「バンドはドラムが良くないと成功しない。」というのは、昔からよく言われる事である。これは僕らが演奏する音楽のそもそもの成り立ちを考えると理解出来るようになる。ロック、ロックンロールはリズム&ブルースを基本にダンスミュージックのひとつとして発生した。その後いろいろな音楽の要素を取り入れつつ発展して来た訳だが、今でもやはり根本に「ノリが常にある」事は外せない要素である。僕自身はグルーヴは必ずしもドラマーだけの責任ではないと思ってはいるが、ライブなどでノリを最も分かりやすい形で表現するのはやはりドラムである。昨今非常に気になるのがドラマーの根本的なノリの無さ。楽器の出音の不安定さで、この辺のダメさは、レコーディングやPAの出音が重要になる大き目の会場での演奏では大問題になってくる。ライブハウスだと生音も聞こえているし、ボーカルやコーラスのマイクにドラムの音が多く入る事で、ドラムの音がハデになり、ある程度なんでもラフにカッコよく聞こえてしまう。という現象が起きるのだが、大場所やレコーディングではドラムの実力はモロに出音、録れ音に反映されてしまう。中心に常にドラムのノリとボーカルがしっかり居ないと、大場所の2時間のライブなんてもたないし、音源を聞いても引き込まれない。ゆえに成功しない。アレンジの決め事がやたら多くて忙しいのも上記の傾向に拍車をかけているように思われる。安定したリズムが損なわれるくらいなら少し、あるいは大幅にシンプルにしてでも、タッチとノリの安定を取った方が良くないか?「新しくなきゃ!」つっても詰め込めば良いって物でもないし、詰め込む事でむしろメリハリがハッキリしなくなっているケースもよく見かける。これも大場所で伝わりにくい原因になる。ドラムがシンプルでもメリハリの利いたノリノリの曲なんて世界にはゴチャマンとあるし、むしろ大物ほどリズムはシンプルだったりする。これもロックの「そもそも」に立ち返れば、なるほどなのである。
U2のラリー・マレン・ジュニアとかなあ、
シンプルだけどなあ、偉大だよなあ。
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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