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映画『解放区』公開記念、峰なゆか(漫画家)と太田信吾監督によるトークイベント開催! 「西成でティーしばきませんか?」

2019.10.29

1025_kaihouku_talk-2.jpg2014年に完成しながら5年のあいだ劇場公開されることのなかった太田信吾監督の長編劇映画デビュー作であり、超問題作『解放区』が10月18日(金)よりテアトル新宿で絶賛上映中だ。

さる10月25日(金)には、峰なゆか(漫画家)と太田信吾監督のトークイベントが同劇場にて開催された。
当日は金曜日の夜だったが、昼間の豪雨でこんな日に来てくれる人がいるのだろうか? というスタッフの心配をよそに、好奇心たっぷりの映画ファンたちが劇場に足を運んだ。

公開より連日開催されているトークショー。ゲストたちは太田信吾監督の強い希望によりオファーされており、この日も強烈なゲストを迎えることとなった。

司会の高根順次(SPACE SHOWER FILMS)がステージに呼び込んだのは、『アラサーちゃん』を代表とする売れっ子漫画家、峰なゆか。そして太田信吾監督を大きな拍手が包む。軽く挨拶を済ませた後、太田が開口一番、

太田「峰さん、今日の僕たちの服装はどうですかね?」と尋ねる。

司会の高根と太田はこの日、白いシャツを着ていた。峰が以前インタビューで「アラフォー男子は白いシャツで清潔感を保つべし」と語っていたので、この日は白いシャツで挑むと決めていたようだ。すると峰は天真爛漫にキャハハと笑い、

「別にシワとかないのに、太田さんのシャツなんでシワっぽく見えるんでしょうね(笑)」

と2人の敬意に応えた。滑り出しは順調なようだ。

main_メイン.jpgちなみに峰は公開前、映画『解放区』にこのようなコメントを出している。

ダメな人間を見るのが好きです。自分はまだマシな気がするから。
そのようにして多くの人の、そして自分の自尊心を保つ目的で西成のダメな人間を取材するディレクター志望のADが、西成で日々を過ごしていく中で、西成在住のダメな人よりもっとダメな人間にあっという間に転がり落ちる。
はあ、ダメな人間を見るのはほんとうに愉快ですね。ダメならダメなほどにいい。
私よりもっとダメなやつ見せてくれ。という欲望に完璧に答えてくれる映画。


1025_kaihouku_talk-1.jpgトークは峰のコメントからスタートした。

太田「峰さんから見て、この映画の人間の弱さだったり、男のだらしなさってどうですか?」

「私、すごい絵も下手で全然面白くない漫画を集めていたりして。こんなのでも出版してくれる会社がち ゃんとあるんだ! って安心します。“底辺”というか、ヤバいものをどんどん求める傾向がありますね」

太田「それってすごい上から目線ですよね(笑)。大丈夫かな。今日のトークショー」

「私が言う底辺って西成じゃないですよ! 主人公の須山ですよ! もう本当にクズ(笑)。でも私、どうしようもないクズを見てるのが好きなんです」

太田「この作品は人間の弱さを、西成という街がただ何も言わずに受け入れてくれるところからスタートするんですね。須山の場合は、リアリティを撮りに行くという大義名分があったけど、なぜか上から目線で自分よりも弱者だと思ってる引きこもりを一緒に連れて行ったりして。そういった意味だと須山自身は全然自分をクズだとは思っていないんです。この街は、まず受け入れてくれるという点では弱者にとっては楽園。キャッチコピーにもある“楽園”にはそういうメッセージも込めていたりします」

太田「だって、峰さんもクズを見るのが好きとは言っても実際に交際したいとは思わないですよね?」

「絶対にいや!(笑) 私自身は表参道でティーとかしていたいもん。実はこれってすごい紙一重なの。私が実際に須山みたいな男性と、西成の飲み屋で意気投合して、一夜を共にしちゃってなんとなく同棲始めたらクスリを勧められたりしちゃってね。まあいっか、ってやり始めたらお金ない〜ってその辺のちょんの間で働き始めちゃったり(笑)。そこにズルズル甘んじてしまうかもしれない自分が何処かにいるっていうのを知ってるから。なんだかんだクズを見たい! 好き! って言ってる時点で、実は私も片足突っ込んでいるんですよね」

太田「須山も自分はここの人たちとは違うと楽園に足を踏み入れて、そうやって染まっていったと言うか」

「みんな自分は違うって思っていますからね」

サブ_1.jpgサブ_2.jpg冒頭、上品だが頓着なく話す峰に白いシャツを着たアラフォー男子が翻弄されていたのだが、トークショーを通じてまた『解放区』の新たな側面が見えたような気がした。弱者とは誰で、その弱さはどこから来るのかということだ。
あっという間に時間が過ぎ、司会の高根から時間が迫っていることを告げられると、

「次回作のご予定とかあるんですか?」

太田「いつか峰さんとさらなるクズを描いてみたいですね」

「(笑)『JOKER』を超えるリアルなクズの作品にしましょう! 『JOKER』見ました? 家とか広いし、口紅なんてハイブランドの使ってましたよ! 『JOKER』のほうがリアルですよ」

と言うと、会場全体が大きな笑いに包まれた。

太田「西成の街はこの映画を撮った6年前とは随分変わっています。もはやこの街は労働を搾取する街ではなくなりました。ただ、高度成長期のこの搾取が外国人労働者に移っただけのような気もしていて。まだまだ日本はこの問題を抱えていて、西成が歩んだ歴史を決して忘れてはいけないと思います。11月に僕と西成の街を巡る“西成街歩きツアー”も予定しています。大手リゾートが進出してきたり、かなり綺麗に変化してるのでどうですか? 峰さんもご一緒に、西成でティーしばきませんか?」

「それなら私も行けそう!(笑)」

サブ_3.jpgサブ_4.jpg終始、峰のペースで進行していったトークショー。太田は自らが演じた主人公、須山を峰が見たらなんと言うだろうと思って登壇を熱望したが、狙い通り全く違う切り口で『解放区』を語れたのではないだろうか。

商品情報

映画『解放区』

【エグゼクティブ・プロデューサー】カトリヒデトシ
【プロデューサー】筒井龍平、伊達浩太朗
【アソシエイトプロデューサー・ラインプロデューサー】川津彰信
【監督・脚本・編集】太田信吾
【撮影監督】岸健太朗
【録音】落合諒磨
【制作】金子祐史
【音楽】abirdwhale / Kakinoki Masato
【助監督】島田雄史
【制作助手・小道具】坂田秋葉
【録音助手】高橋壮太
【制作応援】荒金蔵人
【現地コーディネーター】鈴木日出海、朝倉太郎
【撮影助手】鈴木宏侑
【エンディングテーマ】SHINGO★西成『ILL 西成 BLUES -GEEK REMIX-』
【出演】太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤亮、岸健太朗、KURA、朝倉太郎、鈴木宏侑、籾山昌徳、本山純子、青山雅史、ダンシング義隆&THE ロックンロールフォーエバー、SHINGO★西成 ほか
【製作】トリクスタ
【制作プロダクション】トリクスタ、ハイドロブラスト
【宣伝】contrail
【デザイン】武田明徳(VOX)
*『解放区』上映委員会(トリクスタ+キングレコード+スペースシャワーネットワーク)
2014年 / 日本 / カラー / ビスタ / 114分 / DCP / 英語字幕付き上映 / R18+ / 英題:Fragile
【配給】SPACE SHOWER FILMS
©2019「解放区」上映委員会
10月18日(金)よりテアトル新宿にて上映!

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