コロナ禍に入って大きく変わったことのなかに、海外からのお客様とお逢いできなくなったということがあります。意外に思われるかもしれませんが、レズっ娘グループを利用する訪日外国人の方は、多くはないもののずっと途切れずにいたのです。
「ゆうさん! 海外のお客様やねんけどいけるかな?」ーーお店の代表の御坊さんから、そう声をかけられるのが合図。私は決まって「その方、日本語を話せますか?」と聞き返しました。
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レズっ娘グループを利用される外国人の方は、ヨーロッパ系の方、アジア系の方、北米の方……いろんな国からいらっしゃっていました。
国内でもまだ知らない人が多いと思われるレズ風俗、どうやって知ったのだろう? と私も疑問だったので聞いてみたところ、だいたいの方がネットで検索してお店にアクセスされていました。
台湾からのお客様は、永田カビさんの漫画『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)を読んでお店を知った、とお話されていました。いまやいろんな言語に翻訳されていますので、世界中で手に取ってくださる方がいるのですね!
利用してみようと思った動機も、うかがってみました。
海外にない風俗店だから。
あたらしい自分探し、挑戦として。
せっかく日本にきたから。
性的な刺激を求めて。
エッチなマッサージ感覚。
失恋したから。
癒しを求めて……。
日本旅行の思い出として、というのを除くと、レズ風俗に期待されていることは日本のお客様とそう変わらないのだと感じます。
海外からのお客様には、面白い話もたくさん聞かせてもらいました。文化の違いを感じるとともに、セックスに対する考えや環境も、国によってまったく違うものなんだと実感することもできました。
セクシャリティでいうと、ガチのレズビアンの方が多いという印象です。日本のお客様はバイだったりストレートだったり、もしくはセクシャリティがわからない方が多いので、性に対する背景や文化、ひとりひとりの感覚が国ごとに違うのかなと感じます。
ほかにも、ストレートを自認しながらパーティ感覚で利用される方もいます。
たとえば、レズ鑑賞クラブティアラのカップルコースを申し込まれた、日系アメリカ人の女性と、その彼氏のイギリス人男性。彼女が日本語を流暢に話せる方だったので、とてもスムーズにことが運びました。
その女性のお話が、面白かったんです。アメリカやヨーロッパでは、週末のパーティなどで男女交えて3人で愉しむパートナーがすぐに見つかるのだとか。日本では相手をなかなか見つけられず、インターネットであれこれ検索したところ、カップルコースにたどり着いたというわけです。
愉しみ方は人それぞれで、デートコースのみをご利用される方もいらっしゃいました。散歩したり、カフェでお茶をしたりして過ごしました。どの街を歩いても刺激的だそうです。
日本が好きな方が多いです。外国人のお客様との会話は勉強になることが多く、いろんなことを考えさせられます。これもひとつの異文化交流。お客様にとっても、観光するだけでは見えてこない「いまの日本」を感じてもらえたらいいな、と思っています。
ただ、むずかしい点もあります。
実際にご案内するに際して私がまず気にしたのは、先述のとおり「日本語が通じるかどうか」です。レズ風俗では身体だけでなく言葉でのふれ合いも大事にするから、という以前に、お店を利用していただくとなると最低限、伝えないといけないことがあるからです。
私は特に英語が得意というわけでもないので、最初は不安でした。どこまで理解してもらえるだろう? コミュニケーションが噛み合わなくて、想いを汲み取れないのではないのだろうか?
レズっ娘グループにはご利用いただくうえで、さまざまなルールがあります。「ルール多すぎ!」と言われることもありますが、すべてのお客様に快適にご利用いただくためのものですし、ほとんどのお客様は納得のうえ、きちんと守ってくださっています。
だから、国の内外を問わずお客様にはルールをしっかり踏まえていただく必要があるのですが、日本人同士なら「あ〜、そういうことね」とすぐに理解できることでも、性や性産業に対する価値観や概念が違う海外のお客様となると、そうもいかないシーンが多々あります。
ホテルの料金についてこだわりを持った方、セックスのプレイについて必ず「これをしてほしい」とこだわりを持った方……いろんな考えを目の当たりにしてきました。
待ち合わせ場所まで自転車できた方もいらっしゃいましたね。日本のお客様ではまずないことなので、そのときは驚きましたが、いま振り返ると楽しい思い出です。やはり感覚がいろいろ違うものだなぁ、と思わされました。
こうした「違い」は何も悪いことではなく、それをきっかけに話すことでお互いの価値観に触れることもできます。たくさんの発見がありました。今後ご案内の機会が増えるかもしれないと考えると、やはり簡単な英語くらいは話せたほうがいいなぁと思わされました。
とはいえ、運がよかったのか。私が出逢ったお客様の多くは、日本語がとてもお上手でした。もっとも、日本語がほとんど話せない方をご案内するときには、なんとかジェスチャーで乗り切りましたけどね!
利用後に感想をくださる海外のお客様もいらっしゃいますが、ここにも言葉の壁がありすべてを読み取れるわけではありません。でもそこから「やさしい」「安心できる」という単語を見つけると、ご案内できてよかったと思います。ルールが多く衛生面もときに厳しいくらいのお願いをすることがありますが、それが信頼感につながったと教えてくれたお客様もいらっしゃいます。
多くの国で、レズ風俗が求められていると感じます。
ということは、レズっ娘クラブの海外進出も夢ではないかも?
大それた夢のようですが、レズっ娘クラブが大阪で誕生した10数年前は、東京進出だってかなり大胆な夢だと思っていました。いま、それは現実になっています。
いまは世界中がコロナ禍に見舞われ、ビジネスでの渡航や海外旅行もままなりませんが、夢を見るぐらいはいいですよね。国境なんてひらりと超えて、私を求めてくれる女性に逢いにいく。
いつかそんなことが、現実になりますように。
……つづきは、また次の夜にここで逢ってお話しましょう。
ゆう:永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。 https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025