最近、インディー・ブームの火付け役になったあるバンドのドラマー氏と時々仕事をしている。同じく火付け役になった別のバンドのドラマー氏も旧知の中で、彼の演奏もしばしば拝見している。やっぱちゃんと練習してるんだよね。彼らの在籍したバンドが評判になることで、インディー・ブームは始まったわけだが、上の世代の僕が見ても演奏が実際カッコ良かった。
問題はその後で、彼らに憧れてバンドを始めた世代がライブハウスに出てくるようになり、その後も新しい世代が出てくるにつれて、リズムを中心に置いた音楽において重要な何かがどんどん劣化してきた。
ブームの当初から現在の一段落までをライブハウスやレコーディングの現場でずっと見てきた僕の見解は、残念ながらこうである。「憧れ第一世代」からしてもうドラマーで基礎打ちの経験のある人は、ほぼ皆無だった。個人的には「これで良いのかなぁ?」と思いつつも、ブームゆえCDは売れ続けた。が、途中でやはり「これは飽きられる」と確信を持ったので、出会う若手には「関係ねぇや」という反感を感じつつも、「若いうちに基礎はやっておけ」と口を酸っぱく言い続けた。
で、ブームが一段落した今。冒頭に書いた2人のドラマーは今もドラムを職業にしているし、僕が関わったバンドもいくつかは大きくなり、安定的に活動できている。
我々の関わる音楽は基本が4分の4であり、さらに拍を2分割、3分割したリズムに分かれる。言ってしまえば簡単な構造なのだが、やはり16分音符や3連音符をキチンと叩けない人には、絶対にちゃんとした演奏はできない。できる人はできる。この差はドラマーのみならず、バンドの5年後、10年後にも明確な差を生み出す。僕が見た限りでは実際に然るべき結果に落ち着く。単に物理的な問題なのである。
リズムが重要な音楽でリズムがダメならダメ。まぁ半年ほど人生を捨てるつもりで、一度妥協なく基礎に取り組んでごらんなさい。と、結局振り出しに戻って、本連載はこれが最後である。お世話になりました。
▲写真も結局、この写真に戻る。プラクティスパッドとメトロノーム。
基本的な各音符をいろいろなテンポで一定に叩けて、
自由にアクセント、休符が入れられる。打楽器の最低要件である。
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
http://i.gmobb.jp/mihara/
https://twitter.com/mihasige
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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