週末の日曜・夕方6時だからなのか、はたまたこの日のイベントゆえなのか。見慣れた新宿LOFTのいつものフロアとは違う(というのを言葉にするのが難しい)雰囲気の中でお酒を手にステージが始まるのを待っていると、開演予定を5分ほど過ぎて最初に登場したのはCaravan。
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ペダルスティール&ドラムの音色と共に、Caravanが爪弾くギターの音色。毎年、日比谷野外音楽堂で開催されるライブに行っている者としては“ライブハウスって、新宿LOFTでの音ってどうなんだろう?”という思いがあったが、1曲目「サンティアゴの道」から低音も高音も、Caravanのボーカルも、ちょうどよくダイレクトに耳に届いてくる感じがなんとも新鮮。空高く音が突き抜けていく感じも良いけど、天井がある所だとむしろどっしりしっかり音が届くのだなと最初から気持ち良くなりながらひとすじ涙が流れる。“戦争があったりするけど、せめてここだけはピースフルに”と語りかけながら、この日のCaravanのセットリストにもメッセージを感じる。
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『ATTACK FROM LIVEHOUSE』のタイトルを掲げ、コロナ禍にも負けじと新宿LOFTなりに戦ってきたイベントがある。昨年の6月2日、このイベントの一つとしてCaravan / 光風&GREEN MASSIVEで2マンが開催されたのだが、なんと6月なのに台風の襲来で来られなかった方々がたくさんおられたとのこと。新宿LOFT店長がSNSで当時、“岡山在住のお友達が台風の影響で新大阪までしか来れなかった。仕事頑張れるわぁ〜と連絡くれていたので非常に残念だったが、光風&GREEN MASSIVE / Caravanのライブは最高過ぎた。来年は新宿LOFTが歌舞伎町移転25周年なので、来れなかった方の為にもこの2組で絶対にやりたい!”といったことを綴っていた。
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という昨年の出来事もCaravanのMCを通して知ったところでライブのレポートに戻すと、Caravanの演奏終わりには聞いたことがない程の大音量での“ありがとう!”の声が上がったフロア。それを受けて次に光風&GREEN MASSIVEが登場するや、フロアのボルテージは上がる一方。“シンガロング!”の掛け声に応えるフロアの大きな大きな声。光風は時にトランペットを吹き、この日初めて光を放ったミラーボールに“最高だぜ! 気持ちいいぜ!”
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そんなこの日がいつもの新宿LOFTと違って面白かったことは、転換中に限らず演奏中もホールのドリンクカウンターの列が常に全く途切れなかったこと(しかもほとんどの方が当然の如くアルコールをオーダー)。わたし自身レポートを書く身でありながら多分に漏れず飲まずにはいられないほどにラブ&ピースで最高な空間だったゆえ、もしもレポート内に誤りがあったらその空間が成した技だから申し訳ないと先に詫びておきたい。
さて、先の2組で既に最&高に仕上がった空間で、トリを飾るのはRickie-G。“移転25周年で、前の店舗から(数えると)50年。心を込めて歌います”と挨拶して、「am0859」からスタート。“歩いてきた道”の歌い出しで始まる歌詞が、新宿LOFTのあゆみを振り返るにもぴったりに聞こえる。
Rickie-Gもギターを持ったりしながら進むライブ。ステージ後ろから照明に照らされ映し出される姿が美しい。“サザンというバンドが大好き。夏を感じる曲をちょっとやってみるね”と「いとしのエリー」へ。英詞で歌ったから正しくは「Ellie My Love」と表記すべきか、会場内も一体となっての大合唱に、歌終わりは“まいど!”の挨拶。このギャップ!
“Caravan、そして光風&GREEN MASSIVE、最高でしたね。昔っからお世話になっている先輩で、でも対バンはなかなかなかった。今日の機会、光栄です”と語ってから、Rickie-Gが世話になっていると語る横浜のライブスペース・THUMBS UPも25年という話に。その上で、“歴史を刻んでいるライブハウスが街にあるだけで、文化を繋いでいると思う。そういう場所の尊さを、改めて感じてる。ライブハウスだけでなく、素晴らしい場所というものを守っていきたい。そのために僕ら、音楽で盛り上げてる”…乗り越えたコロナ禍で、今はこうして音を鳴らすことができていても、また次なる試練がすぐそこに、やってくるかもしれない。
さらに“戦争なんか、してる場合じゃねーよ! 最後の最後は、音楽が止められる可能性があるんじゃないかな”…音のない、音が鳴らない・鳴らせない世界が既にあるのだ。“平和を祈りこむSunday”と「90's Honch」が沁みる。
“人生は1回だから、人生は素晴らしいんだ!”とアンコールで「Life is wonderful」はあの日あの場にいた全員への応援歌になったと思うし、まだまだ終わって欲しくなくて何なら翌日は平日だが休んでも良いぐらい本当にまだまだ、まだまだこの場で音と戯れたい気持ちの人が圧倒的に多かったと思う。
そんな名残惜しい気持ちを助長するかのように、3組のフロントマンがステージに揃い、最後は手を取り合って笑顔での記念撮影。あぁ、また、ここで見せてくれこの笑顔、そして必ずや感じさせてくれこの空間を。心からそう思いながら、帰路に着く頃には小雨になっていましたとさ(ちなみにスタートの頃は結構な本降りだった)。【Text:高橋ちえ(@djchie)/ Photo:MAYUMI(@SOxWHAT_88)】