今年10月1日(木)にオープン50周年を迎える新宿LOFTと、同じく35周年を迎える下北沢SHELTERによる共同企画『SHINJUKU LOFT 50th ANNIVERSARY LOFT & SHELTER presents POOL SIDE』が、6月3日(水)新宿LOFTで開催された。『POOL SIDE』は2015年よりSHELTERで開催されているイベント。昨年6月に恵比寿LIQUIDROOMで開催された『EMOTIONAL RIOT』のベースともいえる、オルタナ・エモなど往年のSHELTERらしいバンドが出演する。ライブハウス主催ならではの組み合わせが新しい刺激を生む、毎回楽しみなイベントだ。LOFTでの開催となったこの日は、tricot、ヤスエでんじゃらすおじさん(BAND)、yubioriが出演。それぞれタイプの違う熱量の高いステージを見せた。
トップバッターはyubiori。スクリーンが上がると、黒髪ロングヘア―から金髪ショートに変貌した田村喜朗(Gt/Vo)の姿に目を奪われる中「rundown」でスタート。淡い朝焼けの情景に始まりを告げるようなトランペットが鳴り響き、まっすぐな田村のボーカルに重なるメンバーたちの声のパワーに圧倒される。じわじわとこみ上げる感情を次曲「いつか」で爆発させた。美しく織りなすトリプルギター、静と動の抑揚が効いた重厚なリズム、希望を鳴らすトランペット、どこまでも突き抜けていくボーカル、そしてエモーショナルなコーラスが感情の蓋をこじあける「ユナイト」が素晴らしかった。個でありながら‟それでも”共生していくことを諦めない純粋な美しさに、欠けた部分が満たされていくような幸福を感じた。
「僕たちは全員サラリーマンなんです。今育休中なんで(金髪)やっちゃおうと思って」(田村)最近は彼らのように社会人として働き、普段の生活も大事にしながら音楽活動をする若手のバンドが多い。昔のロッカーのように時代に抗うのではなく、時代に適応することを趣旨として掲げているレーベルもある。どちらがどうとは言えないが、LOFT50周年のフラッグが飾られたステージで<生活に乾杯>と歌う彼らの姿に、時代の移ろいを感じた。ラストの「造花」では田村がギターを置き、ハンドマイクでフロアへダイブ。大野莉奈(Tp)が代わりにギターを掻き鳴らした。<君の瞳にどう映るかい>こめかみにマイクを叩きつけ、一人先にステージを降りた田村の背中はとても格好よかった。
2番手は、昨年SHELTER、LOFTと共に共同企画を行い、今年4月にSHELTERでワンマンライブを行ったヤスエでんじゃらすおじさん(BAND)が登場。美しいピアノと哀愁あるトランペットの音色が染み入る「劇場」からスタート。<映画のような僕たちは尊い><大好きなら「言え」><劇場の幕はもう降りた>やりきれない半生を語る深みのある言葉が、若いyubioriへのメッセージのようにも聴こえる。世代が違う2組の人間臭さを感じられる、いい組み合わせだと思った。諦念のある冷めた歌声に寄り添う温かい演奏。孤独な歌なのに、幸福な余韻に包まれた。続く「異世界」ではガラッと温度感が変わり、サポートメンバーたちが笑顔を見せる。「我々はおじさんなのでゆったりいきます。深く沈み込んでいってください」と、幻想的なバラード「煌めき」。4月のワンマンで披露された際に、桑原渉(金属の管を唇で震わせたりする / Tp)が「曲が完成されすぎていてやることがない」と、演奏をせず両手を高く掲げるというパフォーマンスに至った経緯を話していたが、これがすごくいい。
そしてMCでは、9月15日(火)にSHELTER35周年を記念して自主企画イベントを開催することを発表。ゲストにNikoん、DJ TOMMY(BOY)の出演が告げられ、シティポップ~オルタナティブまで幅広いサウンドを消化したYDOならではの意外な組み合わせに、驚きの声が上がった。カオティックな前奏からの「泡」、ノスタルジックなギターと声を枯らし歌い上げるボーカルが心を震わせる「東京」で会場を沸かせた。
そして、ラストはtricot。2024年に開催されたLOFT移転25周年記念ライブにも出演し、活動初期にはSHELTERで自主企画を行っていた彼女たち。この日のイベントタイトルに合わせるかのように、キダ モティフォ(Gt)のギター独奏「pool side」から「POOL」でスタート。弾丸のようなテクニカルで熱量の高い演奏に対して、中嶋イッキュウ(Gt/Vo)のクールで品のあるボーカルが、絶妙なポップネスを生み出す。「LOFT50周年おめでとうございます! 私たちも50周年を迎えられるように頑張りたいと思います(笑)。今日は初めての対バンですごく新鮮です」(中嶋)この日は、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba)のソロプロジェクト、Fennelのサポートドラムを務める山﨑聖之による‟ええやんカレー”がBarフロアで出店しており、ライブ中カレーのいい匂いが漂っていた。
まるで打ち込みのような吉田雄介(Dr)のタイトなリズムと、浮遊感のあるギターがエレクトロ感を生み出す「OOOL」。手数の多い楽曲から一転、前半は幻想的なギター一本でせつなく歌い上げる「夜の魔物」。今や変拍子、マスロックが当たり前にある中で、他とは一線を画す楽曲の幅の広さと、ボーカル力の高さを見せつけた。「最近買ったApple Watchのインジケーターがヤバイので、あと一曲やって帰ります」(中嶋)と、ラストの「秘蜜 - Rearranged ver. -」では、グルービーな演奏と妖艶なハイトーンボーカルが作り上げる大人な世界観で魅了した。アンコールはなし。その綺麗な終わり方がすごくよかった。
LOFTもSHELTERもこれから秋に向けてスペシャルな周年イベントがたくさん控えている。老舗のライブハウスならではの刺激的なブッキングに期待したい。
SHINJUKU LOFT 50th ANNIVERSARY LOFT & SHELTER presents POOL SIDE
2026年6月3日(水)新宿LOFT
【yubiori SET LIST】
1. rundown
2. いつか
3. ユナイト
4. FANFARE
5. 雪国
6. つづく
7. ギター
8. 造花
【ヤスエでんじゃらすおじさん(BAND) SET LIST】
1. 劇場
2. 異世界
3. 婚前旅行
4. 煌めき
5. 泡
6. 湯気
7. 東京
【tricot SET LIST】
1. pool side
2. POOL
3. 18,19
4. おもてなし
5. あふれる
6. OOOL
7. 真っ黒
8. 夜の魔物
9. 秘蜜 - Rearranged ver. -














