばっかり買っちゃうんですよ。買い替えて、すぐいらなくなっちゃうんで。
山脇:いらなくなるのは、なんでですか?
ハブ:同じようなリュックを2個持ってるのが嫌なんですよ。
山脇:なんでなんですか?
ハブ:なんでかわかんないんですけど。
山脇:「いらなくなっちゃう」っていうの、私にはない感覚かもしれないです。
ハブ:逆に、あると、買えないんですよ。
山脇:同じものを持ってると。
ハブ:だから、なくしてから、買うんですよ。
山脇:なんか……ドラクエみたいですね。
ハブ:そう、装備いっぱい持ってるのがいやなんですよ。
山脇:だったら売っちゃった方がいいですもんね……
ハブ:いらないんですもん。
山脇:着られるのも持てるのも一個、持てないものは、いらない。
ハブ:今着てる、このシャツとかは、古くなってるから買い取ってもらえないんですね。だから、これは永久に着ます。
山脇:ははは。
ハブ:一時、パーカーばっか着てた時あったんで、いっぱい持ってて、それも全部いらなくなって、売っちゃって。今パーカー3着くらい持ってるんですけど、売りに出しても買い取ってくれないんですよ。もうボロボロで。でも、それの方が着ちゃうんですよ。
山脇:売れなかったら手元に残すんですね。
ハブ:売り物になんねえな、っていうやつは、気に入って、それだけ着たからボロボロになったってことでもあるんで。
山脇:お気に入りってことですもんね。
ハブ:ユニクロは安いから、逆に、いっぱいあると捨てるっていうことになっちゃうんで。でもいっつも「ユニクロいいなあ」って思ってて、結局ユニクロになっちゃうから……全身ユニクロは避けたいんですよ。だから、なんかちょっと帽子とかを、別のとこで買って。
山脇:はい。
ハブ:この上着もこないだ買ったんです。渋谷の、BEAMSの系列の。
山脇:ピルグリム。サーフィンの感じのお店ですよね。
ハブ:そうです。そこで買って。でもその前、秋の初めくらいに僕、こんなやつを買ってたんですよ。でも、これがセールで3万円くらいのが1万6千円くらいになってて「超安くなってる!」と思って。3万だったら絶対買えないけど、1万6千円だったら買えるなって思った瞬間に、前のやつがいらなくなっちゃったんですよ。全然着てたのに。
山脇:えー!
ハブ:で、すぐ売りに行ったんですよ。で、これ買ったんですよ。
「こいつ、パタゴニアマニアじゃねえか」と思われるのがいやなんですよ。
ハブ:ちょっと長くなっていいですか?
山脇:はい、もちろん。
ハブ:僕、モンベルのダウンが安くて好きだったんですよ。
山脇:軽いし。
ハブ:はい。で、パタゴニアのごついダウンも持ってたんですよ。それはバイク乗る時に着る用で、もう10年くらい着てるんですけど。一回、エンジンにつけちゃって、べろーんって溶けちゃって。パタゴニアに持っていったら、タダで直してくれたんですよ。
山脇:え! すごい! 企業努力。
ハブ:そうなんですよ。で、10年くらい着てるから、何回も首が取れそうになったり、ほつれたりしたんですけど、全部タダで直してくれたんですよ。
山脇:さすが。
ハブ:そうやって、つぎはぎだらけ、リペアだらけになっちゃったパタゴニアはもう、捨てられないんですよ。すごい愛着わいちゃって。だからもう一生着るって決めてて。もう汚いから、どうせ絶対買い取ってくれないですし。
山脇:一生ものですねえ。
ハブ:で、モンベルのもっと薄いダウンを、何年か前に買ったんですよ。それすごい着やすくて、毎日着てたんですよ。そしたらちょっと背中のとこ裂けてきて、羽毛が出てきたから、モンベルに「直してくれ」って持っていったら「5000円かかる」って言われて「ふざけんじゃねえよ」と思って、それはもういらなくなっちゃったんですよ。だからどっか売りにいこうと思って。で、間ぐらいのダウンがほしいなと思って。いっぱい探したんですよ。そしたら結局パタゴニアになっちゃうんですよ。でも、パタゴニア、パタゴニアはまた嫌なんですよ。
山脇:なぜですか?
ハブ:「こいつ、パタゴニアマニアじゃねえか」と思われるのがいやなんですよ。
山脇:好きなんだなあ、って思われるだけですよ、いいじゃないですか。
ハブ:パタゴニアいっぱい着てる人って、すごい、なんか意識高そうじゃないですか。
PANORAMA FAMILY:わかりますよ。わかります。
ハブ:そうでしょう(笑)。その空気感あるんすよ。だから「パタゴニアいっぱい着るのはな~」と思ってて。でも、ノースフェイスとパタゴニアを一緒に着るのは嫌なんですよね。
山脇:それはわかります。
ハブ:ナイキとアディダス一緒に着れない、みたいな。だからどうしたらいいかな、ってときに、ユニクロなんですよ。
山脇:ちょうどいい。
ハブ:ユニクロめっちゃよくて。こないだ買っちゃったんですよ(ニコニコと取り出す)。春先になったら、ダウンが超安くなってて。これ、チョッキなんですけど、(付属の袋に)しまえるんですよ。
PANORAMA FAMILY:こんな小ちゃくなるんですね。
ハブ:そうなんですよ、これチョッキなんですよ。チョッキタイプなんて絶対着ないと思ってたんですけど、1900円ですよ?
山脇:あら! めっちゃ安くなってますね!
ハブ:女物なんですよ。男物は3900円だったんですよ。「1900円?! もう買うしかない!」と思って、買ったんですけど……あんまりもう着る機会なくて。でも、これは多分捨てないですね。めっちゃいいお買い物した、と思って。
山脇:春先一番こういうのが重宝しますよね。お花見のときとか、日が暮れてくると寒くなるから。
PANORAMA FAMILY:こんなに小さくなるならいいですね。
ハブ:モンベルのは長袖で、すごく好きだったんですけど、リペアに5000円かかるって言われたら「2度と行くか」と思って。
山脇:そこまで? でもモンベルも、手頃な価格で、良心的にいろんなものを作ってくれる、いいところですよね。
ハブ:そうですよね。本当に、いいところです。
山脇:ね。
ハブ:俺、洋服屋さんからしてみると「あいつすげえ暇なんだろうな」って思われてるんじゃないかなって……まあ覚えてないでしょうけど。でも防犯カメラめっちゃ映ってると思いますよ。
山脇:お店の防犯カメラに?
ハブ:すっごい行ってるんですよ、いろんなところ。
山脇:お買い物とか、お洋服見たりするのお好きなんですね。
ハブ:めっちゃ見てます。1人でめっちゃ見てますけど、ほとんど買わないです。
山脇:いらなくなっちゃいますもんね……。同じお洋服好きでも、コレクター気質の人だと「いっぱいほしい」「いくら持っててもこれは別」とか「Tシャツ何枚でもいい!」とかいう話は聞きますけど、いらなくなっちゃう、っていうの初めて聞きました。
それでも家にあるよりはマシなんです。
ハブ:Tシャツでも、イベントTシャツとかあるじゃないですか。
山脇:増えますよね。
ハブ:吉本のイベントのやつはだせえから絶対着ないんですけど。でも、もらってきちゃうんですよ、俺。イベント会場に置いてくることができないから。持って帰らなきゃいけないと思って、持って帰ってきちゃうんです。そうすると何か捨てなくちゃいけないから。
山脇:ああ!
ハブ:「Tシャツは何枚あってもいい」って僕もそういう考えで、Tシャツ捨てられないし、売れない、って思ってたら、こないだ江戸川区にある衣料再生センターみたいなところで「絶対こんなのいらないだろ」っていうのが50円で売れたんですよ。今度Tシャツ大量に売ってやろうって思って。
山脇:すごいですね。
ハブ:Tシャツも本当は3枚くらいでまわしたいんですよ。いっぱいあるのいやなんですよ。
山脇:えー
ハブ:いやじゃないですか。こういう、帽子も。帽子ばっか買っちゃってんですけど、気に入ってても、同じようなのがあったら、いらなくなる。
山脇:いらなくなるってすごいな。
ハブ:持ってるのが嫌なんです。家にいっぱいかかってるとか、いやじゃないですか?
山脇:そう言われると、その考えもいいな、って思ってきました。今日帰ったら「あれ売ろうかな」ってちょっと考えてます。
ハブ:いや、売ってる時はめっちゃむなしいですよ。
山脇:なんでですか?
ハブ:「こんなに安くされるんだ」と思って。たまに自分が売ったやつが高値で売られてたりするんですよ。「これ600円で売ったよな」っていうのが4,000円とかで。「これ俺のじゃねえのか」っていうのがあんですよ、本当にラグタグとかで。めっちゃムカつきますけど、それでも家にあるよりはマシなんです。
山脇:ハブさん、こんまりさんと対談してほしいです。
ハブ:こんまりさん?
山脇:断捨離のすごい方です。近藤麻理恵さん。『人生がときめく片づけの魔法』って本を出して、今はアメリカ人の家をめちゃくちゃきれいにしてる。
ハブ:そんな人がいるんですね。
山脇:ときめかないものは捨てちゃおう、っていう。
ハブ:でも……その人は捨てられるんですもんね。捨てられないですよ。自分でポイってできなくないですか?
PANORAMA FAMILY:売りにいく手間が面倒だなって思っちゃいます……
ハブ:意外といい値段つきますよ。
PANORAMA FAMILY:そんな、売れるようなもの持ってないから……
ハブ:と思うじゃないですか。それが本当にね、僕、ジーンズのつなぎを持ってたんですよ。裾ひきずってべろべろになっちゃって。「絶対こんなの要らないだろう」と思ったけど捨てられないから、持ってったんですよ。そしたら3000円になったんですよ。
山脇:裾がべろべろなのに? 物がよかったんですかね?
ハブ:長年着たんで色も褪せちゃってて。
山脇:逆に、味が出たんですかね。
ハブ:だから、絶対売りに行った方がいいですよ。靴とかはさすがにぼろぼろになったら、売れないですけど、僕、靴をゴミ箱に捨てられないんで、ABCマートにわざわざ古い靴を履いていって、新しい靴を買って履いて帰ってます。
山脇:自分の手からゴミ箱にいくのが、いやなんですね。
指輪してなきゃいけないんですけど、恥ずかしいからしてないんです。ここ(人差し指)につけなきゃいけないんですよ。
山脇:ザ・ギースの高佐さんに「この企画、次に誰が出るんですか?」って聞かれて「今度はハブさんです」って言ったら「あ、ハブさんおしゃれだからいいですね」って。
ハブ:(笑)ほんとっすか。嬉しいですけど、おしゃれですかね?
山脇:高佐さん「ハブさんいいじゃないですか、おしゃれだし」って言ってましたよ。
ハブ:でもリュックの話とか、服が要らない話とか、誰にも話せなかったんで。
山脇:聞けてよかったです。
ハブ:誰に話しても「だからなんだよ」って話じゃないですか。思えばめちゃめちゃそういうところに神経使ってて、すげえイライラするんだよな俺、って。
山脇:そう考えたら、ハブさんってミニマムですよね。タイツだけ、とか、余計なものを身につけない。
ハブ:装飾物を一切つけないって決めてたんですけど、今年の頭に、占いをやる芸人に「指輪をしろ」って言われて、指輪してなきゃいけないんですけど、恥ずかしいからしてないんです。ここ(人差し指)につけなきゃいけないんですよ。
山脇:え、それはなんでですか?
ハブ:「ここにつけるとパワーが抜けないから、ここに指輪をしてください」って。
山脇:そういう指ってことですか?
ハブ:人によるんです。手相的に。
山脇:ハブさんはこの指からパワーが抜けるから、抜けないように、って。
ハブ:でも、この見てくれでここの指輪やばいでしょう。
山脇:(笑)そんなことないですよ。慣れたら「そうなんだ」って思うだけですよ。
ハブ:俺、ここに指輪してる人何人か見たことあるんすけど、「こいつ、すげえこだわりありそうだな」って話しかけられないですもん。薬指だったらまだいいけど、人差し指に指輪してるやつってよっぽどこだわりあるでしょう?
山脇:「ああ、指輪するタイプの方なんだ~」って思うかもしれないですね。でも、全然なじんでますよ。気にならない。
ハブ:本当に、へんなとこに指輪したりへんなとこにピアスしたりしてる人って、「こいつ、よっぽどの奴だ!」って思っちゃうんですよ。
山脇:そう、ですね……確かに確かに。
マジいらなくなるんだろうな、って思った時が怖いんですよ。だからもう作るのやめとこうかなって。
ハブ:こんな話、プライベートでしても「だからなんだよ」って話じゃないですか。
山脇:聞けてよかった。初めてですよ、「いらなくなる」って観点。
ハブ:出来ればお財布とかも要らないんですよね。だからといって最先端いってるわけでもないんですけど。
山脇:キャッシュレス。
ハブ:なにも持たずにいきたいんです……といいながらリュックめっちゃ重いんですけど。いらないものいっぱいぶら下げてる人とか信じらんないですよ。
山脇:もしかしたら、ハブさんと一緒に暮らしたらそこでもめるかもしれない。
ハブ:山脇さん、いらないものいっぱいですか?
山脇:「なんでこんなもの置いておくの?」「それは思い出だから」みたいなことが多いです。
ハブ:でも僕、部屋の中は思い出だらけです。
山脇:ははは。
ハブ:粘土で像を作ったりしてるんで。
山脇:ゾウ? エレファント?
ハブ:あ、牛ですね。蟹とか魚とか作って何個か玄関に置いてあるんですけど。これマジでどうしよう、作ったけど、捨てられないし。マジいらなくなるんだろうな、って思った時が怖いんですよ。だからもう作るのやめとこうかなって。
山脇:なんだろう、なんだかすごく、所有することに対して……前世で何かあったのかな。
ハブ:”捨て乞食”ですかね。
山脇:なんですかそれは。そんなのあります?
ハブ:なんでも捨てちゃって乞食になっちゃったひとです。
山脇:昔話みたい。
ハブ:お金は持ってたんだけど、捨てるから。「捨てるからね、あの人は。だから乞食なんだよ」って。
山脇:物の価値を問われる話ですね。
ハブ:捨て乞食。
山脇:持ってるのにね~って。
ハブ:いや、まじで、要らないんですよね~。
だから、雅楽が好きです!
山脇:では、好きな音楽を教えてください!
ハブ:好きな音楽ですか? うわ~……それがあんまなくてね~。あ、でも前にA先生が「人によって、『好き・嫌い』じゃなくて、『合う・合わない』の音楽があるね」って真面目な話をしてくれて。
山脇:合う、合わない。
ハブ:どういうことかな、と思ったら、例えば野性爆弾くっきーさんはパンク、とか。
山脇:ああ!
ハブ:「くーちゃんはパンクやねん、ザコシはテクノやねん。ハブちゃんも何かあんねん」って。
山脇:おお。
ハブ:俺も別に「これがどうしても」っていうのはないんですよ。電気グルーヴとかも好きですし。そんなテクノなんか知らないですけどね。ロックとか、洋楽とか、わかんないですけど何個か持ってるし、好きなのもは好きなんですよ。だけど「テクノでもロックでもねえな、なんだろうな」って思ってて、俺……クラシックなんじゃねえか、と思ってたんですよ。
山脇:はい。
ハブ:で、単独ライブのブリッジをクラシックにして、前回は、ネタ中もずーっとBGMでクラシックを薄く流してたんですよ。そうすると、なんかこう、お洒落、みたいな感じで高級感でるなあ、って思ってたんですよ、下品なネタが多いんで。だからクラシックかな、って思ってたんですけど、今はなんか、神社とかの音楽かなって思って。
山脇:雅楽!
ハブ:だから、雅楽が好きです!(笑)
山脇:横笛やってるのも、そういうことですよね。近づいてきましたよね。確かに、そっちのほうというか「ピ~~~」とか、音がす~って流れてる感じ、します。
ハブ:あんまりテンポがコン、コン、コンじゃない。
山脇:そうです、そうです。ツッツクツッツクしてない。『ターミネーター平安』とかもそうですけど、日本人の持ってるプリミティブなテンポに近いのかな。原始的な、もともと持ってるテンポに近いのかな、って。
ハブ:話してて、すごい……女形だし、プリミティブだし、って言っていただいて。新しい自分が出て来た気がしました。
山脇:そんな……もしそんなきっかけになったら嬉しいです。
ハブ:また呼んでください。
山脇:はい。まだまだハブさんの奥深くが気になります。時間が足りないですね。面白かったです。
ハブ:全然、人と喋ってなかったんで、喋りたくてしょうがなかったんです。
【後記】
物腰が柔らかくて、いつもこちらを気遣ってくださるハブさん。ときどきとっても嬉しそうに笑ってくださるので、その瞬間を何度も見たくなって、いつまでもお話ししたくなってしまいました。芸に関してはとにかくストイック! 照れ隠しなのか、口では色々なことをおっしゃるけれど、生半可な気持ちでは1人であんなにたくさんのトーナメントを戦うことはできませんよね。純粋な面白パワーの持ち主なのだなあと感じました。そして私はハブさんの影響をもろに受けて、家に眠っていた古い洋服をさっそく売りにいきました!(山脇)。
ハブサービス
1976年8月19日生まれ。東京都練馬区田柄出身。身長170cm、体重60kg。0型。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。趣味はヨガ、サッカー、フットサル、水泳、マラソン、映画鑑賞、一発ギャグ、スノーボードと多岐に渡り、特技はギター、ヨガ、バレエ、カポエラ、ボルダリング、マッサージなど多彩。また、暑さ・寒さに強く、飲まず食わずでもやっていける、なんでもおいしく食べられるというサバイバル能力に長けた一面も。柔軟な身体によるポージングとタイツでさまざまな事象を表現する「タイツアート」を展開。2018年初夏には原宿のカフェな。にて個展「ハブ展5」が行われた。『ハブ1GPグランドチャンピオン大会2018-19』は3月24日(日)20:00~ニコニコ生放送にて配信。
PANORAMA FAMILY
2006年頃結成。2009年1月、3MCから1MCへ。以降はゴメス1人のユニットとなる。 渋谷Organ.b第1火曜日mixx beautyを中心に、年間60本ペースで精力的にライブを行う。remix、客演、ビールケースの上から幕張メッセ(countdown japan fes 3年連続出演)まで、大中小規模なイベントに参戦する他、トラック、楽曲提供など活動は多岐に渡る。レぺゼン宮城県女川町スタイル。2014年から写真家として活動。SLIDELUCK TOKYOの第一回ファイナリストに選出される。雑誌STUDIO VOICEでとりあげられる。2016年3月写真集「fastplant」発売するも即SOLD。2017年12/4~12/17に個展『PARANOIA SLAPPYS』を行い、同タイトルを冠した写真集を発売。新作photo zine『Don't mind others, your dance is awesome/周りばっかり気にすんな、お前のやり方で大丈夫だから』発売中。