私は、ほとんど怒ったことがない。
ムカつくことは、もちろんある。
しかしながら、ムカつく感情がおこると、表には出さず押し黙ってしまい、心の中で「嫌だなぁ。こいつ死んでくれないかな」とねちっこく思うタイプなんで要注意ですよ。
これは、父親からの遺伝だと思う。
私の父親は非常に大人しく、それとは対照的に母親がブブゼラみたくうるさい。
よくみる夫婦の光景。
「本当につまらん人だわ。何を食べてもうんともすんともだし、休みでもどっか行こうって言ったこともないだでね。お母さん、結婚してから一度も笑ったことないわ」
嘘だと思う。
近所のおばさんと爆笑しながら井戸端会議しているのをよく見るし。
そんな嘘をちりばめながらの罵声に近いものを浴びながら、父親は、じっと目を開いてんだか瞑ってんだか分からない状態で押し黙り微動だにもしない。
虫などが天敵から身を守るためにとる仮死状態に近いと思う。
この仮死状態が、はたまた母親の怒りを倍増させるんだけどね。
そんな私が先日、久しぶりにキレかかった。
お台場までタクシーで行こうと、家の近くで乗車。
乗り込んだ時点で、「あっ、ヤバイかも」と。
だって、粉末の龍角散を車内に散布したのかと思えるくらい龍角散臭いんだもん。
あと、運転手さんの名前が「重吉」なんだもん。
降りる訳にはいかないので、「お台場のフジテレビまで」と言うと、「あー、お台場って言うと、あー、はい」という不安感満載の返事が。
高速に乗り、すぐさま事件は発生。
私が携帯をいじくっている間に、通常、行かない方向へどんどん行ってしまい、高速降りちゃって気づいたら新宿の街中に。
「あれ? おかしいな。お台場は…」
「さっきのとこ、降りたらだめですよ。急いでるんですけど」
やや強めの口調に、明らかにてんぱり始めた重吉さん。
「では、えー、再度、近くの高速から乗りまして、えー、参りまーす」
急にバスの運転手さんがやるような指差し確認を多発。
信号で止まる時、右折する時、高速に乗るとき、やたらと不安しか煽らない指差し確認の末、30分遅れでやっと到着。
料金、どうなるんだろう? と思っていると
まさかの「では、高速代は頂かないので、7800円で」と。
いやいやいやいや、時間遅れてるし、料金だって、普段なら6000円くらいだから。
ノークレーム主義の私が思わず、「普段、7800円もからないですけど」と。
すると、重吉さん、半キレ気味に「じゃぁ、お客さんの思う値段で」って。
なんじゃそりゃ。思う値段って…。
迷った。迷った挙句7000円を。
私、余裕ありますからっていうのを見せるために。
こんなときの見栄っ張りって、意味不明だし。
重吉さん、1000円で龍角散でも買ってください。
大久保佳代子
1971年5月12日生まれ
愛知県出身
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