ライブは苦しいけど一番刺激的だからやめられない
──最近は、リリースがない間もアーティストもSNSなどで近況を発信されたりしていますが、安部さん自身はSNSなどに興味はありますか。
安部:俺自身は何が良いのかはわかんないっすね。何か情報が少ないほうが貴重な感じがしません? 一つ一つの情報が貴重になるし、「やっと見つけた!」っていう喜びもある。一生懸命探して掘っていく行為が、能動的なことに繋がっていくって思う。だから、SNSみたいなのに何でも情報が流れていくのって、俺個人としては豊かには感じないですね。
──では情報過多の中で、ライブならではの魅力って何でしょうか?
安部:ライブって、ほかの情報がたくさん飽和していても、ライブだけは特別な空間なのですよ。ライブは瞬間でしかないし、同じことを繰り返せない。たとえ、同じ曲を演奏しても、全く違う気分になれる。昔と変わらず、そこだけは一貫しているんですよ。価値として薄まらないし、一番、刺激的だと思いますね。だからライブをやめられない。
──ライブはレコーディングと違って、楽しいのですか。
安部:いや、でもライブも面倒くさいんですよ(笑)。でもやった後は、「今日の一生懸命をやりきったぞ」って満足できる。
──ライブもレコーディングも面倒なのですか!(笑)
安部:さっき若い子たちの中で、ライブハウスに対して怖いっていうイメージがあるって聞いて、ネガティブなイメージはしなかったんですよ。むしろいいじゃんって思った。80年代の危険なイメージだったライブハウスから、うちら世代からは、安全な場所っていう雰囲気になっていた。それって、あまり良くない気がしていた。ライブハウスって、カルチャーを発信する場所じゃないですか。そういうところって、やっぱり危なっかしい部分があったほうが良いと思う。安全だと、退屈ですよ。
──そうですね。ライブハウスならではの魅力ってありますよね。
安部:だからね、集まってきますよ、若者は。だって危ないところが好きだから。未来は明るい。
──ソロとバンドでは、安部さんにとってライブの面白さは変わってきますか?
安部:いやあ、ライブはどれもあんまり変わらないですね。ライブは基本、苦しいからな。「ライブは楽しい」って、口では言うけれどリップサービスみたいなもので。でも、基本は苦しいですよ。
──でも、そんな苦行がなぜ続いているのですかね……?
安部:一番、向いているのではないですかね。苦しさの中でも、耐えられるタイプっていうか。
──そういう意味では、さきほどおっしゃっていたレコーディングが面倒くさいっていうのは別の苦しみなのでしょうか。
安部:そうですね。それは産みの苦しさですね。もう新しいものは産みたくないですね(笑)。今ある曲だけずっと演奏していて、お客さんが増えればいいですけど。これまでも、いっぱい曲を作りましたからね(笑)。でも、周りからもアルバムを出してほしいって求められているのは、ひしひしと伝わってきています。ライブは、バーン! ってやったら終わりじゃないですか。レコーディングは作業が長いのですよね。それこそ絵を描くほうが楽ですよ。
──たとえば、どういう部分が大変なのですか?
安部:レコーディングって、強い瞬発力みたいなものが一番出しにくい作業だと思うのです。バンドのメンバーがそれぞれこうしたいという気持ちを汲みとったり、まとめたりする役が俺だったりするので。まずいろいろな制約があるから、できることとできないことを考える。そもそも、そういう面倒なことをやりたくなくて音楽を始めたのに。だから、すごく矛盾するのですよ(笑)。
──レコーディングが大変な作業だというのは、伝わってきました。
安部:何が言いたいかって言うと、……作ります!
──新曲をですか?
安部:はい。新曲を作ります。
──安部さんにとって、やっぱり音楽ってなくてはならないものですか?
安部:いや。お金が降ってくればいいけど。お金が降ってきたら、音楽やめますよ(笑)。
──では、音楽を続けてもらうために、お金が振ってこないようにしないといけないですね…。
安部:俺のことを、ちゃんとした人間として認めてくれるのなら、全然やめる。俺、ぼーっとしているのが苦じゃないので(笑)。俺と社会をギリ繋いでくれるのが音楽だったっていう話ですよ。みんな、この苦しみなら耐えられるっていう仕事を選んでいるんでしょ。それが、俺は音楽だったっていう。
──では、最後に一言お願いします。
安部:やっぱりライブハウスは危険ですからね。不良たちが集まる場所なので、気をつけて来てください(笑)。