小滝橋通り沿いから歌舞伎町に移転し、今年で25周年を迎える新宿LOFT。そのアニバーサリーイヤーを記念し、4月からスペシャルなライブやイベントが日夜繰り広げられている。なかでも6月7日(金)に開催される『邂逅』は、SPARTA LOCALS・HINTOの安部コウセイ、中村一義(Acoustic set with 伊東真一)、Helsinki Lambda Clubの橋本薫というそれぞれの個性がぶつかりあうラインナップになっている。今回は、安部コウセイにソロライブへの思いや近況を聞いた。(Interview:池守りぜね)
ソロはバンドとは違う達成感があるし、言葉も強く伝わる
──ソロライブは、久しぶりになるのですか?
安部:やっぱりバンドが軸としてあるので、ソロをやる場合は内容が充実したものをやりたい。だから、ソロのライブ数は厳選した感じですね。久しぶりといえば、そうなるけれどペースとしてはマイペースにやっています。
──コロナ禍での音楽活動は、安部さんにとってどのような期間でしたか?
安部:音楽業界の人たちも、みんな死にそうになっていたし、コロナ禍って、めっちゃストレスだった。ライブでもみんな声出しができるようになって、やっとコロナが終結したっていう感覚がある。でも少しずつお客さんが戻ってきているなって思うけれど、やっぱり一度離れていった人たちがまだ戻ってきていない。僕たちのファン層って、家庭とかあったりするからね。3年間ほどライブを観に行かない生活に慣れちゃうと、ライブハウスに行くこと自体から離れてしまっている。だからもう一回、そういうお客さんに見に来てほしいなっていうのが、最近の意気込みです。
──では、今はライブを精力的にやりたいと思っていますか?
安部:いや、最初はずっとやりたくね~って思っていたんですよ。
──ライブをですか?
安部:いや、ソロライブを。本当に一人でやれるのか自信もなかったし。でもやってみたらめちゃくちゃプラスになったんですよ。バンドってやっぱりみんなが支えあったり、フォローして、僕以外にもステージに一緒に戦う人間が存在していること自体がメリットというか。バンド自体が武器みたいなので。それがソロだと、何もなくて丸腰の状態で立っているから不安感みたいなのが毎回ありますね。だからそれを乗り越えた時に、バンドとは違う達成感があります。
──バンドはビートがある分、グルーヴ感も出ますよね。
安部:ソロの場合は、歌って感じ。でもバンドの時は、声が楽器的要素なのもあるかも。だから、ソロのほうが言葉も強く伝わる。バンドとはそういう違いはあるけれど、やっぱりメンタルの部分が一番大きく変わっている。
──ステージにも一人ですからね。
安部:みんなこっちを見ているな~って視線を感じますね(笑)。バンドのほうが、お客さんの視線が散るんですけれど。伊東真一(ギター / SPARTA LOCALS・HINTO)がもう獅子舞のように頭を振るので、みんなそれに気を取られるので楽なのですけれどね(笑)。ソロの場合は、みんなが本当にこっちを見ているので、心の中では「見るな、見るなー」って思っています。
──セトリは安部さんが決めているのですか?
安部:ソロもバンドも俺が決めている。最近は、その時の気分であまりかっちりとセトリが決まっていないほうが良いかなって思っていて。ソロの場合は、演奏する曲だけ決めておいて、その場で選んでいる。
──安部さんの中で、バンドとソロの大きな違いって何でしょうか。
安部:ソロってリズムを自分で作れちゃうんですよ。原曲よりもすごくゆっくりしたりとかできるわけです。でもバンドは、ドラムスが出しているビートに合わせていかなきゃならない。ソロは自分がルールなので、どんどんそういう決まりを崩していったりとか。途中で唄うのとかやめちゃったりとかね(笑)。「ここ、間奏長いな」って思ったら端折ったりとか。ソロは、そういう決まりごとが少なければ少ないほど、最近は良いなって感じているので自分の中でルールを決めすぎずにやっています。
──今回、『邂逅』に出演する橋本さんや中村さんと対バンされたことはありますか?
安部:Helsinki Lambda Clubはあるけれど、中村さんは初めてですね。中村さんとは、ブッキングの担当に、ずっと一緒にやりたいって伝えていたんです。
──中村さんとは接点はあったのですか?
安部:中村さんの音楽は、聴いていました。『100s』というアルバムの中で「セブンスター」っていう曲があって、「クソにクソを塗るような」って歌詞があるんです。それを聴いて、「この人、だいぶ怒っているな」と思いましたね。最初は暗い感じの人見知りタイプかなって思った。それが、挨拶をさせてもらったら、めちゃくちゃ明るい人だったんですよ(笑)。だからもう、訳がわからなくなりましたね。
──中村さんは、伊東さんと出演されるのですよね。
安部:そうそう! 中村さんのサポートで伊東がギターを弾くんですよ。なかなかカオティックな状況ですよね。中村さん側に伊東真一がいるって(笑)。そういう恩知らずなところがあるので、伊東真一を叩き潰さなきゃなって思っていますね。
──橋本さんのHelsinki Lambda Clubは、安部さんから見てどのような印象を抱いていますか。
安部:同郷だからってシンパシーとか覚えるタイプではないけれど、凄く良い音楽をやっているって思っています。今、結構人気者になっているけれど、全然人気がない頃から知っていたし。インディペンデントに近い雰囲気を持ちながら、工夫を凝らして頑張って下積みを積んでいるのが今っぽい。尊敬っていうと、逆に媚びているみたいなのだけれど(笑)、良いバンドだって思いますね。