いろんなジャンルの中にヴィジュアル系が入る目新しさ
──ロックの登竜門と言われ続けた老舗ライブハウスの半世紀を象徴するイベントを取りまとめるのは、店長として大きなプレッシャーを感じずにいられないと思うのですが。
柳沢:プレッシャーはひしひしと感じていますけど、そればかりだと疲れちゃうので楽しいことを考えないと(笑)。これまでの30周年、40周年とは違う何かをやらなくちゃいけないと思いつつ、僕自身は20周年のときにやった武道館公演をもう一度やりたかったんです。でもそれがちょっと現実的ではないということで、50周年の節目にどんなことを仕掛けていけばいいか悩ましい部分もありました。2024年の歌舞伎町移転25周年から間をあけずにオープン50周年モードに入ったし、いろいろと企画をやり尽くした感もあって。でも樋口さんを始めロフトの精鋭スタッフとミーティングを重ねる中で面白いアイディアがいろいろと出てきたし、やっぱり自分一人じゃ限界がありますよね。そもそも僕一人の50周年じゃないし、ロフトで働くみんなの50周年であり、これまで出演してくださった皆さんや通い詰めてくださったお客さんの50周年なんだから、ロフトにかかわってきた人が等しく楽しめる50周年にしたいなと思って。
──たとえば下北沢シェルターのように、オルタナティヴを主軸とするジャンルが固定化したハコならばその方向へ特化・深化していけばいいわけで、新宿ロフトのようにジャンルも世代も全方位で雑多な文化をすべて受け入れるハコはブッキングに難儀するのではないでしょうか。
柳沢:そうなんです。500人キャパという設定もなかなか難しい。それ以下かそれ以上の集客に振り切ったほうがラクですから。まあ、だからこその面白さがロフトにはありますけどね。オールジャンルだからこその面白さがある。
樋口:この3人で手分けしてブッキングしていく中で、たとえば大江さんはA会場担当、柳沢さんはB会場担当、Zepp Shinjukuは一番大きい会場だからここぞというバンドを出し合おうとか、誰かの意見が偏ることなく意見を出そうとはしています。だけどそう気負うことなく、歌舞伎町のライブハウス9会場を使ってロフトらしいサーキットフェスをやるならこうだな、こういうラインナップなら面白いなっていうのを最優先にお声がけをさせてもらっています。
──まずは制作を手がける皆さん自身が楽しめるブッキングをしようと。
樋口:それが一番大きいですね。別にやらされてやってるわけじゃないし、ロフト50周年の節目にぜひやっておきたくてやってるわけで。そこをベースに意見を交換し合い、出演アーティストを順次発表できているので良い感じかなと。
柳沢:まあ、歴史の長いライブハウスですからね。僕もオープン当初からいるわけじゃないし、ロフトに対する格別の思いを持った人たちが自分より上の世代にたくさんいらっしゃるし、ロフトが辿ってきた歴史を学ぶだけでもなかなか難しい。
大江昌未
──新宿ロフト勤務歴3年の大江さんは尚のこと大変でしょうね。
大江:覚えなくちゃいけないことがいっぱいありますね。ただ今回のようなサーキットイベントにヴィジュアル系を呼べるのもロフトならではじゃないかと思って。ヴィジュアル系は他のジャンルと絡みづらいし、ヴィジュアル系単体のサーキットはちょこちょこあっても、いろんなジャンルの中にヴィジュアル系が入るサーキットはもしかしたらこれが初めてなんじゃないかな? と思います。ヴィジュアル系の皆さんが他のジャンルとの交流を図りたいと思っても客層が違うし、メイクや衣装にかかる経費のこともあって折り合いがつかず、なかなか実現してこなかったんです。
──現在は第3弾出演者まで発表されていますが(この取材時は第2弾出演者まで発表済)、今後も月一のペースで出演者が発表されていくんですか。
樋口:7月までは随時発表しつつ、8月上旬にはタイムテーブルを解禁して、それを見たお客さんが会場の行き来やペース配分で悩んでほしいなと思っています。開催までの2カ月間、じっくりと悩んでほしい(笑)。
──今年1月の段階で、出演アーティストを一切公表せずにチケットの超早割先行販売が行なわれましたが、ある種、ロフトに対する踏み絵のようなユニークな試みでしたね。
樋口:出演者を発表せずにどれだけ興味を持ってくださるのかな? という意味で、凄く数字が気になっていました。面子が公表されていない上に、超早割とはいえチケット代も決して安くはないし、3、40枚いけばいいかな? くらいに考えていたんですが、おかげさまで自分たちの想定枚数を超える初動で嬉しかったですね。50周年というお祝いの気持ちを兼ねてチケットを買ってくださった方もいると思いますが、とても有り難かったです。今回のサーキットフェスはそうした販売方法を含めて新たなトライというか。
──オーディエンスの期待値の高さが窺えて、これは下手なものはお見せできないぞと気が引き締まる思いも生まれますよね。
樋口:そうですね。でもラインナップはもちろんのこと、コラボステージも予定していますし、ロフトにしかできないサーキットイベントになると思うんです。これまでロフトとご縁のあった方々にお声がけをしているし、このサーキットで初対面となるような方々は意図してお声がけしていないんです。あくまでこの3人が懇意にしていただいてきた、ロフトと縁の深い皆さんに出演していただきます。だから否応なくロフトらしさ全開のサーキットフェスになるはずです。
「こういう表現者をもっと応援しなければ」というライブハウスの使命
──これまで発表されてきた出演者について聞かせてください。第1弾出演者の中で樋口さんがブッキングしたのは、SAKANAMONとLUNKHEAD。
樋口:LUNKHEADは私がレーベルで関わっていたフジファブリックやメレンゲと同期で、私がレーベル担当のときに対バンする機会も多かったんです。同じジャンル界隈で活動していた同期のような感じです。今回のサーキットフェスでは同じ時代に切磋琢磨してきた同世代のバンドをブッキングしたいというテーマが自分の中であったし、真っ先にお声がけさせていただきました。SAKANAMONは私よりひと世代下なんですけど、凄く格好いいバンドだし、気がつけばもう15年くらいの長い付き合いになっちゃって。こうしたロフトの節目となる大事なイベントには絶対に出てもらいたいし、絶対にその期待に応えてくれるバンドの一つです。
──店長は、ヤスエでんじゃらすおじさんとNEO BURNING FIRESをブッキング。
柳沢:ヤスエくんは20数年前、彼の前身バンド(ベルノバジャムズ)を当時の勤務先だった渋谷屋根裏のオーディションで見てるんです。そこからの縁で、去年はヤスエくん、シェルターとの共催で『環ル日々』というイベントを年間を通じてやってみたり。ライブハウスを主軸にしてずっと表現を続けるのって大変じゃないですか。日々の生活もあるし、結婚してライフステージが変わる人もいるわけで。でもヤスエくんはずっと変わらず唄い続けて、その真に迫る表現力が以前と比べて格段と増していたんですよ。久々に会ってライブを見たら、歌の説得力が桁違いだったんです。こういうアーティストにもっと寄り添ってライブハウスを活性化させたいと思ったし、ヤスエくんみたいな表現者をもっといろんな人たちにアピールすることがライブハウスの使命だと思いながら関わっています。NEO BURNING FIRESはSMORGASの来門くんを中心としたネオミクスチャー・バンドで、僕自身、SMORGASがもともと大好きで。シェルターでAA=とのツーマンをブッキングしたり、ずっと来門くんの活動を追いかけてきたんです。音楽人としての彼の才能に心酔しているし、常にライブハウスを主戦場としてきた彼のことをずっと応援していきたいんです。NEO BURNING FIRESは来門くんの息子(RUU)がドラムで、親子ならではのグルーヴがライブだけじゃなく活動の姿勢にも表れていて面白いんですよ。
──そして大江さんのブッキングは、cali≠gariとdeadman。
大江:cali≠gariは通常公演だと私の先輩が担当することが多いのですが、cali≠gariはとにかく常日頃ロフトを好きと公言してくださっていますし、実はこのサーキットイベント当日にご自身のワンマンがあるにもかかわらず出演してくださるんです。deadmanは大阪時代からaieさんに凄くお世話になっているのもありますし、私が上京するときにブッキングの相談を最初にしたのもaieさんだったんです。私の前職がPAで、そのPA時代の師匠のような方がaieさんの仕事をずっとされていたこともあり、aieさんは私にとってもロフトにとっても大の恩人なんです。
──aieさんはロフトのバーで『ゴッドバー』を定期開催してマスターを務めていただきましたし、キャリアの要所となるライブは必ずロフトを選んでくださっていますしね。
大江:そうなんです。aieさんが新しく始めたGUMMY(グミ)も、ロフトだと明らかにキャパオーバーなのに初のワンマンを3月にロフトでやっていただきましたし、ご自身の参加するバンドのCDにはスペシャルサンクスとして必ず新宿ロフトをクレジットしてくださっているんです。















