リズムは「大と小」で出来ている。「大」は「ドンパンドンパン」といった4分音符。2分音符の場合もあるけどね。これがリズムの大枠で、大体この4分音符を基本に人は踊ったりノッたりする。「小」は一拍をいくつに割るかで決まる8、16、シャッフル、ハーフシャッフルといったビートである。この大小の組み合わせを的確に演奏する事で、ドラマーは「ドッコチッキパンッタカスタタドッコパン」(ハーフシャッフルね)といったノリノリのリズムを演奏出来る訳である。大きなリズムがノリの大枠を作り、小さなリズムがその中身を説明するという形で、この両者は支えあっている。うーん深く難しい。が、面白い事にそれを演奏するドラマーの肉体も「大と小」で出来ている。大体の人の体は大きな体幹部から腕と足が生え、それぞれ次第に細くなって指先つま先に至り、それぞれの部位に付く筋肉も小さく繊細になっていく。ドラムではダウンアップなどと言われる腕、手首、指を連動させた動作で、腕を一回振る動作で音自体は二つ三つと出す。といった事が可能で、足でも同じ事が出来る。体幹はゆーったりノっておればよろしい。こう考えるとリズムの「大小」は体の「大小」を上手く使えば、自然に楽に演奏できる事が分かる。前回「練習せえ!」と書いた。手に棒を持って4分音符を力任せに「ドンドン」やるくらいは、まあサルでも出来る。練習すべきは、それを音楽的に細かく割っていくフィンガーコントロールのような繊細な動作なのである。それによって「小」も生まれ、初めて「リズム」になる。これを身に付けないと何が起きるかというと、細かい素早い動作が必要な場合に腕や足の痙攣的な動作で誤魔化してしまうようになる。痙攣的な動作は力まないと出て来ないので、当然足も腕もガチガチ。これで安定したリズムを叩けというのは無理な話である。が、実際多くのドラマーはそうなのである。「ドラムはパワーですねん!」といった思い込みもこれを助長する。
己の肉体をうまく使うのだ
三原重夫
1976年、セットドラミングを始める / 1986年、ローザ・ルクセンブルグ『ぷりぷり』でデビュー。ローザ解散後、メトロファルス・ルースターズ・スターリンに参加。その後フリードラマーとして、様々なレコーディングやツアーに参加 /1997年、ドラムチューナーとしても活動開始。ドラマー、ドラムチューナー、エンジニアなど、25年ものキャリアを誇る。
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