有名ドラマーの演奏を見てみる。スティックは素早く大きく振れているし音もハデでデカイ。「うーんドラムはパワーだ!」こう思うのはまあ普通で、多くの人はスティックをしっかり持って手首で振り回そうとする。しかしこれは間違いで、疲れるし楽器は鳴り切らないしタッチもリズム自体も安定しないし腱鞘炎になる。ろくな事がない。実は良いドラマーの手首や指は非常にリラックス(写真参照)していて、腕を自然に振ればそれにつれてスティックも「振れてしまう」だけ。スネアの2、4、やフィルのアクセントといった大きな動作も実際は見た目のイメージよりもはるかに力は要らない。細かく素早い演奏はどうか? というと、これは打面の反発で戻って来たスティックを指で弾き返す動作や、一度叩いた後、手首を上げつつもう一度指で弾く、といった動作で行なう。打面の反発を利用するので手首の上下で行なうよりはるかに楽。多くのドラマーが演奏に対して持っているイメージは実は真逆で、力みかえってしまうと、こういった動作は全て不可能になってしまう。ドラミングはその見た目とは裏腹に「パワー!」より「手技」の側面が意外と強い。「パワー!」は結果にすぎない。じゃ何をどう練習すれば良いのか?
筆者はここ数年、YOUTUBEなどで豊富にアップされて観られるようになったモーラー、グラッドストーンといったメソッドの教則動画を参考にしながら自分の奏法を見直して来たのだが、動作や考え方がとても理にかなっており、演奏は非常に楽になり楽器も良く鳴る。習うのも良いし、独習する場合も参考にすると良いと思う。良い時代ですにゃあ。日本では近年急速に言われるようになったこれらのメソッドだが、歴史は実はかなり古く、成立はなんと1920年代。アメリカには1920年代からドラムのしっかりした技術体系がずっと存在していた訳で、この事はアメリカが昔も今も良いドラマーを輩出し続ける理由のように思える。