9mm Parabellum Bullet
10th Anniversary Live「O」
2月7日(金)日本武道館
text:やまだともこ/Rooftop編集長
日本武道館1日目:快晴
9mm Parabellum Bulletの結成10周年を記念したライブが2日に渡って日本武道館で開催された。今回のライブは10th Anniversary Live「O」と「E」に分けられ、これまでリリースされた作品から「1曲もかぶりたくない」という中村和彦(Bass)のアイディアにより(ライブ中のMCより)、7日は「Odd=奇数」、8日は「Even=偶数」に収録された曲のみを演奏するという試みで行なわれた。
7日の初日は19時を10分ほどまわったところで1stアルバム 『Termination』の1曲目に収録されている『Psychopolis』で勢いよく始まった。演奏の途中で特効の爆発音が鳴り響いて会場は一気にヒートアップ!! 2階席の揺れもすごいし、熱気がどんどん立ちこめていて熱い。ホントに熱い、ここはまさにヒートアイランドだ。そんな状態になることを見透かしていたかのように、3曲目には『Heat-Island』を披露。続けて、強靱なリズム隊と2人のギターが絡み合い、4人の豪快なアンサンブルで『荒地』を演奏後、菅原卓郎(Vo.&Gt.)が「俺たちの“10th Anniversary Live「O」”にようこそ!今日は奇数の(曲順の曲だけを演奏する)日です。ここにいる人たちは、1、3、5、7…たまんねぇ! っていう人たちだと思いますけど(笑)、俺たちこそが武道館を心待ちにしていました。次にやる曲も当然奇数の曲です」と、笑いを交えたMCで会場の空気を和らげ、次の『シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜』では、キャッチーなメロディーに裏打ちのリズム、そして中村の指弾きは冴え、滝 善充(Gt)はステージを走り回ながらギターをかき鳴らし、会場を大いに沸かす。白のレーザーが客席のあちこちを照らす中で歌われた『Trigger』、そして会場が手拍子に包まれた『Starlight』では日本武道館の天井には星のように散りばめられた照明が輝き、とても幻想的な雰囲気が作り出されている。
ここで、「そろそろ新曲をば。本邦初公開しようと思うがよろしいか」という菅原の問いかけに会場は全力で答え、武道館のために用意された『オマツリサワギニ』が披露された。昭和歌謡テイストに、ところどころ挟まれる祭囃子を彷彿させるギターのメロディー、会場は初めて聴く人たちばかりでありながら、すでに曲を聴きながらお祭り騒ぎが起こっていた。演奏後、「『オマツリサワギニ』は今終わっちゃったけど、お祭り騒ぎはまだまだこれからだから、日本武道館を興奮のるつぼにしましょう」という菅原のMCから『Wanderland』に続く。緑色のレーザーが会場中を照らす中、かみじょうちひろ(Drums)の超人的なスティック裁きに目を奪われる。「今すぐ叫べるかー!」というMCから『Scream For The Future』、そのまま『どうにもとまらない』では会場一体となって、「もうどうにもとまらない〜」の大合唱。さらに『光の雨が降る夜に』では菅原&滝が強烈なギターのユニゾンを会場に突き刺し、次の『Caution!!』まで一気に演奏された。ここでかみじょうだけがステージに残り、スーパードラムテクニックを披露。あまりにも動きが超人すぎて、千手観音のようにも見えてくるぐらい、魅了されるというよりは、むしろドラムを叩くかみじょうに見とれる。ドラムソロはかみじょうが最後に銅鑼を打ち鳴らして終了したが、その後、菅原、滝、中村にもなんと! ドラムセットが用意され、4人でのドラムセッション!「日本武道館のステージに立ちたいと思っている日本全国のドラマーのみなさんに謝りたいと思います」と演奏後に菅原が言っていたが、特別なワンマンでしか観られない貴重なステージだった。
ライブは中盤戦に突入し、この時期にぴったりの『銀世界』を。ミラーボールが会場を照らし、滝の流麗なギターのメロディーが会場を包み込む。さらに昨年リリースされた5thアルバム『Dawning』の中でも名曲と名高い『コスモス』を演奏し、その次の『キャンドルの灯を』では中村がアップライトベースに持ちかえて重厚なサウンドで聴かせた。続く『カモメ』は、バイオリン4名とヴィオラ2名とチェロ2名の計8名が演奏に加わり、ライブでは初となるストリングスバージョンで披露。より大きなスケールで演奏されたこの曲に、結成から10周年が経った彼らが多くのことを経験しながら歩んできた軌跡と、バンドの貫禄が感じられた。
「この10年の間、出会ってくれて、発見してくれてありがとうございます」という菅原のMCの後、7月にベストアルバムが発売されることが発表され、「10年11年12年と1歩ずつ進んでいきます。付き合ってくれますかー!」と菅原が言うと会場は大きな歓声で応え、「クライマックスだー!いけるかー!」という言葉から『The Lightning』へ。「明日を向いて歩こうか あきらめるのは飽きたのさ」という歌詞が10年という彼らが歩いてきた時間とリンクすると思ったが考えすぎだろうか。『新しい光』では会場に再び大合唱が起こり、『Beautiful Target』『Black Market Blues』とフィナーレに向けて会場のボルテージはどんどん上がる。そして、ラスト『The Silence』では赤のレーザーが会場を照らす中、銀テープが会場前方から噴射し、まさに興奮のるつぼと化し、2時間に及ぶライブは大団円を迎えた。演奏後、ステージの端から端までメンバーが走り回り、隅々まで丁寧におじぎをしてステージを降りていった。
バンドは結成から今年で10年を迎え、これだけたくさんの人が節目のこのタイミングでお祝いに駆けつけ、盛大に11年目の第一歩を踏み込んだことだろう。このライブを観て、これからも彼らが止まることなく活発に活動していくことが想像出来たし、演奏された新曲もそうだが創作意欲が常に高い状態にあることも感じた。きっとこれからも私たちをワクワクさせてくれる活動をしてくれるに違いない。そんなことを終始感じさせる素晴らしいライブだった。
ただ、あんなにドラマチックな『銀世界』が演奏されたという翌日に、10年に1度と言われる大雪までもが彼らの10周年をお祝いするとは思ってもいなかった…。
9mm Parabellum Bullet
10th Anniversary Live「E」
2月8日(土)日本武道館
text:椎名宗之
日本武道館2日目:大雪
昨年11月、なんばHatchで開催された怒髪天の自主企画『DOHATSUTEN 三十路(ミソジ)まえ“七色の虹をかける野郎ども”』に9mmがゲスト出演した際、菅原卓郎は怒髪天のファンに向けてこう言い放った。
「来年は俺たちも怒髪天の後に武道館やります。おこがましく2日間も。怒髪天のライブでめいっぱい盛り上がって下さい。俺たちが後片付けするので、2日あったら跡形もなく壊します!」
節目となる自身のイベント開催の折には高確率で極度の悪天候を呼び起こすことで知られる怒髪天だが、結成30周年の武道館公演当日は目を疑うほどの快晴。その理由がやっと分かった。菅原の宣言通り、9mmは怒髪天のぶんまで猛吹雪を買って出て“後片付け”をしたのである。
単独としては5年ぶりとなる9mmの武道館公演2days、2日目は“10th Anniversary Live「E」”(Even=偶数)。当日、東京都心では積雪が27cmにも達するという45年ぶりの記録的大雪。想定外の大寒波にまで10周年をお祝いされるのだから、なんとも悪運の強いバンドだ。
客電が落ち、定番のオープニングSE『Digital Hardcore』が爆音でこだましたのは開演時刻から4分を過ぎた頃。威風堂々、ガッツポーズをしながらステージに現れるメンバーと、4人を大歓声で迎える1万人のオーディエンス。観る側も演る側も情感の沸点が最高潮に達したタイミングで繰り出される『Discommunication』。これで盛り上がらぬわけがなく、日本武道の大殿堂は瞬時にしてダンスフロアへと一変。中村のストラップがいきなり外れるアクシデントがあったものの、アンサンブルも音響もとても安定している。バンドもPAスタッフも、前日の“10th Anniversary Live「O」”で得た経験が活かされていると見た。
続く『Survive』、『Grasshopper』、『Vampiregirl』(菅原が「レッツ・ダンス!」と煽るや、客席が凄まじく揺れた!)と矢継ぎ早に高速ナンバーをたたき出し、場内を十二分に沸き返らせた後にMC。
「みんな! ホントに、ホントに、よく来たな! 雪で来れなかった人たちのぶんまで楽しんで下さい! 来れなかった人たちが空耳するくらいの演奏を聴かせます!」
猛吹雪と積雪のなか武道館まで足を運んだ人たち、惜しくも武道館行きを断念せざるを得なかった人たち両方の思いを汲み取るという、菅原の優しさが伝わる言葉だった。
その菅原は、終始歌を丁寧に唄っているのが印象に残った。彼の歌と存在感が巨樹のように揺るぎなく中央に構えているからこそ、9mmのライブに不可欠な滝や中村の自由奔放なパフォーマンスが映える。そして、フロントのやんちゃな3人を背後から見守りつつ、飄々とした佇まいで瞬殺のスティックさばきを魅せるかみじょうの包容力。ユニークで愛らしい、強烈な個性が揃ったバンドだとつくづく感じる。誰一人欠けてもダメ、絶対の代替不可、絶妙のバランス。その度合いとバンドの一体感がグッと増したことを実感したステージだったとも言える。
それはたとえば、5年前にここ武道館で新曲として披露された『Cold Edge』からも窺えた。硬質かつ重厚でいて抜けの良い音の塊からは着実な進化と深化が見て取れた。
前日の『オマツリサワギニ』に続いてこの日披露された新曲は『EQ』。切り刻むような性急なリズムに乗せてサイケ風な音色のギターが終始鳴り響くこの曲は、音質の補正(平均化)や音像の明確化などに使用する音響機器のイコライザーが由来。菅原によれば、「自分の思っていることと身の回りに起きていることが違うなら、それを正していこう、動じずに構えていこう」というメッセージが込められているという。
前日同様、終演後にこの新曲のライブ音源が来場者全員に配布されたが、それもファンを大切に思う9mmらしい粋な計らいだった。
シングルのカップリング曲にも名曲が多い9mmだけに、『ラストラウンド』、『エレヴェーターに乗って』、『Bone To Love You』と立て続けに披露されたパートでは彼らが完膚無きまでの楽曲至上主義者であることを軽やかに証明してみせた。
それが奇数順の曲であれ偶数順の曲であれ、彼らのレパートリーが優れたポップ・ミュージックの金太郎飴状態であることに変わりはない。「雪とは真逆の曲を…」と紹介された『Wild West Mustang』のようなウエスタン調のインストですら、9mm節としか言いようのない“らしさ”が詰まっているのだ。9mm最大の魅力はやはり、その楽曲のクオリティの高さに尽きると改めて感じる。
それに加えて、観る者を惹き付けてやまないあのパフォーマンスだ。『Finder』ではピンクの照明が当たるなか、滝がステージの上手から下手までなまめかしく踊りながら走る。まさに視覚的にも魅せるギタリスト=滝の独壇場だ。要所要所でブルース・フィーリングに溢れたスロー・テンポのアレンジが施されていたのは、手拍子とコール&レスポンスで沸きに沸いた『We are Innocent』と『Termination』の後の少しばかりのクールダウン的な意味もあったのかもしれない。
かみじょうの怒濤のドラム・ソロの後は、フロントの3人までがドラムセットで本気で叩く4者4様のドラム大合奏。こうした大舞台ならではのユニークな趣向である。スティックで手拍子を煽り、場内の一体感がさらに増す。
「みんな、いいドラマーだな!」とオーディエンスを称え、4人のみならず1万人がリズム奏者と化す武道館。改めて場内を見渡すと、どのエリアも地上3階の最後列までびっしりと埋まっているのだから壮観だ。
だが、9mmにとって会場の大小はあまり関係ないのだろう。一期一会のライブを、その日限りのオーディエンスと一緒に最高のものにする。ただそれだけが大事なのではないか。そのためのショーアップ精神を10年間地道に磨き続けてきたからこそ、武道館のような晴れ舞台でも至高のパフォーマンスを堂々と披露できるのだと思う。
後半戦は『Monday』、『Keyword』で畳み掛けるようにオーディエンスをぐいぐいと引き込み、鮮烈な真紅の照明が楽曲のスケール感を増幅させた「命のゼンマイ」は大きな見せ場のひとつだった。
白眉は前日同様に弦楽器隊を迎えて流麗なアレンジが施された『黒い森の旅人』。楽曲本来の荘厳さをさらに際立たせた実に見事なコラボレーションで、思わず息を呑んだ。前日の『カモメ』も然りだが、近年の9mmの強みはこうしたエモーショナルな大作を生み出し、それを体現する力を兼ね備えたことだ。また、そうした曲をライブの適宜な位置に組み込んでも嫌みに聴こえないのもいい。いつかこうした弦楽器隊とのセッション・ライブを丸々1本観たいものである。
「長いようで短い10年間に、俺たちと出会ってくれてどうもありがとう! みんなが帰り道に凍えないように燃やしていこう! 行けるか!? 10周年も行けるか!?」
そんな菅原の愛情に溢れた言葉が口火となり、ここからは一撃必殺のキラー・チューンをこれでもか!と連射。バンドもオーディエンスも完全燃焼すべく、フルスロットルでレッドゾーンを振り切る勢いだ。
『ハートに火をつけて』と『Zero Gravity』を立て続けに投下したかと思えば、間髪入れずに「まだまだーッ!」と『marvelous』。滝と中村が左右の花道にそれぞれ駆け出し、「おいおい、こんなもんじゃないろ?」と言わんばかりに大きなアクションで弦をかき鳴らす。そこへとどめを刺すように『Talking Machine』なのだ。もう反則である。興奮の渦なんていうありきたりの言葉では到底追いつかない、尋常ならざる熱気と昂揚感が場内を包み込む。滝と中村はアンプのキャビネットに上りヘドバン、演奏終了とともに揃ってジャンプするなど、最後まで飽きさせない。
特効で金のテープがドッと吹雪いた『Punishment』ではきらびやかな照明がレーザー・ビームのように乱反射し、バンドもありったけの力を振り絞るように渾身の爆音を轟かせる。菅原、滝、中村が揃い踏みでポーズをキメるメタル的様式美も微笑ましい。
気がつけば開演から2時間強。弛緩するところなく9mmの魅力を存分に堪能できた至福の時間だった。
「俺たちは幸せ者だよ! 9mmの音楽がみんなの一部分になってくれたら嬉しい!」と菅原は語っていたが、今さら何を言う。9mmの音楽はもうとっくの昔からぼくらの身体に不可欠な要素なんだし、そんな音楽と出会えたぼくらのほうこそ幸せ者だ。
この先の10年も、これまでの10年以上に未来の幸せ者をたくさん巻き込みながら9mmは全力疾走を続けていく。帰路、未だ降りしきる“銀世界”を見ながらそんなことを強く確信した。
SET LIST
◆2月7日
01. Psychopolis
02. Answer And Answer
03. Heat-Island
04. 荒地
05. シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜
06. Trigger
07. Caucasus
08. Starlight
09. オマツリサワギニ
10. Wanderland
11. Supernova
12. Sundome
13. Scream For The Future
14. どうにもとまらない
15. 光の雨が降る夜に
16. Caution!!
17. 銀世界
18. コスモス
19. キャンドルの灯を
20. カモメ
21. The Lightning
22. 新しい光23. Beautiful Target
24. Black Market Blues
25. The Silence
◆2月8日
01. Discommunication
02. Survive
03. Grasshopper
04. Vampiregirl
05. Cold Edge
06. Sleepwalk
07. Scarlet Shoes
08. 3031
09. EQ
10. ラストラウンド
11. エレヴェーターに乗って
12. Bone To Love You
13. Wild West Mustang
14. We are Innocent
15. Termination
16. Finder
17. Monday
18. Keyword
19. 命のゼンマイ
20. 黒い森の旅人
21. ハートに火をつけて
22. Zero Gravity
23. marvelous
24. Talking Machine
25. Punishment
商品情報
9mm Parabellum Bullet『act O』 &『act E』
2014年5月7日発売!
6th LIVE DVD『act O』<通常盤>
UPBH-20119 / 5,000yen(税抜)<1DVD(本編) / 2D(CDサイズ)ケース>
2014.2.7(金)10th Anniversary Live「O」 @日本武道館 収録6th Live DVD「act O」単体の通常盤。
7th LIVE DVD『act E』 <通常盤>
UPBH-20120 / 5,000yen(税抜)<1DVD(本編) / 2D(CDサイズ)ケース>
2014.2.8(土)10th Anniversary Live「E」 @日本武道館 収録7th Live DVD「act E」単体の通常盤。
10th Anniversary Special Edition [Limited]Blu-ray&DVD『act O+E』
<シリアルNo.入りAAA武道館スタッフパス付10,000セット完全生産限定盤>
★『act O+E』初回限定生産Blu-ray版スペシャル・エディション / UPXH-29009 / 12,000yen(税抜)
<2BD(本編)+1DVD(ボーナス映像)+スペシャル・フォトブック付10周年記念・初回限定特別仕様>
6th Live DVD「act O」、7th Live DVD「act E」のブルーレイ版スペシャルエディション。
★『act O+E』初回限定生産DVD版スペシャル・エディション/UPBH-29049/¥10,000(税抜)
<2DVD(本編)+1DVD(ボーナス映像)+スペシャル・フォトブック付10周年記念・初回限定特別仕様>
6th Live DVD「act O」、7th Live DVD「act E」のDVD版スペシャルエディション。
☆スペシャル・エディションのみの特典:9周年ボーナス・ディスク(DVD) & スペシャル・フォトブック
(※ボーナス・ディスクDVDは初回限定生産スペシ