もはや様式美と化したパンク〜ハードコアを破壊&再構築し、アップデートさせ続けるバンド SMASH YOURFACEが、2025年7月2日(水)にニューアルバム『さよなら SMASH YOUR FACE』を世に放つ。ロックンロールヒストリーのみならず自らの過去と決別するかのような強い意志を感じるアルバムだ。
また本作はBorisのAtsuoがプロデュースを担当し、俳優、SODA!の浅野忠信がアートワークを手がけ、Borisによる楽曲提供もあり、ゲストミュージシャンにサイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)、益子寺かおり(ベッド・イン)が参加。更にレーベルはめろん畑a go goなどを手掛けるGOLLIPOP RECORDとトピックだらけである。
既成概念や固定観念に挑み続けた近年の彼らの姿が記録され、"今"の彼らの総決算となるようなニューアルバム『さよなら SMASH YOUR FACE』は、つまり『こんにちは SMASH YOUR FACE』でもある。決別と出会いが同時開催中の本作について、VoのNanに話を訊いた。(Interview:恒遠聖文 Kiyofumi Tsuneto / Photo:Emily Inoue)
下北沢SHELTERのマンスリー企画で起きた客層の変化
──前回のインタビューはSHELTERでのマンスリー企画とワンマン(2024年5月)についてでしたね。マンスリー企画も一旦終了したとこですが、総括的にはいかがですか。
Nan:楽しかったね。以前は誰かの主催のイベントに出ることが多かったんだけど、SHELTERでマンスリー企画を始めてからはそれに絞ってやってきて。“SMASH YOUR FACE VS 〇〇”って感じでちょっとプロレス/WWEっぽく仕掛けていったんだけど、そこでお客さんと一体になってさ、“あー、今回はこんな面子でやるんだ!”って感じで盛り上がってきたとこでワンマンだったから流れもすごくよかったね。
──近年、自主イベントのみならずいろいろ仕掛けてますが、客層は以前と変わりました?
Nan:変わったね。むしろ古くからのお客さんで今も来てくれてる人はもう限られてる。それは演る場所が、下北沢、SHELTERになったっていうのもあったと思う。やっぱりお客さんってバンドにもつくけど場所にもつくよね。バンドとイベントと場所ってセットになって。
──それは関係ないようでありますね。
Nan:やっぱり今の時代は突き抜ける必要があると思う。だからうちは意識的にここ1、2年ぐらいで一緒にやる人たちを変えてて。
Nan|Vocal
KB|Vocal, Guitar & Tambourine
──そもそも以前のSMASH YOUR FACEってどのバンドと一緒にやるのが多かったんですか? 昔はthe heckとかとやってたイメージです。
Nan:そうだったね。あと初期は『消毒GIG』にもよく出てたりとか、その時代その時代で変わっていったけど、実は同じバンドと何回も一緒にやるってのもあんまなくて。自分たちの企画もやってなかったしね。
──新しい客層はパンク、ハードコアのシーン以外の人も増えたのではないかと。
Nan:うん。以前はやっぱりハードコア好きな人がその延長で俺たちのことも好きだって言ってくれてた気がするんだけど、今はいろんなものを聴く人がその中の一つとしてSMASH YOUR FACEを選んでくれてるわけなんですよ。めろん畑 a go goとSMASH〜が好きだって人もいるし、“XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)ってアイドルと一緒にやってほしいです”って人もいたし。昔はみんなジャンルを絞ってたでしょ? ライブ行ったりレコード買うお金も限られてるからさ、“俺はパンクを聴く”、“俺はメタルを聴くんだ”って感じで選んでたかと思うんだけど、今はサブスクもあっていろいろ簡単に聴けるからその必要がなくなってきた。悪い言い方をすると“俺はパンクで生きる”って人が少なくなっちゃったし。
──パンクの人もメタル聴いたり、なんだったらヒップホップの人がブラックメタルを聴いてたりとかも普通ですからね。
Nan:うんうん。昔はジャンルに固めるのが自分の生き方だったけど、今はジャンルに固めないのが生き方だったりするよね。
──例えば昨年共演してたmoreruなんかはオタクカルチャーも内包してたり、ちょっとナードな感覚とかあるじゃないですか? あれは我々の世代ではありえなかった感覚だし。
Nan:そうだね。アニメも同一線上だったり。やっぱ、昔はハードコア好きなのにアニメとかアイドルも好きだなんて言いにくかったけど、今は普通だったりして。