【日程】2018年11月27日(火)
【会場】渋谷シネクイント
【登壇者】三宅唱(『THE COCKPIT』監督)、宮崎大祐(『大和(カリフォルニア)』監督)
【司会進行】樋口泰人(爆音映画祭、boid主宰)
新鋭、ジャスティン・ティッピング監督の長編デビュー作映画『キックス』(12月1日公開)。このたび、映画の公開を記念して日本ではまだ数少ないHIP HOPムービーを手掛けた2人の映画監督によるトークイベントが行なわれた。
本作の主人公の育ったオークランドの環境や、その成長を描いた本作の魅力について語ったほか、両監督の作品を含む、HIP HOPやブラックカルチャーを描いた作品が、今後国内でどのように受け入れられていくべきなのか、HIP HOPムービーの未来についての考えも飛び出した。
本作の感想を聞かれた宮崎大祐監督は、「最新のHIP HOPのスタイルやファッションが劇中に散りばめられているのがよかった。HIP HOP映画は、豊かではない主人公が高みへとのし上がっていく話が多いが、『キックス』はある種の冒険譚になっていて、新しいHIP HOP映画の形を描いたのではないか」と物語の展開について、対する三宅唱監督は「こんな映画もあるんだ! と感じた。今まで観てきた映画とは少し違ったので、面白さと戸惑いがあった。普通は物語を引き立てるために音楽があるはずなのに、『キックス』は音楽がすげー流れる。1枚のアルバムを見ているような作品だと思いました」と劇中で用いられる楽曲の多さについて触れ、本作を評価した。
また、本作のもう一つの特徴として「スローモーションの多用」を挙げた2人。宮崎監督は「こんなに多い映画あるかな、というくらいスローモーションが多い。HIP HOPのMVにはスローモーションが多いので、それに慣れていると普通に見えるんですが。アメリカのヒップホップのMVの流行りも取り込んでいると思った」とHIP HOPのミュージックビデオとの共通点を挙げ、三宅監督は「車のパーティ・シーンがあって。幸せなシーンのスローモーションなのですが、そのシーンがずっと続けばいいのにと思っていました」と、本作の好きなシーンとして、スローモーションを使ったシーンを挙げた。
また、本作のHIP HOP映画としての魅力について三宅監督は、「HIP HOPって言葉を言い換えるじゃないですか? スニーカーをキックスと呼ぶことで、ただの靴が特別なキックスになる。特別な場所に行ける魔法みたいな力を持っている」と語り、「それがHIP HOPですよね」と宮崎監督も同意した。
さらに三宅監督は、「この映画を観る前に、キックスを奪われて取り戻そうとする少年の成長物語なんて、どこにでもあるじゃんと思っていたけど、主人公の住むオークランドという場所がまず新鮮に見えた。映画とか音楽は、今ここに流れている時間から離れたくて観たり聴いたりするものだと思うので、この映画では違う時間を体験させてもらえたと思います」と本作の舞台となったオークランドという地についても触れ、実際にオークランドへ足を運んだことがあるという宮崎監督は、「(オークランドへは)以前、怖いもの見たさで行きました。本当に怖かったです。駅を降りて野球場へ行くまでの道がすべて金網で囲われていた。本作でもよく金網が出てくるので、とても印象的だった」と意外な注目ポイントについても語った。
最後に、今後の日本でのHIP HOP映画の受け入れられ方について、宮崎監督は「これからの時代、HIP HOPが世界を支配していくと思う。HIP HOPには意外と保守的なルールがあって、用語やマナーを知って、HIP HOPにおけるリテラシーが深まるとメチャメチャ楽しくなる。見た目と違ってオタクなジャンルだと思っていて、その入り口としてこの映画はとても素晴らしいと思うので、『キックス』をきっかけにHIP HOPへの理解が広まれば、HIP HOP映画のヒットにも繋がっていくのではないか」と今後への期待を語った。
【映画『キックス』ストーリー】
カリフォルニア、リッチモンド。15歳の少年ブランドンは背が低く女子にもモテず、いつもボロボロのスニーカーを履いていてバカにされていた。だが、彼のそんな人生も転機を迎える…はずだった。
コツコツ貯めたお小遣いで最強のスニーカー“エアジョーダン1”を手に入れた! 仲間からは羨望の眼差しで見られ、女子からも気にかけられ、これで自分の人生もイケイケになると思っていたブランドン。
だが、そんな最高な時間の終わりは瞬時にやってきた。仲間と別れた帰り道、地元のチンピラに襲われスニーカーを盗られてしまう。ブチ切れたブランドンは、友だち二人を巻き込み、命よりも大切なスニーカーを奪い返しに行くことを決心するが…。
ギャング、麻薬、銃、そして仲間とスニーカー。カリフォルニアの太陽の下、少年が少しだけ男になる瞬間を描いた、心揺さぶる新時代のフッドムービーが、いま新たに誕生した。
商品情報
映画『キックス』
【監督・脚本】ジャスティン・ティッピング
【脚本】ジョシュア・ベアーン・ゴールデン
【キャスト】
ジャキング・ギロリー
クリストファー・ジョーダン・ウォーレス(『ノトーリアス・B.I.G.』)
クリストファー・メイヤー
コフィ・シリボー(『ストレイト・アウタ・コンプトン』『セッション』)
マハーシャラ・アリ(『ムーンライト』『アリータ:バトル・エンジェル』)
2016年 / アメリカ / 英語 / シネマスコープ / 87分 / R15+
【原題】KICKS
【提供】PARCO / SPACE SHOWER NETWORK / B’s INTERNATIONAL
【配給】SPACE SHOWER FILMS / PARCO
【宣伝】B’s INTERNATIONAL / REGENTS
12月1日(土)より、渋谷シネクイントにてロードショー ほか全国順次公開
©2016 FIGHT FOR FLIGHT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.