今回はスネアの音にまつわるいろいろ。CDやコンサートのドラムを聴いて憧れる、という理由にはノリのカッコ良さもあるだろうが、音の迫力、ハデさという部分も大きいと思う。なのだが、CDやライブのドラムの音というのは、必ずしもドラムの生の音ではない。
スネアにリバーブをかけるのは昨今あまり流行らないが、今でもレコーディングでは「アンビエンス」というドラムから離れたところに立てて、ドラム全体の響きを録るマイクを多くの場合立てるし、ライブ会場でも実はPAから出た音に「ドワーンワンワン」という会場自体の響きが合わさった音を「ドラムの音だ!」と思って聴いている。いずれにしてもドラムの音は「製品」になる時には何らかの残響音が足されている。
80年代後半からのデジタル・リバーブ流行りの頃には、この違いを知らずにスナッピをユルユルにしているアマチュア・ドラマーが多かった。リバーブ音とスナッピのジャラジャラを混同していたわけである。近年、日本のバンド物で多い音もミドルピッチでスナッピも緩めのサステインの長い音である。
ところが海外のバンド物の音では、こういう生音はむしろ少数派で、昔も今も「バシ」とか「カッ」というタイトな音が主流に思える。タイトな生音に前記の残響音が足されているので、音のクリヤさとダイナミックさが共存している。16やハネモノといった音符の細かいビートの演奏もちゃんとタイトでカッコ良い。
日本に多い音も「日本の個性だ!」と言えば個性なので、ま、良いと言えば良いのだが、音源でもライブでも広がり過ぎて遠い音になりやすく、細かいビートは伝わりにくい。これは日本で16、ハネモノの上手いドラマーがなかなか出てこない理由のひとつかもしれない。もう少し張ったタイトなスネアはリズムのヨレもばれるし、安定して鳴らすのも大変。誤魔化しが利かないので抜群に鍛えられるし、それができれば音源や大きな会場でもハッキリとノリと音を届けることもできる。一度は通っておくことをお勧めする次第である。
▲タイトな音と言えば、スチュワート・コープランドである。
スネアは両面締め上げるだけ締め上げて、「コッ!」。
このカチカチのスネアをレギュラーグリップでフルショット。
抜群のスピード感。鳴らせませんぜ、普通。
あ、これこれスチュアート、ドラムにそんなことを書いてNHKに出てはいけません!
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
http://i.gmobb.jp/mihara/
https://twitter.com/mihasige
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
http://i.gmobb.jp/mihara/
https://twitter.com/mihasige