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6回「今が最高だと思えるかい?」

第46回「今が最高だと思えるかい?」

2023.08.10

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Text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)

SNSではなく、現実の自分自身をもっと承認してあげないか?

 ここ何年か、平均すると週に5回ぐらいは必ず行くほど銭湯やサウナが好きだなのだが、胸一面にタトゥーが入っているために、利用できる銭湯が限られる。
 スーパー銭湯や温泉施設、旅館やホテルなどとは違った、街に昔からある公衆浴場である銭湯は、公衆浴場法でタトゥーを理由に入浴を拒否できないはずで、裁判でも結果が出ているのだが、強制排除とでも言えばいいのか、湯船に浸かっていて出されたことすらある。
 そのため安心して入れる、ゆったりリラックスできる銭湯は限られてくるのだが、そんな数少ないお気に入りの銭湯の中で、先日サウナに入りながらテレビ番組のワイドショーを見ていた。
 サウナでは音楽やラジオなどが流れていることもあるが、テレビが設置されている場合が多く、普段、家で地上波など全く見ない俺でも、サウナに入ってテレビがあれば、見る以外の選択肢がない。半ば強制的なサウナ儀式なのか? と思うほど、音量まで大きい場合もあり、俺の日常生活で昼のワイドショーやニュースを見る唯一の機会が銭湯のサウナだ。
 
 その日のテレビ番組の昼間のワイドショーは、トランスジェンダータレントのryuchellさんが亡くなった報道一色だった。サウナがあれば、2時間ほどは銭湯内で過ごすのだが、その間の画面は俺が目にした限り、全てryuchellさんの報道だった。
 まだ事実がわかったばかりのようで、理由は明らかにされてはいなかったが、すぐに判明した。ネット上における誹謗中傷が原因だったようだ。
 過去にもプロレスラーの木村花さんが、ネット上の誹謗中傷によりこの世を去ってしまうという、悲しい事件もあった。
 近年のSNS上は「一億総ツッコミ時代」という本が出るほど、一般の人々が公で手軽に批判をする時代になっている。ryuchellさんや木村花さんは、近年の手軽なSNS批判による被害者だ。
 
 SNSで起きる事件などを知っていくと、根底に承認欲求があるという分析にたどり着く。
 自分の意見を聞いてほしい、自分が認められたい、俺を見て、私を見て、というところだろうが、かく言う俺も、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSを頻繁にやっていた。もうほとんど中毒と言っていいほど、四六時中スマホを見て、SNSを見て、投稿して…という行為を繰り返していたので、その気持ちはよくわかる。
 いいね! やリツイート、シェアなどの数で一喜一憂し、自らがやっているバンドのことや本のことなどを話題にしてくれたりすると、ありがたく嬉しい気持ちになっていた。
 当然、批判も多くあり、それも注目の一部だとは思っていたが、中には「よくそこまで言えるな」といった腹立たしさしかないものもあり、そんな批判が多くなれば心を病んでしまう人がいても全くおかしくない、異様な世界になっていた。
 
 小さなことでもくだらないことでも、批判でもギャグでも宣伝でも、自分以外の誰かが共感してくれるのは嬉しい。バンドをやっている身とすれば、自分たちの音楽に共感してもらうのに近い感覚かもしれない。
 共感や承認を得るために、自分が違うと思う発言やニュースなどを引用し、批判する。投稿のいいね! やリツイートの数が多ければ、小さな満足が得られるといったところなのだが、日常がSNS中心の生活になっていると気づかなくもなってくる。
 SNSのための写真、SNSのための発言、SNSで発信するためのネタ探し、これならみんなが見てくれる、これならみんなが共感してくれる、これならいいね! がたくさんもらえる…… etc.
 今世界中では、そんなことが当たり前になっているのだろう。良い悪いではなく、それが現実で事実だというだけだ。
 
 ある日、親しい人間と呑んでいるときに、SNSの話で言い合いになった。酔った勢いもあったのだが、それまでSNSに感じていた部分もあり、俺はその場で全てのSNSアプリをスマホから削除した。
 アカウントは残っているし、海外や地方にはSNSでの連絡手段しかない友人も多いために、メッセンジャーアプリだけは残したのが全く潔くないヘタレなのだが、この日からSNSを見る機会がかなり減った。
 バンドや仕事の宣伝は、今やSNSでしか行なわれていないかと思えるほど情報がSNSに集中しているので、宣伝と連絡はSNSを使用するが、情報をSNSから得るのをやめてみたのである。
 するとどうだろう。いつどこで観たいライブがあるかがわからないではないか。非常に困るのだが、そんなのも最初の1週間ぐらいなもので、慣れてくると快適この上ない生活を送っている自分に気づく。情報はどこかで手に入るし、腹が立つことが格段に減ったのだ。
 
 それまでのSNS上で情報を得ていてときは、他人の意見も上乗せされて目に入っているし、本当の自分ではない部分も多かったのかもしれない。
 腹の立つ記事や意見を引用しながら、批判を投稿していた俺は、腹の立つものをわざわざ自分で探していた。腹の立つことだけではなく、面白いものや楽しいこと、美しいものや感動するものでさえ、SNSから得ていたことがかなり多かった。
 アプリを消してしばらく経つと、そんな日常が楽しいわけがないと、つくづく感じるようになった。
 Instagramだけはアプリがないと宣伝投稿ができないので、復活させたのもまたヘタレではあるが、心の声にちゃんと耳を傾けると、やりたくないとは聞こえている。
 要するに俺はSNSの使い方が下手で、やらないほうが精神衛生上良いと、SNSから距離を置いて、やっと判断できたのだ。
 
 楽しいことや嬉しいこと、笑ってしまうことや感動することを、仲間や我が子、愛する人たちと一緒に体験して、顔を見て体温や感情を感じながら共感し合うのは、なんと充実して幸せなのだろうか。
 目の前で起きている出来事や、日々瞬間瞬間を感じる自分の感受性に心を傾ければ、どうしても怒りが沸き起こる世の中が、日常の目の前に転がっているではないか。何をわざわざ腹立たしいものをSNSで探す必要があるんだ。
 とまぁそんな気分で、SNSから遠ざかり、かなり快適な日々が送れるようになった。
 
 SNSには俺と同じように、批判できるものをわざわざ探している人間が雲霞のごとく存在する。純粋に怒っているのだろうし、その怒りを発散させる場も持っていない人がいるのはわかる。
 友人関係も、俺たちのような旧時代のやり方で作るのではないのだろうし、共感や承認は、SNS上での繋がりがあって初めて存在するのかもしれない。
 SNS中毒だった上に、我が子は生まれたときからこの時代であるし、旧時代の人間である俺でも、今のあり方は基本的に認識できていると思う。
 
 承認や共感は大切だ。それによって気分は変わるし、上向きになれる楽しいと思える瞬間である。
 でもね、他人を貶めて批判して誹謗中傷までして承認されたいのなら、それよりもまず、自分で自分自身をもっと承認してあげないか?
 いい部分だけではなく、醜い自分や情けない自分、ひどい人間性の部分や狡い部分、つじつまの合わない行動や罪悪感、悲しさ、悔しさ、自己嫌悪など、全てを持っている自分という人間を、もっともっと自分自身を認識して理解して認めてあげるのが、一番承認欲求が満たされるのではないだろうか。SNS上のようにお手軽ではないけどね。
 
 弱さである醜い部分や悪い部分、苦しみや痛みを、まず自分自身が理解すれば、自ずと他者の痛みや苦しみも理解できるようになるんじゃないだろうか。だって同じ生き物だぞ? そんなに自分と大差はないと思わないか?
 みんな承認されたいし、共感して欲しいんだよ。
 みんな声を聞いて欲しいんだよ。
 悪いことも嫌なことも腹の立つことも、良いことも楽しいことも悲しいことも、それを感じているのは他の誰でもないあなたであって、あなたがいなくなれば、あなたの感じているこの世界は、消え去ってしまうんだよ?
 みんなあなたと同じで、そんなに大した差はないよ。
 
 今更かよ! と思うかもしれないが、再確認を何度もしないと忘れてしまうほど、俺は頭が悪いのだ。しかし現実や事実を認められるほどの頭はある。事実を曲げて繋げたものは、どこまでいっても真実にはたどり着かない。
 「俺が正しい!」ではなく、弱い部分や間違っている部分、醜い部分も含め、もっともっと自分を認めてあげる。生きていくにはそんなことが大切で、面白おかしく前に転がっていけるんじゃないだろうか。
 
 あなたが見て聞いて感じている全ては、自分の中から始まっているんだよ。もっともっと、自分の声をちゃんとしっかり誤魔化さず聞いてあげようよ。
 事情により、SNSでしか外の世界と繋がる手段がない方には大変申し訳ないが、自由にどこでも行き来できる環境と肉体、精神を持つ俺としては、たかがSNSで人が死んだり、怒りや憎しみや悲しみなどの苦痛に支配されるなんて真っ平御免だ。
 あなたは今が最高だと思えるかい? もし思えないとしても、その原因を他者のせいだけに擦りつけていたら、最高には程遠いよ。
 
 うちの近所では、昨日あたりから蝉が鳴き始めた。今年は鳴き始めるのが早いな。また暑い夏がやってきた。
 全ては繋がっている。俺はそう思う。

JAGATARA『つながった世界』

もしも君が過去をたずねうらやんでみても
もしも君が過去をたずねなつかしがってみても
 
あの頃はまたあの頃で色々あったもんさ
君は毎日どろんこで家に帰ったものさ
お母さんはうれしいやら困ったやら
すぎ去った日々は皆それぞれ美しいけど
今が最高だと言えるようになろうぜ
今が最高だと言えるようになろうぜ
 
もしも君が未来を見つめため息ついても
もしも君が未来を見つめ悲しみにくれても
 
その時はまたその時でどうにかなるもんさ
やがて現われる荒廃したテクノポリスよ
君はその残骸を手にとりキスをする
そして恋人と共に夜明けをむかえる
 
だから今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
 
果てしない空よ この願い聞いておくれ
そびえ立つビル達よ 一体何を物語る
土深く眠るものよ 息をふきかえす頃
 
次々へとわき出るリズムが前に進めとささやく
次々へとわき出るリズムが前に進めとささやく
次々へとわき出るリズムが前に進めとささやく
次々へとわき出るリズムが前に進めとオレにささやく
乗るか反るか逃げ出すのか
乗るか反るか逃げ出すのか
無数の(ガラス玉が)
無数の(ガラス玉が)
無数の(ガラス玉が)
宇宙にはじけ飛び出す
 
もしも君が未来を見つめため息ついても
もしも君が未来を見つめ悲しみにくれても
 
その時はまたその時でどうにかなるもんさ
やがて現われる荒廃したテクノポリスよ
君はその残骸から赤ん坊とり出すのさ
そして新たな1ページを書きとめてゆく
 
だから今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
 
果てしない空よ この願い聞いておくれ
そびえ立つビルの群達よ 一体何を物語る
涙の海を君とひと泳ぎさ
 
だから今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
今が最高だところがって行こうぜ
 
幻を追うより夢をはぐくむのさ
幻を追うより夢をはぐくむのさ
幻を追うより夢をはぐくむのさ
幻を追うより夢をはぐくむのさ
 
Take5………  Take6………
今が最高!今が最高!
今が!今が!今が!
今、今、今、今、今、今が最高
 

◉JAGATARAは1979年活動開始、82年インディーでデビュー・アルバム『南蛮渡来』発売。インディー時代に中村とうよう、渋谷陽一らの高い評価を得、また江戸アケミの奇天烈なライブ・パフォーマンスとストレートな言葉、またパワフルなファンク・ロックに多くの音楽ファンの耳目をひく。89年4月にアルバム『それから』でメジャー・デビュー後、わずか7カ月の90年1月24日に江戸アケミが急死。バンドの解散と正に劇的な最後を遂げたが、彼らの音楽は色褪せることなく、新たなファンを獲得しつつ再評価されている。「つながった世界」は4作目にしてメジャー・デビューアルバム『それから』に収録。
 
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。
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Laugh Til You Die 笑って死ねたら最高さ!

著者:ISHIYA(FORWARD/DEATH SIDE)
ISBN:C0073 978-4909852-44-1
発売日:2023年8月4日(金)
価格:3,000円(税抜)
判型:A5変形
頁数:472頁
発売元:株式会社blueprint

amazonで購入

【内容】
ISHIYAが自身の体験をもとにシーンの30年史を綴った書籍『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』、1992年に34歳の若さでこの世を去った片手のパンクス・MASAMIの生き様に迫った『右手を失くしたカリスマ MASAMI伝』に続く、ノンフィクションシリーズの第3弾。
アメリカ、オーストラリア、韓国、カナダ、スウェーデン、フィンランド、チェコ、イギリス、イタリア、オーストリア、セルビア……FORWARD / DEATH SIDEのボーカリストとして、世界各国でライブを行なってきた男・ISHIYA。その半生は、ハードコアを愛する仲間たちとの熱い信頼に支えられたものだった──。
東京での無宿生活、ハードコアとの出会い、亡き友・CHELSEAと夢見た「世界制覇」の野望、初アメリカツアーの洗礼、連日続く狂騒のパーティー、人種差別の体験、極貧のオーストラリアツアー、隣国・韓国のパンクスと築いた絆、憧れの地・イギリスでの大失態、ニューヨークに刻んだ友の魂、そしてコロナ禍を経て訪れた未知なる東欧。かつては家さえもなく東京を彷徨い歩いていたパンクスが、バンドを通じて仲間たちと出会い、世界各国で精力的にライブを行なうアーティストになるまでを、当事者ならではのリアルな筆致で綴った一冊だ。タイトルの「Laugh Til You Die」は、DEATH SIDEの楽曲名をそのまま使ったもので、著者の生き様が表れている。
カバーイラストは、同シリーズではお馴染みとなった俳優・浅野忠信の描き下ろしで、ISHIYAらのツアーをイメージしたものとなっている。帯には大槻ケンヂが「なんてレアな読書体験なんだ。ワクワクする。ジャパニーズ・ハードコアパンクバンドの海外ツアーから見た世界の景色だぜ。そんなの他にどこでも読めやしない」と推薦文を寄せている。

LIVE INFOライブ情報

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BURNING SPIRITS 〜CHELSEAの日〜
出演:DEATH SIDE / RAPES / SO WHAT / POISON ARTS
2023年8月17日(木)新宿LOFT
OPEN 18:00 / START 19:00
当日のみ¥1,000(1DRINK代別¥600)
問い合わせ:LOFT 03-5272-0382

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