長い年月の間、痛みまくったバチカン、システィナ礼拝堂の絵画を修復するマエストロたちの13年間に及ぶ闘いを記録した特別番組の音楽を依頼された。
この修復作業に携わり、劇団不連続線の製作をしていたO氏からの話だったが、それはそれは素晴しい感動のドキュメンタリーで、キーボーディストの中山努くんにも大活躍してもらい、OAに漕ぎ着けたときはホッと胸を撫でおろした次第。
わざわざ日本から取り寄せた和紙に溶液を染み込ませ、地道に一カ所ずつ修復していく気の遠くなるような作業。フレスコ画に下描きなしで描かれているミケランジェロの天井画はわずか3日で描き上げられているという驚き。途中でミケランジェロが使ったという足場も見つかり、天井画制作の謎のひとつが解明されていくという大発見も胸を躍らせてくれる。
とにかく修復後の絵を見せられたときの色の鮮やかさに言葉も失う凄まじさ。それまでの煤にまみれた、そしてそのせいか歴史の重みを見るものに与えてくれていた絵が、言葉は悪いがまるで漫画のように軽い色使いのなか蘇ってきたときの驚きはなかった。
4代目ロレンツォ・デ・メディチの牽引するフィレンツェのメディチ家を中心にイタリアルネッサンスが大きく花開いた時代、神聖ローマ帝国の襲撃でドイツ傭兵ランツクネヒトなどに蹂躙されるローマの中で教皇は降伏し、イタリアルネッサンスは終焉を迎える。修復に関して二度と戻らない失われてしまったミケランジェロとか、いまだにいろいろ問題も抱えているらしいドキュメンタリーだが、世紀の偉業とも言える13年間に及ぶシスティナ礼拝堂の修復作業、ミケランジェロ復活の片隅にいられたことを心から嬉しく思っている今日この頃である。