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トップコラム戌井昭人の想い出の音楽番外地第百八回「万人に理解できないのは百も承知、変テコで格好いい54-71の復活を望む」

八回「万人に理解できないのは百も承知、変テコで格好いい54-71の復活を望む」

第百八回「万人に理解できないのは百も承知、変テコで格好いい54-71の復活を望む」

2025.09.01

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 現在、活動はしていないけれど、また観てみたいバンドがあります。唯一無二というにはありきたりすぎる評な気もするし、早すぎたというよりも、異次元的なところからやってきたようで、とにかく、変テコで格好いいバンド。しかし、その変テコさも、無理した感じがなくて、ナチュラルに、すっとこどっこい上等な感じで、素晴らしかったのです。そんな日本バンドといえば、わたしの中で、54-71(ごじゅうよんのななじゅいち)になります。
 

 まずバンド名からして数字なのが、たまりません。ちなみに、最近だとテキサス3000という数字の付いたバンドがありますが、このバンドも、変テコで素敵です。
 
 でもって54-71ですが、いまとなっては、評価とかそういうのは関係ないくらい、むしろ評価なんてどうでもいい彼方にあるような感じです。
 わたしは、常に、54-71みたいなバンドが、また出てこないものかなと思っているのですが、なかなか出てきません。
 それよりも、54-71が再結成したりしないのかな、などと、常に思っています。なんだか、単に、過去を懐かしむおっさんになっていますが、54-71に至っては、いつまで経っても、過去にならないくらい、活動をしていなくても、進行形な格好良さがあります。
 

 ユニークな音楽性もさることながら、とにかく、バンドメンバーのいでたち、立ち居振舞いが、異常に格好良かったのもあります。ボーカルの佐藤ビンゴさんなんて、もう、どうなっているんだろうと思えてくるくらい、雰囲気、動きで、こちらを混乱させてくる勢いがあって、もう笑ってしまうくらい、「すげえなあ」と思えてくるのです。ベースの川口さん、ドラムのボボさん、ギターの高田さんの布陣、彼らの雰囲気も完璧で、そこから、繰り出される、演奏は、スカスカしているけれど、重たくて、ユーモラスで、かっちょいい。
 
 なんだか、このように書いていて「格好良い」という言葉しか思い浮かばないのです。でも本当に、それに尽きると思います。もう、異常なくらい格好いいから、万人に理解できないのは、百も承知な、格好良さがありました。
 ああ、また、どーしても観てみたい、54-71。
 

 実は、わたし、ボーカルの、佐藤ビンゴさんに、一度だけ会って、話をしたことがあるのです。ずいぶん前のことだし、ちょっと話しただけなので、ご当人は覚えていないと思うのですが、あの、ライブのスタイルからは、まったく想像できないような紳士で、穏やかにお話をしてくださる方で、そして、とても、クレバーな感じで、わたし、さらにさらに好きになってしまいました。
 ビンゴさんは、実際に、とんでもなくクレバーな方なのでしょう。ビンゴさんは、その後、『VICE』というメディア雑誌のようなものをやっていて、インタビューなどで、普通に話されている姿も見れます。これが、またライブとの違いのギャップが垣間見れて、グッときてしまいます。
 

 そのギャップを感じたくて、ライブ映像を観たあとは、あの、インタビュー映像を見てしまったりしています。そして、またライブを観ると、あの、もう、わけのわからない感じを観れる。
 ああ、また、観てみたい、どーしても観てみたい。54-71。
 

 ではでは、聴いたことのない人、ライブ映像など見たことない人は。是非とも、現在のYouTubeなどで、まずは、54-71を体感してみてください。
 ぜったい、生で見たくなるはずです。
 ああ、観てみたい。
 

【戌井昭人(いぬい・あきと)プロフィール】
1971年、東京都生まれ。ヘンテコなパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げして、脚本を担当、自身も出演する。なんだかんだと、いろいろあって、小説を書きはじめ、2009年「まずいスープ」で芥川賞候補になる。その後、「ぴんぞろ」「ひっ」「すっぽん心中」「どろにやいと」と、4回、芥川賞の候補になるがすべて落選。一方で、2014年「すっぽん心中」で川端康成文学賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞。現在も、作家として活動中です。
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