演劇とコントを行き来する俳優・山脇唯が、今、ゆっくり話したいゲストと 対談する企画「2SEE MORE」。撮影は新進気鋭の写真家PANORAMA FAMILY。
連載3年め、第一弾の栄えあるゲストはガリットチュウ熊谷さん。ギャグラリー、ザ・問答、と瞬発力が光るイベントで見せる、あまりに真っ直ぐな勢いに心を掴まれ「是非お話を」とお招きしました。昨年夏、花火を見るために集まった後、バッファロー吾郎A先生にカフェに連れていってもらった、それっぽっちの接点から始まる2人のお喋りと、寒空の下、絶えぬ笑い声のなか撮影された写真たちをお楽しみあれ、2019年! (撮影/PANORAMA FAMILY 文・構成/山脇唯)
僕、『ハッシュ!』が一番好きなんです。
山脇:実際、こうやってお話しするのって、昨夏の花火大会でバッファロー吾郎A先生のお宅に集まった以来……?
熊谷:そうですね。
山脇:ずっと、テレビなどで普通に熊谷さんの存在を知っていて……生でちゃんと拝見したのがギャグラリー(※即興ギャグしりとりの対戦形式イベント)だったんですよ。そこから……という感じです。
熊谷:嬉しいです、これもご縁ですからね。
山脇:私、A先生や女優の高田郁恵さんから、前年の花火の日に熊谷さんが酔っぱらってた、っていうのはずっと聞いてて。
熊谷:そうです、酔うと話すんで、むちゃくちゃ映画談義を。映画好きなので「あれ知ってますか?」って盛り上がって。
山脇:高田さんも映画好きですもんね。
熊谷:僕、日本映画の監督だと橋口亮輔監督が大好きで。
山脇:ああ、『ハッシュ!』の。
熊谷:そうです、『ハッシュ!』『ぐるりのこと』『恋人たち』『二十歳の微熱』『渚のシンドバッド』……
山脇:『渚のシンドバッド』、めっちゃいい映画ですよね~。ていうか、すごい、どんどん出てきますね。
熊谷:はい、大好きなんで。で、そう言ったら、参加されてた、って聞いて。「マジですか? どんな感じなんですか?」って。
山脇:そうかあ。橋口監督の作品て、けっこう演劇の人、小劇場の方が出てますよね。
熊谷:そうなんですか?
山脇:グリングっていう劇団で『ハッシュ!』が原作の『サンブンノサン』って舞台をやってたりとか。
熊谷:え、ほんとですか。僕、『ハッシュ!』が一番好きなんです。
山脇:本当にめっちゃ映画好きなんですね。
熊谷:はい、好きです。
山脇:何がきっかけで、映画がお好きになったんですか?
熊谷:(急に小声になって)映画は、吉本のNSCに入って……
山脇:あの、どうしてそんな声をひそめたんですか。
熊谷:ああっ、すいません! そうですね、恥ずかしい。俺、単純なんですよ、恥ずかしいこと話す時、小声になるんですよ。
山脇:録音してるので、できれば大きめに……
熊谷::あの、あれです。お笑いの世界に入ってきて、養成所で講師……校長? とにかくそういう人がいまして。
山脇:はい。
熊谷:その人が「お笑いやるんだったら、本か映画を観ろ」って。本は未だに全く読まないんですけど、「じゃあ映画見よう」って、それで面白い映画に出会って。アル・パチーノが超好きになっちゃって。
山脇:ほお!
熊谷:最初ブライアン・デ・パルマが好きだったんですけど。夜中テレビでトム・ハンクスの『虚栄のかがり火』っていう映画をやってて、寝ながら観てたら超面白くて。「なんだ、これ、おもしれえ」と思ってエンドロール観たら、ブライアン・デ・パルマだったんですよ、それも。うわあ、なにこれえ! って。えっへっへ(笑)。そこから幅を広げてって、こう、ロバート・デ・ニーロがいるとか。
山脇:紐づけていって。
熊谷:マフィア映画だとか、たくさん観ました。
山脇:じゃあ、けっこうビデオ屋さんなんかも行かれました?
熊谷:そうっすね、ビデオ屋で働いてたんで。
山脇:私もビデオ屋やってました。ビデオ屋でバイトするといっぱい観られるし、触れるから楽しいですよね。
熊谷:それで結構、はい。めちゃくちゃ観るようになりました。いまだTSUTAYAは週1で行くんですよ。
超観るんですけど、語るのは語れないんですよ。
山脇:最近、映画は何を観ましたか?
熊谷:最近ですか? 『ボヘミアン・ラプソディ』を観ました。
山脇:私も観ました!
熊谷:観ました?
山脇:あの、ステージに出たら、うわーって人いっぱいいるところ、「わーたくさんいるなあ」って。
熊谷:興奮しました。いやあ、すごかったですねえ。でも、超観るんですけど、語るのは語れないんですよ。
山脇:語れないっていうのは、どういうことですか?
熊谷:「あそこよかったね」「ここよかったね」とかっていうのは、あんまり言えないです。
山脇:恥ずかしいから?
熊谷:恥ずかしいからと、あと、人と合わないとか……そこまで集中して観てないというか(笑)、なんていうんですかね、「あそこ、こうだったね」って言われても「あ~そうだったかなあ~?」とか。
山脇:「あそこって、あの意味があるからこうなんだ」とかは?
熊谷:「あ、そうなんだ~!」ってなるときもありますけど。「あれどう思う?」って言われても 観たから、もう、良かったか良くなかったかだけだ、っつって。
山脇:いい映画好きじゃないですか、それは。
熊谷:そんなでも……楽しくないんじゃないですか? 一緒に観にいったひとは。
山脇:あんまりうるさく言われても、っていうのもあるから。
熊谷:まあまあまあ、たしかに。
山脇:意見合わないと、もめちゃうんじゃないか、とか思ったり。
熊谷:そうです、そうです。だから、語るのが嫌なのかもしれないですね。
山脇:何系が好きとかって言うよりはもうオールジャンル?
熊谷:基本、オールジャンルですね、はい。
山脇:おもしろそうだったら、なんでも観にいく感じですか?
熊谷:はい。バッドエンドも、いいエンドも。
山脇:いいエンド?
熊谷:ハッピーエンドも。どっちも好きです。
僕も表向きは優しいですけど……実はクズって言われます。
山脇:18歳、高校卒業して、東京NSC2期に入学されて。
熊谷:はい。2期です。さっくんとかハブちゃんとかのいる。
山脇:佐久間一行さん、ハブサービスさん。ギャガーが多い代ですか、ね……?
熊谷:比較的多いですね。ある程度、中堅どころ。大御所じゃないけどベテランで、歴は長いけど辞めてる人が少ない気がするんですよ。どんどん他の期は少なくなってきたりするんですけど。
山脇:それって代ごとにカラーとかってあるんですか?
熊谷:(小声で)どう……
山脇:また声小さくなっちゃった。
熊谷:その……僕が思ってるだけですけど、そこまできらびやかな、ドーン! って売れた人がいなかったから、多分。
山脇:コンプレックスを感じて辞めていくってことが少なかった?
熊谷:と、思うんですよ。他の代みたいにドーン! って売れた人がいて、っていうのがなかったから、っていうのが……勝手な僕の見解ですけど。
山脇:でも皆さん着実にキャリア積んでらっしゃる。
熊谷:各々、そうですね。
山脇:平和な感じの人が多いのもそれで、ですかね。 優しそうな人、先輩ヅラしてない人が多いというか……
熊谷:たぶん各々あるんだと思うんですけど、劣等感からくる優しさ、とかもあるかもしれないですね(笑)。さっくんなんかは異質で、根っから優しいですけど。
山脇:優しくあろうっていうムードが、2期にはあったってことですよね。
熊谷:でも嫌な人はいますよ、きっと知らないだけで。僕も表向きは優しいですけど……
山脇:え、そうなんですか?
熊谷:実はひどいって言われます。実はクズって言われます。
山脇:どういうところが?
熊谷:クズなところですか? ……よく寝るんです。
山脇:え? 人の話を聞いてる時に?
熊谷:いやいや違います。家で。
山脇:え、家で寝るくらい、クズでもなんでもなくないですか?
熊谷:クズですよ、だってこういう社会に生きてて……寝るんですから。
山脇:眠れるってことは、健康だってことでしょう?
熊谷:最近はさすがにないですけど、昼の2時くらいまで寝てたんですよ、余裕で。
山脇:それは……逆に体力ありますよね。もう寝たくても起きちゃう。
熊谷:そうですか? 32、3歳くらいまでそうしてました。あ、でも、今でも寝るかなあ、たまに……
山脇:まあ、わたしもよく寝るほうですけど……
熊谷:そうやって言いながら、みんな、動くじゃないですか。すごい人って起きてるじゃないですか。起きて、ちゃんと努力したりとか。
山脇:確かに、時間を有効に使いたい、なにかを吸収するのに時間を使いたい、って人は……
熊谷:その時間は起きてますよね。
山脇:そうですね、起きて、何かをやりますもんね。
そりゃやっぱ、かっこいい男は起きるだろうし……。
熊谷:1年つきあった彼女にふられたとき、「なんでふるの?」って聞いたら、「超寝すぎだから」って。
山脇:すごい。昔話みたい……。
熊谷:えっ、そうですか?
山脇:寝すぎでふられるって、童話、寓話みたい。
熊谷:むこうはアパレルだったんで、早番遅番ありますけどだいたい9時、10時に出社して。朝「おはよう」ってLINEきて、こっちは寝てるから、昼の1時2時に「おはよう」って返して。それが毎日続くと「何、この人」みたいな。守られる気がしないんですって。
山脇:ほう。
熊谷:あと、朝、顔を洗わないっていうのも理由の1つとして言われたんです。
山脇:そこが嫌いって?
熊谷:しゃきっとしないというか。「この人には、女の子として守ってもらえないんじゃないか」って思ったらしいんです。
山脇:何か起きた時に、寝てて助けてくれない、と?
熊谷:なんとなくわかるんですよ。ね。そりゃやっぱ、かっこいい男は起きるだろうし……。
山脇:そうですねえ……でも、私も「今寝られるな」と思ったら寝ます。悪いことじゃなくないですか?
熊谷:でも……女の子、結果、起きません? 寝るのも早いけど、起きるのも早い。ぐずぐずしないというか、会話しててすぐ寝て、起きたらちゃんとする、というか。
山脇:え、寝起きもダラダラしゃうんですか?
熊谷:寝起きめっちゃダラダラします、はい。
山脇:でもそれは、起きなきゃいけない理由がないときは、ってことですよね。
熊谷:そうですね、起きなきゃいけない理由がないと、超寝ちゃうんで。時差ぼけみたいになっちゃうんですよ。
山脇:リズムが乱れて。
熊谷:夜眠れなくて、目がさえちゃって、朝9時まで起きちゃって、そこから本睡眠みたいな。昔は、そういうことで遅刻しそうになったこともあります。今はそれは本当にないですし、遅刻もないですけど。
めっちゃ人から道は聞かれます。
山脇:ふられてしまうほど寝すぎちゃう、と。
熊谷:そういうところがあります。優しいとは思うんですけどね。
山脇:熊谷さん、優しそうですよ。こないだのギャグラリーで司会のしずる村上さんに「無印の店員さんみたい」って言われてたときも「そうだなあ」って。
熊谷:超地味な顔なんですよ、俺。これが結構コンプレックスです。
山脇:流行の顔じゃないですか、無印っぽいってことは。
熊谷:まあ、こう……星野源さんとか、ってことですよね。
山脇:阿部寛さんとか、掘り深いハンサムじゃない感じの、いまどきの、顔?
熊谷:そんな、モテてはないですけどね……(伏し目がちになる)。
山脇:そんな、急に伏し目がちに。
熊谷:伏し目がちなっちゃいますよ~別にモテてないですもん。
熊谷:顔の造作は優しいかもしれないです。めっちゃ人から道は聞かれます。ツイッターで出てきたんですけど『人に道を聞かれるような人になりなさい』って格言もあって。
山脇:ツイッターで? 格言が?
熊谷:格言ツイッターみたいな。確かに、道は聞かれてきたなあ、って。
山脇:高田郁恵さんもすごく道を聞かれるって言ってました。高田さんと熊谷さん、お2人に共通点あるかもしれない。
熊谷:ほんとですか?
山脇:柔らかそうな感じ。目が大きいけど、きつくない。柔らかい。整ってるけど、何かこう、人を寄せ付けない整い方ではない、みたいな。
熊谷:高田さん、初めて見たときはきりっとした方だなって思って……でも話したらすごく優しい雰囲気でした。
山脇:似てますよ、2人の雰囲気。高田さんも、とにかく歩いてたら道を聞かれるって。めっちゃ聞かれるんですか?
熊谷:結構聞かれます。
山脇:私、全然聞かれない。
熊谷:人相悪いんですよそれは。
山脇:ってことですよねえ。
熊谷:うそうそ、それだけじゃないと思いますよ。そんなことないですけど。
いきあたりばったりなんで、その瞬間は頑張んないと、って。
熊谷:顔は、良くはないんです。あ、でも顔について、あと一個いいですか? 昔『トリビアの泉』って番組で『女の子が、お父さんお母さんに紹介するのにいい顔』みたいなのをやってて。こう、ばーっと男前から並んでて、丁度いい顔はこれ、ってなったときに、超、俺っぽかったんですよ。母ちゃんと一緒に観てて「母ちゃん、俺みてえだよ~」って。ちょっと嬉しかったです、それは。
山脇:いいじゃないですか。
熊谷:だから、なんにもない、ってことです。スタンダード。かっこよくもなく。でも、お母さんとかには……
山脇:好印象。好青年!
熊谷:そうです。怖いよりは優しい方がね、いいじゃないですか。
山脇:はい。
熊谷:でも、だからこういう職業にはやっぱこう、あんまりだなあ、とは思いますけどね。
山脇:どうしてですか?
熊谷:特徴ある顔の方が良かったな、って思いますけど。
山脇:そんなことないんじゃないですか? 適材適所で。
熊谷:あ~、そうですね! 適材適所で。
山脇:でも確かにすごく好青年感がありますよ。舞台上に立たれてるの観ると。
熊谷::本当ですか?
山脇:一生懸命やられてて、頬が赤くなられたりするのとか、ああ、良いなあ、て思います。
熊谷:いや、確かに。確かに、って自分で言うのもあれですけど。いきあたりばったりなんです。その瞬間は頑張んないと、って思うんで、それがあるかもしれないです。
山脇:好感をすごく持ちますよ。
熊谷:ほんとですか~? 俺、超憧れるんですよ、クールなのに面白い人に。そういう人にやっぱ憧れちゃうんですよ。
山脇:「頑張ってないよ」って感じで出てくるけど、すって面白いみたいな。
熊谷:マジでそういう人に憧れてました。
山脇:でも、一所懸命やってちゃんと面白いのって本当に難しいと思います。一所懸命だけで終わってないから、だからギャグラリーとか呼ばれるんだろうなって。
熊谷:いやいやいや。そんなことないですよ、ほんとに。「今日は良かった」なんてことないですもん。
山脇:ザ・問答(※2018年12月に行われた「そもさん」「せっぱで」始まる質問形式のお笑い総合格闘技イベント)面白かったですよ。「大地とはなんですか?」っていう質問に「果てしない大空です」って答えたの、すごく覚えてます。
熊谷:うわあ、すみません、ちょっと。ほめられると恥ずかしいんで。嬉しいですけど。
山脇:気持ちよかったです。あざやか! 決まった! って胸のすく思いで。
熊谷:嬉しい限りですよ。
山脇:ああいうとき、あー面白いなあって。
熊谷:ほんとですか。でも、そうですね、それ、頑張んないと。考える時間あると、面白い人いっぱいいるんで。はい。
山脇:ああいう瞬発力系の物は地力がないと、地肩が強くないとできないんだろうな、って思うから、芸人さんは皆さん本当にすごいですよ。
いきあたりばったり、デートでもチェーン店とかに行こうとして。
熊谷:……そういう人生を生きてきたってことなんですよね。
山脇:どういうことですか?
熊谷:追いつめられて、そこで解決して。考えて、こういうプランだ、ってわけじゃなく……デートいっても、何もプラン決めずに、とか。それでオッケーな人に甘えて、甘やかされてっていうか……
山脇:え?
熊谷:ここ2年です。お食事を予約するようになったの。
山脇:どういうことですか?
熊谷:ほんと、いきあたりばったりでやってましたね。
山脇:え、お食事を予約したのがここ2年って、どういう……?
熊谷:「この日、あいてますか、2名で」とか「ここ行こう」とかいったの初めてで。32、3歳くらいまで、ずっと……
山脇:いきあたりばったり?
熊谷:デートでもチェーン店とかに行こうとして。同期の仲良い、もう芸人を辞めた子なんですけど、その子に話したら「やめなよ、いい年して、おっさんが若い子にチェーン店って。テンション下がるよ。値段じゃなくて、ちゃんとした、おいしい料理食べさせなよ」「そうなの? お酒呑めればいいんじゃないの?」「いや、そうじゃない」って。確かに予約して連れていったら喜ぶんですよ。
山脇:それは、後輩じゃなくて女性相手のお話?
熊谷:女性です。
山脇:あら。
熊谷:後輩も、たまーに、ごくたまに「ここ美味しいから行こう」って俺が。そういう用意周到の大事さに最近気づきまして。
山脇:それは、40代になったくらいから?
熊谷:それは、37、8歳くらいですね。
山脇:その頃に、お店を予約するように。
熊谷:そうですね、ちゃんとして。
僕は変わらず楽しかったんで「あ、面白いって思われるの、いいのかなあ」って思って。
山脇:高校卒業してNSCに入ったのは、いきあたりばったりじゃないですよね?
熊谷:(小声で)それはダウンタウンさんに憧れて……
山脇:また声が小さくなっちゃって。
熊谷:また小さくなって。すみません。もう、頭おかしいでしょう? ボリュームの調整ができないんですよ。
山脇:ははは。
熊谷:(はっきりと)ダウンタウンさんに憧れて。高校の時、『カラオケ会』ってコンパみたいなのを女子校と男子校でカラオケ屋でしてて、「あ~熊ちゃん面白いね~」みたいな感じで言われてて。ある日、あまり可愛くない女性とコンパをした時に、友達は「なんだよ~」とかいってたけど、僕は普段通り「面白い」って言われたから楽しかった、と。友達は「あ~今日はいい子いなかったよ~」って楽しそうじゃなかったんですけど、僕は変わらず楽しかったんで「あ、面白いって思われるの、いいのかなあ」って思って。
山脇:それが好きなのかなあ、って。
熊谷:でも、当時は笑わせてると思ってて、結果、笑われてたんですよね。10年後ぐらいに「笑わしてたんじゃない、笑われてたんだ」って気づいて……そういう勘違いから始まって、ダウンタウンさんに憧れて。
山脇:じゃあもう、お笑いだ、NSCに行くんだ、って。
熊谷:そうです。最初、大阪に行こうと思ったんですけど 東京にできたっていうので。
山脇:東京なら通えるし。
熊谷:はい。
山脇:じゃあ、高校時代は面白キャラ、お調子者みたいな?
熊谷:面白キャラ……そうですね、小学、中学くらいまでは「楽しい」みたいな感じで。高校くらいになるとダウンタウンさんの影響もあって、シュールな感じというか、静かにぼそっと言う、みたいな時期を経て、みたいな。
山脇:ははは。コンパで笑わせていたときはどっちの感じで?
熊谷:それは、カラオケ歌ってて、みたいな感じですね。はい。だから「楽しい」がでかいです。よく、人気者じゃない人がトップになるとかいうじゃないですか。
山脇:言いますね。
熊谷:そう、ではなかったですね。チャラいというか、こう、薄い……何層にも重ねないといけない芸風だとは思ってます。
山脇:何層も?
熊谷:僕個人は、薄い、お笑いだと思います。だから厚みを出すために、何層何層も……あっ、例えおかしくてすみません、あの、ジャブをいっぱい打つ感じですね。
山脇:いっぱい打つぞ、と? そんな自己分析を、常にされてるんですか?
熊谷:こんなふうに話をしているから言ってるだけかもしれませんね……いやいや、そんなことはないです。「自分は面白いんだ」って思うときもあります。すみません、ぶれぶれですよね……僕……
山脇:いや、楽しい、面白く聞いてます。
熊谷:ほんとですか?
こういう業界じゃない人と会うこともあるじゃないですか。例えば、裏の人とか……
山脇:お洋服は、どちらで買われてるんですか?
熊谷:いやいや、なんですか? まじですか?
山脇:そういうことも聞きたくて。今日も可愛らしいシャツを着てらっしゃるし。
熊谷:いやいや。よくある、BEAMSとかUNITED ARROWSとかに、基本行く感じです。
山脇:どんなときにお買い物行かれますか?
熊谷:お給料がよかったときと、あと、でもたまにテレビとか出る時に、自前の衣装だったりするんですよ。それで「買わなきゃな」みたいな感じで、買います。
山脇:そういうときの、コンセプトみたいなのってあります?
熊谷:基本シンプルな、グレーとか買いたいんですけど。そういうのだと画面に映えないじゃないですか。「なんでそんな色着てくるんだ」とか、怒られるんですよ。だからなるべく明るい色のにしたりとか。あと、しわくちゃとか……
山脇:しわくちゃはだめですよ、そりゃあ。
熊谷:はい、それも、だから、ちゃんとアイロンかけるようになりました。
熊谷:あと僕、脇汗、超すごいんですよ。
山脇:汗っかきなんですよね。
熊谷:汗っかきなんです。はい。汗っかきでトイレ近くて。
山脇:汗で水出してるのに、さらに。水はけがいい。
熊谷:で、結構、ドギマギするじゃないですか。汗かいてドギマギしてるから、「あいつ、クスリやってんじゃないか?」ってネットに何件か書かれちゃって。
山脇:あんなに汗かくのはおかしい、って?
熊谷:もちろんやってないですし、そんなお金ないですから……すみません、話とびました。すみません、ほんと脱線。だから、汗。それを気にして買ってます。あと、シャツ。
山脇:はい。
熊谷:公の場に行くとき、初対面の人に会うときは、襟付きじゃなきゃだめだとかっていうことも、聞いて。
山脇:え! そうなんですか。わたし今日とっくり着てきちゃいました。
熊谷:いやいや、今日が初対面じゃないじゃないですか。でも、それを聞いてから、なるべくシャツばっかしか買わないです。礼儀らしいですよ。
山脇:若い時、打ち合わせにトレーナー着ていっちゃったことがあります。
熊谷:まあ、こういう職業だと、アリだと思うんですけど……こういう業界じゃない人と会うこともあるじゃないですか。例えば、わかんないですけど、裏の人とか……
山脇:裏の人?
熊谷:あ、えーっと、例えばスポンサー、プロデューサー、関係者とかですよ。
山脇:ああ、びっくりした。クスリの話の後だから。
熊谷:だから最近はシャツばっかしか買わないですね。パーカーとか買いたいなーとかっていうのも、ありますけど、はい。
端から見たら、ただのパチンコを楽しみにきたお客さんじゃないか、と。
山脇:お洒落に目覚めたのって何歳くらいですか?
熊谷:あーでも……中2、中3とかです。
山脇:ご出身が横須賀で。
熊谷:横須賀です。月1回くらいは原宿に行ったりしてて。
山脇:横須賀から原宿って、どれくらい時間かかるんですか?
熊谷:1時間ぐらいですかね、電車乗ったら。ドアツードアっていうんでしたっけ? そういうのって。
山脇:家のドアから1時間? 近いですね。
熊谷:ああ、家のドアから。あ、だったら1時間半くらいですかね。
山脇:どこのドアまで? 目標のドアは? ってことになるので……ドアツードアだと。
熊谷:そうなんですね、で、今は……可愛いものが合うんだなあ、って自分でも思って。あっ、こんなんを口で言うのは気持ち悪いですけど、かっこいいよりは、可愛らしい格好の方が好きですし、かっこいいのは似合わねえな、って。
山脇:ハードな感じは。確かに。あんまりゴリゴリしたイメージはないですね。
熊谷:「おしゃれ」っていわれると嬉しいですけど、おしゃれではないと思いますね、本当に、はい。はい……(笑い出す)。
山脇:なんか「こういう服が着てみたいなあ~」って思ったことはあるんですか?
熊谷:ありますね、やっぱこう……先輩が行くとことか、かっこいいブランドだな、とか。他事務所になっちゃいますけど、おぎやはぎさんとか超お洒落だな、って思うんです。
山脇:ガリットチュウで、出番のとき着てるのって、衣装ですか?
熊谷:そうですね、はい。最近はじめたのが、営業とかだと赤ジャケットに白シャツ、みたいな。
山脇:何日か前にルミネの18時の回を観にいって。そのとき赤ジャケットでしたね。
熊谷:わっ、本当ですか、お恥ずかしい。いや~……ものまねやってましたでしょ?(笑い出す)
山脇:はい。あの赤いジャケットが衣装で?
熊谷:営業用ですね。前に、パチンコ屋さんで「どうも~来ました~ガリットチュウです~」ってやって、そこから3時間打って、また次のお店行って、ってお仕事があったんですよ。営業みたいな。そのときに私服でやってて、それがちょっと……叱られたっていうか。「あのさ、仕事で来てるけどさ、私服で打ってさ、アイコス吸ったりして、足組んで……お客さんより地味だぞ、そんなの呼びたいと思うか?」って。「ごもっともだな」と。本当に、端から見たら、ただのパチンコを楽しみにきたお客さんじゃないか、と。で、それがきっかけで。
山脇:赤のジャケットに。
熊谷:キンキラの衣装とかもあったんですけど、それはさすがに衣装負けしちゃうってことで、赤に。
ただ……僕、赤パンツじゃないとお仕事できない体になっちゃったんです。
山脇:衣装に着替えることで一個スイッチ入る、とか、そういうのありますか?
熊谷:昔はありました。昔は、揃いのTシャツを衣装にしてやってて、それじゃないと恥ずかしかったんですけど。でも、それもたまたま、アメトーークの泥の芸人に出た時に「よし、頑張るぞ」って色々打ち合わせしたりして、「どうしよう」て言ってたら、当時つきあってた彼女が「あのTシャツやめなよ、ださいじゃん」って。
山脇:あらま。
熊谷:「え、なんで?」っていったら「本当にださいよ、女の子が見てるんだからさ、少しでもかっこよく映んなよ」「なんだよこいつ、今まで俺らやってきたのに」って思って。でもそんなこと言われたっていったら、福島も「俺も実は言われたんだ」って。じゃあ、衣装をちょっとおしゃれにして出よう、ってことだけ決めて。そこから、大丈夫になりました。ただ……僕、赤パンツじゃないとお仕事できない体になっちゃったんです。
山脇:ええ? え、じゃあ、今日は?
熊谷:ちなみに今日も……(腰の方を見せる)
山脇:あら、見せてくださる。あ、でも柄があるんですね。
熊谷:そうっす。赤だけのも柄物もあって、基本、赤ベースで。生地の感じとかフィット感で、3枚が主軸で2枚が控えみたいな感じです。今日のはユニクロで買ったんですけど、ユニクロがもう最高。
山脇:縁起物みたいな感じで?
熊谷:ゲン担ぎです。だから、一回赤パンツじゃなく仕事に行っちゃって「あっ! はいてくるの忘れた!」って、買っちゃいました。
山脇:なんか。いいことききました。
熊谷:だからこそ、それ以外は、もう作らないんですよ。
山脇:ジンクスを?
熊谷:はい。靴とか、考えちゃうんですよ。この靴でウケた、この靴で超すべったとか。
山脇:はい。
熊谷:でも、それはもうやめよう、って。
山脇:着るものなくなっちゃいますもんね。
熊谷:怖いですもん。しばられまくり。でもほら言うじゃないですか。イチローとか、すべての球場で左足から入るとか。
山脇:ルーティン決める、とかも言いますね。
熊谷:そういうの、ああ、いいな、とか思うんですけど パンツ以外はもう、怖いと思って。
山脇:忘れちゃうと怖くなっちゃうから。
熊谷:だから、パンツの準備をしてから寝るのが夜のルーティンかもしれないです。「よし、明日は」って。
山脇:じゃあ、雨が続いてお洗濯できないと困っちゃいますね。
熊谷:そうですね。でもだからけっこう、3枚が主軸、2枚は補欠で、あと、もう3枚くらいあるんですよ、はきたくないけど、なかったらはく、っていう。ちょっとサイズが小さい、とかっていう……
山脇:ベンチのパンツたちを。
熊谷:それはそれで、まあ、忙しかった、っていうことになるんで……
山脇:あら、嬉しい。
熊谷:あ、でも雨の話じゃないか。雨だけじゃなくて、忙しいから洗えないとか。雨でしたね、すみません。雨のときは、それでもなんとか、パンツだけ洗ったりもします。部屋干しで。
山脇:部屋干しで。
もう、そこは……自分の願い事をするような場所じゃないんですよ。
熊谷:パワースポットとかも超好きで。31、2歳くらいからハマったんですけど。
山脇:パワースポット、どこに行かれました?
熊谷:伊勢神宮……。あと。弊立神宮っていう、熊本にあるんですけど。あの、えっと……やべえ、ど忘れしちゃった。あの……へそ。
山脇:へそ?
熊谷:あの、磁場がある……長野県の分杭峠って知ってます?
山脇:知らないです。
熊谷:そこにいくと、磁場がすごくて。なんか、方位磁石を置くとグワーってするところ……
山脇:ぐるんぐるんって!?
熊谷:で、詳しくはあれですけど、そこに行ったら病気の人が治ったとかって。そういうの磁場っていうんですよね。すごい、磁気の所。
山脇:すごいピップエレキバンみたいなことですよね?
熊谷:ええ? ちょっと、下に下げないでもらっていいですか? 喩えが、ピップエレキバンって……
山脇:でも、そういう強大な、磁力ってことですよね?
熊谷:まあ、まあ。そういう場所が熊本県の森の中にもあって、そこに立ってるのが弊立神宮。僕はバスで行ったんですけど、熊本から2時間くらいで。もう、そこは……自分の願い事をするような場所じゃないんですよ。もう、世界平和とか……。
山脇:ほー。
熊谷:はい。今まで行ったパワースポットのなかで、そこが僕は一番ゾクゾクしちゃって。あとは、来月に埼玉の秩父にある三峰神社に。
山脇:みつみねじんじゃ?
熊谷:関東ナンバーワンのパワースポットって言われてるんですけど、そこには行きたいな、って思ってます。
山脇:それは……たのしみですね。
熊谷:(笑って)興味ないでしょ!
山脇:いやいや、私もけっこう好きですよ。占いとかスピリチュアルとか……。このスケジュール帳も星占いが書いてあるやつです。熊谷さん2月生まれですよね。
熊谷:そうです、うわ、ありがたい。
山脇:水瓶座は「今年は大成功できる年」だそうですよ。
熊谷:今年ってもう終わっちゃうじゃないですか。
熊谷:占い、行ったことあります?
山脇:あります。猫屋敷の占いっていうのが九州にあるんですけど、すごくはっきり「平成23年にこんなこんな人と結婚します」って言われて実際その年に結婚しました。
熊谷:当たったんですか? こんなこんなの部分も?
山脇:はい。「末っ子の、大きな身体の、ぼーっとした……」って、「そんな人タイプじゃないのに、なにそれ~誰だよ~」って思ってたんですけど、結果、そういう人と結婚しました。
熊谷:えー。それ一見さんオッケーなんですか?
山脇:正確には、猫屋敷の占いっていうのはあだ名なんですけど、調べたら出てきます。
PANORAMA FAMILY:そんなに当たるって言われたら怖くていけない……
山脇:あとね、前世とかも言ってくれます。
熊谷:えー?
山脇:「あなたの魂は日本が初めてだから、大変だったでしょ」「全部それかあ!」って。
熊谷:(爆笑して)え~?
山脇:もともと阿吽の呼吸とかが全然わからなくて。「そこは察して」みたいなことがわかんなかったり「普通こうでしょ」みたいなルールがわからなくて苦労してて。それが「日本初めてだから、そりゃ苦労したよ」「そっかあ!」みたいな。すごい納得したんです。
熊谷:まあまあまあ、自分がいいって思えば。占い、面白いっすよね。
「あっ! カラテカの入江くんですよ! 僕、入江くんと仲良いんですよ!」って……俺が全部寄せてるんですよ。
山脇:こないだ、バリでも占いやりました。
熊谷:バリでやったんですか? 日本語で?
山脇:日本語でやってくれる方がいて。
熊谷:へえ~!
山脇:……すごい、興味持ってくださるんですね。
熊谷:いや、俺、福岡行くことあったら猫屋敷もマジで行きますよ、バリはどうでした?
山脇:すごかったです。
熊谷:当たったってことですか?
山脇:単独の日にちを当てられたんですよ。こういうとトンデモっぽいんですけど。
熊谷:まあまあ、まあまあ。
山脇:「11月に単独公演があって心配で」って言ったら「11月は悪くないですね。10月はあなたにとってテンポのいい月です。11月はね、その公演の日程がわかんないけど、11、12、13日だったら、エネルギーが集まるから……」「え! 11日です!」って。
熊谷:12 、13って言ってますもんね、でも(笑)。
山脇:まあ、でも、当たったんですって。
熊谷:俺も、同じようなことあって。それも霊視だったんですよ。超当たるって聞いて、俺も好きだから、目をキラキラしながら行って。
山脇:はい。
熊谷:「あなたに小ちゃい人が見えるわ……男性なんだけど」「小ちゃい男性ですか……?」もう、クイズなんですよ。「(手を叩いて)あっ! カラテカの入江くんですよ! 僕、入江くんと仲良いんですよ!」「ああ、じゃあそうだね、その子ね~」
山脇:はい(笑)。
熊谷:「あなた、来月、大宮あるわよ。大宮が出てんだよね~」って。大宮に劇場あるんですけど、基本、出ないんですよ。だから何言ってんだって思って……「(手を叩いて)あっ、でも僕、よく赤羽に飲みにいくんです。だからか~!」「ああ、赤羽、近いわよね~」って……全部俺が寄せてるんですよ。
山脇:ねえ(笑)。
熊谷:ふと我に帰ったら、自分が寄せてるだけじゃねえかと思って。でもなんかその人、マネージャー変わるって言うのはズバって当てられたんですよ。変わったばっかだったから、そんなわけないじゃんって思ったんですけど、それからすぐ変わったんですよ。「それで良くなるわよ」っていうのは、マジ当たってました。
山脇:そういうの、すごいですよねえ。
熊谷:僕、1時間の占いに2万円払っていったことありますよ。
山脇:えー!
熊谷:占い本を出した作家の人と知り合って、その人に「いっぱい行ったなかで、一番当たる人教えてください」っていったら「一見さんお断り、日本橋にある、マンションの一室。私の名前出したら予約取れる、予約は半年待ちだけど」って教えてもらって、すぐ電話して。「すいません、●●さんの紹介で、予約したいんですけど」「あ~来年の2月7日以降だったら取れるわ」って、本当に半年後で。
山脇:肉山みたい。
熊谷:もう、じゃあとっておこう。多分この日は昼の仕事はねえな、行けたらいこう、お金あったらいこう、って。そしたら当日、金はカツカツだったんですけど、スケジュールはあいてて「どうしようかなあ、まあ行くか」って。
山脇:それはどうでした?
熊谷:ば~って暗くして、ば~って蝋燭つけて「じゃあ、始めるわね」って……すごい後ろ見てんですよ。
山脇:背後を。
熊谷:で、5分くらいみて「はい終り。何も悪い物はついてないわ」って。そこから「こういうことがあるけど、がんばんなさい」みたいな。これもあるあるですけど、「当たる、当たらない」じゃなくて、はっきり言わない、って感じがするんですよ。もう、そんなんでした。それで2万払ったって感じです。
山脇:でも悪い物はいない、ってわかってよかった。
熊谷:そうですそうです、それで良かった、って思って。
山脇:安心。
熊谷:あとは、その人には「あなた、この世界はいずれはやめるわ~」って言われて。「ほんとですか?」「まあでも、無理に辞めてもだめだから、続けていくうちに、マネージャーとかになってるんじゃない?」「え、ちょっと~」みたいな。
山脇:えー。それちょっと、ムン、てなりますよね。
熊谷:そうですよねー。
でもやっぱり同期に言いますね。ただ聞いてもらうだけですけどね。
山脇:私もこないだ、過去世占いみたいなので『子ども作るなら今がチャンス』っていうのが出て、え~ちょっとタイミング違うな~って反発心が生まれて、別のコーチと話したんですよ。
熊谷:え、コーチ? コーチ?
山脇:私、フリーでマネージャーもいないんで、お金払って、見守ってくれるコーチをつけてるんです。で、話したらコーチが「占いはメッセージで、それを聞いてどう思うかが大事だから。『今は違う』って思ったらそれが答えなんじゃない?」って。
熊谷:コーチっていうのは、メンタルコーチなんですか?
山脇:メンタルもだし、キャリアの相談も。「3年後どういう仕事していたい?」って聞かれて「こうかなあ」って考えて「じゃあそのために明日何をする?」「あー、じゃあ」みたいなことを1時間お喋りするんです。
熊谷:えーすげえ! おもしれえ!
山脇:めちゃ悩んだ時に「1人じゃ無理だ!」ってなって、探して。そういうときってないですか?
熊谷:めちゃくちゃありますよ、めちゃくちゃあります。
山脇:やっぱりプライドもあるんで、同業者には相談できなくて、夫にも言えなくて。何にも関係ない人に話したくって。熊谷さん、そういうときどうされてます?
熊谷:僕ですか? あ、でも……同期とかに言いますかねえ。
山脇:あ、いいなあ、風通しが良いですね。
熊谷:そうっすね……あ、でもやっぱり同期ですね。ただ聞いてもらうだけですけどね。
山脇:素敵。良い話だ。
熊谷:いやいや、ほんとに、ありますあります、めっちゃ悩みます。もう、だからけっこう、酒飲むのも、それがあると思うんですけどねえ。
山脇:あれ、熊谷さん、お酒呑めない説、ありましたよね?
熊谷:もともと飲めなかったです。一応、飲めない芸人で。
山脇:急に飲めるようになったんですか?
熊谷:そうです。一杯程度は無理に飲んだりはしてて、好きではなかったんですけど、だんだん飲めるように……
山脇:きっかけは?
熊谷:それは……寂しさ。
山脇:寂しさからお酒に。それは何歳くらいからですか?
熊谷:33、4歳ですかね。
山脇:ずっと聞いてると、わりと30代前半に転機、ターニングポイントが。
熊谷:そうですね、7年つきあった彼女とも別れて、その時期から覚えましたね。
山脇:体質的には大丈夫だったんですか?
熊谷:一応、大丈夫で。もともと、正月、先輩との新年会でだけはイッキをガンガンするみたいな。その時から周りのでは「こいつこんなイッキして、つぶれてるけど、めっちゃ飲むじゃん」「実は飲めるんじゃないか」って思ってた人もいたりして。そこから味を覚えて、っていうか、はい。そんな感じですね。
山脇:今、一番好きなお酒は何ですか?
熊谷:好きなお酒ですか? ウィスキーを……ロックでとか。日本酒も好きなんですけど、時を考えるというか。
山脇:明日を気にしちゃいますもんね。
熊谷:はい。考えちゃうので。
だから……最先端のミュージック、ムービーには触れていたいなと(笑)。
山脇:お酒を呑みながら音楽は聴かれますか?
熊谷:それは、あんましないかもしれないですね。
山脇:音楽はどんなのが好きですか?
熊谷:超どミーハーですよ。流行ってるのが好きですね。
山脇:例えば?
熊谷:米津玄師とか……
山脇:今のを聴いてる!
熊谷:今のをちゃんと聴こうとは、してます。一応、そうっすね、自分をこう……(両手をくるくるまわす)。あとは洋楽とか。
山脇:洋楽だと何を?
熊谷:パーティー系です。The Chainsmokersていう、DJみたいなのとか。ダンスミュージックも好きです。
山脇:あの、新しい音楽を聴こうとしてる、って言った時に「自分をこう……」て仕草で表現してくださったんですけど、ちょっと文字にしづらいので……自分を、どう……?
熊谷:あっ、すいません。あの、色んなこと、若いことを知っといたほうがいい、というか。若い子と喋った方が良い、って特に僕は言われるんです。若い子と喋ってるから良い、とかも言われるので。
山脇:はい。
熊谷:それは僕もなんとなく理解してやってるので。すごい上の人との会話ももちろん勉強になりますけど、それだけじゃ多分あれだなって。
山脇:確かに、若い子と話して目から鱗が落ちるようなことありますもんねえ、今の子って本当にそれが好きなのかあ、とか。
熊谷:同業者の若い子でも、朝までネタつくるとか、若さならではというか。年取ると昼間とか夕方になるわけじゃないですか。そういうのも、はい。だから……最先端のミュージック、ムービーには触れていたいなと(笑)。
山脇:いいことですねえ。
熊谷:でも、好きなことしかできないんですよ。本はまったく読めないですからね。読む人に憧れるんですけど、本当に読めないですねえ。
2019年はお笑い漬けの毎日を送りたいな、と思って。
山脇:2019年は、2月17日にライブがあるんですよね。
熊谷:はい、「おもしろカルタ祭り」があります。
山脇:2019年はどんな年にしますか?
熊谷:2018年は努力を怠った……っていうのがあるんで、2019年はお笑い漬けの毎日を送りたいな、と思って。
山脇:楽しみにしています!
熊谷:あっはっは。ありがとうございます。
後記
何度も「脱線してすみません、えーっと、●●の話でしたよね」とこちらを気遣いながらお話ししてくださった熊谷さん。撮影中はずっと好きな映画のお話で私たちを楽しませてくださいました。ほんとうに中身も好青年! PANORAMA FAMILYから届いた写真を眺めていたら、実は私たちに見せていない部分もあるのかな? と思うような表情が印象的だったので、いつか『普段はニコニコしててめっちゃ明るいのに、変なタイミングでむちゃくちゃキレる怖い人』を映画でやってほしいです。(山脇)
熊谷岳大(くまがいたけひろ)/ガリットチュウ
1978年2月12日生まれ。神奈川県横須賀市出身。身長175cm、体重72kg。A型。趣味は映画鑑賞。特技は即興発声練習(50音どれでも即興で可能)、映画豆知識(3つすぐに披露)。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。東京NSC2期生。1998年、福島善成とコンビ「ガリットチュウ」を結成。ツッコミ担当。『アメトーーク!』にて「泥の97年デビュー組芸人」と呼ばれる世代に属する。2019年2月17日14時より渋谷無限大ホールにてガリットチュウpresents「新春! おもしろカルタ祭り!」を開催する(チケット発売中)。ロフト系列では「BAR熊谷ロフト」イベントでおなじみ。
PANORAMA FAMILY
2006年頃結成。2009年1月、3MCから1MCへ。以降はゴメス1人のユニットとなる。 渋谷Organ.b第1火曜日mixx beautyを中心に、年間60本ペースで精力的にライブを行う。remix、客演、ビールケースの上から幕張メッセ(countdown japan fes 3年連続出演)まで、大中小規模なイベントに参戦する他、トラック、楽曲提供など活動は多岐に渡る。レぺゼン宮城県女川町スタイル。2014年から写真家として活動。SLIDELUCK TOKYOの第一回ファイナリストに選出される。雑誌STUDIO VOICEでとりあげられる。2016年3月写真集「fastplant」発売するも即SOLD。2017年12/4~12/17に個展『PARANOIA SLAPPYS』を行い、同タイトルを冠した写真集を発売。新作photo zine『Don't mind others, your dance is awesome/周りばっかり気にすんな、お前のやり方で大丈夫だから』発売中。