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戌井昭人 / ゼンマイ

2017.09.01   CULTURE | BOOK

集英社 
1,300yen+tax

 過去に何度も海外に行こうとしたが、未だ行けていない。「ピースボートで世界一周!」なんて如何わしいポスターが貼ってある店の系列に勤めているのに、情けない話だ。(ピースボートに乗ったことがないので実際のところはわからない)戌井氏の新刊、『ゼンマイ』は、かつて見世物小屋の興行でトラックの運転手をしていた運送会社の老社長・竹柴が、恋人であった奇術師の女に再会するため、モロッコを旅する……という粗筋である。作中、竹柴は女から「魔除けになる」とゼンマイのついた木箱を渡される。このゼンマイ、回っている間は本当に魔除けの効果があるが、年月とともに、止まるまでの間隔が短くなっており、竹柴の寿命も短いことを暗示している。「ニール・キャサディのような」不良老人・竹柴は、ゼンマイが完全に止まるまでに、かつての恋人に出会えるのだろうか。読了後は竹柴と共にモロッコを旅して回ったかのような気持ちになった。ちなみにいま私は、伊東から東京に帰る電車に乗っている。(LOFT9 Shibuya:マツマル)

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