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トップレポート坂本龍一の最後の3年半の軌跡を辿ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』、コムアイと大森健生監督を迎えて公開直前試写会を開催。「坂本さんは『生きていること』『感動すること』を休まなかった」

坂本龍一の最後の3年半の軌跡を辿ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』、コムアイと大森健生監督を迎えて公開直前試写会を開催。「坂本さんは『生きていること』『感動すること』を休まなかった」

2025.11.13

世界的音楽家・坂本龍一。ガンに罹患して亡くなるまでの3年半に渡る闘病生活と創作活動を自身が綴った「日記」を軸に紡いだドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』が11月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国の劇場で公開となる。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
 
このたび公開直前試写会が渋谷・ユーロライブにて行なわれ、アーティストのコムアイと、大森健生監督が登壇した。

1秒たりとも『今生きていること』と『感動すること』をサボらない

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ひと足先に本作を鑑賞したコムアイは、「坂本さんが亡くなるシーンはどうしても泣いてしまいました。悲しさもありますが、映画を観た後、わたしのなかに残ったのは『生きるのってこんなに楽しいことなんだ!』という感覚。楽しむには“サボらない”って条件もあって、坂本さんは1秒たりとも休まずに『今生きていること』と『感動すること』をサボらずに大事にしていたんだなと。わたしももっと知的好奇心を働かせて、感動して生きてやるぞ! という気持ちにさせられました」と本作に映し出される坂本龍一の姿から受け取ったものを、熱く語った。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

その感想を聞いた大森監督は、「コムアイさんらしい視点ですよね。色々な方に色々な感想を与えられる映画なんだなと思いました」と、完成した作品が持つ力を実感。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners
 
坂本龍一と何度か対面したことのあるコムアイはその印象を「すごく力強い人。笑顔が素敵で、お茶目な方」と振り返り、「数年前の年末ごろに参加したライブがあったのですが、出演していた仲間のひとりが当時坂本さんとやりとりをしていて。『闘病中の坂本さんへみんなで歌を送ろう』と呼びかけて、夜に建物の屋上でスマホを囲んで歌ったり踊ったりました」と、坂本を慕う面々と共に歌を届けたエピソードを語った。

日記、そしてプライベート映像と向き合い続けた2年半。“音の余韻”にこだわった映画制作の裏側

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

坂本龍一が残した日記を通して辿る3年半の軌跡。コムアイは「“救急車を呼んだ”とご本人が日記に書いているところがありますよね。救急車を呼ぶほどなのに、日記を書ける状態の人っているんだって思って。“大汗をかいて”とか、どうしてもその状況で事細かにそれを書くという。強烈に生命力を感じました。この映画は、人にどう生きるかを問う作品だなと思います」と、日記に綴られた、特に心に残った言葉を挙げた。
 

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コムアイから、日記を軸にした作品の制作経緯を聞かれた大森監督は、「坂本さんが亡くなられた2023年4月2日の2日後に放送したNHKの『クローズアップ現代』という番組に一人のディレクターとして参加して、そのあと1年かけてNHKスペシャルを放送、そして、そこからさらに1年半をかけてここに登壇しています」と作品完成までの長い道のりを振り返った。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

様々な縁で対面した遺族との対話を重ね、貴重な日記を提供いただいたエピソードに続けて、「日記はただ起きたことを書く方もいれば、気持ちを整理するために書く方もいると思いますが、坂本さんは両方だったなと。人柄が窺い知れる貴重な機会でした」と日記と向き合う中での発見を語る。
また、「一人の人を知るということの難しさと尊さがありました。この人のことを自分はどれだけ分かることができるか? ということへの極限の挑戦でした。様々な方の協力を得て、坂本龍一さんの後ろ姿から顔を覗けるよう、努力をしました」と、坂本龍一の最後の3年半という重要な時期を映し出した作品制作を述懐した。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

さらに「音」に関して、コムアイは「この作品は、『音』が感覚的に入ってくる。音と映像の美しさや呼吸とかリズムみたいな間合いがすごく良くて美しかったです」と坂本が大切にしていた様々な音を感じ取ることができたと言うと、大森監督も「非常に集中した空間で鑑賞するという美しい体験は映画館でしかできないだろうなと思っていたので、観終わった後に音の余韻が残ることを目指していました」とこだわりを明かした。

「確固たる想いが引力のように作用している」。世代を超えて影響を与え続ける坂本龍一の“世界と関わり続ける”姿勢

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コムアイと大森監督は同世代。世代の垣根を超えて坂本龍一が与え続けた影響について聞かれると、コムアイは「雨のように瞬間的に現れて、音楽として残すことができるかもしれないものへの探究心があった方だと思います。坂本さんが亡くなった後、神宮外苑の樹木の伐採反対の活動に参加したんですが、そこにご本人はいらっしゃらなくても坂本さんが率いて人が集まってきたというか。確固たる想いが引力のように作用していました」と坂本の想いが多くの人々に影響を与え、受け継がれている様子を話し、「わたしが初めてデモに行き始めたのが“NO NUKES”だったかもしれない。自分の人生を振り返っても、色々なところで影響を受けてきたんだなと気づかされますね」と語った。
 

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音楽という表現を通じて、被災地支援や平和活動など、社会や世界と積極的に関わり合いを続けてきた坂本龍一。大森監督は「社会のことにだけ関わらず、色々なことへ関わっていくことの大事さを感じました。もし、自分が病気に直面したら、美味しいもの食べて静かに暮らしたいとか、もう少しエゴイスティックになってしまいそうですが、坂本さんは世界に関わり続けていましたよね」と、その姿から多くのことを学んだ様子を窺わせた。
 

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

最後に、コムアイは「この映画を通して坂本さんと向き合わせていただいて、私自身も勇気をもらえたし、もっと感動してもっと楽しめることがこの世にはすごくたくさんあることを教えてもらいました。観た方は、これからの生き方について考えるきっかけになると思うので、ぜひたくさんの方に広めていただきたい。ご家族、大事な人に作品をぜひ伝えてもらえたらいいなと思います」と公開に向けて語り、大森監督は「今、そしてこの先の世代への橋渡しだと思って作ってきました。自分が受け取り、感じたものを誰かに渡して伝えていくという一心でこの2年半を駆け抜けてきました。身近などなたかに、この作品のことをご紹介いただけましたら幸いです」と想いを語り、イベントは幕を閉じた。

世界的音楽家・坂本龍一。彼は、命の終わりとどう向き合い、何を残そうとしたのか

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© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

2023年3月に、この世を去った稀代の音楽家・坂本龍一。その最後の日々は、自身の日記に克明に綴られていた──。ガンに罹患して亡くなるまでの3年半にわたる闘病生活とその中で行われた創作活動。目にしたもの、耳にした音を多様な形式で記録し続けた本人の「日記」を軸に、遺族の全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレートをひとつに束ね、その軌跡を辿ったドキュメンタリー映画が完成した。
 

商品情報

映画『Ryuichi Sakamoto: Diaries』

坂本龍一

朗読:田中泯
監督:大森健生
製作:有吉伸人 飯田雅裕 鶴丸智康 The Estate of Ryuichi Sakamoto
プロデューサー:佐渡岳利 飯田雅裕
制作プロダクション:NHKエンタープライズ
配給:ハピネットファントム・スタジオ コムデシネマ・ジャポン
2025/日本/ カラー/16:9 /5.1ch/96分/G
© “Ryuichi Sakamoto: Diaries” Film Partners

11月28日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

【Synopsis】命が尽きるその瞬間まで音楽への情熱を貫き、創作し続けた坂本龍一。本人が綴った「日記」を軸に、遺族全面協力のもと提供された貴重なプライベート映像やポートレート、未発表の音楽を交え、稀代の音楽家の最後の3年半の軌跡を辿る。今なお国も世代も超えて我々の心を掴み続ける坂本龍一は、命の終わりとどう向き合い、何を残そうとしたのか──。誰しもの胸に迫るドキュメンタリー映画が完成した。

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