【2015年9月4日(金) 初日】
「アーバンギャルド PRESENTS 鬱フェス2015」は今年で2回目となる。 昨年同様、渋谷のTSUTAYA O-EASTで行われたが、今回は9月4日(金)、5日(土)の2日間に渡 って開催された。アーバンギャルドが「夏フェスになかなか呼ばれない!呼ばれても大抵はアウェーである グループを集め!そして夏フェス焼けが絶対似合わないであろうインドアなリスナーを集 め!新たなフェスの在り方を提唱した」とするコンセプチュアルな都市型インドア・フェスで ある。
初日の冒頭、最初の出演者が登場する前に、アーバンギャルドのメンバー4人が「鬱フェス公 式エンブレム」のパネルを掲げて上手のエクストラ・ステージに登場した。 この公式エンブレムのパネルは会場ロビーにも展示されており、正にタイムリーな時事ネタで、 アーバンギャルドのパロディ精神溢れる逸品。 公式エンブレムをデザインした松永天馬は、「原案は『U』を強調したデザインで、模倣や盗作 は断じてしていないことを誓って申し上げます。」と語っている。
そんな曰く付きのエンブレムを前に、浜崎容子が「鬱フェス宣言」を観客と共に斉唱した。 そして開催まで数々の話題をネットに提供し続けて来た「鬱フェス」が遂に開演した。
ムシケラトプス
トップバッターは、五人組パーティー・メタルロックバンドの“ムシケラトプス”。 クールで、ニヒルで、愉快で、おちゃめなニューロックヒーローを気取ったステージは、これ から始まる「鬱」パーティーに最適で、見事に観客を盛り下げて(温めて)次のエクストラ・ ステージの“ベッド・イン”へバトン・タッチした。 フェスはメイン・ステージとサブのエクストラ・ステージを交互に行き来し、ライブが途切れ ることが無いノンストップの演出となっている。
ベッド・イン
“ベッド・イン”は、90年代バブル期のオイニーを撒き散らす地下セクシーアイドルユニット で、そんじょそこらのロリアイドルに負けないと豊満で妖艶なエロ・ビームをまき散らして観 客を悩殺していた。 ここで松永天馬愛用の「岩谷の新生姜ペンライト」がこれほどの効果を発揮するとは、、、実 は想定内であった(笑)。
モーモールルギャバン
場所をメイン・ステージに戻して登場したのは、魂の極限ライブとポップ&ペーソス溢れる無 類の音楽性に中毒者続出の“モーモールルギャバン”。 一度聴いたらこびりついて離れない絶妙にファンクで、パンクで、ロマンティック、そして高 い催涙性を誇るメロディ・センスを持っている3ピース・バンドである。 彼らは夏フェス出演の常連バンドでありながらアーバンギャルドと何処か親和性が高いバンド のように思う。定番の「パンティー」コールは、初見の観客をも巻き込んで場内をトランス状態に陥らせた。
原田茶飯事
続いてのアーティストは、あっちにも行けるし、こっちにも行ける、全方位型シンガーソング ライター“原田茶飯事”。 ソフトロックやMPBの洒落っ気、茶目っ気を感じさせながらも口から半分魂の出たようなステ ージングを披露した。
神聖かまってちゃん
そして、ある意味、このフェスには欠かせないアーティスト“神聖かまってちゃん”の登場と なる。 “の子”による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリ ラ・ライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で 注目を集めた時代の申し子である。 「人間というものを穿り返してやろうかなと思いますよ、鬱フェスだか何だか知んね―けど、 こっちはガチでそんな感じだったから」と出演前に語っていた“の子”の「鬱が爆発」し、い つにもまして破壊的なパフォーマンスとなった。
大槻ケンヂ
次に登場するのは、昨年の筋肉少女帯から今回はソロ・ステージでの出演となった「生ける鬱 レジェンド」大槻ケンヂ(筋肉少女帯/特撮)である。
大槻ケンヂは、アーバンギャルドと共に今回のフェスを象徴するような精神的支柱のアーティ ストと呼べるのではないだろうか。 幾多の世の中の躁と鬱を経験して得て来た人生の悟りとユーモア、そして貫録を漂わせて弾き 語るさまは僕らの指針と言えるだろう。
アーバンギャルド
そして真打として登場したのが、「鬱フェス」のホスト・バンド“アーバンギャルド”。「トラウマテクノポップバンド」を標榜し、「病的にポップ。痛いほどガーリー。」をキャッチコピーに掲げる彼らが、「鬱」をキーワードに夏フェスとの語呂合わせでこのようなエンタメ祭りを開催したセンスに、まずは脱帽する。アーバンギャルドの歌詞は、世相を反映したネガティブな事象、時代の闇(病み)を切り取り絶望的な状況を伝えながら、曲はあくまでポップで、その対比が素晴らしい。その複雑な表現を的確なスキルによって極上のエンタメに昇華させており、この日のステージでもホスト・バンドとしての役割を十分全うしていた。
オーケンギャルド
最後に、初日の目玉となる一夜限りのスペシャル・ユニット“オーケンギャルド”。アーバンギャルドのステージに続き、彼らに呼びこまれた大槻ケンヂが再度ステージに登場してアーバンギャルドをバックに筋肉少女帯の楽曲を歌い出すと場内の鬱エネルギーのボルテージがさらに上がった。「踊るダメ人間」、浜崎容子がレコーディングに参加した「霊媒少女キャリー」、そして「釈迦」の3曲がお披露目された。
MCで大槻ケンヂが「高校生の時に日比谷野外音楽堂で観た伝説のインディーズ音楽イベント『天国注射の昼(てんごくちゅうしゃのよる)』が、強烈なトラウマとなり今の大槻ケ ンヂを作った。」と告白をし、「この『鬱フェス』も今日ここにいるお客さんに同じよう なトラウマを植え付ける素晴らしいイベントです。」と称えた。 大槻ケンヂのこの言葉を以て『鬱フェス』の初日は大成功と言えるだろう。 アンコールは、この日の出演アーティストを呼び込んで“オーケンギャルド”で筋肉少女 帯の「戦え!何を!?人生を!!」を全員で歌う。 ステージ上では、各アーティストが思い思いに弾け、そこかしこで意外な出演者同士の絡みが 実現した為に、観客も興奮のるつぼと化しカオスのまま終演となった。
※9/4撮影カメラマン:名鹿祥史
【2015年9月5日(土) 二日目】
DAOKO
前日は金曜日であった為に夜6時半からの開演であったが、2日目は昼の14時からの開演と なった。2日目のスタートは、新世代女子ラッパー・“DAOKO”。 スクリーンにデジタル・デザインを施し、PV、そしてイラストやグラフィックされたリリ ックを配したおそろしく凝った映像を投影させ、さらには照明とレーザーで何とも幻想的 でミステリアスな空間を作り出した。 生バンドを従えた“DAOKO”の可憐な歌声は、リアルとバーチャルの狭間で冴えわたり、神 秘的な新感覚のパフォーマンスとなった。
テンテンコ
続くエクストラ・ステージの出演は、新生アイドル研究会「BiS」の一員として活躍し、解 散後は事務所と契約を結ばずフリーランスで活動中の“テンテンコ”。 自作のトラックに歌を載せる自由気ままなライブ・スタイルは、何にも縛られない今の立 場のライフ・スタイルとシンクロして、微笑ましくも魅力あるステージとなった。
ザ・キャプテンズ”
メイン・ステージの2番目は、昨年に続いて2年連続の出演となった“ザ・キャプテンズ”。 今や絶滅危惧種となった国産ロック=GSを現代に受け継ぐ、最後のグループサウンズで ある。 失神者続出を演出する計算され尽くしたステージングは、ライブで培った実力で完全無敵 のパフォーマンスとなった。
町あかり
次にエクストラ・ステージ登場は、本年メジャー・デビューした平成生まれにして70年代、 80年代の歌謡曲にお熱の昭和なシンガーソングライター“町あかり”。 何と出演時間の全て(おおよそ15分間)を「もぐらたたきのような人」1曲に費やし、 「もぐらたたきのような人~♪、もぐらたたきのような人~♪」とサビをこれでもかと繰 り返し、途中からはもぐらの着ぐるみもいるダンサーたちに混ざり、無限ループ地獄(笑) を場内に作り出し驚きのステージを見せた。
新垣隆&吉田隆一
そして、このフェス一番の異色の出演アーティストは、JAZZ界から“新垣隆&吉田隆一”。アーバンギャルドとは縁あって、今回の「鬱フェス2015」を打診されたとのこと。ある意味アウェーの会場でありながら、確かな演奏技術と選曲の妙で聴衆を魅了したのはさすがであった。そして、2日目のアーバンギャルドとのコラボ企画第1弾は、その新垣隆&吉田隆一がゲスト・ボーカルにアーバンギャルドの浜崎容子を迎えてアーバンギャルドの楽曲「ゴース トライター」(ALBUM『メンタルヘルズ』収録)を演奏したことである。 そちらのライブ動画は、こちらで是非チェックしてもらいたい。
ある種、固定され偏ったイメージのアーバンギャルドではあるが、秘めた音楽家としての 力で浜崎容子は、2人のジャズメンと対等に渡り合い素晴らしいコラボとなった。
サカモト教授
そして次のステージも昨年に続いて2年連続の出演となった“サカモト教授”。 ダースベイダーのような仮面を被り頭にファミコンを乗せ、挿したファミコンカセット のゲーム音楽を忠実に再現するというスタイルが観客に面白がられ会場のノリを良く した。
PASSPO☆
メイン・ステージに場所を移して登場したのは、女性グループ史上初のオリコン首位デビ ューを果たした“旅”をテーマにしたCAガールズロックユニット“PASSPO☆”。 メンバーを〝クルー”、ライブを〝フライト”、ファンを〝パッセンジャー”と呼び、本 格的なROCKサウンドが熱狂的に支持されている。 キュートな〝クルー”による万華鏡・渡り鳥とも表される変幻自在なダンス・フォーメ ーションが秀逸であった。
ステージ半ばで、アーバンギャルドが楽曲提供をした「Shang Shang シャンデリア」、「ピ ンクのパラシュート」、「サクラ小町」が3曲立て続けに披露された。 2日目のアーバンギャルドとのコラボ企画第2弾は、その「サクラ小町」を作曲したアー バンギャルドの瀬々信のギター参加である。 機長の帽子を被った粋な計らいで、クルーの“PASSPO☆”メンバーのダンス・パフォー マンスに対して、いつになくアクティブに激しく動いていた。
NoGoD
30分ほどの休憩を挟んで後半最初に登場したのは、ハードロックな、ヘヴィメタルバン ド“NoGoD”。 フロントマンを務める団長の特異なキャラクターが生み出す独自の世界観と、ハイ・クオ リティーな音楽性を併せ持った個性が光る実力派である。 何でもありの“鬱フェス”にあって、ロックバンドとしての勢いと安定したステージング で、長時間のフェス中盤を見事に締めて見せた。 ビジュアル・バンドでありながら、その変幻自在の立ち位置は、アーバンギャルドとも、 しっくり合うようで、昨年の名古屋での2マン・ライブ以来のアーバンギャルドと2度目 の遭遇となった。
レ・ ロマネスク
場所をエクストラ・ステージに移して次に登場したのは、愛と平和トレビアーン!“レ・ ロマネスク”。 フランスで結成され、ヨーロッパ各国で英語及びフランス語でのライブ活動中とのことだが、 まずそのステージに触れてしまったら、しばらく頭にこびりついて離れないだろうインパクト がある。とにかく、そのメイク・扮装が衝撃的に笑激的。 凸凹コンビの男女ポップデュオが、歌謡曲チックな曲に載せてエスプリの効いた歌詞を歌う様 は余りに面白過ぎだ。
人間椅子
さて、いよいよ終盤となり、メイン・ステージに登場したのは、確かなテクニックに裏打ちさ れたライブパフォーマンスや、ハードロックを基調とした独自のサウンド、文学的な歌詞など で、音楽ファンの厚い支持を集め続けているロック界の重鎮であり異端のバンド“人間椅子”。 スリーピース・バンドでありながら重厚なサウンドを奏でる圧巻のステージは必見であり、有 無を言わさず捻じ伏せられた感は爽快でもあった。 白塗りの坊主に落ち武者、いかついトラックの運ちゃんと行った近寄り難いメンバーの容姿で ありながら、このような趣旨のイベント「鬱フェス」に参加するフットワークの軽さとステー ジで見せた心底ライブを楽しんでいる表情に大人の余裕を感じた。
南波志帆
エクストラ・ステージの最後の出演アーティストは、“マジック・ヴォイス”と表現される、ゆ るふわ、かつフレッシュで透明感ある歌声を武器に、ソロ、ユニットなど、さまざまなかたち で活躍中の注目女性シンガー“南波志帆”。 アーバンギャルドとはかつてライブハウスでの2マン・ライブを行い、一時は何度も対バ ンを行っている。 デビュー年齢が若かったのか、この日のステージでも依然とキュートで初々しい魅力に満 ち溢れたステージを見せてくれた。
アーバンギャルド
2日間に渡った「アーバンギャルド PRESENTS 鬱フェス2015」も遂にトリを務めるアーバ ンギャルドのステージで最後を迎えた。フェスを意識した楽曲ラインナップのセット・リストであったが、それでも今のアーバン ギャルドの懐の深さを感じさせる内容であった。 CDデビューから7年目、メジャー・デビューから4年目、紆余曲折、またはアップダウン を繰り返しながら、また新たな挑戦をする。 その姿勢と覚悟が「鬱フェス」というイベント開催に垣間見られる。
フェスを意識した楽曲ラインナップのセット・リストであったが、それでも今のアーバン ギャルドの懐の深さを感じさせる内容であった。 CDデビューから7年目、メジャー・デビューから4年目、紆余曲折、またはアップダウン を繰り返しながら、また新たな挑戦をする。 その姿勢と覚悟が「鬱フェス」というイベント開催に垣間見られる。
本編が終了して、アンコールに再び登場したアーバンギャルドからさらなる今後の展望(告 知)発表があった。 12月9日、1年半振りのニュー・アルバム「昭和九十年」がKADOKAWAメディアファクト リーより発売されることと、秋の全国ツアー「アーバンギャルド全国ツアー2015 『昭和九 十年』」に続けて、新たに東京と大阪の2箇所で『アーバンギャルド 2015 XMAS SPECIAL HALL LIVE 「昭和九十年十二月」』が開催されることが発表された。
それらの告知の後に、アンコール曲「都会のアリス」を歌い、本日の出演アーティストを アーバンギャルドがステージに呼び込み、昨年のアンコールでも出演アーティスト全員で 歌った「鬱フェス」版の「サライ」とでも呼ぶべきアーバンギャルドの「ももいろクロニ クル」(ALBUM『メンタルヘルズ』収録)で大団円を迎えた。 「君の病気は治らない、それでも僕らは生きて行く♪ 君の病気は治らない、それでも僕 らは生きて行く♪」と繰り返し歌われる言葉が、この「鬱フェス」の真のテーマであり、 誰もが悩みを抱え、老若男女にストレスがある現代、学校での、会社での、社会での疲れ を癒し、少しばかりの元気を与えたいとの想いが感じられた。 この歌を出演アーティストと観客が口にする時、そこにはみんなの笑顔が輝いていた。
※9/5撮影カメラマン:yu-yukko
Live Info.
■アーバンギャルド全国ツアー2015 「昭和九十年」
2015年10月31日(土)広島CAVE-BE 17:30/18:00
2015年11月 1日(日)福岡DRUM SON 17:30/18:00
2015年11月 7日(土)OSAKA RUIDO 17:30/18:00
2015年11月 8日(日)名古屋ell.FITS ALL 17:30/18:00
2015年11月14日(土)札幌Sound Lab mole 17:30/18:00
2015年11月21日(土)仙台HooK 17:30/18:00
2015年11月29日(日)代官山UNIT 17:15/18:00
【チケット前売料金】 ¥3,800(Drink代別)
【プレイガイド一般発売】9/19(土)10:00~
■アーバンギャルド 2015 XMAS SPECIAL HALL LIVE 「昭和九十年十二月」
2015年12月17日(木)大阪 BIGCAT 18:30/19:00
2015年12月22日(火)渋谷・大和田さくらホール 17:30/18:30
【チケット料金】全席指定 ¥4,999.(BIGCATのみ・Drink代別)
【ファンクラブ抽選先行発売】9/ 6(日)12:00~ 9/16(水)23:59
【ホームページ抽選先行発売】9/26(土)12:00~10/ 4(日)23:59
【プレイガイド一般発売】11/ 7(土)10:00~