日本屈指のライブハウスとして知られ、日本のロック史にその名を刻む数々のバンドと並走を続けてきた新宿ロフトが、今年の10月に西新宿時代から合わせてオープン50周年を迎える。
これを祝し、10月3日(土)には新宿ロフトとその周辺に点在する複数のライブハウスと連携した大規模なサーキットイベント『SHINJUKU LOFT 50th CIRCUIT 2026』を行なう。ロフト初の試みであるこの都市型サーキットイベントは、総勢60組以上のアーティストが新宿ロフトやZepp Shinjukuを筆頭に歌舞伎町のライブハウス全9会場に集結。歴史を築いてきたレジェンドから次世代を担うニューカマーまで、ジャンルや世代の垣根を超えた出演者たちが至高のパフォーマンスを通じて歌舞伎町を彩る。
すでに第3弾出演者まで発表されているこの"LOFT 50th CIRCUIT"はどんな趣旨で企画され、数あるサーキットフェスの中でどんな特異性があるのか。公演制作に携わる柳沢英則、樋口寛子、大江昌未のブッカー三者に語り合ってもらった。(Photo:丸山恵理 / Interview:柞井雄吉)
ロフトらしく多種多様なジャンルを総ざらいするサーキットフェス
──“LOFT 50th CIRCUIT”開催の経緯から伺いますが、発案者は樋口さんですか。
樋口:はい、私です。新宿ロフトの50周年記念イベントを今年1年かけてやっていく中で、ブッカーが各自思いを込めた公演を日々企画しているんですけど、せっかくならロフトらしい多種多様なジャンルを総ざらいするようなイベントをやりたいと考えたんです。各ブッカーの個性を活かした、ロフト50年の歴史を1日に凝縮したようなイベントを。それならロフトとその周辺に点在する複数のライブハウスと連携したサーキットという形がいいんじゃないかと思い、提案させていただきました。
──新宿ロフトのブッキング・スタッフはジャンル担当がきれいに分かれていて、イベントの企画制作において互いに干渉し合うことはないですよね。もちろん制作上の意見交換やスケジュールの協議など、より良い店舗作りを目指して共存共栄してはいますけど。
柳沢:樋口さんから話をもらって、みんなで協力し合って一つのイベントを企画する機会はなかなかないので面白そうだなと思ったんです。樋口さんや大江さんと制作を一緒にすることもこれまであまりなかったし、これは店にとっても今後プラスにはたらくなと思って。それで今はこの3人が定期的に集まってああでもないこうでもないと話し合っていますが、やっぱり良い刺激にもなるし純粋に面白いですね。各自のジャンルも発想の視点も全然違いますから。
──各人の得意とするジャンルやロフト在籍歴などを自己紹介がてら教えてください。
樋口:私は1997年にロフトへ入社して、1999年の歌舞伎町移転と共にブッキングの仕事を始めました。私自身、いわゆる歌ものと呼ばれるジャンルが大好きで、そこをベーシックとしたブッキングを手がけてかれこれ27年経ちます。ブッキングと並行して〈SONG-CRUX〉という良質な歌とメロディをテーマにしたインディーズ・レーベルの仕事をしていたときに出会ったフジファブリック、メレンゲ、音速ラインといったバンドを筆頭に、レーベルとは直接関係ありませんが、スキマスイッチやつじあやのさんといった歌心を大切にしたアーティストの皆さんと一緒にイベント制作を続けてきました。2010年代だとKANA-BOONやKEYTALK、マカロニえんぴつといったバンドとの出会いが印象的です。
柳沢:僕はパンク、ハードコア、ミクスチャー、ヒップホップ、レゲエといったレベル・ミュージック、ストリート・カルチャーに根差したジャンルをメインにブッキングしてきました。ロフトには2013年に入社して、店長になったのはその5年後です。2018年以降だから、店長としてはほぼコロナ禍の対応に追われてばかりでした。ロフトっていうとやっぱり王道のロックやパンクのイメージが強いかもしれませんが、個人的に思い出深いのは、ロフト40周年記念のときにCreepy NutsやBAD HOP、KANDYTOWNといった武道館クラスのヒップホップ・グループを呼べたことなんです。
大江:私は普段からヴィジュアル系を中心とした公演をブッキングしています。もともと大阪のロフトプラスワンウエストにいた頃からヴィジュアル系のイベントを手がけていて、ウエストで3年ほどブッキングの仕事をした後、上京して新宿ロフトに配属されて今年で3年になります。
──ロフトとして初の試みである都市型サーキットイベントを行なう上で、大江さんのような若いブッカーの視点や感性が必要だという考えが樋口さんと柳沢さんにあったわけですよね。
樋口:もちろんです。彼女の得意とするヴィジュアル系は新宿ロフトの歴史の中で絶対に欠かすことのできないジャンルだし、サーキットイベントって独り善がりの視点では成立しないんですよ。各ジャンルに精通したスタッフはもちろん、イベントを広めてもらうプロモーション・スタッフの第三者的な意見も不可欠だし、今回は新宿ロフト主催のイベントではありますけど、他の音楽店舗やトーク部門を含めたロフトプロジェクト全体が手がけるイベントという位置付けで落とし込みたいんです。
樋口寛子
──これまで歌舞伎町一帯では『CONNECT歌舞伎町』や『歌舞伎町MUSIC CHRONICLE』といったサーキットイベントが行なわれてきましたが、それらで培ったノウハウを活かしつつロフト色を出すというイメージですか。
樋口:そうですね。あと、私が公演担当したサーキットで言えば『見放題東京』や『TOKYO CALLING』ですかね。どちらも10年以上、毎年現場にいるので参考にさせていただきつつなんですが、そのお客さんのターゲット層はわりと若い世代なんですよね。ロフト50周年となるとそうもいかなくて、いろんな世代、いろんなジャンルのアーティストに幅広く出演していただいてきたハコだし、そうしたジャンルレスで幅広い層とリンクしてくるのがロフトの強みでもあるので、歌舞伎町で行なわれてきたサーキットイベントを参考にはしても差別化は図りたいですね。ロフトにしか出せないカラーというのが間違いなくあるので、それを意識しながらブッキングに取り組んでいます。
──姉妹店であるロフトプラスワンやロックカフェロフトといったトークを主体とした店舗まで提携したサーキットイベントは初めてなのでは?
柳沢:初めてだと思います。トークまで絡められるのがロフトの強みだとも思うし。
──ジャンルも世代もごった煮の上にトークまで巻き込むとなると、ブッキングも一筋縄ではいかないので大変ですよね。
樋口:もちろん大変ですけど、50周年という大きな節目にこうした取り組みに挑まないと、51年目以降のロフトに新たな風が吹かないと思うんです。老舗ライブハウスとして胡座をかくわけにいかないし、今までにないチャレンジをこの段階でやっておくことが半世紀の歴史を持つロフトの課題だと感じてもいますし。自分たち発信でゼロイチで制作するサーキットってこれまでやったことがなかったし、あえて本音を言えば、外部から話をいただく持ち込みのサーキットで手一杯なところはあったんです。だけどこうした形で、柳沢さんや大江さんと協力し合いながらロフトの叡智を結集させると言うと大袈裟かもしれないけど、ロフト総体でチャレンジするのは50周年を迎える上で大きな意義があると思ったんですよね。















