昨年の3作連続配信シングルに続き、フルアルバムとしては7枚目の『Tell Your Story』を先月(2023年8月)リリースしたLimited Express (has gone?)。
縦横無尽にライブを展開するYUKARIの存在感は『Tell Your Story』でも見事に発揮。バンドのフロントに立つからこそ、自分自身を存分に出しているのだ。
収録曲の「BET ON ME」に、"矛盾の存在 両A面"という歌詞がある。それはきっと、社会への怒りはある、だけどそんなものを吹き飛ばして楽しむことが絶対に大事! ということ。矛盾しないのだ。いや、矛盾だらけが自分自身の真実で、全部を歌おう! ということだろう。両A面なのだ。
任せろ! ってエネルギーがメンバーから伝わり、バンドの音像はぶっとい。バラエティに富みつつリミエキならではのカラーがガッツリとある。
YUKARI(Vo)と谷ぐち(B)にインタビュー(Interview:遠藤妙子 / Photo:小野由希子)。
楽しむことと怒りのどちらかを否定することはない、両A面なんだ
──去年(2022年)、今作にも収録されてる「No more ステートメント」、「R.I.P, friends」、「INVITATION」の3作連続配信シングルのリリースで、YUKARIちゃんに単独インタビューさせてもらいました(記事はこちら)。その頃、YUKARIちゃんは“たかが音楽”とか“ただの音楽”ってよく言っていて、その真意を聞きたくてインタビューしたんだよね。
YUKARI:そうでしたね。
──改めて、その思いというのを。
YUKARI:思ったのは、コロナ禍になって、「ライブをやる/やらない」「どういうやり方でライブをやるか」、そういうことを表明しなきゃいけないような状況があったじゃないですか。なんかおかしいなと。宣言して認められなきゃライブってできないの? そうじゃなく、もっと軽くていい、もっと自由なもののはずだって思ったんです。たかが音楽じゃないか! って。
──同時にYUKARIちゃんは社会の問題にも目を向けるようになりましたよね。
YUKARI:社会の在り方や特に女性の地位とかに対して「フォーメーション」[『Perfect ME』(2019年)]、「Live or die, make your choice」[『The Sound of Silence』(2020年)]を作った頃から徐々に意識が変化していって。楽しむことと怒り、どっちかを否定することはない、両A面なんだって。
──今作収録の「BET ON ME」には“矛盾の存在 両A面”という歌詞があるし、この曲はテーマ的に「フォーメーション」から繋がってますよね。
YUKARI:そうですね。繋がってます。両A面っていうのは去年の連続リリースの頃から考えていて、その考えに自信を持てるようになって作ったのが本作。
──どんどん吹っ切れていってる感じがします。吹っ切れていく過程が去年のシングルで、今作で到達した感。
YUKARI:そういう感じはありますね。
──YUKARIちゃんの歌いたいことが明確になって、バンドとしてもYUKARIちゃんの存在感がより前に出てますよね。
谷ぐち:そうっすね。なんかバンドっぽくなったというか(笑)。
──バンドっぽくなったし、対等になった。
谷ぐち:対等というと?
──えっとね、ボーカルが女性だから前に出すってことじゃなく、ボーカルとして当たり前に前に出てる。以前からそうだけど更にね。そしてバンドは演奏をがっちりやるっていう。
谷ぐち:あ、そうですね。今までのライブって単純に炸裂すればオッケー! って感じだったんで(笑)。それがだんだんとしっかり演奏をしようという意識に変わってきました。演奏やバンドのアンサンブルを固めることで、よりボーカルを出していこうと。
YUKARI:わたしは自分がピンボーカルになって、見る人はボーカルを真ん中において見ることが多いじゃないですか。そしたらパフォーマンスを派手にしたりして視線が向くような存在でいたいって思ってやってるから。たぶんね、メンバーがそれに負けじとやる感じになっていたんだと思う(笑)。メンバーで話したのは、ボーカルに負けないようメンバーも派手にしたいっていうのが行き過ぎて、演奏が後回しになってたんじゃないかって(笑)。
谷ぐち:まさにその通りで。こんだけ長いことバンドやってるのに、ボーカルが目立ってるから俺たちも目立ちたいっていう(笑)。
──子どもか!(笑)
谷ぐち:それで、俺たちって演奏が下手じゃね? ってことに気づいたんです(笑)。ちゃんと練習しようと。いや、練習はしてたんですけどね~。
──ライブとなるとテンション上がって。
谷ぐち:そうなんですよね~。ちゃんとやろうって意識はこのアルバムにも反映されてるんじゃないかと思います。少し上手くなってますし。
──ライブもそして今作も、バンドとしての勢いや意識が一丸となってるように感じます。たとえば…、「I don't TRUST」は途中から爆音になるかと思ったら音数少ないままやり切って。凄くカッコイイ。バンドの信頼感がこういうとこにも感じられる。
谷ぐち:アレはいろいろ試したんですが、違うな違うなって音を削って、最終的にあの形に。
──「I don't TRUST」の歌詞はYUKARIちゃんの怒りが炸裂して痛烈なメッセージとなっていて。だからこそ敢えて音は削って歌を前に出そうと?
谷ぐち:だいたいにおいて曲作りは(飯田)仁一郎とYUKARIと俺が元になるアイディアを持ってきて、けっこうな時間かけてアレンジしながら作っていくんですけど。「I don't TRUST」に関してはYUKARIがこういう感じで演奏してくれって言ってきて。YUKARIメインで作っていった曲です。
YUKARI:コンセプトや曲のイメージがあったから、もうアレしかないなって仕上がりです。いらないことはしないでほしかった。
──やっぱり言いたいことがハッキリあったから?
YUKARI:そうですね。あの曲は谷ぐちに対して怒ってる曲なんで(笑)。谷ぐちが弾くベースなんか聴きたくもなかったんで(笑)。
谷ぐち:音数少ないんで、ベースも弾かず黙って歌を聴かされるほうが気まずいです(笑)。
──リアル過ぎる(笑)。
YUKARI:今回のアルバムはわりと実話っていうか、自分の体験っていうか。そういう歌詞がほとんどなんです。ホントにあった物語、みたいな。