スイス関連施設に置くという夢が叶った「スイス」
──はいはい。
山根:バズを知ったクライアントさんから仕事の依頼が来た。これで味を占めて、作品作りって営業になるんやってことに気付きまして、じゃあウチは営業となる作品作りと、来た仕事は仕事でちゃんとやるみたいなスタイルがここでわかってきたと。で、そのあとに作ったのが「スイス」です。
──人間さんの代表作ですよね。
山根:「チーム人間」時代の発想から来てるんですけど、まぁカタカナの「ス」に座れるから椅子にしようって発想で、これを作るにはどうすればいいのか? から考えて、最初のプロダクトだったんですよ。これは自分たちじゃ作れないと。
──これが最初なんですね。
山根:これが商品として初めてですね。で、プロダクトデザイナーとか相談しに行って、これは作れない、コストが高いとかいろいろあったんですけど、むちゃくちゃクレイジーな家具屋さんがいまして、ルーツファクトリーの阪井(信明)さんっていうんですが、とりあえずやってみようという人なんで、その人と一緒に作っていって、綺麗な「スイス」を作ってもらったと。
はまだ:実は今、大阪万博のスイスパビリオンのハイジカフェに置いてまして。「スイス関連施設に置く」という夢が叶ったんですよ。
──スイス公認なんですね。すごいなぁ。
山根:これは2011年の作品なんで、14年越しですね。これがめちゃくちゃバズりまして、とにかくハイジカフェに行った人はこれに座るみたいな、まさかこれが役立つとは思わなかったですね。おかげで今のところ新たに6~7台売れてますね。
──この箱はなんですか?
山根:これが2個目のプロダクトで、「スイス」を作ったけど原価が高すぎて、売るのも売れへんってなって。今回はちゃんと流通できる作品を作ろうとなって、前の「コノハナクエスト」のドット絵が良かったから、あれをどうにかしようと話になって、似たように見えるデザインのものを作って、ちゃんとハコにして今も売ってます。一番でかいサイズはコストが高かったんで、あのサイズはもう売ってないんですけど、「中」と「小」は今でも売ってます。
──なるほど。
山根:「WEB炎上マシーン1号」は簡単で、炎上させたいサイトのURLを入れてボタン押すと、プリンターから印刷されてきて、火の中に落ちて燃える。これはエイプリルフールにやったやつですね。どんなサイトでも炎上させられるってやってました。
──手かかってますよね、いちいち。
山根:意外とちゃんとしてるんですよ。ちゃんとしたほうがくだらなさがより強調される気がします。ただ、印刷代がめちゃ高くて、リアルタイムでインクを買い足しに走ったりしてとにかくコストが掛かりました。あと「謎解きイベント」にハマったときがあって、謎解きをたくさん作ることになったんですけど、そのキッカケがこれで。
山根:これは新世界でアーティストさんたちとイベントを何年もやってたんですね、そこで僕らの出し物としてやったやつで、むちゃくちゃモテる体験を具現化しようと思いまして。参加者は全員「モテ機」っていう腕輪をつけるんですが、それを付けると700倍モテると。で、街中に一般人のフリした仕掛け人がいて、いきなり告白してきてラブレター渡されるんですけど、そのラブレターに謎が書いてある。モテる体験と謎解きを合体させたイベントです。悪い気はしないですもんね、嘘でも告白されるとドキッとする、そういう体験もできる邪なイベントだったんですけど。大好評でした。
──すごいですね、謎解きゲームにも対応できるっていう。今までの作品と作り方が違くないですか?
山根:そうですね、でも僕らとしては全部一貫したテーマでやってるイメージなんですけど。
── 一貫したテーマとは?
山根:「面白くて変なことを考えている」。そこが一貫してるんですね。「面白くて」っていうのは単純な面白さ、「変なこと」っていうのは、いわゆる個性とかオリジナリティとか。「考えている」ってのは、一歩先に行ってることを考えるとか、ちゃんと場に合わせてちゃんと考えていること。あといつも「視野は狭いです」と言ってます。仕事としては、あんまり世の中全体のことは考えないようにしてやってるんですよ。作品やったら自分たちの面白いことだし、仕事やったら相手が面白いと思ってることを一緒にやりたいし、僕たちができるのはそのクライアントの担当者のやりたいことを助けるだけで、僕ら自体は社会をどうしたいということあんまりないというか。僕らに仕事を頼む時点で、何かやりたいとか、やらかしたいとか、相手はすでに企んでいる状態なんで、それを僕らは1.5〜10倍くらいにしてあげるのが仕事だと思ってるんですよ。