「ノリ」と似たような言葉に「グルーヴ」がある。ヒップホップっぽいリズムを叩くと「わあ!グルーヴだあ!」みたいに言われる事もあるし、古手のミュージシャンにグルーヴについてえんえん精神論を聞かされる事もある。分かったようで分からないのが「グルーヴ」である。かなり以前テレビで、ジャズトランペッターのウィントン・マルサリスが音楽について講演しているのを観た。マルサリスは観客全員にしばらく手拍子をさせ「ね、だんだん手拍子が揃って来たでしょ?これがグルーヴです。」と語っていた。だんだん息が合って一体感が出てくる事。と同時にその事から発生する躍動感。さらにその躍動感からさらに息が合いどんどん一体感と躍動感が高まっていく。こういった現象、気持ちの高揚などの諸相全体を「グルーヴ」と呼ぶのであろう。マルサリスの講演を観て僕はそう考えるようになった。盆踊りを想像すると分かりやすい。やぐらの上の太鼓に合わせて輪になって踊っていると自然と高揚して来て踊りも揃って来る。こう考えるようになって、僕は最初から頑張り過ぎて空回りする事がなくなった。リズム音楽はしかるべくスタートすれば自然に高揚して行くようにそもそも出来ている。乗ってくると頭の中は独特の覚醒した状態になり、普段出来ない事まで楽々出来てしまったりする。非常に気持ち良く高度に楽しい。言う事なし。ドラマーに出来る事は、その曲のメンバー全員でその曲の共有すべきノリを把握して、丁寧に演奏し、この過程をスタートする事。そうすれば全員が自然と高揚して行き観客にも伝播する。こう考えるとリズムは全員がグルーヴするための「共有物」である。ドラマーが好き勝手にやりゃ良い。ってものではない。ただのヘタクソにでも「これが僕のノリなんだ!」と言われると何だか文句が言いにくい気もしてしまうのだが、やはりこれは間違いだ。グルーヴがスタートするにはドラムがその場の全員と共有可能なリズムを叩ける事が不可欠だ。
三原君グルーヴちう。
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとし て、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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