今回は、ここ数年のドラマー諸氏の傾向と対策のお話。インディー・パンク全盛の頃のドラマー諸氏は、みんなハットもライドもワンワン、皮物もメキメキぶっ叩いてくれたものなのだが、ここ数年は、全体にタッチが弱めの人が増えましたな。スティックもだんだん細くなってきた。まぁ強く叩き過ぎても「バチッ」っていうアタックばっか増えて、低音不足で、むしろ音は細くなったりするのだが、弱過ぎても当然楽器が鳴り切らない。ガッツリした音楽性のバンドでは、ギターやベースも派手な倍音を多く含んだ強い音を出す場合が多いので、そういう音楽性で、細いスティックでドラムを撫でるように叩いても周囲の音にかき消されてしまう。「力じゃない」とは言うものの、いくらなんでも…という場合が増えた。
で、最近はアレンジが細かくて、まるでアニソンのような手数のアレンジをしてくるバンドも多い。最近の人はマジメだから、キッチリ覚えてはいるのだが、やはり手数が多いパートではタッチがガクンと弱くなったりする。そういうパートはむしろドラムが目立ちたいところだと思うのだが、そう聴こえない。やっぱ売れてる某バンドのドラマーなんかは、そういうきついところで、むしろ頑張ってちゃんと決めている。ゆえにカッコイイ。ゆえに売れている。
マイクが一杯立ってるから何とかなるんでしょ? ならないんだな、これが。弱い音は弱い。あと気になるのが、歌物寄りのバンドで、Aメロなど周囲の音数が少ない場面で一緒になってタッチを弱くするドラマー。これは生音も聴こえる小さめのライブハウス程度ではむしろ良い感じの場合もあるが、ある程度以上のキャパの会場では、PAからのドラムのヌケが非常に悪くなり、リズムがさっぱり見えなくなってしまい、もの凄く「ヌルく」なる。おまけにドラム以外のメンバーもリズムを見失い、全体のアンサンブルもヌルくなる。ヌルヌル。ベーシックなキックとスネアはサウンドの中心で、常にしっかり鼓動しているべきである。僕はそう思うし、実際もったいないことになっているバンドが、けっこういる。
▲ドラムのビートはバンドの背骨。無いと立てない。
スティーブ・ジョーダンは常に強力な背骨をバンドに与えてきた。
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
http://i.gmobb.jp/mihara/
https://twitter.com/mihasige
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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