制約が多い仕事でもどうにか変なことさせてもらおうっていう、戦う姿勢はある
──アイデアが出ないときってないんですか?
山根:作品に関しては基本的に「出たらやる」ですから、アイデアが出ないって普通はないじゃないですか。だけど仕事においては要件と期限が決められてるんで、もちろん「出ない」はありますよ。どんだけ考えても出ない、打率みたいなものはあります。でも「打率が低い」だけかもしれなくて、思いつくまで考えるし、時間をかければ意外と解決策は出たりしますよ。でも、個人的には、途中から急にすべるのが怖くなくなったんですよ。
──え!?
山根:ていうか、麻痺したんやと思うんですよね。すべりすぎて。別にもう20年もやってたらね、わかってくるというか。打率はあるし、すべったらすべったでしゃーないなというか。だから社内で判断して出さない企画も多くて。「企画天国」ってサイトを作ってるんですけど、「やらなかった企画」っていつまでも持ってても意味ないなと思っていて、それをサイトに載せていってるんですね。なんで出してるかというと、自分たちがリソース的にできなくても世の中に企画が溢れてほしいなと思って、勝手に作ってくれてもいいなと思ったやつをここに載せてる。ほんまにパクられたくないやつは載せないようにしてますけど。
──すごいですね、アイデアが湧いて湧いてしょうがないみたいな。
山根:これは結構努力してやってます、もう筋トレやと思って。……そろそろ真面目な仕事の話も一応しましょうか?
──あ、お願いします。
山根:万博の活動はずっとやってまして、最初は万博が大阪に誘致される前から、僕がもともと1970年の万博が大好きで、大阪に来て欲しかったんですけど、なんか大阪府がやってる誘致活動が地味すぎて、腹立ってきて。誘致委員会に直接行って、こんなことやりませんか? とか、いろいろ言ってきたんです。その中で「公式のロゴを使わなければ何やってもいい」って話になりまして、勝手に作ったのがこのフリーペーパーなんですけど。
──あ、これ勝手に作ったんですね。
山根:自腹で作ったんですけど。目の前にBYTHREEっていうすごいデザインができる会社がありまして、そのBYTHREEと一緒に作ったフリーペーパーです。これも全部、過去の万博を調べて、一般の人にどうやったら読んでもらえるかを考えて表現にこだわって……。
──すごい作り込んでますね。
山根:デザインも印刷もめちゃくちゃこだわってて。あと万博に対してウチらは中立な立場やったので、反対派の意見も載せたりとか、万博で働いてた人を出したりとか、そういう普通はできないものをやりたくて。それから誘致が成功して、万博の開催が決まってからは「demo!expo」というチームを作りまして、公式の仕事はできてないけど、それでも万博のために活動がしたいな、「でも、やるぞ。」という意味を込めて「demo!expo」と名付けました。それがいろいろ実を結びまして、非公式の仕事も公式の仕事も、いろいろやっている状態です。これをね、もともとの広告制作の仕事と並行してやってるのが大変なんですよ……。
──大変ですねー。
山根:公式の仕事で言うと、万博全体に「ワクワクするような装飾」をしてくれっていう依頼を受けまして。花岡が旗振り役となって、様々な会場装飾、大型オブジェ、壁面アート、会場BGMなど、様々なクリエイティブを通して「EXPO WORLDs」という世界観を作り上げました。詳細はまたwebを見て欲しいんですけど、このオブジェも僕らが作ったりとか、このポーズもウチで作ってます。
山根:この周りのデザインとかもウチですね。このフラッグのデザインとか1枚1枚ウチのデザイナーが作っていたりとか。子どもが遊ぶモニュメント、地面にいっぱい「コミャク」って呼ばれるキャラクターのデザイン作ったり。
はまだ:真面目な仕事もやってますけど、こうやって「スイス」が万博の所に飾ってあったり、いろんな所が繋がっている感じがしますね。このミャクミャク像も普通なら通らないポージングなんですけど、どうにかこうにか通してもらったっていう。制約が多い仕事でもどうにか変なことさせてもらおうっていう、戦う姿勢はありますね。
──今後はどうなるんですか?
山根:万博の仕事は一回落ち着くと思うので、また変な仕事を通して大阪から変な空気を作っていけたらいいんですけどね。……あ、そうだ。大阪の超生命体を集めるメディア「ヘンとネン」って活動も取り上げて欲しいんですよ。大阪のヤバくて面白い人たちを図鑑にしているメディアで、その編集長がトミモトリエっていうパンチが効いた人なんですけど、大阪に埋もれている変わった人がちゃんと活躍できる場を作るために「人間編集舎」っていう会社を立ち上げたんです。
はまだ:大阪のヤバい人がだいたい集まってます。ロフトプラスワンウエストさんにおススメです!
──ありがとうございます。連絡してみます! 「株式会社人間」さんでもぜひ今後イベントお願いします!