ドラムの基本的な役割は「バンドとオーディエンスにゆったりした4拍とビートを提示する。」である。ある人が「ドラムの役割は、他のパートをタイムキープから開放する事だ。」と言っていた。良いセリフですな。これによって他のメンバーはリラックスして自分のパートに集中出来るし、お客は踊れる。さらにドラムがノリやすい拍とビートを提示し続ける事でバンドのコンビネーションが良くなると、ドラムは他の楽器にキックやスネアでアタックや「合いの手」を供給するようになる。これはベースの音の頭にキックがドンと乗っかっている音や、ベースの音の切れ際にスネアが「タン!」と小気味良く決まる感じを想像すれば分かりやすかろう。ドラムとベースが同じパターン、フレーズを演奏したとして、コンビネーションが良いと、有機的な複雑さが自然と生まれる。もちろんこれはドラムとギターやボーカルとの間でも起き、ギターとベースやボーカルの間でも起きて、全体として複雑で強力な躍動感が生まれる。リズム音楽とはそういう音楽で、この強力な躍動感がある状態を「ノリがある。」と言い、こういう音群に遭遇すると人はイヤでもノる。こう書いてくるとドラム自体のノリのあるなしも、ちょっと見えてくるはずである。ドラムは「大太鼓」「小太鼓」「鳴り物」と3人くらいでやっていたものを1人で演奏出来るようにした楽器である。ま、3人でやっていると想像してみて、この3人のコンビネーションが悪いと何のことやらサッパリ。というのは容易に想像出来るはずである。コンビネーションが良いと、先ほどのバンドの例と同様、強力な躍動感が自然に生まれ、これまた誰でもノる。ドラムにノリがある。とはこれを指す。辛気臭い練習もそのためである。こういった本質的なノリは、音量や音質の派手さとは関係なく存在出来るのだが、ノリがないとバンドやドラマーは音量や派手さで隙間を埋めようとし始める。が、これはしょせん誤魔化しに過ぎない。
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとして、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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