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トップコラム戌井昭人の想い出の音楽番外地第百九回「映画『蘭島行』の舞台である北海道のことから、GLAY、友部正人、コカコーラ、クラッシュのことまで徒然なるままに」

九回「映画『蘭島行』の舞台である北海道のことから、GLAY、友部正人、コカコーラ、クラッシュのことまで徒然なるままに」

第百九回「映画『蘭島行』の舞台である北海道のことから、GLAY、友部正人、コカコーラ、クラッシュのことまで徒然なるままに」

2025.09.30

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 北海道の小樽市蘭島という所に、いろいろあって里帰りしたパンクロッカーが主人公の映画『蘭島行』(鎌田義孝 監督作品)のコメントを書かせていただきました。
 パンクロッカーのダメさが極まり、なんだか泣けてくるような、いいのかこれで、まあいいか、と思える素敵な映画なので、皆様も観てください。
 

 でもって、北海道のバンドといえば、イースタンユースとか、ブラッドサースティ・ブッチャーズとか、怒髪天、なんだか、男くさいというか、男が好きになりそうなバンドが多い気がします。
 
 他に、GLAYもそうか。でもGLAYは、先に挙げたバンドとは毛色が違う気がします。札幌と函館というのもあるのかな? しかし、実はわたし、GLAYが若いころ出ていたというライブハウス兼、飲み屋さんに、何度も行ったことがあるのです。そこは函館の、あうん堂というライブハウスでした。
 
 当時わたしは、浅草の団子屋でアルバイトをしていて、いまはなき函館のデパート、棒二森屋(ぼうにもりや)で行なわれていた催事で、大浅草市みたいなものが行なわれていて、そこに催事要員として、団子を焼きに行っていたのです。その際、一週間くらい、函館に滞在し、団子を焼き続け、夜一人で、街に繰り出し、飲んでいたのです。
 そのとき、友部正人さんのポスターが貼ってある店があり、吸い寄せられるように入って行ったのが、あうん堂でした。その日、ライブはやっていなかったけれど、とても雰囲気の良い店で、お酒を飲まさせていただいていたら、なんと、GLAYが若いころライブをやっていた店だと、お店の人が教えてくれました。
 しかし、わたし、GLAYのことは、ほとんど知りませんでした。でも、お店の人に、そんなこと言ったら申し訳ないと思い、「そうなんですかあ!」と感動し驚いたフリをしてしまったのです。すみません。
 
 しかし、そこは、とても感じのいい店で、その後、ほぼ毎晩通っていたのでした。結局、GLAYのことは、よくわからなかったけれど、入口のポスターの、友部正人さんが、気になり続け、ここで、友部さんのライブを観れたら最高だと思ったのです。
 だから、その店は、わたしの中で、GLAYを通り越し、友部正人さんのライブハウスだと変換されているのでした。
 

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 そんなこんなで、数十年経ち、この前、友部正人さんのことを、インタビューをさせていただいたのですが、とても、素敵な人で感動したのです。
 わたしは、友部さんのアルバム、『大阪へやって来た』というのが大好きで、その中の「まるで正直者のように」という、とんでもない名曲を、何度も聴いているのですが、この曲を聴くたびに、大阪ではなく、北海道の函館を思い出してしまうのです。
 

 あと、札幌には、何度か行っているのですが、以前、自分のやっている、鉄割アルバトロスケットという、ヘンテコパフォーマンス団体の公演をしたとき、お客さんで来ていて、打ち上げとかでも、一緒に飲んだりした、とても不思議な方がいたんです。細身で女性的な男性で、声が、素晴らしく、彼は、スーちゃんと呼ばれていました。
 で、店で、ギターを弾いて一曲歌ってくれたのですが、これが素晴らしかった。ギターも、すごく上手くて、ジョン・フェイヒーみたいなギターのようで、そこに、不思議な歌声が乗っかる。自分は、帰りに、焼いたCDをいただき、iTunesのプレイリストに入っているのですが、カタカナでオリジナルスーとしか書いてなくて、いまだにたまに聴いているのですが、ネットなんかにも情報はなくて、わかりません。これ、本当に素晴らしい曲なんだけど……。
 
 北海道、札幌の思い出は他にもありまして、札幌には、コカコーラの工場があるのです。そして、わたし、どういうわけか、札幌のコカコーラ工場見学をして、レポートするという仕事をしたことがあります。
 そのとき、工場で出来たてのコーラを飲ませてもらったんですが、これが、やたら美味しかった。コーラの出来たて、やばい! 己の中では、海で泳いだあとのコーラとお好み焼きを食べながらのコーラは、最高の組み合わせだと思っています。
 
 でもって、コーラといえば、コーラの歌といえば、クラッシュの、コカコーラなんですが、飲料は「C」からですが、クラッシュの曲は「K」から、始まるコカコーラで(「Koka Kola」)、この歌、「コーラうまいぞ、イェイイェイー」っといった感じのものだと勝手に解釈していましたが、改めて、和訳を読んだら、全く違いました。
 

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 やばいくらい攻撃的な、やっぱ、クラッシュでした。コーラとコークだったりで、勘違いしてました。
 

 そういえば、バンド、渋さ知らズにて、褌姿で煽っている、玄界灘の渡部真一くんが、渋さ知らズで、グラストンベリーのフェスティバルに出たとき、ジョー・ストラマーに気に入られて、一緒に焚き火をしたみたいなんです。そのとき、とんでもなくワイルドな体験をしたようです。
 
 なんだか、パンクロッカーが主演の映画、『蘭島行』、北海道から、どんどん脱線して、コーラに行き着いてしまいましたが、最終的にクラッシュに行き着き、パンクつながりということで、締めさせていただきます。
 
【戌井昭人(いぬい・あきと)プロフィール】
1971年、東京都生まれ。ヘンテコなパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げして、脚本を担当、自身も出演する。なんだかんだと、いろいろあって、小説を書きはじめ、2009年「まずいスープ」で芥川賞候補になる。その後、「ぴんぞろ」「ひっ」「すっぽん心中」「どろにやいと」と、4回、芥川賞の候補になるがすべて落選。一方で、2014年「すっぽん心中」で川端康成文学賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞。現在も、作家として活動中です。
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