昨年8月にスタートしたガールズロックの祭典、GIRLS ROCK SPLASH!!。その第5回目となるGIRLS ROCK SPLASH!! 2015 梅雨が、6月6日shibuya eggmanにて開催された。今回の出演バンドは、LoVendoЯ、chu’s day、たんこぶちん、ЯeaL、Hysteric Lolita、dollsの6組。次世代ガールズロックシーンを引っ張っていく、若き精鋭たちの競演を一目見ようと大勢の観客が会場に詰め寄せた。また、転換中にはMCのハグてっぺい氏と共にまったりトークも展開。そんな大盛況のイベントの模様をレポート。
1.dolls
イベントのトップバッターを飾ったのは、名古屋発の3ピースバンド、dolls。SEが鳴り始めるやいなや、早くも客席からは力強い掛け声が。後の転換トークでは雨女バンドだと話していたが、“梅雨”というイベントタイトルを吹き飛ばす勢いで、ライブはスタートした。
「GIRLS ROCK SPLASH!!、準備できてるかぁ~!?」
Eveのちょっとセクシーな煽りから突入したのは、1曲目『Alice』。EveとMayuが交互にボーカルをとり、会場を盛り上げていく。そして、久宝留理子のカバー『男』では、“だいたいいつも男なんて、自分勝手で頭に来る”という強気な女の子の想いを観客を煽るように熱唱。観客も負けじと声を張りながら、繰り返しジャンプ!そんな姿を前に、メンバーも「みんないいねぇ!」と嬉しそうに会場を見渡していた。
短いMCを挟んだ後は、ドラマティックかつ疾走感溢れる曲展開が魅力の『嘘吐きSOMEDAY』へ。サビでの解放感が心地よいナンバー『トビラ』では、ファンも一緒になって“強く!”(メンバー)“強く!”(ファン)と歌う場面もあり、名古屋を拠点にしているとは思えないほどの一体感を見事に創り上げていた。
6月17日には、デビューミニアルバムをリリースする彼女達。MCでも、「私の中で、ぶっちゃけ1番キテいるアルバムです(笑)。ここにいるみんなにdollsのロックを感じてほしいから、よろしくね!」(Eve)と、笑顔でコメント。アルバム収録曲の中から、Mr.Bigのエリック・マーティンが提供したという、重低音の効いたロックナンバー『THE BEST YEARS OF OUR LIVES』、Mr.Bigの名曲『To Be With You』のカバーを、ガールズバンドらしい力強さとポップさを融合したスタイルで披露すると、最後には10代の少女らしい無邪気な笑顔に戻り、「ありがとうございました!」と叫んだ。
2.Hysteric Lolita
ゴシックロリータ系ファッションに対する先入観を華麗にかわして、予想以上に多彩な表情で魅せてくれたのが彼女たち。1曲目から、アーティスト写真の重々しいイメージとはひと味違う、シンセとエッジの効いたロックサウンドが融合した爽快な『Dual Anima』が飛び出し、そのギャップに圧倒。そのまま、止まることなく『絶望のスパイラル』へとつなぐと、ジェットコースターに乗っているような音の波が、観客を巻き込んで会場を揺らしていった。
MCでは、7月29日に「音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015 ハッピーサマーKAMAKURA」に出演することが決定したことを報告。ちょっと意外だったが、Basil曰く、夏が大好きなメンバー“サマーガール”が多いという彼女たちにとって、この決定はすごく嬉しかったようで、観客と一緒にその喜びを共有していた。
また、Raniの情感豊かなボーカルから静かに始まった『誓』では、切なさと熱さを織り交ぜたサウンドで、その確かな実力を見せつける一幕も。Noaのパワフルかつ繊細なギターソロも加わり、観客の視線はステージに釘づけとなった。さらに、真っ赤に照らされたステージで、『DISTRESS』を披露。深く抉り出す攻撃的なサウンドとRaniの体の奥から絞り出すような歌声が心を突き刺した。
何でもアリの“原宿系ファッション”のように、さまざまな表情を見せながら展開していくライヴ。後半戦は、「せーの!1!2!3!4!」と観客と一緒にカウントして、ポップロックチューン『Reversi』で、みんなでタオルを回しながら大騒ぎ!ラストは、バンドのテーマ曲でもあるヘヴィ―ロックチューン『HYSTERIC』で暴れ倒し、5人は嵐のごとくステージを去った。
3.ЯeaL
3番目、勇ましく制服姿で登場したのは、ЯeaL。可愛らしいヴィジュアルからアイドル視されがちだが、実際は男前な一面を持つ実力派バンドだ。
「盛り上がってるかーい!?」大阪を拠点に活動している女子高生バンドらしい、ボーカルRyokoのハジけるような煽りからライブスタート。1曲目は、まだ幼さを残す透明感のある高音ボイスと、風を切って走るような疾走感が心地よいロックチューン『セナカアワセ』。どこまでも高みへと昇っていく、まさに今の彼女達の勢いを感じさせる1曲に、会場のヴォルテージもどんどん高まっていく。続く、『Shooting Star』では、「渋谷のみなさん歌えますか!?」と煽り、観客も大きな声で4人の期待に応えた。
SOLD OUTということで、超満員の会場だったが、GIRLS ROCK SPLASH!!初登場とは思えないほど堂々とライヴを展開する彼女たち。それはMCでも変わらず、大阪独自の軽快なトークで観客は大盛り上がり。Ryokoが今朝前髪を切りすぎてしまったことをネタにして、「今日最強やから何も怖くないし!」と自分に言い聞かせるように強気に叫ぶと、キラキラとした打ち込みサウンドが心地よい『H.O.L』へ。女の子の想いを切々と綴った『反対言葉』や、ハッピー感満載のダンスロックチューン『Jumping More』を立て続けに披露し、ポテンシャルの高さを見せつけた。しかし、そんな無邪気で無敵な彼女たちも、ラストのMCでは「今すぐにうちらを好きになってとは言いません。でも、忘れないでください。そしたらいつか必ず大きくなって会いに行きます!」と素直な想いを吐露。ラストナンバー『HOME』を通して、いろんな人に支えられてここまでやってこれたことへの感謝の気持ち、そして“次は僕が支えるから”という頼もしい言葉を届け、観客の心をガッツリと掴んだ。
4.たんこぶちん
観客の“たんこぶちん”コールに乗って、メンバーが登場。イケメンギタリストYURIの奏でる印象的なギターリフから、バンドの自己紹介ソング『We are the Girls Band!!!!!』が始まった。MADOKAの「たんこぶちんが大好きだー!」の声を受けて、観客も1つになって愛を叫ぶ様子は、まるでワンマンライヴのよう。それほどまでに熱い一体感で、会場はのっけから大きく揺れた。
キャッチーで前向きな応援歌『Alright!!』を笑顔で歌い上げた後は、卒業の切ない思い出を、たんこぶちんらしいリアルな言葉で爽やかに描き出した『走れメロディー』へ。自然体で音楽を楽しんでいる彼女たちの姿に、観ているこちらまで笑顔になる。そんなライヴが展開されていく。また、HONOKAによるド迫力のドラムから突如始まったのは、愛嬌のある笑顔が魅力のたんこぶちんにしては意外な、ロックバンドとしての鋭さや激しさを見せつけた『トゲササル』。「みんなで歌いましょう!」と突入した『We Gonna ROCK』では、事前に観客も一緒になって練習したことで、大合唱に!加速し続けるサウンド、歪んだギターソロ……と興奮は高まるばかりだった。
さらに、軽快な手拍子から、個性的な歌詞が耳に残る『シアワセタランチュラ』で弾け飛ぶと、みんなでタオルを豪快に回し、クライマックス!最後に、オープニングを飾った『We are the Girls Band!!!!!』を再度披露すると、メンバーが順に1フレーズずつ歌い繋ぎ、1人1人の存在もしっかりと観客の目に焼き付けた。
5.Chu’s day.
今年4月に行われたGIRLS ROCK SPLASH!! 2015 SPRING以来、2度目の登場となったガールズボーカルロックバンドChu’s day.。デビュー前にも関わらず、圧倒的な存在感で歌い始めたのは、『COUNTDOWN!』。ゆったりとしたバンドサウンドに乗って、時折腕を広げながら歌うERIの心地よさそうな笑顔が、観客の心を晴れやかにしていく。
「盛り上がっていこうぜー!」そう叫ぶと、ポップロックチューン『愛の光』へ。ERIのソウルフルな歌声に導かれるように、チューザー(Chu’s day.ファンの名称)も一緒になって大合唱し、超満員のeggmanは温かな一体感に包まれた。
演奏している時のワイルドでパワフルな表情に反して、MCではちょっぴりおどけた表情も見せるメンバーたち。だが、「みんなの本気を見せてほしいと思います!」と『Cycling』に突入すると、再びかっこいいロックミュージシャンの顔に。ガールズロックイベントの中で、唯一男性メンバー(KEITA)がいるChu’s day.だが、この曲でも彼のドラムがグイグイと背中を押して、坂道を自転車で駆け降りるような疾走感を与えていた。
また、リンドバーグのカバー『もっと愛しあいましょ』では、たくさんの観客を巻き込んでキュートにダンス!MCで、8月12日に全国デビューアルバム『Have a nice Chu’s day.』をリリースすることや、アルバムを引っ提げたワンマンライヴを7月27日代官山NOMADにて開催することを発表すると、後半戦は『ねぇ』からさらにヒートアップ!クールでメロディアスなナンバー『Rocking shoes』まで、全力で駆け抜けた。
6.LoVendoЯ
イベントの大トリを飾ったのは、元モーニング娘。の田中れいな率いるLoVendoЯ。おびただしい数のサイリウムが瞬く中、『UNDERGROUNDER』(SE)と共に登場したメンバーたちは、歌謡曲ちっくなメロディーが心地良いロックチューン『この世に真実の愛が一つだけあるなら』を披露。魚住有希・宮澤茉凜が繰り広げる、テクニカルかつスリリングなギタープレイ。そこに田中れいな・岡田万里奈によるツインボーカルが、力強くも美しいハーモニーを重ね、観客を魅了していく。LoVendoЯと言えば、観客との心の距離が近いバンドという印象が強いが、この日は、大きな会場でライヴすることも多い彼女たちのパフォーマンスを近距離で感じられるレアな機会とあって、観客も凄まじい勢いで拳を突き上げていた。
圧巻のライヴパフォーマンスに加えて、機材トラブルがあっても動じることなくトークを展開する、臨機応変さにも関心させられたこの日のライヴ。しかし、意外にもまだインディーズとして活動中で、7月1日に念願のメジャーデビューが決定しているという。そして、そんなデビューシングルの中から、ロックミュージシャン中島卓偉が制作したという新曲『いいんじゃない?』をお披露目。デビューを祝うようにより一層激しく波打つサイリウムに、メンバーたちの表情も和らいだ。
「みなさん、まだまだいけますか!?」(岡田万里奈)ライヴ後半戦は、繰り返される「wowwowwow!」の声が熱狂へと導いた『Stonez!!』から再スタート。田中れいなが「みんな良い感じ!」と叫ぶと、観客の声もどんどん大きくなっていく。そのまま、魚住有希作曲のクールなロックチューン『ホントノキモチ』、エッジの効いた演奏と突き抜ける高音ヴォイスが胸を打つ『イクジナシ』で畳みかけた。
MC後、「次の曲が最後になります!」と言い切る田中れいなの一声に、「えええええええええええええええええええええええええええ!」と大ブーイングが起きたのも、彼女たちにとっては嬉しい反応だったことだろう。ラストに、再びデビューシングルから、等身大の応援ソング『普通の私 ガンバレ!』を熱唱し、イベントは惜しまれながらも大盛況で幕を降ろした。
次回のGIRLS ROCK SPLASH!!は、8月8日 にZepp Tokyo、8月29日には初の大阪での開催が決まっている。
TEXT:斉藤 碧
PHOTO:: 飯田可奈子、大久保恵海、野澤まな、星川歩未、ヨアン・クロション