盟友・伊東真一とは言語化できない領域の感覚が似ている
──伊東真一さんとのユニット、堕落モーションFOLK2とソロとはどのような違いがありますか?
安部:堕落モーションFOLK2は、ラフに見えて作品っぽいというか、プロジェクト感があるんですよ。衣装も黒い服を着てやっているし、楽曲も頑張らないつもりで始めたのに頑張っちゃっているので(笑)。かなりコンセプチュアルなユニットだから、やっていて一番疲れます。
──バンドとどっちが大変ですか?
安部:バンドよりも、精神的な部分で疲れますね。リズム隊がいないので、二人で呼吸を合わせて演奏するのがとっても難しい。ライブだと、ドラムという指針もないですから、お互いの呼吸もすごく集中しないといけないので、とっても疲れますね。でも、伊東真一という人がいるので、視線が散るのは楽ですね(笑)。
──安部さんの中で、伊東さんってどのような存在ですか?
安部:真君という人がどういう人間か、ですか。それはお互いに俺の歌は真君のギターが一番いいし、真君にとっても俺とやるのが一番いいんですよ。
──なるほど。
安部:性格も違いますし、価値観も違うところある。でも、「これが一番かっこよいね」みたいな美意識が合う。言語化できない領域の感覚が、似ているのです。そこがお互いの魅力を引き出しているのだと思う。
──ソロだと、伊東さんがいない不自由さを感じたりはされますか?
安部:ソロは伊東真一に一番、感謝する瞬間じゃないすか(笑)。それ以外は、あんまり感謝しないですけど。ソロの時は、「伊東真一という存在は助かるね」って思いますよ。
──会場である新宿ロフトに対しての憧れってありましたか?
安部:僕らの世代にとっては、シェルターとロフトは聖地でしたよ。敷居バリ高っみたいに感じて、緊張しました。
最初はシェルターでのfOUL主催の『砂上の楼閣』(2002年5月26日『砂上の楼閣21~スパルタクスの反乱~』)じゃないですかね。明確に覚えていますね。まだ福岡にいた頃に、まだお客さんもゼロに近かったのに、坂本商店(eastern youthが立ち上げたレーベルで、fOULも所属していた)に手紙を出したんです。なんか熱い気持ちを書いたんですよ(笑)。「対バンさせてください」って。そうしたら、fOULが福岡にライブで来た時に、前座で出してくれたのです。
──良いエピソードですね。
安部:いやわかんない、妄想かも(笑)。でも、そんな記憶がありますって感じ。
──新宿ロフトには、2002年9月12日の『LOFT POWER PUSH!』に、ザ・コブラツイスターズや、PICK2HANDと出演されたのが初めてみたいですね。
安部:その時はまだ福岡にいたので、新宿まで車で行ったのです。歌舞伎町に緊張しまくって、「新宿怖ぇ……」って思った。
──会場の周りも、独特の雰囲気がありますからね。
安部:ロフトの思い出でいうと、銀杏BOYZがロフトに出ていた日があった。彼らがスパルタの曲をライブのBGMで掛けてくれているっていうのを、人から聞いていた。それを知って、俺、嬉しくなっちゃって、「よし、峯田君に会いに行こう!」って思って、ライブ後に出待ちしに行ったんです。そうしたら、峯田君がめちゃくちゃファンに囲まれていて、神対応していた。それをかき分けて行って、峯田君のところまで行って、「初めまして、スパルタローカルズの安部です」って挨拶をした。そこで「音源掛けてくれたみたいで嬉しいです」って伝えたら、それがきっかけで対バンが決まったこともあったんです。
──銀杏BOYZやヘルシンキのように、世代の違う音楽もよく聴かれるのですか?
安部:いや、全然知らないかも。俺、人の音楽を元々聴かないし。あ、でも最近、藤井風を聴きましたよ。彼はめっちゃ才能ありますね(笑)。
──それでいうと、藤井風さんはサブスクリプションを利用した音楽配信サービスや、YouTubeからきっかけにブレイクされています。ライブハウスという生の空間ではなく、配信を中心とした音楽活動について、安部さんが思うことってありますか?
安部:俺、そこら辺のやり方を感じられていないのかも。そんなに変わってきているんですか?
──自分より下の世代と話していると、「ライブハウスが怖い」というふうに言われたこともありますね…。
安部:やっぱライブハウスは怖いですよ! ロフトもめっちゃ怖いところですから、まじめな人は来ないほうが良いですよ(笑)。
──そうやって、音楽の聴かれ方も変わっていくのかもしれないですね。
安部:俺は、どんどん変わればいいと思いますよ。多分、古い考え方ややり方って淘汰されていく。それでいいって思うし、流れに無理してくっついていこうとも思えない。俺個人で言うと、ライブはやっぱり楽しいからね。レコーディングはあまり好きじゃない。
──レコーディングのどういう部分が、好きじゃないのですか?
安部:レコーディングって、面倒くさいんですよ。スタジオにお客さんもいないし。昔から言っていますけれど、ライブをそのまま録音して出してくれたらいいのになって思う。
──スパルタは前作『underground』(2019年リリース)から、5年経っていますね。
安部:レコーディングはね、本当にしなきゃならないのだけれど……(苦笑)。メンバーからもスタッフからも言われているからね。もう俺の中で、日々座禅をしながら、曲作りに気持ちを集中しています。