初めて聴いたのは中3のとき。タクジかリョウジに教えてもらった気がする。
『MAKING THE ROAD』だった。初めて聴いたとき、「うるさくて格好良いセサミストリートみたいだ…」という、意味の分からないことを思ったのを覚えてる。
今まで聴いたことのある、どんな音楽よりも騒がしくて、速かった。ぶっちぎりだった。
僕らはすぐに夢中になった。
少ないお小遣いで、アルバムを買い揃えた。
リョウジの家に行っては、何度もライブビデオを見た。
行動、歩き方、話す言葉、唄い方、ギターの弾き方、彼らのすべてが格好良かった。憧れだった。
なんでも真似をした。
エレキギターはレスポールを買った。
ストラップは細くて黒い革製で。
低めに持ち、前傾姿勢でパワーコードを弾いた。
ジャンプの仕方も、彼と同じフォームで跳べるように練習した。
ギターの裏にはステッカーをたくさん貼った。
同じ格好がしたくて、黒いバンズのオールドスクールと短パンで。
ラグワゴンのバンドTシャツも通販で買った。ピザオブデスのTシャツも、もちろん買った。
首に付けている数珠みたいなネックレスを欲しがった。
バンドスコアを買った。おんちゃんは『GROWING UP』で。リョウジは『ANGRY FIST』で。俺は『MAKING THE ROAD』のを。
弾けるようになったら、CDに合わせて何度も繰り返し弾いた。
アルバムまるごとコピーして、1曲目から全曲合わせた。
年越しの瞬間には、おんちゃんちの車庫で「stay gold」をやった。
1年の始まりを、ギターを弾きながら迎えるという。
それも、インタビューで読んだ、健さんの真似だった。
書ききれないほどに、僕らの歩いた道はハイ・スタンダードだった。
でも、同じ時代にハイ・スタンダードはいなかった。
憧れ続けた対象は、活動を休止していた。
2016年10月4日。
その日は、バイトが休みで。詞と曲を作ろうと、昼間から月寒のカラオケボックスに篭っていた。
夕方、イノクチから連絡があり、僕はそのことを知った。
東京のタワレコは全滅らしく、イノクチはこれからディスクユニオンに行くらしい。
札幌は大丈夫だろうか。急いでギターをケースにしまって、タワレコに向かった。
ピヴォに入り、エスカレーターを上がる。
タワレコ店内では。今まで聴いたことのある、どんな音楽よりも騒がしくて、速い音楽がBGMとして流れていた。
うるさくて格好良いセサミストリートみたいな音楽だなって、意味の分からないことを思った。
レジ正面。本当にあった。ハイスタの新譜が並んでた。